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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科31巻9号

1977年09月発行

雑誌目次

綜説

前立腺癌の放射線療法

著者: 河合恒雄 ,   武田尚 ,   津屋旭 ,   金田浩一 ,   福島修司

ページ範囲:P.761 - P.772

緒言
 前立腺癌の放射線療法はこの25年間主として米国において発展したが,未だ確立された治療方式はない。わが国ではestrogen療法が主流をしめているが,それには限界があつて,他の治療法が開発されつつあり,放射線療法もその一つとして試みられている。わが国の超高圧治療装置の保有台数は,1976年3月現在cobalt,cesium装置が543台,linear accelerator(linacと略)108台,betatron47台,計698台である1)から今後盛んになることと思う。
 癌研では1964年9月より,linacによる前立腺癌放射線療法を始めた。大部分がホルモン療法併用例であるが,1976年5月まで54例に達した。Es-trogen服用量,期間はまちまちで,除睾術は54例中13例に施行した。その成績(第1図)は全国統計よりよいが,竹内ら2)のestrogen大量長期間投与例の成績とほぼ同じである。

パネルディスカッション

先天性下部尿路通過障害の諸問題(myelodysplasiaを除く)

著者: 辻一郎 ,   小柳知彦 ,   柿澤至恕 ,   川村猛 ,   寺島和光 ,   福井準之助 ,   桜井易

ページ範囲:P.777 - P.799

司会のことば
 辻 小児の下部尿路通過障害が難治性尿感染,続発性尿管逆流,さらに重篤な腎・上部尿路障害の基因として重大なことはよく知られているが,乳幼児期の排尿異常は長く看過されたり誤診されていることが少なくない。通過障害解除後の遠隔成績も結局来院時の腎・尿管障害の程度により,この意味で乳児期の排尿状態の注意深い観察と早期診断,早期治療の重要性が強調される。
 先天性の機械的あるいは機能的下部尿路通過障害にはいろいろな形式のものがあり,小児排尿異常の本態把握鑑別診断には各種の泌尿器科的検査と神経・水力学的検査の総合判定が必要であるが,乳幼児に多くの複雑な検査を行なうことは実際問題としてなかなか困難であるうえ,これらの諸検査成績の解釈・判定も人によつてかなりの違いがある。また各論者の先天性排尿異常,ことにいわゆる膀胱頸部疾患や尿道末梢部stenosisあるいは尿道ringについての考え方,定義,診断規準はいろいろであり,さらに同一論者でも時と共に考え方が変遷していることが少なくない。したがつて先天性下部尿路通過障害の病因別頻度,割合は報告によりかなりの差があり,この混乱は当然実際の治療方針選定上の意見の差としても現われている。

文献抄録

骨盤骨折を伴う後部尿道損傷の治療

ページ範囲:P.799 - P.799

 現在骨盤骨折による後部尿道損傷の治療に関しては諸家の意見は必ずしも一致していない。後部尿道損傷の治療方針は損傷部位の修復と外傷性血腫や尿溢流に対する処置にあるが,著者らはその治療経験からかかる患者に対してはまず膀胱瘻を設置して3〜4ヵ月後に後部尿道の形成術を行なうことが術後の狭窄発生防止その他の合併症を抑える上で有効であるとしている。
 著者らは1960年以降205例骨盤骨折患者を経験し,129例に尿路損傷による血尿を認めたが,明確に後部尿道損傷のあつた20例についてその治療経過を報告している。この20例中第1群の11例は尿道損傷に対して膀胱瘻のみを設置して外傷性局所血腫には自然吸収を待つようにし,3〜6ヵ月後に尿道形成術を施行した。第2群の9名に対しては損傷直後に後部尿道の形成術を行なつた。この両群について比較検討してみると,患者の年齢層はほぼ同様であり,術後の経過観察期間は前者で2年から6年,後者では4年から13年に及んでいる。症例数は少ないが両群の臨床経過では2群の9例中7例に尿道狭窄の発生をみて術後尿道拡張術を必要とし,うち2例は再手術を行なつている。また2例に失禁,3例に勃起不能をみている。また4例に射精困難または不能の状態がつづいており,6例に器械的操作を要するために尿路感染が残存している。一方,1群の11例についてみると,全例に尿道狭窄の発生はなく,また尿失禁・勃起不能例もみていない。

