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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科33巻8号

1979年08月発行

雑誌目次

綜説

ホルモン・レセプター—基礎と臨床

著者: 井村裕夫

ページ範囲:P.731 - P.741

はじめに
 ホルモンがその標的細胞において作用する場合,まずレセプターに結合することは今日多くの事実によつて認められている。もちろんレセプターを介さないホルモンの作用機構も存在する可能性は指摘されているが,ホルモン作用の少なくとも大部分は,ホルモンとレセプターの結合を最初のステップとした一連の化学反応により発揮されることは疑いのないところである。
 本稿ではホルモンレセプターに関する基礎的な事項についてまず簡単に触れ,ついで臨床の立場から見たホルモン・レセプターの二,三の問題について述べることとする。

手術手技 外来小手術のコツ

副睾丸摘除術

著者: 伊達智徳

ページ範囲:P.745 - P.747

緒言
 急性および慢性の非特異性副睾丸炎に対し積極的に副睾丸摘除術を行ない,就労までの期間を短縮するという報告もみられるが,化学療法剤の発達した今日,摘除を余儀なくされる症例は稀有と思われる。したがつて副睾丸摘除適応疾患は,結核性副睾丸炎が大部分である。しかし,結核の激減に伴い当然のことながら,本手術施行例も減少していると思われる。因に病院統計などを見ても,結核性副睾丸炎症例は,1機関年間10例以内であり,0〜1例という報告も散見する。
 副睾丸摘除術を迅速かつ安全に行なうには,解剖学的位置関係をよく理解していることが肝要である。特に皮下膿瘍や瘻孔を形成した進行性結核性副睾丸炎では癒着が高度となる。手技の未熟による睾丸動脈の切断というような失敗は厳に戒むべきである。筆者は初心者に対し手技の熟練のために,前立腺癌症例の除睾術を行なつた標本で,副睾丸摘除を行なわせているが効果的である。

副睾丸摘除術

著者: 進藤和彦

ページ範囲:P.749 - P.751

 副睾丸摘除術(epididymectomy)の適応となる疾患は以前は大部分が副睾丸結核であつたが,男子性器結核の急激な減少により,最近では副睾丸結核によるものが減少し,軽度の急性増悪を繰り返す非特異的慢性副睾丸炎に対する適応が増加している。それに時には副睾丸内に限局した膿瘍に対しても行なわれる。しかし,以前に比べて適応となる疾患の減少に伴つて手術例数も少なくなつているが,なお泌尿器科医にとつてしばしば経験する手術の一つであり,その手術手技も確立されている。

副睾丸摘除術

著者: 澤西謙次

ページ範囲:P.753 - P.754

 副睾丸摘除術に際しては,副睾丸炎の急性期に行なうことは原則としてさけ,化学療法を積極的に行なえば,化学療法の進歩した現在では炎症症状は急速に消褪し,硬結も2〜3ヵ月で消失することが大部分である。副睾丸結核の減少した今日,膿瘻形成を含めて難治性副睾丸炎が減少し,副睾丸摘除術を行なう頻度は極めて減少しているのが実情である。むしろ陰嚢水腫や,軸捻転症,睾丸外傷などで,陰嚢内容を見るため睾丸固有鞘膜に包まれた睾丸,副睾丸,漿液を含んだ鞘膜腔の切開時,副睾丸の異常,病変を認めたとき検査のために副睾丸摘除を行なうことの方が多いくらいで,はじめから副睾丸摘除術の目的で手術を行なう頻度は極めて少なくなつた。
 私自身,副睾丸摘除術に際してユニークな術式を行なつていないことを最初にお断りすると共に,いかなる手術でも当然であるが,解剖学的識別,ことに副睾丸摘除に際しては,血管系,特に動脈系が静脈系に比較して極めて細いので,これの走行を解剖学的に十分理解しておくことが最も大切である。

