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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科32巻11号

1978年11月発行

雑誌目次

綜説

ヒト尿路性器悪性腫瘍のヌードマウスへの移植

著者: 秋元成太 ,   中島均 ,   由井康雄 ,   川井博

ページ範囲:P.1001 - P.1010

はじめに
 ヒト悪性腫瘍の異種移植のこころみは,腫瘍そのものについての本態の究明を最大の目的としながらも,われわれ臨床医にとつては悪性腫瘍で苦しんでいる患者を目の前にして早急な有効な治療方法の確立をめざしているといつてもよいであろう。
 現在まで,ヒト泌尿生殖器癌を実験動物に移植し,樹立された継代移植可能株はすくなく,むしろ例外的成功をのぞいてはまれであつた。

文献抄録

間歇的腰痛者における利尿IVPの意義

ページ範囲:P.1010 - P.1010

 間歇的におこる腰痛の診断で正常の排泄性腎盂撮影では異常の認められない場合がしばしば問題となる。これらの患者について十分水分を摂取させたり,利尿剤投与後に腎盂撮影与行なうと水腎症を発見することがある。最近では,Robinsonら(1960)はMannitol投与,あるいはSaxonら(1969)はFrusemide投与を行なつて間歇的水腎症の誘発を試みている。著者らは22名の間歇的腰痛を主訴とする患者に,正常の排泄性腎盂撮影(IVP)のほかに利尿剤併用腎盂撮影,急速腎盂撮影,立位撮影などを行なつて腰痛と腎盂像の関係を追究した。正常IVPとしては30%ウログラフィン250mlを急速静注後,臥位にて7分像と立位の14分像を撮る。利尿剤併用法は造影剤と共にFrusemide 20mgを静注後5,10,15分で腎盂像を見る。正常の判断は左右造影剤排泄が平等でかつ15分で完全に排泄されたものとした。患者は女性17名,男性5名で,腰痛側は右側11例,左側12例,両側1名であつた。この22名中水腎症の発見された者は15例で右水腎7例,左水腎8例である。水腎を示した15例を2群に分けてみると,IVPで腎杯拡張を呈したもの7例,IVPでは腎杯拡張はないが,他の方法では水腎ないし腎杯拡張を示したもの7例であつた.この検索で著者は次の点を強調している。

手術手技

腎外傷の手術

著者: 井上武夫

ページ範囲:P.1015 - P.1019

Ⅰ.腎の病態生理
 腎外傷を扱う上で腎の病態生理を知ることは大変重要であり,それが治療に密接に関係してくる。腎外傷の治療に役立つ病態生理をあげると1)
 1)腎は実質臓器で血行が豊富であるから,外傷により出血しやすいが,一方治癒もしやすい。このことは腎の部分切除術が可能であつたり,想像以上に腎機能が回復する症例からも証明される。

腎外傷の手術—新鮮腎外傷におけるドレナージ法の適応と手技

著者: 大山朝弘 ,   松岡政紀 ,   宮里尚義 ,   才田博幸

ページ範囲:P.1021 - P.1024

 腎外傷の診断は比較的容易である。治療に際して軽症は安静療法,強度の外傷時は外科的治療ということでほぼ意見の一致がみられるが,これらの中間型とでもいえる中等度の腎外傷に対しては外科的加療がよいか保存的加療がよいか意見のわかれるところである。最近は保存療法をすすめる意見がつよい1〜4)。1969年以降われわれはむしろ外科的加療を行なつてきたのでこれらを検討しながらわれわれの考えを述べ,新鮮腎外傷における"腎周囲ドレナージ法"を紹介したい。

Urological Letter

女性の頻尿とセックス/トロカールによる膀胱瘻術(Trocar cystostomy)

ページ範囲:P.1019 - P.1019

 これという泌尿器科的疾患を見出し得ない女性患者にみられる尿意逼迫や頻尿の治療は困題な問題である。筆者の考えではこれらの問題の多くは患者の性生活の型に関連していることは間違いない。多くの患者は何年もの間,そのような泌尿器系の訴えがかつてなかつた人々である。これらの患者は配偶者を失う前までは幸福で正常な性生活を送つていた人々である。古い道徳の絆によつてsexual needを満たせないでいるのである。したがつてこれらの症状の原因(性の満足の欠如)を説明してやるとしばしばこれらの患者の多くの人々が治つていく。
 同様にして,未婚の女性にはしばしば膀胱症状が周期的に起こつてくる。彼女らの生活のうちsxual patternを分析してみると膀胱炎様症状は性欲が満たされなかつた後に起こることがわかる。

講座

臨床統計入門(11)—ある血液成分の濃度(値)の3群の患者での比較(分散分析法入門)

著者: 杉田暉道

ページ範囲:P.1025 - P.1028

 比較する群が2群の場合については本講座(3)で解説した。これが3群以上の場合にはどのような方法で分析したらよいであろうか。それには分散分析法を用いるのである。これを実際の例題で解説しよう。
 【問】4歳の女児7名の時刻別平均血圧を第1表に示した。この成績から平均血圧の時刻差が認められるか。

座談会

進行性前立腺癌の治療

著者: 町田豊平 ,   島崎淳 ,   河合恒雄

ページ範囲:P.1032 - P.1044

 町田(司会) 前立腺癌の治療はいくつかの話題を持つた泌尿器科的治療の1つです。特に手術の適応でない前立腺癌,一般的にいいますとstage Cの治療が,国際的にも大きな論議を呼んでおります。こうした背景を踏まえた上で,日本人としての問題点,あるいは理想的な治療はどこにあるかなどの問題を中心に,今日は2人の先生をお招きして,お話をうかがうことにいたします。
 ご意見を伺う前に前立腺癌の治療の問題をまとめてみますと,まず第1は疫学的な面で,日本人前立腺癌の発生頻度は,人種的に少ないといわれております。統計的に欧米に比べて1/4ないしは1/5という数字になつております。しかし,この発生率の少ない理由について,もともと少ないんではなくて,前立腺癌への転換因子が人種的に違うんではないかという意見もあります。ともあれ,従来いわれたほど少ないものではなく,統計的に日本人も最近は次第に増加してきております。