原著

神経因性膀胱に対するphenoxybenzamine投与の経験—尿道内圧曲線,膀胱内圧曲線・尿道外括約筋筋電図同時記録による検討

著者: 西沢理 ,   山口脩 ,   塩谷尚 ,   坂本文和 ,   原田忠 ,   土田正義

ページ範囲:P.803 - P.807

はじめに
 α-blocker作用を有する薬剤が,尿道内括約筋の過緊張に起因する排尿困難症例に効果を示すことは,Kleeman1),Krane&Olssonら2,3)により明らかとなった。すなわちα-blockerは尿道内括約筋に存在するα受容体に作用して,括約作用を弱めるわけである。現在すでに欧米では,その目的のために広く用いられているが4〜11),本邦では欧米のような普及はこれからという現状である12)
 今回私たちは排尿困難を訴える4例の神経因性膀胱症例に対してphenoxybenzamine (以下POBと略す)を経口投与したが,その際,投与前後における尿道内圧曲線(以下UPPと略す)13)および膀胱内圧曲線と尿道外括約筋筋電図の2者同時記録14)を行ない,二,三の知見を得たので報告する。

逆行性尿道撮影における術者のX線被曝回避—尿道造影用陰茎把持器の使用による

著者: 荒木徹 ,   森永修 ,   森岡政明

ページ範囲:P.809 - P.811

 逆行性尿道撮影は泌尿器科領域では不可欠のX線検査法であるが,撮影時術者のX線被曝が避け難い問題である。それを避ける目的で開発された陰茎把持器(サニーホルダー)が加藤,鈴木1)によつて紹介された。われわれも1975年末からこれを用いているが,使用が簡便で術者の被曝がほぼ完全に回避できることが分つたので報告する。

尿路感染分離菌の統計的観察

著者: 松岡俊介 ,   神永陽一郎

ページ範囲:P.813 - P.818

緒言
 尿よりの分離菌や尿路感染症の起炎菌などは,尿路原疾患の変貌や薬物療法の内容の変化などにより年々変遷を辿つているようである。
 以前江田ら1)が同一施設において,言わば昭和40年代の前期(1966年度から1970年度まで)の尿路感染症の起炎菌とその薬剤感受性について報告している。私達はその後の後期(1971年度から1975年度まで)の尿路感染分離菌について,その変遷を追求したところ若干の知見を得たと思われるので報告する。

Urological Letter

膀胱内からの尿管切石術/髪の毛によるペニスの絞扼と顕微鏡の接眼レンズの拡大鏡としての応用

ページ範囲:P.811 - P.811

 膀胱壁内か膀胱直上部の尿管内に結石が嵌頓し尿管を閉塞したような例には,すべての泌尿器科医がいつかは遭遇するはずである。こうした結石は,最も良い条件下でも,しばしば結石の部に到達し結石を除くことが難しいし,時には,以前に起こつた線維化の結果,結石の部位に達するのに膀胱を周囲から広く剥して尿管を動かさなければならないことがある。筆者のこの報告は次に記すような方法で6例に実施した経験に基づくものである。
 膀胱には術者に最も慣れた普通の恥骨上式で達し,膀胱を適当に露出して切開し,両側の尿管口を確認する。ついで患側尿管口の三角部側,すなわち後側に4-0クロミックで一針ぬい,印をつけておく。その尿管口の前側で粘膜面に半円形の切開を行ない,この部を鋏を使いあるいは鈍的に剥し,尿管を露出する。この部の尿管への操作はあたかも尿管膀胱再吻合術の始まりのような具合に進める。この術式を用いることによつて,末梢部尿管は容易に,少なくとも4cmは動くようになる。そこで垂直に尿管を切開すれば結石はたやすく摘出できる。そのあとは4-0ないし5-0のクロミックカットグートの結節縫合で尿管を閉じる。8FのBardhamカテーテルを尿管内にしばらく支柱として入れておく。

