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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科32巻7号

1978年07月発行

雑誌目次

綜説

下大静脈造影

著者: 平松京一 ,   古寺研一 ,   田崎寛

ページ範囲:P.603 - P.615

はじめに
 腹部血管造影の進歩と普及には著しいものがあるが,大部分は動脈系の造影にスポットがあてられて来た観がある。1960年代の終わりから副腎静脈や腎静脈の造影が開発され,静脈造影にトピックスが集中したが,下大静脈の造影は,ともすればこれらの新しい検査法のかげにかくれてしまい,その臨床的な価値が十分に評価されていないようである。しかしながら悪性腫瘍にしても,また血管性病変にしても,その治療方針を決定する上に下大静脈の造影が不可欠であることが多い。
 下大静脈の造影は経腰的大動脈造影法の開発者として有名なdos Santos1)によつて1935年にはじめて,外科的に露出した伏在静脈から造影剤を注入することによつて試みられたが1),その後Fari-nas(1947)2)が同じ方法に上腹部を外からバルーンで圧迫して造影効果を向上させている。同じく1947年にはO'Laughlin3)が大腿静脈の経皮的穿刺による下大静脈の造影を報告したが,これが現在の下大静脈造影法における基本方式となつている。

手術手技

副腎腫瘍摘出術—褐色細胞腫の手術

著者: 渡辺泱 ,   三品輝男

ページ範囲:P.619 - P.623

はじめに
 副腎腫瘍摘出術が一般の外科手術と異なる特徴は,腫瘍の局在性診断と術前後の患者管理が非常に重要であつて,これらの成否が直接手術の成否を左右するところにある。私たちはかねがねこの点を大いに強調し,多くの報告を行なつてきた。しかし,褐色細胞腫の手術においては,手術手技そのものも各種泌尿器科手術のうちで最も難しいもののひとつであり,ことにほかの副腎腫瘍と比べて,褐色細胞腫は大きさや発生部位,それに周囲との癒着の程度などが症例ごとにきわめて多様性に富んでいることを考えれば,手術方法や技術に関する研鑚も,決しておろそかにすることはできない。
 そこで本稿では,編集部の御希望もあつて,褐色細胞腫摘出に際しての手術手技のみを,重点的に述べることにした。局在性診断や術後管理については,ほかの記述1〜5)を参考にしていただければ幸甚である。

副腎腫瘍摘出術—原発性アルドステロン症の手術

著者: 原種利 ,   近藤厚

ページ範囲:P.625 - P.629

緒言
 原発性アルドステロン症は副腎性高血圧症の中でも比較的多くみられ,術後の予後も良好である。また副腎外科の中でも術中術後の管理が比較的容易である。
 本症の手術症例数は,最近のめざましい診断技術の進歩により漸次増加し,われわれ泌尿器科医にとつては,原発性アルドステロン症の手術そのものは腎摘出術とあまり変わらない程度の手術となつている。

Urological Letter

腎盂のブラシ生検/精管結紮(切断)術に剃毛は必要か

ページ範囲:P.623 - P.623

 腎盂ないし腎杯内の疑わしい充盈欠損の処理は術前診断の確定が困難であるという理由で常に問題になる。近頃逆行性ブラシ生検法がWilliam B.Gillによつて初められ,多くの人によつて採用されている。筆者はSageProducts製用具を求め,製作者の使用説明書に従つて4例にブラシ生検法を行なつてみた。このうち3例とも不満足な結果だつたし,4例目に至つてはまるでひどいことになつた。第1例目では腫瘍組織を得ることには成功したが,患者は激しい疝痛を起こし,一時的ではあつたが,腎不全を起こした。第2例も激しい痛みと腎不全を起こしたし,腎摘してみたら広汎な壊死が起こつていた。他の2例ではワイヤーガイドを入れ,その上に少し太目のカテーテルを入れようとしたが傷つけがちなので中止した。代りに先端に孔のあいた8号のカテーテルを充盈欠損のある部分にまで挿入し,ガイドワイヤーの先を少し曲げカテーテルの中に入れ,ひねりながらカテーテルの孔を出し入れした。そしてつづいて腎盂を生理食塩水で洗浄してかなりな量の細胞成分を得た。
 この経験から,先端に孔をあけそれにブラシをつけたもので,もつと副損傷の起こらないカテーテルが作れるのではないかと考えた。恐らくもう少し小さいブラシを膨大部に入りこませておき,それを腎盂の適当な場所で押し出し,回転させることができるだろうと考えている(付図参照)。

