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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科30巻11号

1976年11月発行

雑誌目次

綜説

超音波検査法の意義

著者: 渡辺泱

ページ範囲:P.911 - P.922

はじめに
 編集部から表題のようなテーマの執筆を依頼されたが,これだけではいつたいどういう意義について述べたらよいのか,もうひとつはつきりしない。いろいろ考えたが,私も超音波の世界に足を踏みいれてからそろそろ足かけ10年になるので,超音波検査が工学や医学の分野の中で実際のところどういう地位を占めているのか,またどういう方向に進まねばならないのか,などという問題について私なりの感想や意見をもつようになつた。もちろん私の専攻は超音波検査の泌尿器科的応用に限られているから,今までこういう広い主題について書いたことは一度もないが,ちようどよい機会なので,この際ある程度主観的な感想や意見を述べてみるのも意義のないことではないと思いたつた。
 話の都合上,どうしても先に超音波検査の概要について説明しておかなければならないし,本誌は泌尿器科の専門誌であるから,とくに超音波検査の泌尿器科的応用についても強調しなければならない。それでこのような木に竹をついだような構成となつたが,それぞれの章を独立してお読みいただいても理解できるように留意したつもりなので,何とぞ御容赦願いたいと思う。

原著

組織型にみる泌尿生殖器悪性腫瘍の転移—(I)腎腫瘍,腎盂腫瘍の剖検例での検討

著者: 秋元成太 ,   矢崎恒忠 ,   金森幸男 ,   西川源一郎 ,   吉田和弘 ,   川井博

ページ範囲:P.925 - P.928

緒言
 泌尿器科領域における悪性腫瘍の転移については,欧米ではもちろんわが国においても多くの報告がなされている。とくに剖検例の追究結果もしばしばみられる1〜2)
 われわれも,自験例につき悪性腫瘍の組織型と転移部位との関連について,自験例につき剖検例で検討できる機会をもつたので,過去5年間の日本病理剖検輯報による報告と対比させ,統計的観察をおこなつたので報告する。今回は,腎腫瘍と腎盂腫瘍につき検討した。

腎静脈カテーテル法による分腎機能検査法—腎静脈血流量測定を基礎として

著者: 坂田安之輔 ,   青島茂雄 ,   平岩三雄 ,   入倉英雄 ,   佐藤昭太郎 ,   田村康二 ,   坂内省五 ,   浜斉

ページ範囲:P.929 - P.934

はじめに
 腎静脈カテーテル法の臨床への導入は,ヒト腎臓における種々の指示薬の除去率,あるいは酸素消費率の測定を可能とし,本邦においては,上田ら(1954)1),井上ら(1954)2〜4)による優れた業績が発表された。特に,分腎機能を把握する必要のある外科的疾患腎において腎機能を最も精緻に表現し得る意義は大きく,また,分腎クリアランス法と併用して一側腎の総血流量を知ることも可能となつた。その後,カテーテル器材の進歩,Seldinger針の使用によつて,股静脈から上行性に腎静脈へ挿入する簡易な手技が開発され,さらに近年は,腎静脈血中のレニン活性濃度を比較することによつて,外科的腎性高血圧症の手術適応の判定が行なわれるようになつた結果,腎静脈カテーテル法の適応範囲が一層拡げられて来ている。しかしながら,腎を介して尿中へ除去される,あるいは血中へ放出される物質の絶対量をみるためには,腎血流量を簡易に,かつ高い再現性で測定する手技が必要とされるが,従来,この点が臨床検査上の隘路となつていた感がある。
 最近,著者らは主として循環器科領域で,心拍出量の測定,冠状静脈洞の血流量測定に用いられている局所熱希釈法を腎静脈へ応用し,腎静脈血流量を測定すると共に腎静脈血の分析を行ない,併せて腎機能を評価しようと試みて来た。

脊髄損傷者の尿道皮膚瘻

著者: 石堂哲郎 ,   増田聡子 ,   宮崎一興

ページ範囲:P.935 - P.940

はじめに
 脊髄損傷患者の急性期尿路管理法としては無菌間歇導尿法が良い方法であるとされている1,2)。しかし,この方法が一般に普及して広く行なわれている訳ではなく,慢性期を含めて,尿道への無雑作なカテーテル留置が多く行なわれているのが現状である。われわれはこの無雑作なカテーテルの尿道留置による尿道皮膚瘻・尿道憩室など尿道の合併症に遭遇し,その治療に苦労させられている。われわれは現在まで約8年間に23例の脊髄損傷者に発生した尿道皮膚瘻を経験した。これらについて,その成因,診断,予防法,治療法などについて検討する。

