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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科32巻5号

1978年05月発行

雑誌目次

綜説

細菌の薬剤耐性について

著者: 五島瑳智子

ページ範囲:P.403 - P.416

 感染症の原因療法として,生体内に侵入した病原体に直接作用する化学療法は,1933年にDomagkがサルファ剤を発見し,1929年,Flemingによつて青カビから見出されたペニシリンが,1942年Floreyらによる共同研究により実用化されるに至り,抗生物質が次々登場し感染症の治療に貢献した。
 しかし,それらの薬剤に耐性を示す菌が次第に増え,ペニシリン,テトラサイクリン,エリスロマイシンなどに多剤耐性を示す黄色ブドウ球菌や,ストレプトマイシン,サルファ剤,クロラムフェニコール,テトラサイクリンに多剤耐性の腸内細菌および抗結核剤に耐性化した結核菌などが問題となつた。

手術手技

停留睾丸の手術—De Netto法

著者: 酒徳治三郎 ,   滝原博史 ,   那須誉人 ,   越戸克和

ページ範囲:P.419 - P.422

はじめに
 停留睾丸に対する治療法としてはホルモン療法と外科療法がある。この両者のうち,ホルモン療法は必ずしも満足すべきではなく,われわれの成績では約20%の成果しかみられず1),したがつて確実な外科的療法が特に重要であると考える。
 停留睾丸を陰嚢内の正常位置に固定する手術,すなわち睾丸固定術には古くから多くの方式がある。われわれは睾丸を周囲から十分に遊離し,精系に張力がかからなければ術後に牽引の必要はないと考え,約10年前よりDeNetto&Goldberg2〜4)の記載した非牽引性肉様膜外睾丸固定術を行ない,現在までに112例,151側の手術を経験した。ここではその手術手技についてのべ,若干の考察を加えたい。

停留睾丸の手術—Torek法

著者: 野中博

ページ範囲:P.423 - P.426

緒言
 停留睾丸は泌尿器科領域の先天異常のうちでは比較的頻度の高い疾患である。患者自身あるいは両親の来院時の訴えは美容的ならびに心理的なものが多いが,本症のために造精機能に障害がおこり,また陰嚢内睾丸に比し外傷をうけやすく,さらに悪性腫瘍発生の危険が多いという事実の方がむしろ重要である。したがつて治療の目的もこれらの点を重視すべきで,とくに造精機能の保持および改善には5歳頃までに睾丸を陰嚢内の正常位置に下降させることが望ましいという意見が多い。
 さて治療方法は,(1)待期療法(watchful wait-ing),(2)ホルモン療法,(3)手術療法(睾丸固定術)に大別され,また治療方針は当然年齢,睾丸の停留位置などによつて適当な方法を選び,あるいは併用することになる。それぞれの治療成績は多数報告されているが,各治療法の内容については賛否様々な意見がある。ここではこれらの詳細には言及せず,手術療法のうちTorek1)の術式について述べる。

停留睾丸の手術—Winsbury-White法

著者: 寺島和光

ページ範囲:P.427 - P.430

はじめに
 停留睾丸の手術法は古くからいろいろ考案されていて種類が多く,そのうちのいくつかは今日でも使われている。しかし,わが国では手術を原法通りに忠実におこなつている人は少なく,自分の好みに合わせた"変法"をとつていることが多いようである。以下に述べる著者の手術方法もいわばWinsbury-White法1)の変法とよんでよいものであろう。

文献抄録

睾丸捻転について

ページ範囲:P.430 - P.430

 睾丸捻転症による若年者の陰嚢内腫脹,疼痛の鑑別診断は,早期の外科的処置が必要なために臨床上極めて重要で,かつ最近症例も増加している。Barkerら(1976)の報告では,睾丸捻転症500例中90%は睾丸を救い得なかつたとしているが,最近ではParker(1971)その他の人々の報告によると,50〜60%に睾丸を救い得たとされている。しかし,救急処置により血流を回復した睾丸あるいは反対側の睾丸の機能などについては不明な点が多いので,著者らは捻転整復あるいは除睾術後followupし得た48症例について4ヵ月から最長13年,平均4年6カ月の経過観察の結果について報告している。
 48症例中急性捻転症例は44例で,うち28例は睾丸整復と対側睾丸固定,16例は除睾術と対側固定,4例は疼痛反覆のために固定術のみを施行した。まず整復睾丸の大きさの変化については,対側睾丸の大きさ(容積)と比較検討したが,整復睾丸28例中9例は捻転発症後4時間以内に整復し得たので萎縮は認められなかつた。他の19例は大なり小なり萎縮を呈したが,超音波Doppler法による血流状態検索では正常であつた。術後陰嚢内症状については,睾丸整復と対側睾丸固定を施行した例では症状を訴えなかつたが,対側睾丸の予防的固定術を行なわなかつた25例については8例(30%)に睾丸痛の反覆が認められた。8例中2例は固定術を施行した。

講座

臨床統計入門(5)—ある疾患の性別または年齢別発生頻度の比較

著者: 杉田暉道

ページ範囲:P.433 - P.437

 ある疾患の性別または年齢別(組み分けが2つの場合)の発生頻度を検討するには2つの標本百分率の比較の方法を用いればよい。
 1.例数が多い場合の2つの標本百分率の比較

原著

前立腺の手術—Open surgeryとTURの手術成績

著者: 野口和美 ,   宮井啓国 ,   高井修道

ページ範囲:P.441 - P.446

緒言
 前立腺肥大症は老人病の一つと考えられ,日本人の平均寿命の延長に伴い,高齢者での手術件数が増加してきている。われわれは当教室で最近行なわれた前立腺肥大症に対する手術をOpen surgeryとTURとに分け,その適応および術後成績を検討し,若干の考察を加えた。

