文献詳細
原著
Gartner’s duct cystを合併した膀胱瘤の1治験例
著者: 北村唯一1 福谷恵子1 横山正夫1 阿曽佳郎1
所属機関: 1東京大学医学部付属病院分院泌尿器科
ページ範囲:P.387 - P.391
文献概要
Gartner’s ductすなわちmesonephric ductの遺残物の最初の記録は,1681年,Malpighi1)による牛の子宮における管状構造物の記載にまでさかのぼるという。その後,約140年間この管状構造物について顧みる者もなかつたが,1822年,Gartner2)は牛の子宮におけるリンパ管の検索中にこの管状構造物を再発見し,vas deferensと比較検討し,発生学的見地からmesonephric duct(Wolffan duct)の遺残物であろうと推論した。これ以後,女性におけるmesonephric ductの遺残物はGartner’s ductと呼ぼれるようになつた。
Rieder3)は,全年齢層にわたる女子40名中8名(20%)にGartner’s ductを見出しており,Gartner’s ductの存在は決して稀なものではないと考えられる。しかし,これが嚢腫化したGartner’sduct cystは比較的稀なものであり,著者らの検索によると本邦では22例が報告されているにすぎない。しかもそのほとんどが産婦人科領域からの報告であり,泌尿器科領域からの報告および検討はあまりなされていない。
掲載誌情報