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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科32巻8号

1978年08月発行

雑誌目次

綜説

レニン・アンギオテンシン系の諸問題

著者: 河辺香月

ページ範囲:P.707 - P.717

はじめに
 周知のようにレニンは前世紀の終わりにTieger-stedtとBergmanによつて発見された腎性昇圧物質であるが,Goldblattの腎動脈狭窄による実験的高血圧の作成によつてその生理学的意味が再認識された。したがつて腎性高血圧を論ずるには,レニンを避けて通るわけにはいかない。現在では高血圧患者を診たら必ずレニンを測定して鑑別診断に役立てるべきであるというほどになつており,高血圧の単一の原因としてレニンを考えるのは行きすぎであるにしても,高血圧とレニンは不可分の関係にあるといつてよい。しかし,レニン・アンギオテンシン系(R-A系)の生物作用は第1表1)に示したように現在わかつているものだけでも広汎にわたり,単に高血圧との関係を論ずるのみでは片手おちというものである。R-A系は,最新の薬理学の教科書ではヒスタミン,hy-droxytryptamine,キニンおよびプロスタグランディンとともにautacoids(局所ホルモン)として扱われており,むしろその方が生理学的意義を端的に表現しているかもしれない。
 この稿ではR-A系のすべてについて論ずることはとうてい不可能なので,とくに最近のトピックスについて,臨床医として必要と思われることを,著者の規準で選んで解説することにする。すでに教科書的事実として記載されていることについては記述を簡単にし,また文献も省いた。

文献抄録

進行性前立腺癌(stage D)の白金化合物による治療

ページ範囲:P.717 - P.717

 白金化合物(Cis-diamminedichlo-roplatinum,CDDP)は有効な抗癌剤であるが,まだ前立腺癌に用いた報告がないので,著者らは21例のStage D前立腺癌の治療成績について述べている。
 症例はWhitemoreの分類によつてStage Dと判定されたもので,転移巣の検索はX線,RIを用いて施行した。症例21例中20例は以前に抗男性ホルモン療法,放射線療法あるいは手術療法をうけて再燃した患者である。

手術手技

腎部分切除術

著者: 仁平寛巳

ページ範囲:P.721 - P.724

はじめに
 腎部分切除術の適応は腎の上極または下極の部分に限局した病変の切除で,具体的な例としては以下のごとくになる。
 1.腎杯の感染,拡張などを合併した結石。

腎部分切除術

著者: 多田茂

ページ範囲:P.725 - P.728

 腎の一部を切除する手術は,すでに1867年にSpiegelbergによつてechinococcus cystが腎極に生じたものに対して行なわれている。その後,Czerny(1887),Kummell(1890),Waitz(1891),Israel(1901)らの報告があり,腎結石についてはKummellをはじめKoenig(1919),Young(1924),外傷についてはKeelty(1890),Baudenheuer(1891)の記載がある。そして1951年に至つてDuforは736例の腎部分切除術症例の文献的考察を行なつており,本術式が一般に多く施行されるようになつた。その適応も腎結石に多く,下腎杯に結石の再発が多く,その原因の内に腎杯壁の石灰化あるいは瘢痕化があげられて,腎多発結石においては下極の切除は現在も多く行なわれ,結石の再発防止に統計的にも効果をあげている。その他腎の限局性病巣が適応となる。その中には結核, 単腎または両側腎腫瘍,重複腎盂の一方の実質に機能喪失を認めた場合,区動脈による高血圧で腎梗塞を伴うもの,限局した動静脈奇形で血尿をくりかえすもの,限局性慢性炎症による変化(膿瘍あるいは組織化)などがあげられる。特に,最近はbench surgeryにも応用されている。
 部分切除術の出現普及とともに適応範囲も広くなり,また手術手技上の問題も工夫され改良されてきた。