講座

臨床統計入門(7)—2つの薬剤間の有効性の比較

著者: 杉田暉道

ページ範囲:P.631 - P.635

 2つの薬剤を何名かの患者群に無作為に投与し,その結果から2つの薬剤間に薬効差があるか否かをみるにはいくつかの方法があるが,ここではその中の2,3の方法を紹介する。

原著

経過上問題となつた腎盂腫瘍

著者: 村山猛男 ,   田島惇 ,   河辺香月

ページ範囲:P.639 - P.643

 腎盂腫瘍は泌尿器科領域ではまれな疾患ではなく,その診断,治療および予後については一応総括的にはまとめられているが,実際の診療に当つてはまだ多くの問題が残されている。われわれは最高9年間経過を観察しえた症例のうちその経過ならびに診断に関してretrospectiveに検討した結果,いくつかの興味ある点を見出した5例(3年間)の腎盂腫瘍についてその知見を報告する。

新たに開発したYPAT−1用膀胱砕石器

著者: 高崎悦司 ,   村橋勲 ,   永田正義

ページ範囲:P.645 - P.647

緒言
 YPAT−1(Urat−1)による砕石の実験的および臨床的な経験は,すでに発表したところであり1,2),簡単に短時間に砕石できるなどの多くの利点を有するのを認めたが,砕石後の結石小片の除去には従来と同じく異物鉗子や吸出器をあらためて膀胱内に挿入し,盲目的に長時間をかけて行なわねばならぬ煩しさが残されている2)。この欠点を除くためにTUR用の外管に挿入できるYPAT−1用砕石プローブの器具を考え,TURとともにその外管をそのままで砕石プローブを挿入し,electro-hydraulic lithotripsyさらに異物鉗子を挿入したり,吸出器を接続しての結石破片の抽出吸出が,一連の作業として行なえる方法を工夫した。

前立腺癌の化学療法

著者: 藤田公生

ページ範囲:P.649 - P.651

緒言
 前立腺癌に対するnon-hormonal,cytotoxicな化学療法の評価は,現在のところ高いものとはいえない。しかし,前立腺癌に対するホルモン療法に限界があることがはつきりしてきたために,とくに海外で化学療法の再検討が行なわれつつあり,その効果を認める報告も散見されるようになつてきた。しかしながらわが国においては,前立腺癌に化学療法が有効であるという報告はほとんどみられていない。著者は多剤併用化学療法をとりあげて,前立腺癌の治療に効果のあることを認めた1)が,その後の経験を報告してその効果と限界について検討する。

過去5年間(1972年4月〜1977年3月)に経験した術後消化管出血の臨床的検討

著者: 勝見哲郎 ,   西東康夫 ,   長野賢一 ,   黒田恭一

ページ範囲:P.653 - P.658

 術後消化管出血患者の死亡率は,その治療法に関する数多くの報告にもかかわらず高位を保つており,なお検討の余地がある。われわれは泌尿器科手術後に消化管出血をきたした当教室症例を集計したので若干の考察を加え報告する。

文献抄録

Cis-Diamminedichloroplotinumによる進行性膀胱癌治療について

ページ範囲:P.643 - P.643

 白金化合物cis-diamminedichloroplatinum〔Ⅱ-NSC119875〕(以下CDDPと略)が,膀胱癌に用いられたのは1973年であるが,当時は副作用として腎,聴覚障害が強く認められた。そこで著者らは投与方法を改良した治療成績について予報的に報告している。
 CDDPで治療した症例は19例で,Stage D 14,StageC3,Stage B2例で,いずれも外科的,放射線治療後に再発転移をきたした進行癌例である。CDDPの投与法は1mg/kgとして37.5gのマニトール,40mEqの塩化カリを5%2,000mlのデキストローゼに加えて6ないし8時間かけてゆつくり点滴静注する。これを週1回,6週間継続し,その後は3週に1回投与する。点滴の翌日には各種の血液化学的検査,聴力検査を実施した。治療成績を総括的にみると,腫瘍とその転移巣の完全消失をみた例は,Stage Dで1名(5%)で,6ヵ月間そのままで経過したが心疾患で死亡した。腫瘍と転移巣が1/2以上縮少したいわゆるpartial remmisionを示した例は8例(42%)に認めた。内訳はStage D7,StageB1例である。また腫瘍に原因する疼痛の完全消失がStage Dで1例で,この薬剤にまつたく反応しない例が7例にみられた。

