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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科33巻4号

1979年04月発行

雑誌目次

綜説

性分化異常—インターセックス

著者: 水谷修太郎 ,   小出卓生 ,   奥山明彦 ,   板谷宏彬 ,   園田孝夫

ページ範囲:P.319 - P.331

Ⅰ.性別 sexuality
 外見上,男女いずれとも区別のつけ難い状態(in-tersex state)は有史以前から存在していたであろうし,未開の故に,その異形を利しての,巫女やシャマンは集団の指導的な役割を果たしていたかもしれない。Hermaphodite (商業神Hermesと美の女神Aphrodite,Venusとの間に生まれた男子)に泉のnymphが合体したというギリシヤ神話は半陰陽hermaphroditismの語源であつて,絵画や彫刻など,嘆美の対象であり,「男女性器をともに具備する第3の性が存在した」という概念を有していた。Androgynusやgynandromorphも同義語であるが,中間の形態であるという点では,むしろ中性intersexuality なる表現のほうが望ましい。中世の暗黒時代は,「神は中性を嫌う」という意味から,むしろ社会から蔑まれる位置を占めたが,文明の曙は疾患を形態の面から捕えはじめ,Klebs(1873)は,①まず性腺の形態から真性と仮性に分け,②そのうち仮性を性腺に沿つて男性と女性に分け,そして③内外性器を完全と不完全の順に重点を置いた分類をおこなつた。

手術手技

術中合併症の緊急処置—腎手術と消化管との関連について

著者: 舟生富寿 ,   遠藤衛 ,   浜田和一郎 ,   人見浩 ,   鈴木唯司

ページ範囲:P.335 - P.344

はじめに
 周知のごとく腎摘出手術の要点は,腎茎部血管の処理,大静脈壁,腸管壁との剥離にある。症例によつては強く癒着し剥離が極めて困難の場合もあるが,術者は細心の注意を払い,更に剥離方法に工夫を加え,手術を遂行しており,時には摘出不能と判断し,腎摘出を断念する場合も認められる。したがつて腸管を損傷するようなことは極めて稀であろうし,事実,文献を渉猟してもなかなか見当らない。しかし,われわれ泌尿器科医は数多くの腎摘出手術を行なつており,そのなかに手術困難症例も混在している筈であるから,少数は経験しておられるだろうし,今後経験される可能性も考えられる。
 腎腸瘻は臨床的には術前既に存在する自発性,手術中発見される場合,術後発症する場合に大別できるので,著者らはこれらについてまず文献的に考察し,ついで解剖的関係,手術に関連する問題点,自験症例の順に記述してみたい。

文献抄録

陰茎癌のリンパ節治療に対する考え方について

ページ範囲:P.344 - P.344

 陰茎癌患者のリンパ節処置に関しては諸家の報告は多いが,いずれの方法が最善かは意見の統一をみない現状である.著者はこの論文において,陰茎癌の場合,癌細胞の最初にひつかかる門番的リンパ節(Sentinel Lymph Node,SLNと略)について報告し,陰茎癌ではこのSLNをまず生検することが必要であることを強調すると共にSLNの生検手技について述べている。
 著者らは1965年より1973年の間に80例の陰茎癌,10例の陰茎疾患,10例の正常成人について,陰茎脊面と足背よりリンパ管撮影を施行してSLNについて検討を行なつた。陰茎脊面からのリンパ管撮影は造影剤を注入すると間もなくSLNが描出されるが,このリンパ節は前後方向の単純撮影では大髄骨頭と恥骨上昇枝の間に見られ,解剖学的にはsuperficial epigastric veinとgreat sa-phenous veinの合流部のやや中央側寄りに位置している。このSLNを生検する方法は,右側の場合では右恥骨結節の2横指(4.5cm)右側で,その位置より更に2横指下方の点を求め,この位置を中心に5cmの皮切を鼠径靱帯に平行に加える。この皮切部より示指を上方皮下に入れるとSLNを容易に触知する。

講座

臨床医のためのコンピュータ入門(4)—情報サービス

著者: 開原成允

ページ範囲:P.345 - P.349

 これまで,自分のもつデータをコンピュータを使つて処理するにはどうすればよいかについて解説してきた。しかし,コンピュータにはデータ解析以外の別な使い方もある。以下の3回はこうした別の面での利用について考えていくことにしよう。

