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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科32巻2号

1978年02月発行

雑誌目次

綜説

尿路系のコンピューター断層撮影

著者: 蜂屋順一 ,   生亀芳雄 ,   湯原幹男

ページ範囲:P.107 - P.118

はじめに
 コンピューター断層撮影Computed tomography(現在"CT"の呼称が一般化した)の実用化に英国のHounsfieldがはじめて成功し,頭部についての最初の臨床報告がAmbroseによつて行なわれたのは1972年4月の英国放射線学会総会の席上である。論文の形で発表されたのは翌1973年1,2)でその後現在に至るまで熱狂的ともいうべき関心を呼んでいる事情は周知の通りである。
 頭部脳神経領域では短期間に優れた評価を確立したCTも,それ以外の全身の各領域では応用がかなり遅れ1975年以降になつて本格的な臨床研究が始まつたといつてよい。最近,装置の工学的進歩につれて急速な展開をみせているこの新しい診断方法がいろいろな尿路系疾患の正確な診断と適切な治療にどのような貢献を成しうるか?

手術手技

尿道下裂の手術—Crawford-Ikoma法

著者: 生駒文彦 ,   島博基

ページ範囲:P.123 - P.127

 尿道下裂の患者に対して私は原則としてtwostage operation方式を採用している。第一段階である索切除術は,尿失禁のなくなる3〜4歳頃に施行し,その後少なくとも半年,通常は1年経過してから尿道形成術を行なう。全行程は小学校入学までに完了されるべきと考えている。その理由は次の3点である。第一は小さな陰茎でも手術は困難でない。第二は,小児では術後の勃起も少なく創面の安静を保ちやすい。第三は,早期に手術することによつて患者の精神的発達における障害が少ない。
 なお患者が外来を受診した時点で,合併奇形について,systematicに検査をすすめることを忘れてはならない。われわれの統計では,泌尿生殖器系の合併奇形が272名中96名,36.3%に,また泌尿生殖器系以外のそれが41名,15.1%に認められている。

尿道下裂の手術—Denis Browne法

著者: 駒瀬元治 ,   岡田耕市

ページ範囲:P.129 - P.132

 尿道下裂は,外尿道口が陰茎腹面から会陰部までの間に存在しているものであるが,このような尿道口の開口部位異常のほかに,陰茎の腹側への彎曲を常に伴つた先天異常である。この陰茎彎曲は勃起時に一層顕著となる。したがつて尿道下裂の程度によつては,立位での排尿が不可能で,女子と同様な姿勢で排尿しなくてはならないばかりでなく,将来正常な性交行為が陰茎彎曲のために行ないえないことになる。
 尿道下裂の治療法としては,陰茎彎曲を是正する手術と,尿道口が陰茎先端に開口するように尿道を造設する手術とが必要なわけである。元来,陰茎は単に尿を排出する器官であるばかりではなく,成人ではむしろ交接器官として役立たせることの方が重要であるとさえいうことができる。したがつて尿道形成手術が成功しても,陰茎彎曲是正手術が不完全であつたなら,その手術は失敗であるといつても過言ではない。

尿道下裂の手術—Barnes法

著者: 岡本重禮

ページ範囲:P.133 - P.136

緒言
 尿道下裂の形成術は既に前世紀半ばに創始されているが,今日なお決定的な手術法は皆無といつてよく,泌尿器科領域では古くしてかつ新しいテーマとなつている。その故に文献上極めて多数の手術法が紹介されていることは周知の事実である。
 1958年Creevy1)は手術法の歴史的考察を行なつているが,記載された方法の多くが既に古典的手術法に変化しつつある。本邦では1970年生駒2)が内外文献を整理し手術手技に志向した分類を試みているが手術の選択に当つて寄与するところが多い。

文献抄録

泌尿器科外来男性患者の尿中嫌気性菌

ページ範囲:P.136 - P.136

 正常男性成人尿道のflora中に嫌気性菌は腐生常在しているが,病原性を発揮することは稀である。しかし,著者らは後述の尿培養結果から,いわゆる無菌性膿尿の場合には尿の嫌気性菌培養検査を施行した方がよいとしている。
 著者らは517名の成人患者から無菌的に採取した尿について嫌気性菌培養検査を行なつた。対象となつた大部分の患者は前立腺肥大症,前立腺癌,尿道狭窄などの慢性尿路疾患をもつている。

