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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科33巻3号

1979年03月発行

雑誌目次

綜説

泌尿器科領域の心身症

著者: 長田尚夫

ページ範囲:P.215 - P.224

Ⅰ.心身症とは
 最近,心身症についての関心が高まつてきたとはいえ,必ずしも正しく理解されているとは言い難い。泌尿器科領域における心身医学的研究が臨床各科にくらべ少ない現状から,本論に入る前に心身症とは何かについて簡単に説明しておく。
 日本心身医学会において1,2),「身体症状を主とするが,その診断や治療に心理的因子についての配慮が特に重要な意味をもつ病態」と定義され,これが狭義の心身症である。さらに,「身体的原因によつて発生した疾患でも,その経過に心理的因子が重要な役割を演じている症例や,一般に神経症とされているものがあつても,身体症状を主としている症例は,広義の心身症として扱つた方が好都合のこともある」これが広義の心身症である。

手術手技

膀胱全摘時の直腸損傷に対する緊急処置

著者: 白岩康夫

ページ範囲:P.229 - P.233

はじめに
 最近の膀胱癌に対する外科的療法は経尿道的切除術と膀胱全摘除術が増加し,膀胱部分摘除術が減少する傾向にあると言えよう。つまりいわゆるlow grade,low stageのものは経尿道的に治療できるし,浸潤度の高いものに対しては従来よりも適応が拡大されて全摘除術を行なう場合が増えているように思えるからである。そこで膀胱全摘除術を行なうにあたり,術中に遭遇するであろう直腸損傷についてどのように対処し,どのような点に注意すべきかを述べてみたい。

文献抄録

前立腺癌における骨スキャンの意義

ページ範囲:P.233 - P.233

 一般に前立腺癌と診断された時点で,癌の骨転移率はBuck(1975)の56%,Lentle(1974)の34%と相当な率であり,骨転移の有無は治療法の選択とも関連するので骨転移の有無は正確な検索が必要あることは言うまでもない。著者は過去3年間に75例の前立腺癌について骨転移の有無をスキャンとX線撮影にて比較検討すると共に,パラメーターとして組織所見,酸アルカリフォスファターゼ値,ヘモグロビン,血沈値などの動態と比較観察している。
 骨スキャンはTechnetium triphosphateまたはTe-chnetium pyrophosphateを20mCi注射して90分以上かけてスキャンする。X線の骨撮影は別途に施行して,読撮も別人が行なつた。X線検査と骨スキャンの対比では,44例(88%)の症例がX線では転移なしと判定されたが,スキャンではそのうち17例(38%)に異常取り込みを見た。X線で有骨転移例はすべてスキャンでも陽性となつている。全例について見ると,X線で転移陽性と判定されたものは12%であるが,スキャンで異常取り込みは46%と約3倍の陽性率であつた。また酸フォスファターゼでは,上昇値を示した14例中12例にスキャン陽性であり,アルカリフォスファターゼ値上昇の10例中9例にスキャン陽性であつた。

講座

臨床医のためのコンピュータ入門(3)—臨床データの処理(データの解析)

著者: 開原成允

ページ範囲:P.235 - P.240

 前回,データの収集,蓄積について解説したが,今回は計算機中に蓄積されたデータの解析方法について考えてみよう。
 蓄積されたデータを解析する目的としては,第一に集められたデータについての性質を定量的に記述することがあろう。たとえば,症状Aは何%発現,症状Bは何%発現,男女比は何対何であつたというような場合である。このように,集められたデータの定量的性質を記述することは,すべての解析の第一歩として著しく重要なことである。こうした比較的単純な表の作成によつて,多くの仮説が浮かびあがつてくるものであるから,頻度分布(ヒストグラム),クロス集計表などは,手間を惜しまず作る必要がある。

Urological Letter

I.再発性膀胱腫瘍に5—Fu注入療法,他

ページ範囲:P.240 - P.240

 膀胱腫瘍または上皮内癌の治療として膀胱内にサイオテーパを注入した患者に,血球減少が起こつた場合には,筆者らはJ.Kaufmanの薦めで5-Fuの注入法を用いてきたが,サイオテーパに匹敵する効果を挙げることができた。このように治療してきて,今までのところ薬による副作用の出た例はない。Dr.Kaufmanは,サイオテーパによる副作用が現われたと思われる例には5-Fuないしマイトマイシンの注入を薦めてくれた。しかし筆者はマイトマイシンの方の経験はない。
 5-Fuの膀胱内注入量は,1週に1度500mg入りのアンプル3個分(1,500mg)宛で,8週間用いる。5-Fuもまた血小板に対する毒性があるので,1週に1度は血小板および血球数をしらべなくてはならない。

原著

老人泌尿器科症例の合併症について

著者: 三橋慎一 ,   日景高志 ,   濃沼信夫 ,   平岡真

ページ範囲:P.245 - P.250

はじめに
 泌尿器科入院症例は手術を前提にしたものが多く,また少なからざる老人症例を含んでいる。よつてその管理には一般外科とは異なつた配慮を要する。今回当科における最近約5年間の老人入院症例について調査したので,その概要を報告したい。

MUMPS《コンピュータ》による膀胱腫瘍データの処理

著者: 横川正之 ,   福井巖 ,   和久井守 ,   大和田文雄 ,   鷲塚誠 ,   五十嵐一真 ,   当真嗣裕 ,   山田喬 ,   馬場謙介 ,   木村一元

ページ範囲:P.251 - P.257

まえがき
 コンピュータ言語の1つであるMUMPS(Mas-sachusetts General Hospital Utility Multi-Program-ming Systemの略)は現在,医学利用に最も適したシステムの1つである。われわれはこの言語を用いてコンピュータに膀胱腫瘍診療上のデータを登録し,その集計と解析を行なうべく半年間の試行を経て一応の手順設定に達したので,その概要を報告し,とくに登録すべき情報の項目選定とその記載方法について考察した。