座談会

膀胱尿管逆流の治療

著者: 熊沢浄一 ,   大田黒和生 ,   小川秋実

ページ範囲:P.353 - P.360

 小川(司会)本日は遠路はるばるお集まりいただきましてありがとうございました。本日の主題は「膀胱尿管逆流」についてですが,ざつくばらんなご意見をいただきたいと思います。

原著

各種腎断層画像診断法の比較検討—PHO/CON,CT,ECHOについて

著者: 三木誠 ,   町田豊平 ,   大石幸彦 ,   上田正山 ,   木戸晃 ,   柳沢宗利

ページ範囲:P.363 - P.369

緒言
 Computcd Tomography(以下CTと略)の開発と普及は,従来の形態診断法としての核医学検査法や超音波診断法に加え新しい診断情報をもたらすようになり,診断法も多彩になつてきた。一方核医学の分野でも,PHO/CON TM Multi Plane Imager System(以下PHO/CONと略)の開発1)により,従来の二次元のシンチグラムとちがい,深さの情報を加えた断層シンチグラムの撮像が可能になつている。すでにわれわれは,尿路疾患を対象とした本邦最初のPHO/CONの使用経験を報告2)したが,今回それにCT,超音波断層法(以下ECHOと略)を加えた3種類の断層画像診断法を,腎実質病変の診断に適用し,それらの臨床的価値を比較検討したので報告する。

泌尿器系末期癌患者の臨床的観察

著者: 近藤猪一郎 ,   公平昭男

ページ範囲:P.371 - P.377

 癌は,早期発見,早期手術が唯一の根治療法である。しかしながら,初診時に,既に進行した癌であることも少なくない。特に,泌尿器系の腫瘍は,集団検診が不可能なこと,初発症状が必ずしも癌の初期に出現するとは限らないこと,あるいは,その発生部位から医師にかかるのを躊躇する傾向が強いことなどのため,最初から進行期癌であることが多い。したがつて,末期癌に対する対策も臨床医にとつて重要な問題である。
 末期癌という言葉は,一般によく使われている。阿部(1967)1)によると,末期癌は次のように定義される。①病勢の進展度よりみて永続治癒を期待し難い時期,②臨床上悪性腫瘍の拡がりによつておこる種々の病態のため,患者の生命が著しく制限されている状態。しかしながら,個々の患者であらためて考えてみると,どの時期から末期というのか,なかなか難かしい。そこで,この定義を参考にしながらわれわれの病院で最後まで観察し得た症例について,死亡前6カ月から死亡までを1カ月毎に分けて,全身状態,自覚症状などの観察を試みた。

旭中央病院における尿路結石症の検討

著者: 五十嵐辰男 ,   村上信乃 ,   一桝泰一

ページ範囲:P.379 - P.383

緒言
 尿路結石は,泌尿器科領域において最も多く遭遇する疾患の一つであり,よく再発を繰り返すことや,甚しい場合には,腎機能の廃絶につながるので,その治療は必ずしも容易でない場合が少なくない。
 今回,われわれは赤外線分光分析法により結石成分を調べると共に,結石患者の尿中電解質などについて統計的観察を試みたので報告する。

Urological Letter

腎の手術のための腹部直角切開法/進んだ前立腺癌に対する補助的薬物療法の研究(NPCPによる)

ページ範囲:P.369 - P.369

 腎上極の腫瘤や副腎腫瘍に対しては経胸腹腔式切開の方がよいが,腎の中部ないし下極の腫瘤の手術のためには,図に示すような直角切開が素晴らしく都合が良い。
 この直角切開は腋窩線の部から臍に向つて切開を進め,そこから垂直に剣状突起に至らしめる。切開は腹直筋筋膜を通し,同筋をも切開する。この切開により大事な神経を切ることはない。腹膜を切開してから角のある弁状のフラップはその角の筋膜にタオルクリップをかけて,側方に圧排する。この切開法で,患側の上腹部に十分に露出できるし,同側の後腹膜腔にも容易に入り得る。この切開法は正中切開法よりはるかにすぐれており,しばしば経胸腹式手術をしないで済ませることもできる。