講座

泌尿器科領域の細胞診(2)—細胞採取と標本製作

著者: 山田喬

ページ範囲:P.755 - P.760

はじめに
 細胞診の成果の半分は,如何にうまく細胞を採取し,顕微鏡的観察に適する細胞標本が製作できるか否かにかかつている。しかし従来,本領域の細胞診の多くは,尿内に自然に剥脱した細胞を検索することに終始しており,特定の器具や方法を用いることが少なかつたといえる。
 最近,この面での技術的な試みが多数発表され,また一般にも用いられるようになつて来た。今回は,この細胞採取と標本製作に関する技術的な問題について書いてみたい。

文献抄録

エストロゲン誘発の腎癌について

ページ範囲:P.760 - P.760

 ホルモンによる腎癌の消長については過去十数年いろいろと論じられている。進行性腎癌にエストロゲン拮抗剤投与が一つの治療法として確立されている。最近ではSamuels(1968),Paine(1970)らにより進行性腎癌に対してエストロゲン拮抗剤は患者の7%ないし20%に他覚的所見の改善が見られることが報告されている。
 このことはHoruing(1956)らのgolden hamsterを用いた移植腎癌へのエストロゲンの影響に関する実験でも立証されている。以上の事実を考慮すると長期間エストロゲン投与をうける患者に腎癌が誘発されるのではないかとの疑問が当然おこつてくる。

座談会

最近の腎結核の治療

著者: 岡元健一郎 ,   堀内誠三 ,   川井博

ページ範囲:P.765 - P.775

 川井(司会)本日は,腎結核について長年ご研鑚を積んでいらつしやる岡元先生,堀内先生に,ざつくばらんに,「最近の腎結核の治療」ということで,お話しいただきたいと思います。

Urological Letter

ヨード過敏症患者への腎盂撮影—動脈注射では過敏症は起こらぬか?/両側尿管結石の手術術式

ページ範囲:P.775 - P.775

 1978年11月6日号のDr.Schwartzの意見について,筆者も同意見である。
 筆者の35年間の臨床経験で,全身麻酔下ではヨードの過敏症によるひどい副作用のあつた例はない。しかし,一層重大であり,かつ,彼の議論を支持するものは,ヒスタミンあるいはセロトニンが放出される過敏症反応に対する肺の役割についてである。

原著

原発性副甲状腺機能亢進症—結石を有した6症例の術前後の血液尿生化学的検討

著者: 平石攻治 ,   中村章一郎 ,   山下利幸 ,   辻村玄弘 ,   山本洋 ,   黒川一男 ,   大島一洋

ページ範囲:P.779 - P.784

緒言
 原発性副甲状腺機能亢進症は,現在各分野から注目されている疾患であり,症例報告数も増加しつつある。本症は骨変化および尿路結石を生ずることで有名であるが,最近では上記の病変を伴わない,いわゆる化学型に対しても積極的な治療がなされている。
 今回,尿路結石を合併した原発性副甲状腺機能亢進症の6例を経験したので,術前術後の血液尿生化学的所見について検討した。また本症と尿路結石との関係について考察を加えて報告する。

回腸導管内の尿中細菌叢について

著者: 早川正道 ,   木下英親 ,   木村哲 ,   田崎寛

ページ範囲:P.785 - P.789

緒言
 回腸導管造設術に代表される尿路変更術の普及および手術手技や術前術後管理の進歩により,骨盤臓器原発悪性腫瘍,特に膀胱腫瘍に対する根治的手術療法の機会が増し,かつ安全に行なわれるようになつた。しかし最近,回腸導管症例の増加と経過観察期間の延長により,導管造設後の合併症が問題として提起されるにいたつている1〜3)。合併症の中でも,腎盂腎炎の発生率は高く,かつ晩期合併症として遭遇する機会の多い尿路結石症の原因のひとつとして,尿路感染症が指摘されており,導管内の細菌叢との因果関係に関する検討が必要となつている。今回われわれは,回腸導管造設術を受けた症例を中心として,尿培養の結果を検討し,若干の知見を得たので,文献的考察を加えて報告する。

