文献詳細
原著
遊走腎の治療法の検討—特にコルセット療法と効果判定法を中心として
著者: 池田直昭1 小川由英1 東福寺英之1 川上隆2 織田孝英2 佐々木秀樹3 高山東洋3
所属機関: 1慶応義塾大学医学部泌尿器科学教室 2国立埼玉病院泌尿器科 3国立埼玉病院眼科
ページ範囲:P.193 - P.199
文献概要
遊走腎における腎固定術の適応とその方法については既に詳細に報告したごとくであるが1),症状を如何に分析してみても,それが手術の絶対適応であるか否かに迷うことはしばしば遭遇するところである。強度の疼痛2),血尿3),腎盂腎炎の反復4)などの手術的緊急性所見のない限り,本症に対して有効な保存的療法が選択し得るのならそれらを試みるに越したことはない。既に薬物療法としては蛋白同化ホルモン5,6),ペリアクチン7)などによる肥満を目的とした方法が試みられているが,腎が正常位置に固定される可能性は現実には困難なようである。本疾患のごとき力学的位置異常に起因するものは力学的療法にまつべきであることは自明ともいえよう。
従来,手術以外の方法としては,コルセットの使用がよいとされているが,その形式着用法など構造上の問題について合理性を以て紹介された例はほとんど見当らない。焦点は如何に腎の可動性を抑えるかであるが,要は本症に合併している胃腸下垂をも含めて,確実に腎固定が可能で,更に,日常生活や作業に不自由または苦痛を与えない工夫を加えることである。著者らは数年来この点を考慮しつつ改良を重ねた腎コルセットを用いているが,本コルセットの一層の向上を期して2年に1度,その症状の経過とコルセットの改良点の有無を調査している。
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