症例

化膿性孤立性腎嚢胞の1例

著者: 寺沢明夫 ,   飯島崇史 ,   中原東亜 ,   武田淳志 ,   浜崎啓介 ,   三輪恕昭 ,   折田薫三 ,   藤田幸利

ページ範囲:P.389 - P.392

緒言
 化膿性孤立性腎嚢胞は,欧米では1917年,Cassioliにより最初に発表されたが,本邦では1953年の近藤の報告1)が初例であり,以後斯波ら2)の1967年の集計報告を含めて,6例の記載3〜6)を認めるにすぎない。最近われわれはその1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

巨大尿管結石の3例

著者: 森下直由 ,   南祐三 ,   実藤健 ,   岩崎昌太郎 ,   進藤和彦 ,   徳永毅 ,   計屋紘信 ,   由良守司 ,   国芳雅広

ページ範囲:P.393 - P.396

緒言
 巨大尿管結石とは,通常長さ2.5cmをこえる場合をいうが,われわれは最近,その3例を経験したので報告する。

Sipple症候群の1例

著者: 川村直樹 ,   高橋茂喜 ,   富田勝 ,   秋元成太 ,   川井博

ページ範囲:P.397 - P.400

緒言
 褐色細胞腫と甲状腺癌の合併例は1931年,Eisen-bergら1)が報告したのが最初であるが,両者の合併頻度の極めて高いことが1961年,Sipple2)により指摘され,その後,Sipple症候群と呼ばれている。一方,Steinerら3)は1968年,家族性の本症候群(時に副甲状腺の過形成または腺腫を合併する)を,下垂体,副甲状腺,膵ラ氏島の腫瘍を合併したmultiple endocline neoplasia,type 1(MEN,type 1)に対しMEN,type 2と呼んだ。われわれは今回,いわゆるSipple症候群またはMEN,type 2に相当する症例を経験したので,ここに報告する。

睾丸水瘤破裂の1例

著者: 柳沢温 ,   白勢克彦

ページ範囲:P.401 - P.402

 慢性型睾丸水瘤は,それ自体巨大とならなければ,特に症状をあらわすものではないが,今回運動中に睾丸水瘤の固有鞘膜壁側板が破裂し,急激な症状をあらわした1例を経験したので報告する。

尿道下裂の認められたXXYY性染色体異常の1例

著者: 石川清 ,   三浦邦夫

ページ範囲:P.403 - P.405

緒言
 1960年来の染色体分析の進歩,なかでも分染法の開発1)は,泌尿器科領域においてもKlincfelter症候群やTurner症候群などの性染色体異常の診断に大きな貢献をするようになつた。
 Klinefelter症候群を呈する性染色体異常にはX染色体の過剰型であるXXY,XXXY,XXXXYの報告があり,Y染色体の過剰型としてはXYY,XXYY,XXXYYなどが,さらには様々なモザイク例の報告がある2)

交見室

若年者の膀胱移行上皮腫瘍について

著者: 田崎寛

ページ範囲:P.406 - P.406

 臨泌33巻2号の赤座氏らの「10歳台にみられた膀胱移行上皮腫瘍の2例」を拝見し,二,三感じたことを述べてみたい。
 周知のごとく膀胱の移行上皮性腫瘍では,いわゆるpapillomaとpapillary carcinomaのごく分化したtypeとの鑑別は極めて難しい。またこの種の腫瘍の再発や悪性化を予知することも大変困難である。ところで赤座氏らが集計した通り,文献上に記載された40症例の組織型はpapillorna,papillary carcinoma,transitional cell Carcinomaなどと様々であるが,この中には分類法や病理学者によつて変わりうる例がかなり含まれていると考えられる。最近,泌尿器科学会においても膀胱腫瘍のresistryを作ろうということで,分類を中心に再検討が進められつつあるが,小児および若年者の例はまとめて1つのcontrol groupにならないだろうか。過去のものはともかく,今後の例は組織診断基準を一定にして全国的にまとめてみる必要があるように感じた。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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