講座

臨床統計入門(2)—ある血液成分の濃度(値)の正常範囲

著者: 杉田暉道

ページ範囲:P.137 - P.142

 泌尿器科の分野でよく使用される酸性フォスファターゼ活性値(第1表)を用いて解説したい。第1表は141名の正常者の値を表にあらわしたものである(本資料は本学病院中央検査部,生化学今野 稔学士の御好意によつて提供していただいたものである。ここに深謝する)。

原著

腎血管性高血圧の診断的検討

著者: 藤岡知昭 ,   岡本重禮 ,   永田幹男 ,   鈴木敏幸

ページ範囲:P.147 - P.152

緒言
 腎血管性高血圧は,手術療法によつて治療しうる代表的な高血圧として重視されているが,これは腎血管の病変に由来する腎虚血性高血圧の総称であり単一な疾患ではない。その主な病変をあげれば,動脈瘤,動脈炎,動静脈瘻,線維筋性過形成,血栓,粥状硬化があり多様に亘つている。翻つて診断法についてみると,診断に必要な検査は腎血管の病変およびそれによつて惹起される病態生理を他覚的に把握するのを目的としているもので,各病変に共通するものである。これらの検査法に関しては既に多数の研究があり,臨床面にも広く活用されていることは周知のことであるが,実際には検査の見過し(false positive)あるいは見逃し(false negative)が少なからずみられることがわかつている。
 われわれは最近明確に診断しえた腎血管性高血圧6例を経験したのでここに一括報告すると共に,この検査法を比較検討したいと思う。

単純性腎嚢腫液中への抗生物質の移行について

著者: 宮川征男 ,   西沢理 ,   熊谷郁太郎 ,   土田正義

ページ範囲:P.153 - P.155

はじめに
 感染を合併した単純性腎嚢腫症例についてはこれまで欧米で17例1〜3),本邦で6例4〜7)の報告がある。この場合,強力な化学療法を施行することが第一であるが,それだけでは十分でなく,最終的には外科的治療が必要であることが経験的に知られている。われわれは化学療法のみで本症をcontrolできない理由として,腎嚢腫内には抗生物質が移行し難いのではないかと考え,この点を明らかにするために単純性腎嚢腫患者に抗生物質を静注した際の血中濃度,尿中濃度および腎嚢腫液中濃度を測定し若干の知見を得たので報告する。

Clamp法による無血包茎手術の経験

著者: 横川正之 ,   平賀聖悟 ,   岡田耕市 ,  

ページ範囲:P.157 - P.159

 包茎に対する環状切除術には,通例の手術器具を用いる方法のほかに,Gomco clampまたはPlastibelのような専用の器具を用いる方法がある。後者は新生児専用であり,前者は新生児から成人までのサイズがある。いずれも外国では広く用いられているが,わが国ではあまり普及せず,器具も入手しにくかつた。最近Gomco社(NewYork)製のclampが代理店を通じて入手可能となつたので,当科および関連病院において約30例に試用したところ満足すべき結果を得たので,ここに手技を紹介し,考察を加えた。

Urological Letter

腎の腫瘤性疾患に対する診断用装置の限界,他

ページ範囲:P.155 - P.155

 41歳男子。家庭で球戯をしていて左足首を骨折した。彼の足首は折れ曲り,くじけた。整形外科医は骨折を認め治療をした。10日後に突然肉眼的血尿が出て,ただちに筆者の所に紹介された。
 膀胱尿道鏡検査で出血は左尿管口からとわかつた。IVPとトモグラフィで直径ほぼ4cmの円形の病巣が左腎上極にあることがわかつた。いくらか透明に近いので嚢腫が疑われた。そのあと超音波で調べたところ充実性腫瘍らしいと思われた。次に両腎をCTスキャンで調べたところ,やはり左腎のは充実性腫瘍らしいということであつた。ところが腎動脈撮影では腫瘍血管像はみられなかつた。これらの所見について患者さんと話し合い,針生検や嚢腫からの吸引物の試験,あるいは試験的に開けてみることなどについて検討した。患者は,近い親戚の人が癌で生検のため針を刺されたあと死んだので,癌かも知れない自分の病巣に針をさされることについては非常に心配した。そこで筆者は患者に,腎およびその他の臓器の癌の生検でその針の経路に癌が拡がつた例は文献にも少ししかないことを話した。患者は開けてみる方を選んだし,筆者らもその時点の状態でこれに賛成した。鑑別診断としてあげられたものは,中に出血している嚢腫あるいは嚢腫を伴うか出血している腫瘍ということであつた。