小さな工夫

携帯できる女子用自己導尿装置

著者: 竹内弘幸 ,   牛山武久

ページ範囲:P.818 - P.818

 神経因性膀胱に対する導尿は無菌的に行なうほうがよいことはいうまでもなく,間歇的自己導尿法の是非については異論もあるが,比較的安全かつ容易にできればそのための利益は大きい。特に残尿を除いて他に問題のない患者では入院の必要はなく,さらに導尿用カテーテルを携帯できれば正常人と同様に日常生活を過すことができる。このような発想のもとにわれわれは携帯用自己導尿装置の製作を試みており,女子用については一応満足できる製品ができたので紹介する。
 図が製品である。カテーテルは全長9.5cmで,透明な塩化ビニール製太さ16号長さ6.3cmの先端部(d)と不透明な先の広がつたホールダー(e)とからなっている。これを入れる容器はハイゼックス製の不透明な長さ10cm径3cmの瓶(a)で,その蓋(b)には内面に突起(c)がついている。この突起(c)にカテーテルのホールダー(e)がはまるようになつている。容器はwater tightで,中に刺激性のない水性消毒液としてヒビテン・グルコネートあるいはレタジサイドを入れておく。

症例

同一腎に発生した腎細胞癌と腎盂癌の1例

著者: 松野正 ,   上戸文彦 ,   阿部彌理 ,   中村恭二

ページ範囲:P.823 - P.827

緒言
 重複癌については,19世紀後半のBillroth1)の報告以来,年々,稀ながら症例が積み重ねられている。特に同一系臓器,更には同一臓器に異なる癌腫の発生をみることは極めて稀である。
 われわれは,最近同一腎に腎細胞癌と腎盂移行上皮癌の併存している症例を経験したので,ここに報告する。

後腹膜悪性線維性組織球腫(Myxoid Variant)の1例

著者: 森下直由 ,   高野真彦 ,   森勝彦 ,   岸川正大 ,   母里正敏 ,   西森一正

ページ範囲:P.829 - P.833

緒言
 1976年Weiss&Enzinger1)は悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma,以下MFHと略記することあり)のうちmyxoid componentの多いものをmyxoid variantとして分離することを提唱した。われわれは後腹膜に原発したMFHのmyxoid variantの1例を経験したので報告する。

副睾丸部Adenomatoid tumorの2例

著者: 佐々木忠正 ,   木戸晃 ,   増田富士男 ,   小寺重行

ページ範囲:P.835 - P.838

緒言
 副睾丸腫瘍は比較的まれな疾患である。われわれは副睾丸に原発したAdenomatoid tumorの2例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

交見室

膀胱上皮内癌と細胞診/膀胱内圧測定時のtwo way方式について

著者: 稲田俊雄

ページ範囲:P.840 - P.840

 臨泌31巻3号に掲載された「膀胱上皮内癌の病理」 (瀬戸輝一,松本恵一著)は,著者らの豊富な症例の解析と,鋭い感覚によつて,従来いささか曖昧であつた本疾患の概念とその臨床的意義にある程度統一見解を提起したすぐれた綜説であるといえる。
 彼らは膀胱の上皮内癌には,真性の上皮内癌と,恐らくは経時的発生による合併としての随伴型があり,真性のものにはslow growingの長期停滞型ないしは伸展型と,rapid progressiveな急速通過型があり,後者はむしろ浸潤癌に属するものであるとしている。そしてこれらが少なくともexophyticな発育を示さない以上,細胞診による診断の重要性を指摘している。同じ号に松田氏らの「膀胱上皮内癌における尿細胞診の意義」が発表されており,尿細胞診陽性例に対して大胆にも膀胱全摘を行ない,そのsurgical speci-menにおいて膀胱上皮内癌を発見した症例をあげ,膀胱上皮内癌における細胞診の意義を強調している。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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