Urological Letter

Scottの膨らまし得る陰茎副木の挿入,他

ページ範囲:P.724 - P.724

 1975年夏以来,筆者はこの膨らましうる陰茎副木の挿入に興味を持つてきた.これはこみ入つた複雑な手術手技であり,術前に患者およびその妻と十分な相談をしておかなければならないし,Minnesota Multiphastic Per-sonality Index(MMPI)を含めて精神科的検討をしなければならない。病院当局が協力的でなければならないし,手術および術後の看護に熟練した看護婦の協力が得られなければならない。ここFort LauderdaleのHolyCross病院はあらゆる点で筆者に協力してきてくれた。
 この副木はSmall-Carrion副木よりも取り付けがこみ入つている。しかし,陰茎をしなびた状態にもどし得るという点で,他のものよりも大いに受けている。患者は前記2つの装具の機能の違い,各々に起こり得る合併症および膨らみ方の効果などを理解しなければならない。手術を受けたあとその副木の膨らまし方およびしぼませ方を教えられ,それに慣れなければならない。患者はある程度の教養があり,物わかりが良くなければならない。この手術に適するか否かの判定に年齢は必ずしも制限されないが,老衰は適応ではない。

講座

臨床統計入門(8)—喫煙と膀胱がん発生の相関関係

著者: 杉田暉道

ページ範囲:P.729 - P.731

 膀胱がんと喫煙との関係を検討するには,いくつかの方法が考えられる。
 【問1】 某資料について膀胱がん患者および対照について喫煙の有無をしらべたら第1表のようになつた。これから膀胱がん発生と喫煙との間に関連が認められるか。

原著

泌尿器科領域における全身用コンピュータ断層撮影装置の使用経験

著者: 森永修 ,   田中啓幹 ,   藤原恒弘

ページ範囲:P.737 - P.740

緒言
 上部尿路疾患の診断は,従来触診,IVP,DIP,RP,腎シンチ,大動脈撮影,後腹膜気体撮影などの方法でなされている。もちろん上記方法は各種診断法の基本であり,その重要性はいうまでもない。われわれは近年急速に発展したComputedTomograpy(以下CTと略)を上部尿路疾患に施行し,その臨床的価値について若干の知見を得たので報告する。

圧痛点指圧法による尿管結石疝痛発作の消失についての統計的考察

著者: 田中亮 ,   樋口照男 ,   横山博美

ページ範囲:P.741 - P.745

緒言
 前報1)においてわれわれは正常人の90%および15名の尿管結石疝痛発作(疝痛発作と略す)患者全例に腰部第三腰椎肋突起の高さで大腰筋外側縁(D点)近傍に特異な痛みをもつ小圧痛点があること,およびこの圧痛点を正確に強く拇指にて圧した結果,結石の存在部位にかかわらず15名すべてに疝痛発作が速効かつ持続的に消失したことを報告した。その後症例数も増え現在までに疝痛発作で来院した全疝痛発作患者43名にこの方法を用いたところその結果は良好であつた。同時にこの圧痛点は小さいので特異な圧痛の出るように正確に圧すためには患者の体位は腹臥位または側臥位とし,拇指を用いて圧すのが最も能率的で手軽であるが,必ずしも指による圧迫による必要はないことも解つた。また以下の諸点についても注目すべきことであると思われた。(1)D点近傍圧痛点指圧(指圧法と仮称する)によつて疝痛発作患者の疝痛を消失させ良好な自然排石を認めた。(2)指圧法は疝痛消失に対して速効性があつた。(3)疝痛発作時鎮痙鎮痛剤の投与を受けたが疝痛が消失せず,薬剤投与後2ないし10時間経つて来院した患者では投薬を受けずに来院した患者に比べて指圧法による疝痛消失後の疝痛発作の再発率が高く,(4)疝痛消失持続時間も短い傾向が認められ,(5)疝痛に伴つた腹部のはつた痛みや下腹部膨満感(腹部随伴症状と略す)の発生が多く,(6)指圧法後のこの症状の残存率も高かつた。

膀胱破裂の11例—特に保存的治療法の可能性の検討

著者: 中橋満 ,   里見佳昭

ページ範囲:P.747 - P.750

緒言
 従来,膀胱破裂に対しては多くの場合手術的治療法が原則として行なわれている。しかしながら,1975年Richardsonら1)が,1976年にはRo-bardsら2)が留置カテーテルのみによる保存的治療法を報告している。今回,われわれは当院における過去10年間の膀胱破裂11例を集計し,彼らの保存的治療の適応をより一層明確にすべく検討を加えたので報告する。