獨協医大病院開院後4年間に経験した尿石症患者の臨床的検討

著者: 高崎悦司 ,   村橋勲 ,   永田正義

ページ範囲:P.791 - P.795

緒言
 尿石症の統計的な検討は,これまで少なからず報告されているが,著者らも獨協医大病院が開院した1974年7月より今日まで4年を経過したのを機会に,栃木県地方における尿石症の現状をみるという目的も兼ね,臨床的な考察を試みた。

症例

腎血管筋脂肪腫4例と臨床的考察—併せて本邦95症例の統計的検討

著者: 永田幹男 ,   岡本重禮 ,   藤岡知昭 ,   鈴木敏幸 ,   児島完治

ページ範囲:P.801 - P.805

はじめに
 腎血管筋脂肪腫は腎臓に発生する良性腫瘍の一つで,結節性硬化症の合併腎病変として知られている。
 最近,われわれは4症例を経験したのでこれを報告するとともに,術前の血清生化学検査,X線検査で診断上もつとも問題となる本症と腎癌の鑑別について検討し,併せて1978年8月までに集め得た本邦症例を集計し,若干の考察を行なつた。

両側同時発生尿管腫瘍の1例

著者: 安富祖久明 ,   筧龍二 ,   牛山武久

ページ範囲:P.807 - P.810

緒言
 原発性尿管腫瘍の両側同時発生例は内外の文献例を合わせても16例を数えるのみで,きわめて稀である。
 われわれは最近,本症の1例を経験し,両側とも尿管部分切除,尿管端々吻合によつて術後7カ月まで良好な経過を辿つているので,これを報告し,あわせて文献的考察を加えた。

膀胱後部嚢腫(血液嚢腫)の1例

著者: 川村健二 ,   伊藤晴夫 ,   島崎淳

ページ範囲:P.811 - P.814

緒言
 膀胱後部に発生する腫瘍は病理学的に多岐にわたるが,いずれも症例数はそう多いものではない。最近われわれは膀胱後部に発生した嚢腫の1例を経験したので,若干の考察を加え報告する。

Case study

高血圧と尿路感染症が持続した例

著者: 三木誠

ページ範囲:P.815 - P.818

 62歳,男性,会社員。10年前に会社の健康診断で高血圧(170/100mmHg前後)を指摘され,その後内科医から降圧剤(クロロサイアザイド500〜1,000mg/1日内服)を投与されていた。3ヵ月前に尿路感染を指摘され,抗菌剤を内服したが,尿所見が改善されず,泌尿器科的精査が行なわれた。
 体重減少はなく,食欲も普通である。排尿時痛や尿線中絶はないが,排尿回数は7〜8回/日で残尿感が少しある。発熱はない。
 既往歴に特別のものはなく,酒はのまないが,煙草は1日30本喫う。

交見室

小児睾丸腫瘍と先天異常の合併について/精管切断術について

著者: 大田黒和生

ページ範囲:P.820 - P.821

 本誌33巻6号掲載,坂下氏らの論文「小児睾丸腫瘍と先天異常の合併」を読ませていただいた。北大泌尿器科教室における25年間の経験例として,14歳以下の小児睾丸精上皮性腫瘍,25例を紹介,その中で,ことにyalk sack tumorの20例中に下大静脈後尿管,膀胱憩室,臍ヘルニヤ,Down症候群の各1例をみとめ,一方,teratoma mature 5例中1例に同側の鼠径ヘルニヤがみとめられたと報告している。そして,25例中5例(20%)という高率に先天異常の合併をみたことは注目に値するとのべている。
 さらに,重要な意見として,小児睾丸腫瘍はyalk sack tumorとteratoma matureの2種しかなく,思春期以後の睾丸腫瘍とは異なると主張されている。この分類に関しての考え方は文献にも引用されているBrosman, S.およびGondos, B.(1974)の分類に従つたものと思われるが,この点についてはまだ問題が残されているように思われる。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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