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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科30巻9号

1976年09月発行

雑誌目次

綜説

腫瘍の免疫療法

著者: 折田薫三

ページ範囲:P.731 - P.741

 泌尿器科領域の癌にも免疫療法が有効であろうか。一外科医の私にとつては極めて難解な設問であるが,昨年岡山で開かれた,新島教授主催の日本泌尿器科学会でお話しさせていただいた続きとして,蛮勇を奮つて広く癌と免疫の立場から記述したい。FoleyやKlein,本邦では武田勝男教授らにより発癌性化合物による誘発癌にまず腫瘍特異抗原が証明され,1970年までにはほぼすべての動物癌には宿主には無い腫瘍特異移植抗原(TSTA)あるいは腫瘍関連抗原(TSA)がその膜面上にあることが明らかとされた。発癌性化合物での誘発癌は個性が強く,同一化合物で同系動物に誘発させた同一の組織型をもつた腫瘍でも,それぞれ別個のTSTAをもち,共通のTSTASやTSAをもつものは稀れである。腫瘍性ウィルスによる腫瘍には,系統や種をこえてウイルスに共通の安定した共通抗原のあることが知られている。しかも,担癌宿主は主としてT—リンパ球を通じてTSTAを認識し,たとえ腫瘍が増殖状態にあつても,ある時期には宿主の免疫リンパ球が自己の腫瘍に拒絶作用(抗腫瘍性)に働き腫瘍の増殖を抑えている。これがいわゆる共存あるいは随伴免疫concomitant immunityである。1970年以降人癌においても数多くの腫瘍に共存免疫のあることが明らかとされている。しかも多くの人癌では同一組織型をもつものの間では共通抗原のあることが知られている1〜3)

症例検討

結核との鑑別が問題となつた腎盂腫瘍—腎盂腫瘍のX線像について

著者: 阿曽佳郎 ,   東京大学医学部泌尿器科学教室員 ,   東京大学医学部泌尿器科学教室先輩有志

ページ範囲:P.745 - P.750

 阿曽 症例は肉眼的血尿と右側の下腹部痛を主訴としてきた患者さんです。現症,検査成績などは別表を参照して下さい。発熱はありましたか?
 藤目(分院助手) ありませんでした。

文献抄録

両側性腎癌の同時外科的治療について

ページ範囲:P.750 - P.750

 両側性に同時に腎癌のみられる症例は比較的少なく,Small (1968)は自験例と共に17例を報告している。このような症例の外科的処置については,腎移植が行なわれるようになつて諸家の意見はいろいろあるが,著者は両側性腎癌2例を術前に診断して,同時に部分切除を施行して有効であつたので報告している。
 第1例は60歳白人男子で間歇的血尿を主訴に入院,排泄性腎盂撮影,腎動脈撮影で左上極と右腎中腎杯に腫瘍陰影の存在を確認。胸部撮影,血液化学的所見などでは転移・異常を認めない。

原著

X線TV応用による腎生検法—付:TRU-CUT針の応用

著者: 豊嶋穆 ,   和久正良

ページ範囲:P.753 - P.757

はじめに
 腎生検の価値は,腎組織を直接確認できることにある。そして,その手技は多くの方法が試みられ,合併症などの問題を含めてそれぞれ長所と短所がみられる。著者らは,最近臨床に応用されてきているX線TV透視下法にTRU-CUT針を利用することが多く,その結果に東大分院泌尿器科症例,自衛隊中央病院症例を加えて検討してみた。

核種併用シンチグラフィーによる後腹膜腫瘤の診断法

著者: 根本良介 ,   加藤哲郎

ページ範囲:P.759 - P.763

はじめに
 排泄性腎盂撮影像で片側腎が下方に変位している場合は腎上部の後腹膜腫瘍や肝腫あるいは脾腫などの病変が疑われる。従来はこのような症例の鑑別診断法として血管撮影法,後腹膜送気法,断層撮影などが用いられてきたが近年著しい発展をとげているscintigraphyを応用することも可能である。すなわち2種類の核種を併用して近接臓器の位置関係から種々の病変を診断すること(com-bined scintigraphy)や,コンピューター処理により画像を鮮明化したり,目的とする臓器だけを抽出すること(subtraction scintigraphy)ができる。
 われわれはcombined scintigraphyとsubtractionscintigraphyを組み合わせる方法により後腹膜腫瘍をはじめとする腎上部の病変を鑑別診断することを試み,興味ある知見を得たのでまだ症例数は少ないがその成績を報告し大方の批判を仰ぎたい。

膀胱癌における尿細胞診の検討

著者: 沼沢和夫 ,   川村俊三 ,   鈴木騏一 ,   今井克忠 ,   杉田篤生

ページ範囲:P.765 - P.769

緒言
 膀胱腫瘍の診断法としては内視鏡的検査が診断の確実性,簡便性からその主役をなしていることはいうまでもないが,この他に種々の補助的診断法がみられる。その一つとして尿細胞診があるが,とくに本法は職業性膀胱癌のスクリーニングや,術後の経過観察,あるいは内視鏡的に診断のつかないca.in situの診断に有効であることが認められている。東北大学泌尿器科学教室においては,1971年より尿路腫瘍に対して尿細胞診を行なつてきているが,今回膀胱腫瘍例における尿細胞診の成績を組織像と対比観察し,その有効性について検討してみたので報告する。

