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綜説
実験的尿路系腫瘍についての最近の知見
著者: 伊東信行1
所属機関: 1名古屋市立大学医学部第一病理学教室
ページ範囲:P.853 - P.869
文献購入ページに移動一般に尿路系腫瘍といえば腎・尿管・膀胱および尿道に発生するものを指しているが,その大部分は腎と膀胱の腫瘍ということになろう1〜3)。従来,実験的尿路系腫瘍についての研究は膀胱がその中心となつていたが,最近新らしい化学発癌物質の開発により腎腫瘍の実験的発生が極めて容易となり,しかもヒトのそれに似た組織像の腫瘍を得ることが可能となつたため実験的腎腫瘍について,多数の報告を見るようになつた。また,膀胱腫瘍についても次々と強力な発癌物質が見い出され,それら物質の強い臓器選択性さらに発癌方法が単純化されたことなどから膀胱癌についても目ざましい進展があつた。このように,ここ数年間の実験的尿路系腫瘍に関する知見は従来進められてきたものとはまつたく異なつたとさえいえる現状にある。
一方,国内では昭和49年度より3年間文部省がん特別研究費補助により「尿路系腫瘍の発生と進展に関する実験的研究」班が組織され,多くの輝やかしい成果が得られているほか,アメリカでも数年前より膀胱癌患者の増大からNational Bladder Cancer Projectが発足し活発な研究活動がなされている。さらに最近,日米癌研究協力機構の一環として膀胱癌がそのテーマとして取りあげられ(代表:吉田修京大教授,G.T.Bryanウィスコンシン大教授),基礎・臨床の両面からの研究情報の交換が活発に行なわれている。
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