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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科33巻10号

1979年10月発行

雑誌目次

綜説

腎とホルモン

著者: 小磯謙吉

ページ範囲:P.941 - P.952

はじめに
 腎とホルモンとの関係は古くから研究され注目されてきたが,近年に至り腎臓(病)学および内分泌学の進歩により次第に両者の関連が明らかになつてきた。
 腎臓に関する機能面での研究は当初クレアランス法を中心とした総腎機能の解明より,次第にネフロン各部分の機能解析へと移り,ストップ・フロウ法の導入に始まり,ついで微細部分の機能面での検討としてマイクロ・パンクチャー法が導入され,ネフロン部分の機能が明らかにされている。極く最近ではnephron perfusion techniqueが開発され,新しい知見が集積されつつある1)。生化学面の進歩としてネフロン各部分の細胞レベルでの機能も明らかにされつつある。形態学的には光顕レベルより電顕レベルの検討がなされ,機能面との関連において検討が行なわれている2)

手術手技 外来小手術のコツ

睾丸水瘤の手術

著者: 野村芳雄

ページ範囲:P.955 - P.957

はじめに
 睾丸水瘤は睾丸固有鞘膜腔に滲出液が貯留したものであり,その発生は先天性と後天性とにわけられる。前者は乳幼児にみられ,腹膜鞘状突起が完全に閉鎖していないことが主因とされている。後天性のものには睾丸,副睾丸の急性および慢性炎症,外傷,腫瘍などに続発し,いわゆる症候性水瘤といわれるものもあるが,最も多いのは原因不明のいわゆる特発性水瘤である。治療は症候性のものでは原疾患に対する治療がまず行なわれるのが原則であり,水瘤そのものが治療の対象となるのは先天性水瘤および特発性水瘤である。これら水瘤は陰嚢疾患の中でも最も頻度の多いものであり,泌尿器科外来における小手術として遭遇する機会も多い。以下われわれの経験を中心に,外来における睾丸水瘤の治療の要点について述べる。

睾丸水瘤の手術

著者: 南孝明

ページ範囲:P.959 - P.961

はじめに
 睾丸水瘤は特発性と症候性がある、症候性のものはあまり大きくなることはない。しかし,睾丸腫瘍に合併してきたときには陰嚢は大きく腫大し,波動性を呈し,特発性と区別がつかないことがある。このことから,逆に大きな睾丸腫瘍患者がたいてい1回ぐらい他医で穿刺をうけてわれわれ泌尿器科医を訪れる結果になつていると思う。
 透光性検査がもつとも手軽な検査であるが,最近はファイバースコープの光源とライトケーブルを用いており,光が強く発光体が小さいのできわめて有用である。

睾丸水瘤の手術

著者: 丸山邦夫

ページ範囲:P.963 - P.965

 睾丸水瘤とは睾丸固有鞘膜腔内に体液が異常に多量に貯溜した状態をいい,無痛性に陰嚢が腫大し,多くは透光性を認め,陰嚢皮膚は特に変化を認めない。水瘤が大きくなると睾丸は触れないことが多く,穿刺により淡黄色透明な液を得る。固有鞘膜が炎症性に肥厚しているときには透光性がなくなることがある。
 陰嚢内容の解剖的関係は睾丸,副睾丸が腹壁の各筋層および筋膜層の延長である数層の膜によつて包まれている。内側より二葉の睾丸固有鞘膜で固有鞘膜腔を形成し,ついで総鞘膜,挙睾筋,挙睾筋膜,肉様膜,陰嚢皮膚となつている(第1図)。

文献抄録

偏側性の腹部停留睾丸について

ページ範囲:P.957 - P.957

 偏側性でかつ触知できない停留睾丸の治療については,その睾丸の将来悪性化率の高いこと,妊孕性の問題あるいは美容的問題などを考慮して処置しなければならない。
 従来腹部停留睾丸に対して睾丸固定術を行なう理由としては,固定した睾丸からの精子形成能あるいは問細胞からの男性ホルモン分泌を期待しているわけであるが,最近の諸家の意見では腹部停留睾丸は,先天的な発育不全の状態にあり,精子形成障害があるのみならず,悪性化率の頻度も非常に高いと言われている。Hadziselimovicらによると停留睾丸では既に2歳前後において精細管障害あるいはgerminal細胞数の低下が見られて先天性の欠陥が指摘されている。