文献抄録

潜在性前立腺癌48例の10年の予後

ページ範囲:P.940 - P.940

 前立腺の潜在癌の予後は良好ということで姑息的治療で経過を見るのが普通である。著者らの症例は肥大腺腫摘除あるいは経尿道的切除の組織について発見されたもので,治療前には臨床的に癌と診断されなかつた症例のみである。
 1960年より1965年の間に67例の潜在癌を経験したが,癌と診断されて根治手術を施行したり,follow upできなかつた19例を除いた48例について最長13年間の経過について観察した。

症例

腎生検後に生じた腎動静脈瘻の自然治癒の1例

著者: 岩崎晧 ,   岩本晃明 ,   石塚栄一 ,   日台英雄

ページ範囲:P.945 - P.948

緒言
 腎疾患の診断における腎生検の有用性は論を待たない。同時に血管撮影の普及も目覚しいものがある。それ故,近年になつて腎生検後の合併症の1つとして腎動静脈瘻に関する報告に多く接するようになつた。われわれは腎生検後の血管撮影にて偶然発見された腎動静脈瘻が,幸いにも経過観察中に自然治癒した症例を経験したのでここに報告する。

右腰部打撲による左先天性水腎症の腎外傷

著者: 小寺重行 ,   町田豊平 ,   三木誠 ,   大石幸彦 ,   荒井由和 ,   高坂哲

ページ範囲:P.949 - P.953

緒言
 病的腎は正常腎に比し,腎外傷を起こしやすいことはすでに多くの指摘があり,水腎症に腎外傷を発症した例は,本邦でも過去三十数例の報告がみられる。最近われわれは先天性水腎症に腎外傷を起こした症例を経験したが,その直接原因は患側腎の反対側腰部打撲によるものであつた。このような例は本邦文献上まだ報告を見ないようであり,本症例の起始および経過について報告するとともに,本邦における水腎症に発生した腎外傷の統計的検討を加える。

先天性腎動静脈瘻の1症例

著者: 松下昌人 ,   杉田篤生 ,   小津堅輔 ,   岡村知彦 ,   星宣次 ,   川村俊三

ページ範囲:P.955 - P.959

緒言
 腎動脈造影法の普及に伴い,腎動静脈瘻の報告はここ数年来ふえつつある。われわれは腎動脈造影像と病理組織像にて特徴ある所見がみられたcongenital arteriovenous malformationの1例を経験したので報告する。

停留睾丸に合併した睾丸回転症の1例—付:本邦症例35例の集計

著者: 青島茂雄

ページ範囲:P.961 - P.964

緒言
 近年,睾丸回転症の報告は稀なものではなくなつたが,本症が早期に診断され,睾丸を保存できた例は未だに多いとは言えない。一方,本症の成因としては精系,特に睾丸,副睾丸周囲の解剖学的異常が重要視されており,停留睾丸もその重要な部分を占めている。最近,著者は停留睾丸に合併した睾丸回転症の1例を経験したので報告するとともに,本邦における停留睾丸に合併した睾丸回転症を集計したので,若干の考察を行なう。

External corporosaphenous shuntを施行した陰茎持続勃起症の1例

著者: 西沢理 ,   三浦邦夫 ,   山口修 ,   土田正義

ページ範囲:P.967 - P.970

はじめに
 陰茎持続勃起症は必ずしもまれな疾患ではないが,治療法が確立されていない現在本症に遭遇して戸惑うことが多いのではないかと思われる。近年本症に対し静脈副血行路造設法としてGrayhackら1)の陰茎海綿体大伏在静脈吻合法やQuackels2)の陰茎海綿体尿道海綿体吻合法が行なわれているが,術後しばしばimpotenceを来すという欠点がある。ところが1975年Ten Cateら3)は静脈副血行路造設法の一方法としてexternal corporovenousshuntを発表しているが,本法は上記二方法に比較して手技が簡単であり施行例のすべてにimpo-tenceの発生をみなかつたことなどから優れた治療法と思われる。今回,私たちは特発性陰茎持続勃起症と思われる1例にこのexternal corporo-venous shuntを追試する機会を得たので二,三の検討を加え報告する。