選択的精巣静脈造影法の検討

著者: 松下昌人 ,   光川史郎 ,   松田尚太郎 ,   白井将文 ,   杉田篤生

ページ範囲:P.447 - P.451

はじめに
 脈管造影法は泌尿器科領域においても種々の脈管に施行されているが,選択的精巣静脈造影法に関しては数例の報告例をみるにすぎない1〜3)。われわれは12症例に選択的逆行性精巣静脈造影法を試み,本法が精索静脈瘤,停留睾丸の診断,治療方針の決定に有用な検査法であると考えられたので報告する。

陰茎海綿体裂傷(陰茎折症)—自験12例の検討

著者: 大野一典 ,   熊本悦明 ,   江夏朝松 ,   青山龍生 ,   本間昭雄 ,   寺田雅生 ,   疋田政博

ページ範囲:P.453 - P.458

緒言
 陰茎の外傷を分類すると,第1表のように大別される。一般に陰茎折症という診断でまとめられているものは,勃起時の陰茎に外力が作用し,陰茎の海綿体白膜,あるいは海綿体自体の断裂をきたし,部分裂傷にすぎないものであるが,受傷時の断裂音と陰茎の屈曲,皮下出血などの外観より,折症(fructure)という名称が用いられている。
 すなわち本疾患は,第1表に示した分類の2)〜4)に入るものを広く集めており,一種の臨床的診断名といえよう。

Urological Letter

腎細胞癌の再発,他

ページ範囲:P.446 - P.446

 Dr.Donald Boatwrightは腎癌の局所性再発の発見にはCTが勝れていることをW.G.U.L.のNov.14,1977号に発表している。放射線医学を専攻している一友人が局所に再発がないのに遠隔部位に転移すろことはない,と主張している。そこで,摘出したあとの腎床を定期的(年に一度?)にCTや血管撮影で検査していくことは大いに意味があるだろう。

症例

完全膀胱外反症の1例

著者: 高橋信好 ,   成瀬克邦 ,   小野寺孝夫 ,   佐藤孝充 ,   下山茂 ,   鈴木唯司

ページ範囲:P.463 - P.467

緒言
 膀胱外反症は先天的に膀胱前壁および下部腹壁が欠損し膀胱粘膜が外部に露出する奇型である。最近1歳男子の完全膀胱外反症に膀胱形成術を施行し,一応の目的を達しえたので文献的考察を加えて報告する。

陰嚢内に原発した平滑筋肉腫(Leiomyosarcoma)の1例

著者: 藤岡知昭 ,   岡本重禮 ,   永田幹男 ,   鈴木敏幸

ページ範囲:P.469 - P.472

緒言
 正副睾丸あるいは精索にまつたく関係なく陰嚢内に原発する腫瘍(陰嚢内腫瘍)は非常に稀である。われわれは陰嚢内腫瘍の1例を経験したので報告する。

睾丸傍体捻転症の1例

著者: 三橋公美 ,   松野正 ,   松下高暁 ,   高村孝夫

ページ範囲:P.473 - P.475

緒言
 睾丸付属小体は,睾丸または副睾丸に付着もしくはその付近に存在する胎生期の遺残物であり,その付着部位により①睾丸垂appendix testis,②副睾丸垂appendix epididymis,③睾丸傍体para-didymis,④迷管vas aberransに分けられている2)
 睾丸付属小体捻転症の本邦における最初の報告は,井上が1933年に睾丸垂捻転症を睾丸小泡体転捩症の1例として発表しており,以来大熊ら5)は本邦文献上23例を集計している。その内訳は,睾丸垂捻転症13例,副睾丸垂捻転症10例であり,睾丸傍体と迷管の捻転症例の報告は現在まで見当らない。今回われわれは,4歳男児にみられた睾丸傍体捻転症の1例を経験したので報告する。自験例は本邦文献上第1例目であり,欧米例を含めると4例目である。

副睾丸平滑筋腫の3例

著者: 石井泰憲 ,   上野精 ,   小磯謙吉 ,   小川秋実 ,   新島端夫

ページ範囲:P.477 - P.480

緒言
 副睾丸腫瘍は比較的まれな疾患である。われわれは,1963年より1977年末までの15年間に3例の副睾丸原発の平滑筋腫を経験したので報告する。

交見室

Stress incontinenceについて,他

著者: 黒田一秀

ページ範囲:P.482 - P.483

 尿失禁については,内外ともに術語使用に混乱があり,確かめに字引をみたりすると適正な表現がいよいよわからなくなつたりするのが現状であろう。ついでにcontinenceにもよい邦語がない。見出語に載つてない辞書もあるくらいである。International ContinenceSocietyのT.HaldをchairmanとするStandardiza-tion of Terminology of Lower Urinary Tract Func-tionの提案も故あることである。
 何故の混乱か,混乱というよりは,個々の著者は自己の見解に従つて使用されているのであるから,不統一というべきであろうが,とにかく思いつくままに理由をあげてみる。1)不随意に尿が漏れるという現象は外見だけでは類別が困難である。原因は多彩なのに現象が単純である。2)問診だけで見当をつけることが多く,実際に漏れの現場を観察することが少ない。3)検査法自体が多種多様である。同じ原理の検査法でも,単位のちがう装置とか術式を使つている。4)術語の表現に急迫とか緊張とか,主観というか病者の知覚が関係する形容詞が入つている。5)著者によつて結論を引き出した患者母集団に微妙な差があるなどということであろうか。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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