Urological Letter

Marshall-Marchetti手術直後の注意/陰嚢水腫には気をつけよう

ページ範囲:P.961 - P.961

 Marshall-Marchetti法をした場合は,そのすべての患者に次のような注意書きを与えている。この指示は厳重である。と言うのは,多くの患者が退院すると直ちに健康時と同じ質と量の仕事にかえり,間もなく,軽いが尿失禁に逆もどりするからである。
 注意書きの内容は次のとおり。

講座

泌尿器科領域の細胞診(4)—膀胱腫瘍細胞の形態とその病理組織学的背景

著者: 山田喬

ページ範囲:P.969 - P.976

 尿路に発生する大部分の腫瘍は移行上皮癌であり,次に扁平上皮癌,そして稀に腺癌および非上皮性腫瘍が発生する。したがつて膀胱腫瘍の細胞診の対象のほとんどは,移行上皮癌ということになる。先に記載したごとく,移行上皮癌は症例によりその悪性度が著しく異なり,またその細胞および組織構築も著しく異なる。したがつて単に悪性腫瘍か否かという診断のみならず,患者の予後を占うべき悪性度の判定なしには診断の意味が著しく減少する。それゆえ従来種々の角度より悪性度に関する移行上皮癌の臨床病理学的分類が行なわれ,それに基づいた治療法が選択されてきた。その代表的な分類は主として細胞異型に基づく悪性度の分類(Brodersの分類)と癌の深達度に基づく分類の両者を総合したいわゆるdual classifi-cationであろう。

原著

炭酸ガス・レーザーメスの泌尿器科的手術への応用—第2報包茎手術の経験

著者: 河村信夫 ,   ニムサクンナロン

ページ範囲:P.979 - P.981

 Sharplan炭酸ガス・レーザーメスの腎手術への応用経験については,すでに第1報1)で述べた。今回は包茎手術に対してのこのメスの応用経験について述べ,その際に使用する特殊器具の開発についても述べる。

症例

若年者にみられた腎盂移行上皮癌の1例

著者: 大森章男 ,   平塚義治

ページ範囲:P.983 - P.986

はじめに
 腎盂上皮性腫瘍は稀有な疾患ではないが,そのほとんどは40歳以上の高齢者にみられるもので,若年者に発生することはきわめて稀である。われわれは最近,18歳男子に発生した右腎盂移行上皮癌を経験したので報告し,若干の考察を加えてみたい。

自然腎盂外溢流を生じた交叉性腎変位の1例

著者: 原徹 ,   簑和田滋 ,   富永登志 ,   金子裕憲 ,   西村洋司 ,   福谷恵子

ページ範囲:P.987 - P.991

緒言
 交叉性腎変位は泌尿性器系の奇形のなかでも稀な奇形の1つである。今回われわれはこれに自然腎盂外溢流を発生した1例を経験したのでその報告をするとともに,交叉性腎変位ならびに自然腎盂外溢流について若干の考察を加えた。

網膜色素変性と難聴を伴つた巨大水腎症の1例

著者: 長沢脩一 ,   阪上通明 ,   尾形学 ,   福地総逸 ,   一条貞敏

ページ範囲:P.993 - P.996

緒言
 水腎症はしばしば遭遇する疾患であるが,内容液量が1lを越えるいわゆる巨大水腎症は比較的まれである。最近,著者らは,内容液量が10.3lに及んだ右巨大水腎症の1例を経験したので報告する。本症例ではさらに網膜色素変性と難聴を伴つており,これら三症候を伴う症例の報告は現在のところなく,極めてまれな症例と思われる。

進行性尿管腫瘍に対するPlatinum製剤の効果

著者: 阿部裕行 ,   戸塚一彦 ,   中島均 ,   秋元成太 ,   川井博

ページ範囲:P.997 - P.1000

はじめに
 今回,われわれは進行性尿管腫瘍(transitionalcell carcimoma)に対して,Platinum製剤を使用し,partial remissionをえた症例を経験したので報告する。

