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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科32巻10号

1978年10月発行

雑誌目次

綜説

女性性器ヘルペス症

著者: 川名尚

ページ範囲:P.903 - P.912

はじめに
 編者より依頼のあつたテーマは,外性器のウイルス疾患というものであつたが,筆者は産婦人科医であるため,女性性器のウイルス疾患についてしかもヘルペス症に重点を置いて論述させて頂くことを予めお断りする。
 さて,性器の感染症のうちでもウイルス性疾患についての研究はもつとも遅れていたが,近年の組織培養の発達とそれを応用したウイルス学の進歩がようやくウイルス性疾患を少しずつ解明してきている。

Urological Letter

I.Urinoma(尿嚢腫),他

ページ範囲:P.912 - P.912

 大部分のurinomaの内容は化学的に血清やリンパ液とは区別できる。しかし,そうでない場合がある。62歳の男で,エマージエンシーで大動脈の手術をした後6カ月たつてから,右側腹部に6,000mlの液が溜つてきて採取した。臨床的には確かにurinomaだと思つたが, X線学的にも化学的にも確認できなかつた。インジゴカルミンを注射したあと液を吸引してしらべたが,液は清澄で化学的には血清と区別できなかつた。蛋白質の含量は1ml中1gでリンパ液に匹敵するが,smearでリンパ球は見当らなかつた。urinomaは尿管の中間部の小さい裂け目に由来していた。尿の貯溜は極めて緩慢であり,urinomaの偽膜の吸収面は広いので,こういう条件下で尿が透析されるので,血清と同じになつたものと考えられる.
 訳者(南武)註:urinomaには別名が多い.pararenalpseudocyst,pseudohydronephrosis,hydrocele renalis,perirenal cyst,perinephric cyst等々である。

手術手技

膀胱腟瘻の手術—恥骨上膀胱腟瘻閉鎖術(経膀胱式膀胱腟瘻閉鎖術)

著者: 園田孝夫 ,   水谷修太郎 ,   佐川史郎 ,   板谷宏彬 ,   長船匡男 ,   松田稔

ページ範囲:P.917 - P.921

 婦人科的手術や放射線療法,あるいは産科的操作や手術によつて発生する膀胱腟瘻の発生は比較的稀であるが,その外科的修復法は泌尿器科医にとつて甚だ重要である。しかし,膀胱や子宮あるいは周辺臓器に発生した悪性腫瘍の浸潤や部分的壊死によつて生ずる膀胱腟瘻では,原疾患の根治的療法と膀胱腟瘻に対する治療とは自ずからその重要性が異なる性質のものである。
 1957年から1976年までの20年間に大阪大学泌尿器科教室において取り扱つた膀胱腟瘻患者数は46例である。このうち28例が1957年から1966年の最初の10年間に,また残りの18例が1976年までの後半の10年間に経験された症例である。すなわち最近の10年間についてみると泌尿器科入院患者3,043例中18例,すなわち膀胱腟瘻は0.53%にすぎず,産婦人科手術手技の向上あるいは放射線照射療法の技術的改善が膀胱腟瘻発生頻度の低下に貢献しているものと思われる1〜3)。原田(1966)1)は28例の膀胱腟瘻のうち観血的療法を施行した24例中9例(37.5%)にしか完治せしめ得なかつたと報告しているが,これらの症例のほとんどが過去平均2回の修復手術をうけたものであるために正確な完治率とはなつていないと思われる。

膀胱腟瘻の手術—Dorsey法

著者: 安藤弘 ,   中山孝一 ,   松本英亜 ,   澤村良勝

ページ範囲:P.923 - P.927

まえがき
 Dorsey(1956)により記載された膀胱腟瘻閉鎖術は,本邦ではあまり普及していないが,この方法を要約すると経腹膜的に腹腔内に入り,膀胱後壁を腹膜後葉(posterior leaf of the peritoneum)とともに切開して膀胱内に入り,瘻孔を処理する方法である。この方法に類似する方法の記載はO'Corner(1951),Sargent(1955),Lowsley-Kirwin(1956),Biter(1972)法などがあり,多少のmo-dificationはあるが,大同小異である。