尿浸潤の4例と本症の本邦26例の統計的観察

著者: 石塚栄一 ,   福島修司 ,   岩本晃明

ページ範囲:P.971 - P.974

緒言
 尿浸潤は,サルフア剤の発見以前には死亡率が50%にも達する治療の困難な疾患であつた1)。化学療法の発達により尿浸潤の発生率や死亡率は著明に減少し2),本症を経験することも少なくなつた。しかし,化学療法の進歩した現在においても,尿浸潤を放置すれば尿浸潤の広範囲な拡大や壊疽を生じ,さらに敗血症まで起こすおそれのある疾患である。
 われわれは横浜市立市民病院において本症の4例を経験したので報告し,1946年1月から1975年12月までの30年間において,われわれが集め得た本邦報告例22例3〜19)に自験例4例を加えて26例について統計的観察を試みた。

睾丸類表皮嚢腫の1例と本邦症例の文献的考察

著者: 中村昌平 ,   横山正夫 ,   阿曽佳郎

ページ範囲:P.975 - P.978

緒言
 睾丸の良性腫瘍は稀で,睾丸腫瘍の2〜4%を占めるのみで,他は悪性である1)。睾丸の良性腫瘍としては被膜性線維腫,神経線維腫,海綿状血管腫,類皮嚢腫,類表皮嚢腫,間質細胞性腫瘍などが知られている2)
 一方,類表皮嚢腫は四肢末端などの皮下,脳,骨,筋肉,卵巣などに比較的しばしば認められる良性腫瘍である3)。しかし,睾丸内の発生は稀で,睾丸腫瘍の約1.2%4)であるという。睾丸腫瘍の発生率は人口10万に対し2.1〜2.35)であるから,睾丸類表皮嚢腫の発生率は人口10万に対し0.025〜0.028と推定される。

Urological Letter・192

膀胱や前立腺からの出血に内腸骨動脈結紮は有効か

ページ範囲:P.953 - P.953

 前立腺手術後の出血を止めるのに両側内腸骨動脈の結紮が良いとしばしば唱道されてきているし,前立腺出血の止血に対する両側内腸骨動脈結紮の効果についての文献も数多く出されている。
 しかし,この方法の価値は少し過大評価されているように思われるし,この止血効果には限界がある。

小さな工夫

骨盤動脈撮影法(エラスター針を用いる簡便法)

著者: 酒本貞昭

ページ範囲:P.965 - P.965

 骨盤動脈撮影は膀胱腫瘍の浸潤度診断に重要な検査法の一つであり,これまでにも多数の報告がみられるが,ほとんどが経腰的大動脈穿刺による方法か,Seldinger法によりカテーテルを総腸骨動脈分岐部あるいは内腸骨動脈内に挿入後造影剤を注入し撮影する順向性撮影法である。最近われわれの教室ではエラスター針を用い,大腿動脈穿刺による逆行性の骨盤動脈撮影を行なつているが,従来の方法に比し簡便であり,解像力も劣らないので,その方法を紹介する。
 方法 コントラストをつけ,膀胱,腫瘍,動脈などの位置的関係をわかりやすくするためあらかじめ膀胱内に空気を100ml注入し,腫瘍基部が接線方向となるような体位をとらせておく。

交見室

前立腺癌の治療方針,他

著者: 秋元成太

ページ範囲:P.979 - P.979

 前立腺癌の治療方針決定に際して,われわれ泌尿器科臨床医として迷うことがある。来年の日泌総会のシンポジウムにとりあげられており,いろいろな観点より,問題点が指摘され解明される部分もあると思う。
 ここでとくに疑問に感じているのは,前立腺摘除術施行後,摘出前立腺内に潜在癌をみい出したあとの治療方針についてである。最近の多くの報告では,とくに治療の必要なしとされているようであるが,しかし,潜在癌の組織像については,criteriaがあきらかでないためのさまざまな問題が山積しているようにみえる。以前に当教室において追究した(日泌尿会誌,58;783〜841,1967)ときと同じ疑問がいまだに残つている。それはさておき,具体的な例として,摘出前立腺内に,あきらかな潜在癌(組織像の検索で,分化型および未分型を含めて)があり,それが外科的被膜にまでおよび,いわゆる「とりのこし」があると考えられる症例についてである。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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