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綜説
膀胱腫瘍における進行癌の治療と予後
著者: 横川正之1 三谷玄悟1 大和田文雄1 福井巌1 和久井守1 山田喬2
所属機関: 1東京医科歯科大学泌尿器科学教室 2独協医科大学第1病理学教室
ページ範囲:P.725 - P.734
文献購入ページに移動日本では膀胱腫瘍は泌尿器科が扱う腫瘍のうち最も頻度が高いが,その治療方針に関する問題は古くからのそして常に新しい問題として繰り返し提起されている。Jewett H.J.(1968)1)は,膀胱癌治療の目的は癌細胞をすべてとり除き,できれば使える膀胱を残すことであると表現した。まことに名言というほかはないが,この表現では言外に2つの問題点を的確ににおわせている。第1は癌細胞をすべて取り除くためにはできるだけ強力な治療を行なうべきであるが,治療がradicalになるほど生存率はpoorであり,尿流変向でurolo-gical crippleをつくるというジレンマである。そして第2は同じ膀胱腫瘍といつてもその「悪さ」は実にさまざまであつて,その種類分けをしないと,その必要もないのに膀胱全摘をするというようなovertreatmentの過ちと,逆に悪さを過少評価して治療したためその後の進展に泣くというundertreatmentの過ちをおかすことになるが2),この悪さの評価というものが実は大変な難問である。そこで以下には,まず膀胱腫瘍一般の治療上の問題を集約したうえで,このうち最も治療の困難な進行癌についてその概念と治療方針のたてかたなどについて考察してみたい。
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