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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科29巻5号

1975年05月発行

雑誌目次

図譜・437

癒合腎の副腎スキャン

著者: 中田瑛浩 ,   遠藤博志 ,   舘野之男

ページ範囲:P.348 - P.349

 先天性の腎欠損に副腎欠損も合併することが多いと報告されている。しかし,癒合腎における副腎の存在について述べた報告は少ない。われわれは最近,S腎および馬蹄鉄腎の各1例に副腎スキャニングを施行し,それぞれほぼ正常と見做される副腎スキャン像を得たので簡単にその概要を紹介する。

図譜・438

両側尿管膣瘻

著者: 重松俊朗 ,   中川克之 ,   江藤耕作

ページ範囲:P.350 - P.351

 患者 H.C.,48歳,女性。
 初診 昭和48年11月29日。

原著

異所性骨形成のみられた発育不全腎の1例

著者: 村山鉄郎 ,   近藤猪一郎

ページ範囲:P.355 - P.360

緒言
 X線写真で腎に石灰化像をみることはわれわれ泌尿器科医は日常診療上しばしば経験することであるが,腎に異所性骨形成をみる症例に遭遇することは稀である。最近われわれは発育不全腎に見られた異所性骨形成を経験したため若干の文献的考察を加えて報告する。

補副腎皮質腺腫によるクッシング症候群の1例

著者: 小川秋實 ,   北川龍一 ,   岡田清己 ,   垣添忠生 ,   塚田修

ページ範囲:P.361 - P.365

 補副腎の腺腫によるCushing症候群は極めて稀であるが,最近その1例を経験したので報告する。

本邦最長期生存例と思われる腸管利用尿路変更手術症例

著者: 廣瀬欽次郎 ,   村橋勲 ,   今尾貞夫 ,   赤座英之 ,   瀬戸輝一 ,   市川篤二

ページ範囲:P.367 - P.370

 泌尿器科領域において,腸管利用による尿路変更手術は最近極めて般的手術として施行されつつあるが,未だその遠隔成績についての報告は少ない。
 われわれは最近著者の一人,市川1)が昭和12年にSeiffert氏小腸サイフォン膀胱手術を施行せる症例が術後35年健常な生活を送り,卵巣癌の併発により死亡せる症例を経験したので,その剖検所見ならびに利用腸管の組織学的所見につき報告する。

遺残臍動脈による下部尿管狭窄の1例

著者: 加藤哲郎 ,   森田隆 ,   藤原哲郎 ,   水野純子

ページ範囲:P.375 - P.379

緒言
 異常血管の圧迫による先天性尿管狭窄は比較的稀な疾患であり,とくに下部尿管に発生するものは極めて少数の報告例を数えるに過ぎない。最近われわれは臍動脈の絞扼による尿管狭窄のため,水腎水尿管症をきたした症例を経験したので報告する。

重複癌と考えられる原発性十二指腸癌の腎転移例

著者: 河野南雄 ,   吉田美喜子 ,   佐々木則子 ,   棚橋豊子 ,   梅津隆子 ,   織畑秀夫 ,   平山章 ,   田中幹雄 ,   赤峯俊

ページ範囲:P.381 - P.386

いとぐち
 原発性十二指腸癌は比較的稀な疾患とされる32)。われわれは盲腸癌として加療された症例で,6年後に十二指腸原発癌が右腎に直接転移をきたしたきわめて稀な1例を経験したので報告する。

Gartner’s duct cystを合併した膀胱瘤の1治験例

著者: 北村唯一 ,   福谷恵子 ,   横山正夫 ,   阿曽佳郎

ページ範囲:P.387 - P.391

緒言
 Gartner’s ductすなわちmesonephric ductの遺残物の最初の記録は,1681年,Malpighi1)による牛の子宮における管状構造物の記載にまでさかのぼるという。その後,約140年間この管状構造物について顧みる者もなかつたが,1822年,Gartner2)は牛の子宮におけるリンパ管の検索中にこの管状構造物を再発見し,vas deferensと比較検討し,発生学的見地からmesonephric duct(Wolffan duct)の遺残物であろうと推論した。これ以後,女性におけるmesonephric ductの遺残物はGartner’s ductと呼ぼれるようになつた。
 Rieder3)は,全年齢層にわたる女子40名中8名(20%)にGartner’s ductを見出しており,Gartner’s ductの存在は決して稀なものではないと考えられる。しかし,これが嚢腫化したGartner’sduct cystは比較的稀なものであり,著者らの検索によると本邦では22例が報告されているにすぎない。しかもそのほとんどが産婦人科領域からの報告であり,泌尿器科領域からの報告および検討はあまりなされていない。

泌尿器科的血管撮影におけるSubtraction法の応用

著者: 一条貞敏 ,   今村巌 ,   横山純 ,   長沢正人 ,   白岩康夫

ページ範囲:P.395 - P.399

はじめに
 レントゲン撮影におけるSubtraction法は,1953年Ziedses des Plantcsにより開発された方法であるが,オランダ語,ベルギー語などで記載されたために長らく日の目をみなかつた1)。しかし,1962年William Hanaffeeらにより英文の紹介がなされるや手技の簡単なことも加わり,急速に普及するにいたつたのである2)
 Subtraction法とは,造影剤陰影のみを残し背影の骨陰影などを消却してしまう方法である。簡単に原理を説明するならば,同一写真の陽画と陰画では黒白逆の関係にあることから,これらを重ね合せると像が消失してしまうことになる。これをレントゲン写真に応用し,前もつて撮影しておいた単純写真の陰画を造影剤注入後の陽画に重ねるのである。この操作で単純写真で撮影されていた像は消却されてしまい,造影剤陰影のみが浮き彫りにされるわけである。

