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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科29巻9号

1975年09月発行

雑誌目次

図譜・445

急性腎盂腎炎に合併した気腫性膀胱炎

著者: 鈴木茂章

ページ範囲:P.718 - P.719

 症例 61歳,女性。
 主訴 左側腹部痛と発熱。

図譜 走査電顕図譜・3

腎(3)

著者: 野田進士 ,   河田栄人 ,   江藤耕作

ページ範囲:P.720 - P.721

 糸球体で濾過された瀘液はBowman’scapsuleにつづくproximal tubulesを通るが,尿細管で約99%近くも血液中に再吸収されるという。
 試料と方法 正常マウスをglutaraldehydeで還流固定後,試料を細切し,後固定をおこなつた。critical point法にて乾燥,Au-pdを蒸着しHFS−2型で観察した。

綜説

膀胱腫瘍における進行癌の治療と予後

著者: 横川正之 ,   三谷玄悟 ,   大和田文雄 ,   福井巌 ,   和久井守 ,   山田喬

ページ範囲:P.725 - P.734

まえがき
 日本では膀胱腫瘍は泌尿器科が扱う腫瘍のうち最も頻度が高いが,その治療方針に関する問題は古くからのそして常に新しい問題として繰り返し提起されている。Jewett H.J.(1968)1)は,膀胱癌治療の目的は癌細胞をすべてとり除き,できれば使える膀胱を残すことであると表現した。まことに名言というほかはないが,この表現では言外に2つの問題点を的確ににおわせている。第1は癌細胞をすべて取り除くためにはできるだけ強力な治療を行なうべきであるが,治療がradicalになるほど生存率はpoorであり,尿流変向でurolo-gical crippleをつくるというジレンマである。そして第2は同じ膀胱腫瘍といつてもその「悪さ」は実にさまざまであつて,その種類分けをしないと,その必要もないのに膀胱全摘をするというようなovertreatmentの過ちと,逆に悪さを過少評価して治療したためその後の進展に泣くというundertreatmentの過ちをおかすことになるが2),この悪さの評価というものが実は大変な難問である。そこで以下には,まず膀胱腫瘍一般の治療上の問題を集約したうえで,このうち最も治療の困難な進行癌についてその概念と治療方針のたてかたなどについて考察してみたい。

文献抄録

腎癌転移症例の腎摘の延命効果について

ページ範囲:P.734 - P.734

 腎癌で転移を証明されている場合に腎摘が適当か否かについては現在なお議論のあるところである。実際に腎癌の肺転移が腎摘により軽快消失した例がしばしば報告されているが,組織学的検索がなされていないのが普通である。また転移のある際の腎摘は,患者の臨床症状の軽減,術後の薬物療法を施行しやすくすることは確かである。著者らは1968年より1973年の間に93例の転移を認めた腎癌を経験し,43例に腎摘を施行,50例は腎摘せずに臨床経過を観察してその延命効果について考察している。症例は男性70名,女性23名である。年齢は23歳から77歳の間で,腎摘群の平均年齢54.3歳非腎摘群は54.8歳である。転移巣については,肺転移のみ44例,骨転移のみ27例,肺・骨転移合併は12例,残りのものは7例がリンパ節,その他の臓器・組織の転移例となつている。
 以上の患者について生存平均月数をみると,腎摘群では11.3月で非腎摘群では7.9月となる。両群を加えた全体の平均は9.5月となる。骨転移のみを呈した症例群についてみると,腎摘群では平均生存月数は16.1月で,非腎摘では10.6月となり,明らかに腎摘群の延命効果が認められる。しかし,肺その他軟部組織転移群についてみると,腎摘群では平均7.9月で非腎摘群は平均5.4月とその差は極めて少ない。

症例検討

右側腹部有痛性腫瘤の診断をめぐつて—第5回東大分院泌尿器科臨床検討会より,1975年5月9日,於東大分院臨床講堂

著者: 横山正夫 ,   岩動孝一郎 ,   東京大学医学部泌尿器科教室

ページ範囲:P.735 - P.741

 司会 それではカンファランスをはじめます。阿曽助教授米国出張中のため私が司会をいたします。最初に術前の腹部腫瘤の症例を受持の中村君より提示していただきます。
 中村昌平(分院助手) 症例は61歳の男子で,当科受診の主訴は右睾丸の疼痛と腫脹です。しかし,よく話しをきいてみると血尿,右側腹部痛があつたという症例です。既往歴,家族歴に特記すべきことはありませんが,兄弟に肺結核で死亡した方が多いそうです。これまで大きな病気を知らず元気に働いていた方ですが,49年11月に肉眼的血尿が1回あり,頻尿,排尿痛もありました。その後間もなく右睾丸にふれると痛みを感じ,しだいに大きくなつてきた,といいます。これは初診時には鶏卵大になつていました。近くの診療所を受診し,泌尿器科受診をすすめられたのですが放置していたところ,今年の3月になつて血尿が1回だけありました。その後,飲酒した際,右下腹部が痛くて歩けないということもあつたそうです。1975年4月18日当科初診で,主訴は陰嚢内容の腫脹ですが,理学的所見で腹部に腫瘤を触知しましたので,IVP,DIPなどが行なわれ,右の水腎症は間違いなくあるだろうということで5月1日に入院しました。