S状結腸癌による膀胱への影響について—自験例4例をふくむ本邦33例の集計から

著者: 公平昭男 ,   近藤猪一郎

ページ範囲:P.751 - P.758

緒言
 S状結腸癌は,消化管腫瘍の中でも頻度は決して少なくない。しかし,症状の発現が割合少なく,かつ特異性を欠くため診断が困難なことが多い。一部には膀胱症状が先行し泌尿器科を受診しそこから逆に診断される場合もみられる、そこで今回著者らは泌尿器科側よりみたS状腸癌の膀胱浸潤をふくむ膀胱への影響について自験例をふくめ文献上,泌尿器科より報告された本邦33例について集計し,本症の泌尿器科領域における問題点について検討を加えた。

症例

腎回転異常を伴つた腎外腎杯の1例

著者: 濃沼信夫 ,   日景高志 ,   三橋慎一 ,   平岡真

ページ範囲:P.763 - P.767

緒言
 腎外腎杯とは,腎盂および腎杯の大部分が腎外に存し,腎実質とは小腎杯の段階で連結する極めて稀な先天性奇形である。1925年,Eisendrath1)が4例をまとめて報告したのが最初で,われわれの調べた範囲では,今日まで世界で21例の臨床報告をみるにすぎない。最近われわれは,腎回転異常および水腎症を伴つた腎外腎杯の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

巨大水腎症の1例

著者: 上田正山 ,   南武 ,   寺元完

ページ範囲:P.769 - P.772

はじめに
 水腎症は,泌尿器系疾患として日頃よく経験する病態であるが,水腎症の中でも腎盂容量が1l以上のものを特に巨大水腎症と称している。最近,腎盂容量約16lの1例を経験したので,その症例を報告するとともに現在までに報告されている304例の巨大水腎症についての統計的考察をあわせて報告する。

補副腎皮質腺腫によるCushing症候群の1例

著者: 石井泰憲 ,   富永登志 ,   横山正夫 ,   高見茂人 ,   毛利昇 ,   阿曽佳郎

ページ範囲:P.773 - P.777

緒言
 副腎髄質組織の異所的存在は傍節(パラガングリオン)としてしばしばみられるが,副腎皮質組織の異所的存在の報告は少ない。また,異所的副腎皮質由来の腺腫,すなわち補副腎皮質腺腫がホルモン過剰症状をひきおこした症例の報告は極めて稀である。われわれは最近Cushing症候群の臨床症状を呈し,手術にて補副腎皮質腺腫を確認した1例を経験したので報告する。

帯状疱疹脊髄炎による神経因性膀胱の1例

著者: 高木隆治 ,   上原徹 ,   林万リ

ページ範囲:P.779 - P.783

緒言
 帯状疱疹に排尿障害を合併することは比較的稀である。最近われわれは帯状疱疹脊髄炎による神経因性膀胱により尿閉をきたした稀な1例を経験したので報告する。

外尿道口嚢腫の2例

著者: 東海林文夫 ,   仁藤博

ページ範囲:P.785 - P.787

緒言
 外尿道口嚢腫は性器会陰部縫線の嚢腫の一型で,その発生には先天性要因が考えられている1)。われわれは最近2例の外尿道口嚢腫を経験したので報告し,その成因について若干の考察を行なつた。

交見室

「Kerr-Colby法による尿管回腸吻合後に発生した導管内尿管遊離断端の狭窄」について/「Regional Renal Hypothermiaによる腎結石の手術」について

著者: 阿曽佳郎

ページ範囲:P.788 - P.788

 本誌32巻6号掲載の東四雄先生らによる上記論文を興味深く拝読した。
 回腸導管の場合,導管は尿の貯溜する場所ではないので尿管との吻合の際に逆流の予防ということは心配しないでよいが,吻合部の狭窄が問題である。そのためDraperら,Wallace,その他の臨床家により吻合部を大きくするための種々の工夫がなされていることは本論文の報告者らが指摘している通りである。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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