原著

泌尿器科領域におけるPhytohemagglutinin(PHA)皮内テスト

著者: 前林浩次 ,   湯浅誠 ,   滝川浩 ,   今川章夫

ページ範囲:P.1049 - P.1053

緒言
 近年,腫瘍免疫,移植免疫の本態が細胞性免疫であることが明らかになり,臨床的な細胞性免疫機能検査法の確立が望まれている。
 リンパ球の腫瘍細胞に対する殺細胞性を調べる特異的な方法は別として,リンパ球のsubpopula-tionの定量さらには,T-リンパ球のsubsetの定量やphytohemagglutinin(PHA)などをmitogenとしてのリンパ球の幼若化よりT-リンパ球の機能を知る方法など菲特異的な細胞性免疫機能検査法も確立されつつある。

尿道狭窄に対する内尿道切開術の経験

著者: 森永修 ,   白石哲朗 ,   荒木徹 ,   松村陽右

ページ範囲:P.1055 - P.1059

緒言
 1975年7月より1977年12月に至る1年6カ月間にわれわれは尿道狭窄8例を経験したが,全症例にMeisonneuve internal urethrotomeを用いる内尿道切開術を行なつた。その内1例に対しては観血的に内尿道切開を施行したので,その症例報告を併せてわれわれの内尿道切開術について報告する。

症例

腎膿瘍型を呈した黄色肉芽腫性腎盂腎炎の1例

著者: 村上泰秀 ,   岡田敬司 ,   河村信夫

ページ範囲:P.1061 - P.1064

緒言
 近年,染色法および病理診断法などの進歩により,今まで見逃されてきた疾患が次々と分類区別されるようになつてきた。1916年,Schlagen-hauferにより最初に報告され1),1934年,Puts-char2)によりxanthogranulomatous pyelonephritisとの名称がつけられた腎の非特異性感染症もその一つである。この病態の特徴としては,病理組織学的な観点より初めて診断がつくものであり,脂肪顆粒を有する泡沫細胞が著明に増殖する,いわゆるxanthogranulomatous changeを有するものである。この疾患は形態学的に次の3型に分類できる3)。1)膿腎型,2)腎周囲炎型,3)腎膿瘍型であり,このうち一般的に数多く認められるのは膿腎型であり,腎周囲炎型,腎膿瘍型といわれるものは比較的少ない。われわれは今回この比較的まれなxanthogranulomatous pyelonephritisの腎膿瘍型を経験したので,ここに報告する。

S状結腸癌の膀胱浸潤の1例

著者: 米田文男 ,   平石攻治 ,   香川征 ,   河野明 ,   伊井邦雄

ページ範囲:P.1065 - P.1068

緒言
 膀胱の隣接臓器腫瘍による膀胱への浸潤は稀なものではない。今回,われわれは血尿を主訴とし膀胱腫瘍の診断にて手術時にS状結腸腫瘍の膀胱浸潤と判明した1例を経験したので報告し,併せて続発性膀胱腫瘍について若干の考察を加えた。

Cyclophosphamide投与中に発生した膀胱腫瘍の1例

著者: 北村憲也 ,   片岡喜代徳 ,   藤岡秀樹 ,   柏井浩三

ページ範囲:P.1073 - P.1076

緒言
 cyclophosphamideは現在広く使用されている制癌剤であるが,その副作用の1つとして出血性膀胱炎があげられる。しかし,膀胱腫瘍発生については,その報告例は極めて稀である。最近われわれは多発性骨髄腫と診断され約3年間にわたりcyclophosphamide投与をうけた後,膀胱腫瘍の発生を認めた1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

放射線療法が有効であつた前立腺原発移行上皮癌の1例

著者: 米山威久 ,   内山俊介 ,   福井準之助

ページ範囲:P.1077 - P.1079

緒言
 排尿障害と左下腹部腫瘤を主訴とし,組織学的に移行上皮癌と診断され,放射線療法が有効と思われた前立腺原発移行上皮癌の1例を経験したので報告する。

陰茎折症の1例

著者: 松崎幸康 ,   落司孝一 ,   納富寿

ページ範囲:P.1081 - P.1083

緒言
 陰茎折症は稀な疾患とされていたが,ここ数年報告例は増加の傾向にある。最近われわれは本症の1例を経験したのでその概要を述べるとともに,若干の文献的考察を行なつたので報告する。

交見室

膀胱破裂について/前立腺癌の化学療法について

著者: 井上武夫

ページ範囲:P.1084 - P.1085

 中橋満先生らの「膀胱破裂の11例」(臨泌,32巻8号)拝読いたしました.
 頻度の少ない尿路外傷中,とりわけ膀胱外傷は稀なもので,私たちは経験が乏しく,そのため治療法について,改良,批判の余地はなかつた。ひたすら先人の教えを守つていた。膀胱破裂は尿が体内に漏れるから,縫合閉鎖するのが最良であると考えていた私は,この論文を読んで,これは大変なことだと思つた,たまたま幸運にも治癒した症例に出くわしただけで,一般論として広くすすめる訳にはいかない治療法だとの印象であつた。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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