膀胱腟瘻の手術—腹膜挿入法

著者: 今村一男

ページ範囲:P.929 - P.932

緒言
 膀胱腟瘻に対する瘻孔閉鎖術は必ずしも容易ではなく,したがつて閉鎖術に種々の工夫がなされている。著者は1963年から現在までの15年間に11例の膀胱腟瘻閉鎖術を経験し,うち6例に腹膜弁挿入法を施行した。これら6例の経験をもとに腹膜弁挿入による膀胱腟瘻閉鎖術について述べる。

膀胱腟瘻の手術—経腟式

著者: 町田豊平

ページ範囲:P.933 - P.936

はじめに
 膀胱瘻への手術的到達経路には,腹部(恥骨上)からと腟からの2方法がある。その選択は,瘻孔の発生原因,大きさ,位置,合併症,全身状態や術者の慣れなどによつて決められている。一般に腹(恥骨上)式は泌尿器外科医が,経腟式は婦人科医が好んで採用する傾向が今日でもみられている。わたしは,恥骨上式にしろ腟式にしろ,それぞれの手術法に一定の適応があると信じているが,一般的に泌尿器科医は腟式到達への関心をもつと高めるべきであると考えている。
 経腟式膀胱瘻閉塞手術には,次のような手技がある。1)Sims-Emmet法(瘻孔より腟壁を剥離し,腟壁をそのまま腸線で閉じる),2)重層法(膀胱壁の内反縫合と腟壁の縫合を重層して行なう),3)部分的腟閉鎖法(瘻孔周囲の腟壁を広く切除し,腟壁で閉塞する),4)組織巻き込み形成術,などの方法で,現在は重層縫合法と部分的腟内閉鎖法が主要な腟式手技であり,ここではこの2つの手術手技をのべる。

文献抄録

前立腺癌における骨スキャンとフォスファターゼ

ページ範囲:P.932 - P.932

 著者らはHydroxyethylidine diphosphate(HEDP)を用いて前立腺癌の骨スキャンを行なつて,X線単純撮影像,血清フォスファターゼ値などより骨転移巣診断について検討を加えている。
 検査した症例は組織学的に前立腺癌と診断した未治療患者90例についてで,99mTc-Sn-HEDPによる骨スキャンと胸部,腰部,骨盤部の単純撮影を行なつて,それぞれ臨床放射線の専門医により判読診断を行なつた。その結果については3群に分類し,A群はscan Neg./x-rayNeg.,B群はscan Pos,/x-ray Neg.,C群はscan Pos./x-ray Pos.として検討を加えた。

講座

臨床統計入門(10)—2群の患者のある値の平均値の比較(少数例において母分散が等しくない場合)

著者: 杉田暉道

ページ範囲:P.937 - P.939

 2群の患者のある値の平均値の比較において例数が少ない場合は,まず母分散が等しいか否かを検定する(等分散の検定)必要がある。そして母分散が等しいときの平均値の比較の方法を本講座(3)で解説した。
 それでは母分散が等しくない場合はどのうような方法で検定すればよいのであろうか。それには2群の患者の例数が等しい場合と等しくない場合とでは方法が異なる。

症例

肉眼的血尿を主訴としたIgA腎炎の1例

著者: 北村唯一 ,   小磯謙吉 ,   上野精

ページ範囲:P.945 - P.947

緒言
 IgA腎炎は1968年Berger1)によつて,nephro-pathy with mesangial IgA-IgG depositsと題して,初めて報告された慢性に経過する糸球体腎炎の1型であり,しばしば反復性肉眼的血尿がみられる腎炎である。そのため,いわゆる肉眼的血尿を主訴として泌尿器科を訪れる患者の中にIgA腎炎患者が含まれている可能性がある。最近,われわれは肉眼的血尿を主訴として来院した33歳男子のIgA腎炎の1例を経験したので報告する。