症例

両側腎細胞癌とその骨転移に対して保存手術を行なつた1例

著者: 牛山武久 ,   五十嵐一真 ,   安藤正夫 ,   大島博幸 ,   青木望

ページ範囲:P.163 - P.166

はじめに
 両側腎細胞癌は剖検例では比較的多く認められているが,臨床的に発見されることは少なく,その報告例も限られており,臨床的に見過されていることが多いと思われる。われわれは最近,骨転移より発見された両側腎細胞癌の1例を経験し,転移巣を切除し,一側腎は摘除,他側腎には保存手術を行ない,2年8ヵ月にわたり経過を観察したので報告する。

先天性単腎にみられた嚢胞腎の1例

著者: 宍戸悟 ,   千野一郎 ,   小池六郎 ,   工藤潔 ,   斉藤賢一 ,   千野武裕

ページ範囲:P.167 - P.170

緒言
 先天性単腎における嚢胞腎は極めて稀であり,今回本症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

先天性腎動静脈瘻の1例

著者: 守屋至 ,   宮川征男 ,   山口脩 ,   高田斉 ,   高梨利一郎

ページ範囲:P.171 - P.174

はじめに
 腎動静脈瘻は比較的まれな疾患である。しかし,腎動脈撮影法の普及に伴つて発見される機会が増加し,報告例が相次いでいる。われわれも最近病理組織像に興味ある所見がみられた腎動静脈瘻の1例を経験したので報告する。

原発性上部尿路扁平上皮化生—尿路白板症症例

著者: 藤田公生 ,   鈴木和雄 ,   田島惇 ,   阿曽佳郎

ページ範囲:P.175 - P.178

緒言
 上部尿路に結石や結核などの疾患を伴うことなく扁平上皮化生の起きることは少ない。扁平上皮化生が角化を伴つていれば完全型白板症(leuko-plakia)と呼び,角化物が重積して腫瘤を形成していれば真珠腫(cholestcatoma)と呼ぶが,neo-plasmでないものに"腫"という名称をつけるのは不適当であるという考え,また扁平上皮化生をただちに白板症と呼び,前癌状態と定義するのは適当でないという主張がみられるようになつている。そのような観点から角化を伴う原因不明の尿管扁平上皮化生の1例を報告し,本邦例を集計し,考察を加えたい。

Demand型心臓ペースメーカー植込み患者のTUR-P

著者: 川口安夫 ,   岡崎武二郎 ,   柳沢宗利 ,   三浦勇 ,   内堀陽二

ページ範囲:P.179 - P.182

緒言
 1963年,はじめてペースメーカーの植込みが臨床的に本邦において行なわれ,その後年々症例も増加し,治療目的も徐脈性不整脈にたいする心拍制御にとどまらず,心室異常興奮および上室性頻脈にまで拡大されてきた。将来増加する心臓ペースメーカー装置患者と年齢的にoverlapする老人泌尿器疾患の合併に対して,TUR手術法を検討し対処する必要がある。今回われわれはDemand型ペースメーカー(以下PMと略す)植込み患者に高周波電流を利用する経尿道的前立腺切除術を施行し,その影響について検討し, TUR手術の安全性を考察した。

膀胱にみられた異所性前立腺組織の1例

著者: 阿部定則 ,   上野精

ページ範囲:P.185 - P.188

緒言
 正常の膀胱頸部から三角部にかけての粘膜下にみられる前立腺組織は,subcervical, subtrigonalglandsと呼ばれているが,その他の部位の膀胱壁筋層内に,異所性前立腺組織を認めた報告はまれである。われわれは,膀胱の尿管口間靱帯やや後方にみられた異所性前立腺組織の1例を経験したので報告する。

交見室

膀胱拡大術について,他

著者: 堀内誠三

ページ範囲:P.190 - P.191

 臨泌31巻12号の「萎縮膀胱に対する拡大術」13篇を興味深く拝読した。
 筆者はS状腸を用いた拡大術をほとんど行なつていないので,回腸利用の拡大術について私見をのべる。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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