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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科29巻12号

1975年12月発行

雑誌目次

図譜・451

骨盤腎

著者: 奥山明彦 ,   小出卓生 ,   荒巻謙二 ,   武本征人 ,   宮川光生

ページ範囲:P.1000 - P.1001

 患者  25歳,女性。
 主訴 蛋白尿。

図譜・452

尿管腫瘍

著者: 中川長生 ,   上野精

ページ範囲:P.1002 - P.1003

 患者 57歳,男。
 主訴 無症候性血尿。

図譜 走査電顕図譜・6

尿管と尿道

著者: 野田進士 ,   河田栄人 ,   江藤耕作

ページ範囲:P.1004 - P.1005

 尿管は腎盂につづき,尿を膀胱に導く長い円柱形の管で,粘膜は尿路の状態に応じ伸展する性質と,尿の作用に対し防禦する性質を持つといわれる。
 男子の尿道は膀胱内の尿を体外に排出する管で同時に輸精導を兼ねる。

綜説

進行性前立腺癌の治療と予後

著者: 岡田清己

ページ範囲:P.1011 - P.1020

緒言
 前立腺癌の治療法,予後に関して今まで多くの発表があり,それに対する追試,批判がなされてきた。1941年以来,内分泌療法(去勢術,Estrogen投与)は前立腺癌の治療法として脚光を浴びたが,1950年Nesbitら1)の統計にて,この治療法の限界が示された。すなわち内分泌療法は根治的な治療法ではなく,癌は一時期寛解するが,その後再び増悪の傾向をたどるということであつた。癌の治療を行なうにあたり,予後を規制する因子を考えておかねばならない。すなわち宿主側と腫瘍側の要因である。宿主側因子としては,癌発生時の年齢,合併症の有無があり,前立腺癌は高年齢層に多発することは剖検例からも指摘されているところである2〜4)。そのため多くの症例で根治手術を行なうことができない。腫瘍側因子としては腫瘍の浸潤程度,組織学的悪性度,治療に対する癌の感受性などが考えられるが,前立腺癌は初診時より進行している症例が多く,そのために根治手術が不可能である。このように宿主側,腫瘍側の両因子からみても根治手術ができず,そのため前立腺癌の予後が悪いと考えられる。予後を左右する最も大きな因子は癌の浸潤,進行程度である。以下これについてのべてみる。

手術手技

腹膜弁を用いた膀胱腔痩閉鎖術

著者: 今村一男 ,   吉田英機

ページ範囲:P.1023 - P.1027

緒言
 膀胱腟瘻は尿が絶えず漏れ,患者の苦痛が大きいが,その治療は必ずしも容易であるとは言い難く,したがつて閉鎖術には種々の工夫が必要になるわけである。著者らは1963年から1974年までの12年間に膀胱腟瘻8例に対し瘻孔閉鎖術を施行したが,うち最近の3例には腹膜弁を用いて瘻孔閉鎖部を隔離するような方法を行ない,3例共成功したので,腹膜を用いる瘻孔閉鎖術について述べ若干の考察を行ないたいと思う。

原著

左下大静脈の1例

著者: 吉田謙一郎 ,   田利清信

ページ範囲:P.1031 - P.1034

緒言
 腎静脈分岐部より末梢側の下大静脈の発生は複雑であるにもかかわらず,臨床的にこの奇形を経験することは稀である。最近われわれはIVPにて偶然発見された腎腫瘍(Grawitz)患者について下大静脈撮影を行なつたところ腹部大動脈の左側に腹部大静脈の位置する,いわゆる左下大静脈であることを発見し,手術的にこれを確認し得たので本奇形につき多少の発生学的考察を加えてここに報告する。なおこの症例は前立腺肥大症にて尿閉となり入院した患者である。

胃癌の尿管転移—転移形式に関する一考察

著者: 村山猛男 ,   河辺香月

ページ範囲:P.1035 - P.1039

緒言
 尿管癌は一般に原発性と続発性に大別されるが,続発性尿管癌は原発性に比し発生頻度は低い。続発性尿管癌をCampbell1)は4群に分類している。そのうちいわゆる転移性尿管癌で,胃癌が原発巣である症例は本邦で36例発表されている。
 われわれは最近,胃癌で胃亜全切除術を施行した後,原発巣には再発の所見なく,はじめ左尿管へ癌が転移し,つづいて末期に右尿管へ転移した症例を経験した。本例では従来いわれているようなリンパ行性,または血行性転移が考えにくいので,自験例を加えた36例について転移形式を中心に検討を加える。

盲管重複尿管の1例—付:本邦43例の統計

著者: 川口安夫 ,   渡辺秀雄 ,   大石幸彦 ,   寺元完

ページ範囲:P.1041 - P.1047

緒言
 盲管重複尿管(Blind ending bifid ureter)は尿管奇型の中で非常に稀な疾患であり,本邦では1929年高橋1,2)の尿管憩室としての報告が最初である。著者らは9年来の再発性腎盂腎炎の患者の精査中VUR検査により盲管重複尿管を認め,治療した1例を報告し,併せて尿管憩室を含め本邦43例を集計し統計的考察を行なつた。

