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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科30巻10号

1976年10月発行

綜説

腎生理学最近の動向

著者: 藤本守1

所属機関: 1大阪医科大学生理学教室

ページ範囲:P.819 - P.830

文献概要

はじめに
 腎生理学の現況を通覧すると,今世紀前半に築かれた大綱が細部についていろいろ修正されつつあると言える。腎尿細管の構築の詳細の解明と相俟つて,この部の物質輸送の考え方は少なくとも質的にみて大幅な改革が余儀なくされている。研究法も進歩した。特に最近のように,たとえば尿細管の機能の研究の主力がかつてのクリアランス法のようなマクロ的方法から微小穿刺法のようなミクロ的な方法に移りかわつて来ると,勢いあまり細かい所見のみが強調され過ぎ,その全体との関連がとりにくく,一般医学者はやや当惑気味であることは否定できない。たしかに方法論的開発力としては電顕とか微小穿刺法は光顕やクリアランス手法などに比し優れた面もある。しかし,微小技術はあくまでも微小で,全体を推しはかるには余程の注意が必要である。微小手技は誤差を伴いやすく,所見もまちまちで実験者の先入観にとらわれがちである。客観的にはこれらは玉石混交で,判定する側の"良識"を必要とする所以である。それらがもたらす知見は一般を納得させるに十分の証拠ができるだけ多数あることが必要で,研究者は少なくとも古今の他の方法による所見との異同に隠当な決着をつける努力を惜しむべきでない。たとえば臨床医家はその独自の判断があつて然りで,その判断と最近おびただしくふえた微細知見のまちまちのものを何とか無難に結びつけ,その"良識"の培養に配慮されるよう期待したい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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