文献詳細
綜説
膀胱上皮内癌(Carcinoma in situ)の病理
著者: 瀬戸輝一1 松本恵一2
所属機関: 1帝京大学医学部第一病理学教室 2国立がんセンター泌尿器科
ページ範囲:P.195 - P.206
文献概要
Carcinoma in situは本来の意味からすれば正常位置での癌,すなわち常位癌とでもすべきものであるが,本邦においてはIntra-epithelial carci-nomaの意としてCarcinoma in situの対訳に上皮内癌が使用されており,本稿でもこの邦訳に則つて使用してある。上皮内癌(Carcinoma in situ)の概念設定の歴史は極めて古く,領域別では婦人科分野で1908年にSchauensteinが初めてatypis-ches Plattenepithelの名称を以つて記載し,1910年より20年代にかけて同種の病変に関しての見解が同領域において相次いで発表され現今に及ぶが,本邦での総説では三谷,山辺ら43)の記載が最も簡潔で要を得ており,それと膀胱上皮内癌の文献を通覧対照すると正に「歴史は繰返される」観がある。
膀胱での上皮内癌は1952年Masina1)あるいはMelicowら2)がsubclinical preinvasive carcinomaあるいはintraurothelial cancerとして把握したのが始まりで,特にMelicowら2)がこの病変を対比させた皮膚疾患でのBowen's disease44)もその記載は1912年であり,泌尿器科領域における上皮癌の概念導入が他分野に比し約50年の著しい遅れをとつている事実は否めない。
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