原著

Local Thermodilution Methodによる腎静脈血流量の測定

著者: 坂田安之輔 ,   佐藤昭太郎 ,   田村康二 ,   坂内省五

ページ範囲:P.745 - P.750

はじめに
 数ある腎血流量測定方法の中で,制約の多い臨床検査に応用できるものには,Fick principleに基づく方法(excretion methodおよびgas diffusiontechnique)と,Stewart-Hamilton principleに基づくdye-dilution methodおよび著者らの行なつているlocal thermodilution methodなどを挙げることができる。いずれの手技をとつても一長一短があることに留意して,目的に応じてそれぞれを活用すべきである。Thermodilution methodは,Fegler(1954)1)の創始になるもので,Fronek andGanz(1960)2)はそれをlocal thcrmodilution methodとして更に発展させ,血管内での血流量測定を可能にした。その後,心拍出量3),冠状血管4),脳循環5)の測定に用いられて,信頼できる結果が得られている。著者らは,腎血流量測定手技にこのlocal thermodilution methodを採用し,その結果,容易な操作で,短時間に測定できる好成績を得て報告して来た6,7)。この論文では,本法の原理と手技を,症例提示と共に紹介し,その特質を述べて行くものである。

外傷により発見された水腎症の2例

著者: 佐藤安男 ,   岡田清己 ,   滝本至得 ,   北島清彰 ,   清水伸一

ページ範囲:P.751 - P.755

緒言
 腹部外傷中に占める腎外傷の頻度は高い。特に病的腎に及ぼす外力はたとえ軽微であつても容易に腎損傷の発症をみるに至り,かつ症状は重篤となるため,その診断はより一層重要となる。われわれは最近2例の水腎症に合併した腎外傷を経験したので,若干の考察を加え報告する。

原発性アルドステロン症の2例

著者: 安藤裕 ,   寺尾暎治 ,   長谷川進 ,   山崎巌

ページ範囲:P.757 - P.762

緒言
 1955年,Conn1)が原発性アルドステロン症の第1例を報告して以来,わが国においても数多くの症例が発見されている。本症はそれほど稀な疾患ではないが,なかには定型例と異なり,高血圧以外の症状をまつたく伴わない正常K血症性原発性アルドステロン症5)や,また逆に本症の特有な症状を示しながら,副腎に腺腫が発見されない症例も数多く報告されている。これらの事実から本症の病態生理および鑑別診断のむずかしさがうかがわれる。今回は自験2症例を報告するとともに副腎腫瘍の局在診断法について述べる。

膀胱と乳腺の重複癌の1例

著者: 鈴木茂章 ,   加藤次朗 ,   片岡誠 ,   小林俊三 ,   三浦格

ページ範囲:P.767 - P.770

緒言
 最近,われわれは比較的稀な組合せである膀胱と乳腺の1例を経験し,若干の文献的考察を行なつたので報告する。

慢性前立腺炎の臨床的検討—分離菌を中心として

著者: 大川光央 ,   島村正喜 ,   中下英之助 ,   三崎俊光 ,   宮崎公臣 ,   黒田恭一

ページ範囲:P.771 - P.776

緒言
 慢性前立腺炎は泌尿器科外来でしばしば遭遇する一般的な疾患である。しかしながら,その診断基準にはあいまいな部分が多く,また急性前立腺炎の化学療法の効果に比ししばしば化学療法抵抗性である。われわれは臨床的に慢性前立腺炎と診断し,かつ分離菌の得られた72症例およびStameyの方法に準じた分尿試験を施行した31症例の計103症例について分離菌を中心に臨床的検討を行なつたのでその成績を報告する。

血尿の臨床統計

著者: 草場泰之 ,   広瀬建

ページ範囲:P.777 - P.779

緒言
 1967〜1972年の5年間に長崎大学医学部泌尿器科を受診し,初診時の尿検査で1視野に5個以上の赤血球を認めた症例について調査をおこなつた。

排尿失神(Micturition Syncope)の3例

著者: 大沼徹太郎 ,   原田忠 ,   今林健一

ページ範囲:P.781 - P.789

緒言
 排尿中または排尿直後に失神発作をおこす症例のあることは1946年にRugg-Gunn1)によつてはじめて報告されたが,排尿失神MicturitionSyncopeと呼ばれるこの発作は,その後いくつかの臨床例で報告3〜15,18〜24)され,わが国でも1965年小原2)が報告して以来数10例の報告16,17,25〜31)がなされている。しかし,その発生機序や病態についての検討は十分でなく,治療法も確立されているとはいえない。
 最近われわれは本症の3例を経験したので,多少の文献的考察を加えて報告する。

Urological Letter・175

泌尿器科用救急セット

ページ範囲:P.762 - P.762

 病院には泌尿器科用機器を豊富に揃えた救急セットをトレイかカートに入れて備えておくべきである。看護士(orderly)か他の職員が行なつた応急処置後に起こつた急性尿閉患者にカテーテリスムスをやらねばならないことは最も不幸なことである。もしも上記の特別セットが整備されていなければ,泌尿器科医は必要な機器ないし注文通りの大きさのものを手に取れるまでにどの位待たねばならないか分らない。病院の職員が泌尿器科のような専門の機器が何処においてあるかを知らないことはそう稀ではない。われわれの病院では赤い大バケツを使つている。これはプラスチックの赤い大バケツで膀胱鏡室に置いてある。そしてどんな真夜中の緊急事態にでも必要なあらゆる機械機具が揃つている。このバケツの外側には中の機器の名を書いた表が貼つてある。使つた機器は翌日補充しておく。泌尿器科医が病室あるいは救急外来にいるときにはこのバケツもそのそばにおかれる。
 機器のリストは以下の通りである。

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内国文献

ページ範囲:P.790 - P.791


 ○近位尿細管におけるナトリウム再吸取の機序,田所昌 夫:代謝,12;(6),3,1975.
 ○尿表面張力と水再吸収,岩淵 勉:代謝,12;(6), 17, 1975.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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