Urological Letter

慢性精嚢腺炎のデカドロン療法/感染性尿道周囲瘻孔の診断と治療

ページ範囲:P.757 - P.757

 泌尿器科での困難な問題の一つは慢性精嚢腺炎の症候群である。鼠径部,下肢および下腹部の何ともいえない痛みや射精時におこる痛みなどは通常非特異性機能的疾患のためとされている。
 診断は精嚢腺のX線像に現われた変化によつてつけられる。在来の治療法は抗生物質,坐浴および前立腺マッサージなどである。しかし,それらの治療にも反応しない例がある。尿および前立腺分泌物は無菌であつて,しかもその所見とはうらはらに症状が出ている例がある。本症の外科的治療法は精嚢腺の大がかりな手術ということになる。しばしば合併症も起こる。こうしてみてくるとむしろ消極的に治療する方が良いようである。次に保存的に治療した4症例を紹介しよう。

症例

黄色肉芽腫性腎盂腎炎の1例

著者: 板谷興治 ,   向永光 ,   北川正信

ページ範囲:P.773 - P.777

緒言
 Xanthogranulomatous pyelonephritis(黄色肉芽腫性腎盂腎炎)は慢性腎盂腎炎の一特殊型とみなされているが,その形態学的特色であるxanthomacellの由来についてはなお明らかではない。われわれは本症の1例を経験し,そこにみられた泡沫細胞の脂肪の化学的分析と電子顕微鏡的観察を行なつたので報告する。

巨大腎結石症の1例

著者: 姉崎衛 ,   峰山浩忠 ,   阿部礼男

ページ範囲:P.779 - P.782

はじめに
 腎珊瑚状結石は尿路X線検査を日常行なつているわれわれ泌尿器科医にとつては必ずしもめずらしいものではないが,最近,われわれは本邦文献上最大と思われる巨大な腎結石に遭遇した。この結石の摘出に成功したので,ここに症例を紹介する。

完全重複腎盂尿管を伴う小児尿管瘤の1例

著者: 高田耕 ,   小倉裕幸 ,   山田行夫 ,   伊藤幸夫 ,   久保隆

ページ範囲:P.783 - P.786

緒言
 尿管瘤は先天的に尿管下端部が嚢腫状に拡張して膀胱内に突出したものであり,1834年Lechler1)が,剖検例で認めて以来,本邦においても1923年尾形9)の報告を初めとして多数の報告例がみられている。われわれは最近,完全重複腎盂尿管を伴つた2歳男子の1症例を経験したので,これに若干の文献的考察を加えて報告する。

盲管重複尿管の1例

著者: 久島貞一 ,   稲田文衛 ,   小柳知彦

ページ範囲:P.787 - P.790

緒言
 盲管重複尿管(blind ending bifid ureter)は従来極めて稀な尿管奇形とされている。最近われわれは膀胱尿管逆流を合併した女児症例を経験治療したので報告し,併せて若干の考察を加えてみた。

成人女子の膀胱外反症2例

著者: 高安久雄 ,   小川秋実 ,   北川龍一 ,   小磯謙吉 ,   村山猛男

ページ範囲:P.791 - P.794

緒言
 小児の泌尿器奇型の膀胱外反症は比較的稀な疾患であるが,他臓器奇型を合併することが多く,また尿路感染を起こしやすいことが原因で,予後は必ずしも良くない。最近われわれは26歳と25歳の女子の膀胱外反症2例を経験し,手術的治療を施行したので報告する。

排尿障害を主訴とした処女膜閉鎖症の2例

著者: 永田一夫 ,   多嘉良稔

ページ範囲:P.795 - P.798

緒言
 年少女子における排尿障害の原因の一つとして,まれではあるが処女膜閉鎖症があげられる。本症は婦人科領域の疾患でありながら,Calvin1)Cook2)らによると,その60%近くに尿路症状が認められている。最近,著者らは排尿障害を主訴とした2例の処女膜閉鎖症を経験したので報告する。

統計

小児病院における尿路感染症の統計的観察

著者: 高橋剛 ,   寺島和光

ページ範囲:P.799 - P.802

はじめに
 小児の尿路感染症は呼吸器感染についで頻度が高いにもかかわらず1,2),その病像は正確に認識されているとは言い難い。また本症は泌尿器科医,小児科医によつてあつかわれることが多いが,診断,治療に関して原則的統一がなく,その治癒,予後は満足すべきものとなつていない3)。本症には器質的異常をもつ基礎疾患が多いことは従来よりいわれているが3〜5),その発見は意外と難しく,それを見逃して漫然と薬物療法を行なつていると不可逆的腎病変をきたし後悔すべき結果となる。日本における小児病院の歴史は比較的浅く,小児泌尿器科は未だ黎明期にあると言える。したがつて小児病院という集約された施設における尿路感染症は,比較的新しい知見になる訳で,今回施設開設以来5年間の尿路感染症を集計,その病像の一面を観察してみた。

交見室

慢性透析における血圧について,他

著者: 三橋慎一

ページ範囲:P.803 - P.803

 慢性腎不全ではしばしば高血圧を伴い,そしてその管理に困惑することも稀ではない。しかし,血液透析が軌道に乗ると大部分は血圧の是正をみる。すなわち水分過剰,換言すればNa過剰によるものと推定される。
 ところが,慢性透析を続けている症例の中で,透析中に低血圧に悩まされる例がある。この原因はこれまであまりよくわかつていなかつた。経験的に生理食塩水を透析回路に輸注したり,時としてはこれでは足りず更に昇圧剤,甚だしきはノルエピネフリンを加えることすらある。この低血圧は生命の危険はなくとも,患者を著しく不安に陥れ,透析の続行を不可能にすることがある点で困りものである。どなたかこれについてよい工夫をお持ちの方があればご意見を伺いたいものと思つていた。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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