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症例
下大静脈切除を行なつた腎癌摘出術の1例
著者: 野口和美1 宮井啓国1 日台英雄1
所属機関: 1横浜市立大学医学部泌尿器科学教室
ページ範囲:P.407 - P.411
文献購入ページに移動腎癌においては,血尿,疼痛,腫瘤が三大症状と言われ,腫瘍は腎実質内でも皮質あるいは腎表面へ向かつてまず拡大し,腎周囲へと拡がつていき,腎盂内に進展破壊し,血尿として患者が気づくのは相当進行してからであり,病理学的には進行期または末期と言える1)。このため発見が遅れ,この時期には腫瘍が腎静脈,さらには下大静脈中に腫瘍血栓として発育していることがまれでない。この頻度はMarshallらによれば6%2),Svaneによれぽ9.5%3)と言われる。このような症例においては,腫瘍および腫瘍血栓を取り除くために,下大静脈を切除する必要を生じることがある。われわれは遠隔転移のある症例ではあるが,高度かつ持続的血尿のため生命の危険のある症例で,右腎癌摘除術の際に,腫瘍血栓の充満した下大静脈切除を行ない高度血尿を止血し得たのでこれを報告するとともに,手術適応に関して若干の考察を加える。
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