膀胱の薬剤透過性に関する研究—マイトマイシンCの透過性について

著者: 河村信夫

ページ範囲:P.261 - P.264

緒言
 膀胱腫瘍に対してマイトマイシンC(以下MMCと略記)の膀胱腔内注入療法が効果があることは,すでに認められている。また,その際,かなりの量のMMCが血清内に移行すること,それにより白血球減少などの副作用の起こり得ることも知られている。
 またMMCを他の薬剤と一緒に膀胱内注入することにより,効果をより強くしようとする試みも広く行なわれている。われわれはCytosine Ara-binosideおよびpolymixin B(以下PBと略記)をMMCと併用した際のMMCの血清内移行が,単独投与の時と同じか,あるいは増減があるかを検討し,それにより,この併用療法が意味があるか否かを考察した。

前立腺肥大症に対するPhenoxybenzamine (POB)の臨床効果とその水力学的検討

著者: 伊達智徳 ,   熊川健二郎 ,   高橋美郎 ,   小林正人 ,   横山純

ページ範囲:P.265 - P.270

緒言
 前立腺肥大症の根治的治療法は腺腫の外科的摘除である。近年,麻酔法の発達,手術器械の改良などにより,TURPやcryosurgeryが,かなりのpoor risk患者にも施行し得るようになつてきた。しかし,なお手術禁忌例,手術不能例も多く,薬剤による保存的療法を強いられる場合も少なくない。
 従来より,前立腺肥大症の法療法としては薬草エキス,Alanine Glutamineなどある種のアミノ酸製剤,動物前立腺抽出エキスなどが使用されてきている。これらの薬剤は,本症の第II〜III期になると効果もうすれることが多く,また作用機序も不明であり,何らかの抗浮腫作用,血流改善作用という程度にしか解されていない。直接前立腺組織の萎縮効果を期待してProgesteroneを主とする性ホルモン療法も試みられているが,一定した評価はないようである。

経尿道的前立腺切除術の輸液,マンニトール添加ラクテートリンゲル液の使用経験

著者: 藤岡知昭 ,   岡本重禮 ,   永田幹男 ,   鈴木敏幸

ページ範囲:P.271 - P.275

緒言
 経尿道的前立腺切除(TUR-P)は侵襲の少ない手術とされているが,その施行にあたり手術手技は必ずしも容易ではなく,加うるに高齢者が対象となつているために,経験の浅い者が術者となつた場合には術中思わぬ合併症を併発することがある。特に手術時間の延長は術中の血圧変動の誘因となると同時に,血中電解質や術後尿量に変化を及ぼすものである。今回筆者らはこれらの点を加味し術中術後の管理をより容易にせしめる輸液として,2.5%マンニトール添加ラクテートリンゲル液(M-L液)を試作使用し良好な成績を得たので報告する。

症例

腎被膜脂肪腫の1例

著者: 鈴木誠 ,   熊谷章 ,   松尾重樹 ,   高田斉 ,   熊谷郁太郎

ページ範囲:P.281 - P.284

緒言
 腎の良性腫瘍は上皮性,非上皮性を問わずきわめてまれなものである。著者らは最近,腎被膜脂肪腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告したい。

腎外傷を契機に発見されたWilms腫瘍の1例

著者: 吉田正林 ,   大石幸彦 ,   木戸晃 ,   谷野誠 ,   岡崎武二郎 ,   赤阪雄一郎 ,   小寺重行 ,   増田富士男

ページ範囲:P.285 - P.289

緒言
 一般に,水腎症,馬蹄腎,腫瘍などの病的腎は,正常腎に比べ比較的軽微な外力で損傷を生じやすいと言われている。最近われわれは腎外傷を契機に発見したWilms腫瘍の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

尿管自然破裂の1例

著者: 石塚源造 ,   森田隆 ,   渋谷昌良

ページ範囲:P.291 - P.294

はじめに
 極めて稀な疾患とされている尿管自然破裂を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

膀胱周囲膿瘍の1例

著者: 前林浩次 ,   滝川浩 ,   今川章夫

ページ範囲:P.295 - P.297

 膀胱は周囲に消化管,内性器を有することから,二次性に膀胱周囲へ感染を来すことがある。しかし,最近は化学療法剤の進歩や公衆衛生の進歩から,膀胱周囲への感染は稀なものとなつている。
 今回われわれは虫垂切除術から5年の経過の後に発見された膀胱周囲膿瘍を経験したので報告する。

化学療法により一時的著効をみた睾丸絨毛癌の1例

著者: 岩崎晧 ,   間宮紀治 ,   石塚榮一 ,   古畑哲彦

ページ範囲:P.299 - P.302

 われわれは全身転移をきたした睾丸絨毛癌に対し,Liら1)に準じた三者併用の化学療法を試み,一時的ではあるが,著効をみた症例を経験したので報告する。

交見室

副甲状腺機能亢進症の診断について,他

著者: 河辺香月

ページ範囲:P.304 - P.305

 日台英雄先生らの「血管カテーテル法による副甲状腺機能亢進症診断の試み」(臨泌,33巻1号)を興味深く読ませていただいた。
 私自身には本法の経験はまつたくないが,われわれの教室で,過去に一度頸部試験手術を行ない,腺腫を発見できなかつたものの,ひき続く高カルシウム血症から,必ず腺腫が存在するとの信念をもつて,カテーテル法により採血したサンプルよりPTHを測定し,部位診断に成功した1例の経験を報告している(保坂,北村,上野,新島:第383回東京地方会)。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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