巨大腎細胞癌の2例

著者: 森田隆 ,   渋谷昌良

ページ範囲:P.949 - P.952

はじめに
 腎細胞癌の報告は多数あるが,摘出腎重量が2,000gを越えるものは非常に稀である。われわれは最近2,800gと2,300gの巨大腎腫瘍症例を経験したので報告する。

腎盂内のみに発育したWilms腫瘍の1例

著者: 高橋剛 ,   浜崎豊 ,   三間屋純一 ,   麦島秀雄 ,   上瀬英彦

ページ範囲:P.953 - P.956

はじめに
 Wilms腫瘍は神経芽細胞腫に比較して根治的手術の可能性が高く,予後も比較的良好である。治療成績をさらに向上させるためには,いち早く診断し,的確な手術をすることが望まれる。最近われわれは血尿とnon visualizing kidneyを呈しながら,術前まで診断の困難だつた特異なWilms腫瘍を経験したので報告する。

結石を合併した腎盂腫瘍の2例

著者: 平石攻治 ,   山本修三 ,   沼田明 ,   横田武彦 ,   今川章夫

ページ範囲:P.957 - P.961

緒言
 腎盂腫瘍の診断は決して簡単ではないが,これに結石を合併するとさらに困難となる。結石を合併した腎盂腫瘍の本邦報告例においても,術前診断は結石のみで腫瘍は見逃されていることが多いようである。今回2例の結石を合併した腎盂腫瘍を経験したが,その1例では腫瘍を念頭に入れて腎盂像を読影していれば正確な診断を下し得たのではないかと考えられる。また腎盂腫瘍と結石との関連についても文献的考察を加えて報告したい。

尿細胞診で診断できた腎盂腫瘍の1例

著者: 陳瑞昌 ,   川口安夫 ,   森三樹雄

ページ範囲:P.967 - P.970

緒言
 最近,われわれは尿細胞診により診断できた腎盂腫瘍の1例を経験したので,腎盂腫瘍における尿細胞診の有用性について若干の考察を加えて報告する。

後腹膜脂肪腫の1例

著者: 小倉邦博 ,   小川功

ページ範囲:P.971 - P.974

緒言
 良性脂肪腫は日常しばしば遭遇するが,後腹膜での発生は比較的稀であり本邦文献上37例の報告しか認められない。今回後腹膜脂肪腫の1例を経験したので報告する。

移行上皮癌再発による回腸導管狭窄の1例

著者: 西本正 ,   根本良介 ,   塩谷尚 ,   加藤哲郎

ページ範囲:P.975 - P.979

緒言
 回腸導管造設術は,最も一般的な尿路変更術として各施設で広く行なわれている。それにともない本法の術後合併症について多くの報告がみられるようになつたが,その一つに回腸導管の狭窄をあげることができる。回腸導管狭窄の原因としては,1)虚血,2)炎症ならびに3)尿の局所免疫抑制作用による炎症増強などの因子が指摘されてきたが1,2),腫瘍による狭窄の可動性も考慮する必要がある。われわれは膀胱全摘術ならびに回腸導管造設術施行2年後に,移行上皮癌の再発によつて回腸導管狭窄をきたした1症例を経験したので報告する。

陰茎絞扼症の1例

著者: 土屋哲 ,   高瀬通汪 ,   松本哲夫 ,   三輪誠 ,   小原信夫

ページ範囲:P.981 - P.983

緒言
 陰茎絞扼症の報告は比較的少ない。最近,われわれは除去に難行したnut (止めねじ)による陰茎絞扼症の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する。

交見室

CTについて,他

著者: 三木誠

ページ範囲:P.986 - P.987

 森永修先生らの「泌尿器科領域における全身用コンピュータ断層撮影装置の使用経験」(臨泌,32巻8号)を興味深く拝読致しました。
 CTも第Ⅲ世代の装置から第IV世代のものまで登場し,泌尿器科領域での検討もますます盛んになることと考えます。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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