尿管に発生した細網肉腫の1例

著者: 小泉雄一郎 ,   柳沢温

ページ範囲:P.1005 - P.1008

はじめに
 悪性リンパ腫と総称されるリンパ系腫瘍は,泌尿器科領域においてはまれなものである。しかし,睾丸,腎,膀胱後部より発生の報告は比較的多くみられるが,尿管内に初発した報告は少なく,本邦においてはいまだみられない。われわれは今回,左尿管に発生した細網肉腫の1例を経験したので報告する。

ガラス片による膀胱刺杭創の1例

著者: 安藤徹 ,   小松原秀一

ページ範囲:P.1009 - P.1012

緒言
 開放性膀胱損傷である膀胱刺杭創は,杭様物体が体内に刺入し膀胱を刺傷することにより生ずるが,頻度は稀なものである。
 最近著者は68歳男性のガラス片による膀胱刺杭創を1例経験したので,現在までに報告されている症例をまとめて若干の考察を加えたい。

Cystitis glandularisの2例

著者: 森山信男 ,   伊藤一元 ,   馬淵基樹 ,   杉山喜彦

ページ範囲:P.1013 - P.1016

緒言
 われわれは47歳男性と80歳男性のcystitis glan-dularisを経験した。2例とも三角部を中心にポリープ状腫瘤が多発していた。1例は経尿道的切除後ほぼ1年を経過した現在,三角部に軽い浮腫状隆起を数ヵ所認めているので経過観察を厳重に行なう必要がある。1例は前立腺癌に合併したものである。本邦ではあまり報告されていない1〜6)ので若干の文献的考察を行なつた。

女子尿道平滑筋腫の1例

著者: 瀧原博史 ,   多嘉良稔 ,   酒徳治三郎 ,   平野英輔

ページ範囲:P.1017 - P.1019

緒言
 尿道に原発する腫瘍は泌尿器科臨床上,必ずしも稀ではないが,平滑筋腫は比較的稀であり,本邦文献上34例にすぎない1)。すでに当教室の多嘉良らが2例を報告しているが2),最近われわれは,さらに女子尿道平滑筋腫の1例を経験したので報告する。

Case Study

右側腹部痛を伴つた高度血尿症例

著者: 秋元成太

ページ範囲:P.1021 - P.1024

 33歳,主婦。生来健康で著患を知らない。6歳男子,2歳女子の2児あり。早朝,突然高度血尿をみたが,患者の訴えでは,血尿後にひきつづいて右側腹部痛(鈍痛)がおこり,軽度の発熱(37.1℃)もあつたという。翌日,当科を訪問したが,右側腹部は軽度の筋性防御のため腎はよく触診できなかつた。血圧は132/88,そのほか月経にはとくに異常はない。

交見室

いわゆる特発性腎出血について,他

著者: 三軒久義

ページ範囲:P.1026 - P.1027

 本誌33巻7号に掲載された村上信乃先生らの「いわゆる特発性腎出血について—特に血管像および腎組織像による検討」を興味深く拝読致しました。これに関連して,二,三私見を述べさせて頂きます。
 確かに,厳密な意味での特発性腎出血は頻度が少なく,診断技術の進歩とともに本症は減少していくべきものであることにはまつたく同感であり,その点から,泌尿器科医のとかく敬遠しがちな腎生検を精力的に行なわれた先生らの努力には深い敬意を表するものであります。しかしながら,先生らの論文を要約してみますと「いわゆる特発性腎出血患者36例に血管撮影と腎生検を行なつた結果,厳密な意味での特発性腎出血は3例のみであつた」ということになり,当初の診断基準の甘さが目につきます。また大胆にも「従来特発性腎出血とされて来た中には多数のIgA腎症が含まれていた可能性がある」ときめつけ,積極的に腎生検を行なうよう警告されています。腎生検の必要性は十分理解できるのですが,IgA腎症があまりにも多いため,その対象とした症例に多少疑問を感じます。少なくとも特発性腎出血という名称を用いる場合は("いわゆる"をくつつけていても),腎炎などの内科的腎疾患をできる限り除外する必要があります。この鑑別が困難なため,一般に特発性腎出1血を論ずる場合には肉眼的血尿のみを対象とすることが多いのですが,先生らの場合は顕微鏡的血尿の症例も対象とされています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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