排尿流力測定とその臨床的意義

著者: 後藤薫 ,   豊田尚武

ページ範囲:P.401 - P.405

緒言
 排尿状態を客観的に知ることの臨床的意義は,排尿障害患者の診断と治療効果の判定に有用な方法として多くの人に認められるようになつた。著者らは,かつてKaufman1)型のuroflowmeter(排尿流力測定器)を使用して排尿流力を測定したことがある2)。現在では,非常に精巧な装置も市販されているが,今回は,Koontzら3)の報告する簡単な装置で,かつ操作も容易なurofiowmeterを,昭和43年7月より使用してきたので,その成績の一端を報告する。

前立腺に対する凍結手術

著者: 永原篤 ,   郡健二郎 ,   長船匡男 ,   河西稔

ページ範囲:P.407 - P.413

 麻酔学の進歩により高齢者に対する手術は比較的危険も少なく行なわれるようになつたが,重篤な呼吸器合併症や循環器障害などを伴つている場合,必ずしも容易であるとはいい難い。泌尿器科領域においても高度の排尿障害あるいは尿閉を来した前立腺肥大症患者で,全身状態も悪く種種の合併症を伴つているため,従来の開腹手術やTURを行なうことが好ましくなく,やむをえずバルンカテーテルを留置するにとどめていた症例は多いものであるが,なんとか自然排尿を可能ならしめ,このような不自由な日常生活から解放させる目的で,全麻,腰麻なども必要とせず,単なる尿道粘膜麻酔下1)で,侵襲も少なくかつ簡単に操作の行なえる前立腺凍結手術をいくつかの例につき経験し,比較的良好な成績をおさめることができたので,その概略を報告する。

Flexible cystofiberscopeによる直視下細胞診

著者: 田崎寛 ,   尾関全彦 ,   古屋修

ページ範囲:P.417 - P.422

はじめに
 尿の細胞診は尿路上皮性の悪性腫瘍のスクリーニングの方法としては極めて有力な方法であるにもかかわらず臨床の実際における評価は高いとは言えない現状である。しかし,職業性膀胱癌のスクリーニングの場合には,工場衛生管理の立場から信頼できるcytotechnologistが全国的に配置されて細胞診を中心にsystemicな監視体制が整えられつつある。
 われわれは職業性膀胱癌のpotencyを持つ某染料工場の従業員約200名と一般の膀胱癌症例約150例の術後の経過観察を行なつている間に,尿細胞診の現状に多くの疑問を感じ内視鏡の直視下に細胞を採取することを考えた。

Urological Letter・171

小児の回腸尿管

ページ範囲:P.391 - P.391

 われわれは成人の回腸による尿管形成の経験は多いが,子供での回腸利用については長いこと決心がつかなかつた。しかし,最近の数例で非常に有効であると思われたし,むしろ,もつと頻回に用うべきであると考えるようになつた。
 2,3年前,筆者は両側の尿管が大人の腕ほどに太く,拡張している幼い少女を診察した。筆者はこの両側尿管を回腸片で置換した。左腎から右腎,膀胱へといつており,健康である。

文献抄録

尿意促迫症・促迫失禁に対する水力学的膀胱拡大法の効果

ページ範囲:P.405 - P.405

 尿意促迫症の原因については現在不詳であるが,Bates (1970)らは本症は利尿筋過緊張性が多くの症例に見られることを指摘している。従来本症に対して薬物療法をはじめ,膀胱の形成術,利尿筋切開術など種々な外科的療法が行なわれているが,満足し得る方法がないのが現状である。著者らはHelmstein(1966)が膀胱癌患者に対して実施した膀胱の水力学的拡大法を,本症患者20例に試みて良好な結果を得たと報告している。
 症例は促迫失禁を主訴とする患者で,泌尿器科的検査で,神経障害,尿路感染,尿路奇型などのない者で,膀胱内圧測定,尿道膀胱映画撮影にて無抑制性膀胱である症例が選ばれた。膀胱の拡張法は,高位の硬膜外麻酔下に膀胱鏡にて内景と膀胱容量を精査した後に,18F FoleyCatheterにcondomをつけHelm-stein法に準じて水圧にて膀胱を拡大する。拡張膀胱圧は患者の収縮期血圧と一致させ,拡張継続時間は30分として4回拡張を行なう。各回毎に膀胱を空虚にしてその度に膀胱容量を計測する。患者は拡張終了の翌日は退院せしめ,経過を観察した。検査結果についてみると,まず内視鏡では排尿障害の原因となる狭窄症はないにかかわらず,全例に程度の差はあつたが肉柱形成が認められた。典型的な好成績の症例では,4回の拡張時の各回容量測定にて,各回毎に膀胱容量の増大が認められている。

海外の話題

泌尿器科患者管理の指針(1)—米国泌尿器科学会より,特にわが国の現状と対比・検討して

著者: 田崎寛

ページ範囲:P.423 - P.430

はじめに
 米国泌尿器科学会(AUA:American Urological As-sociation, Inc)が1974年10月1日に発行した小冊子が,Corresponding memberである著者のところに送られて来てその内容を検討する機会を得,あわせて慶応義塾大学医学部およびその関連病院における泌尿器科の患者管理の現状を比較,検討することにした。まずこの小冊子の内容を紹介し,その特徴をpick upし,それと現行の日本での泌尿器科の患者管理を対比して述べることとする。

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内国文献

ページ範囲:P.431 - P.432


 ○人工妊娠中絶後急性溶血性腎不全を呈した3症例,玉井良胤:最新医学,30;(2),319,1975.
 ○腎と血管,浅野誠一:診と療,63;(3),61,1975.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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