転移を有する小児神経芽細胞腫の手術症例

著者: 宮下厚 ,   北川龍一 ,   泉紀子 ,   沢田俊一郎

ページ範囲:P.1049 - P.1054

緒言
 神経芽細胞腫はウイルムス腫瘍とならんで小児の腹部悪性腫瘍の代表的なものでその予後は悪い。小児悪性腫瘍の全国統計では,1969〜1972年の4年間に391例が登録されている1)
 われわれは,骨髄および後腹膜リンパ節転移を有する6歳男子の神経芽細胞腫症例に対し,原発巣と考えられた左副腎腫瘍を摘除し,一時的寛解を得たので報告し,転移のある本疾患の手術療法の意義について文献的に考察した。

ブレオマイシンによる陰嚢癌の1治験例

著者: 佐々木紘一 ,   広川信 ,   廻神輝家

ページ範囲:P.1059 - P.1065

 陰嚢癌は英国で煙突掃除人に多発し,1775年,Chilnney Sweep's Cancerとして知られ,最初の職業癌である。
 時代の変遷と共に発生率は低下し,今では稀な癌となつてきている。

神奈川県立こども医療センターにおける1974年度泌尿器科の臨床統計的観察

著者: 高橋剛 ,   寺島和光

ページ範囲:P.1067 - P.1071

はじめに
 神奈川県立こども医療センター泌尿器科における1974年度(1974年4月1日〜1975年3月31日)の外来,入院患者および手術術式について統計的観察を試みたので報告する。集計にあたつては外来患者はすべて新患のみとし再来患者は含まれていない。入院患者では同一患者が同じ年度内に同一疾患で入院をくり返した場合は1例として扱い,前年度から続けて入院していたものは除外した。外来患者,入院患者統計,手術術式はそれぞれ患者数,実回数を示し,疾患分類は例数を示し患者数ではない。疾患の分類方式はInternationalClassification of Diseascs(ICD)の最新版の分類に従つた。ICD分類は泌尿器科領域では尾関ら1),福岡ら3)によつて用いられているが未だ十分に普及していない。しかし,この分類法は国際的に最も広くとりいれられつつあり,欠点もみられるが多くの有利な点があり今後本邦でも普及するものと思われる。

文献抄録

膀胱癌の術前照射後膀胱全摘症例の検討

ページ範囲:P.1034 - P.1034

 著者らは1971年に膀胱癌88症例について,その大部分の例に術前照射を施行後,膀胱摘出,回腸膀胱形成をして,その予後について報告した。この経験で膀胱乳頭腫症あるいはUICC分類でT2に属する膀胱癌では,照射後膀胱摘出しても放射線照射のみでも予後に差のないことを知つたので,その後はT3の癌症例を主体に,上記の治療法で臨床経過,予後を観察して報告している。経過観察し得た症例数は全部で131例である。術前の放射線照射方法は,腫瘍線量として計4,000radsを小骨盤腔に1日200radsとして約4週間で照射した。照射終了後1ないし2週間後に膀胱摘出と回腸膀胱形成術を施行した。リンパ節の清掃は特に行なわなかつた。著者は術前に双手診にて腫瘍浸潤度を判定し,これを照射後の摘出膀胱による組織学的検索と比較している。そして約60%の症例に照射による浸潤度の軽減が確認されたとしている。T3と臨床的に診断された33例についてみると,放射線4,000rads照射後では12例が明らかに臨床的に浸潤は軽減し,21例は不変と思われたが,摘出膀胱組織についてみると,この21例中9例は組織の線維化を癌浸潤と誤診したものであつた。すなわち33例中21例は放射線による浸潤の軽快が認められた。

Urological Letter・178

慢性前立腺炎

ページ範囲:P.1065 - P.1065

 近年前立腺炎に関する文献は抗生物質による治療問題に集中している。意識的か否かはわからないが,ドレナージの問題が論じられていない。本症の際には,細菌は含まれていることもいないこともあるが,前立腺液の貯溜が起こるので,マッサージはドレナージを良くする意味で推賞されるものと思われる。
 前立腺に炎症が起こるとドレナージが悪くなるので,泌尿器科医は正しいドレナージの必要性を十分に認識している。十分なドレナージの必要性を認識しているにもかかわらず,ドレナージの乏しい前立腺炎の治療に当たると,実際には抗生物質を大量に投与して治そうとする傾向があるように思われる。

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内国文献

ページ範囲:P.1072 - P.1073


 ○腎破裂後遺症に対する尿路材再建術,栗町 孝・他:泌尿紀要,21;(5),323,1975.
 ○B型肝炎ウイルスの感染とその対策,人工透析,鈴木好夫,三村信英:medicina,12;(11),71,1975.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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