症例

腎結石を伴う腎結腸瘻の1例

著者: 箕輪龍雄 ,   川村直樹 ,   西川源一郎 ,   高橋茂喜 ,   川井博

ページ範囲:P.663 - P.667

緒言
 腎結腸瘻は,腎消化管瘻の中で最も多く,その原因として,腎の慢性感染症,結石,外傷,結核,腫瘍,などが挙げられている。またその発生部位は,解剖学的関係から結腸と腎外側部との交通より始まるのが普通である。今回われわれは,腎結石性腎盂腎炎に続発したと思われる腎結腸瘻の1例を経験したので,報告する。

孤立性腎嚢胞壁内にみられたシート状腫瘍の1例

著者: 加藤隆司 ,   渡辺健二

ページ範囲:P.669 - P.672

緒言
 孤立性腎嚢胞および腎腫瘍は各々単独では特に稀な疾患ではなく,日常の診療においてしばしば遭遇するものである。しかし,この両者が同一腎に共存することは極めて稀である。Gibson1)は嚢胞と腫瘍の共存例を4つの型に分類したが,その後Kaiser2)はGibsonの分類に改訂を加えて5つの型に分類した。すなわち 1)嚢胞と腫瘍が無関係に存在するもの 2)腫瘍が嚢胞化したもの 3)Cystadenoma 4)腫瘍の末梢部に嚢胞を生ずるもの 5)嚢胞壁内にシート状にclear cellが分布するもの(以下,シート状腫瘍)

骨変化と尿管結石を伴つた原発性副甲状腺機能亢進症の1例

著者: 竹前克朗 ,   南後千秋 ,   沢木勝 ,   久住治男 ,   南風原英之

ページ範囲:P.673 - P.676

緒言
 従来,本邦ではまれとされていた原発性副甲状腺機能亢進症は近年報告例が散見されるが,診断に至るまでに紆余曲折を来す場合も少なくない。われわれは高度の骨変化により跛行を来し,さらに尿管結石を伴つた副甲状腺腺腫の1例を経験したので報告する。

後天性(結核性)砂時計膀胱

著者: 富樫正樹 ,   中田康信 ,   山田智二 ,   森元譲一

ページ範囲:P.677 - P.680

緒言
 膀胱結核の経過中あるいは治療により膀胱が砂時計状となることはよく知られている。最近われわれは結核の治療中に膀胱が砂時計状となつた症例に対し,経尿道的操作により砂時計様変形が消失し膀胱容量を増加せしめ得た症例を経験したので報告する。

膀胱憩室腫瘍の1例

著者: 田代和也 ,   町田豊平 ,   増田富士男 ,   三本誠 ,   吉良正士 ,   寺元完 ,   岡崎武二郎 ,   陳瑞昌 ,   小寺重行

ページ範囲:P.681 - P.684

緒言
 膀胱憩室は,日常よくみられる疾患であるが,それに合併する憩室腫瘍は比較的まれなものである。教室では,先に結石を伴つた膀胱憩室腫瘍の1例を発表している1)が,最近,結石を伴つた膀胱憩室腫瘍を経験したので報告するとともに,本邦における憩室腫瘍の76症例を集計し,若干の統計的考察を行なつた。

交見室

前立腺の手術—Open surgeryとTURの手術成績,他

著者: 岡本重禮

ページ範囲:P.686 - P.687

 本誌32巻5号,野口和美先生らの論文拝見させて載きました TURは私も多少の経験があり興味をもつて通読いたしましたが,その折,編集部より感想を述べてほしいとの御連絡がありTURについてだけの所感としてペンをとつた次第です.
 私は内視鏡手術は泌尿器科医にとつて重要な基本的手技であると考えておりますが,わが国ではややたち遅れた感があり,論文中に著者が今後の課題として指摘している卒後教育システムの改善にまつたく同感であります.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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