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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科34巻1号

1980年01月発行

雑誌目次

綜説

精液の生化学

著者: 吉田英機 ,   今村一男

ページ範囲:P.7 - P.16

はじめに
 精液の分析は,精子の状態を知るのみならず,副性器の分泌能の情報源としても重要なものである。
 精液は精子と精漿とから成るが,精漿は各副性器や分泌腺からの分泌物の混合したものであり,その30%は前立腺から分泌され,約60%は精嚢からのものであり,残り5%ないし10%は副睾丸や精管膨大部,尿道球腺および尿道腺からの分泌液である1)

文献抄録

睾丸腫瘍の血清マーカーについて

ページ範囲:P.16 - P.16

 癌診断の最終的目標は血清学的検査によるべきであり,一部の癌随伴物質は免疫血清学的に見出されている。非精上皮腫性の睾丸腫瘍では,血清中のalphafetoprotein(AFP)やbetahuman chorionic gonadotropin(β-HCG)が治療上の指標として有効であるといわれている。しかし,上昇したAFP,β-HCGと腫瘍の組織型や残存腫瘍の活性度との関連については不明である。この点について著者らの64例の睾丸腫瘍の経験について述べている。
 精細胞起源性の64例中22例は以前に治療をうけており,転移のない症例で,血清中のAFP,β-HCGはすべて正常値にあつた。42例は最近になつて除睾術を施行し,転移の証明された例である。この42例中17例に,AFP,またはβ-HCGのいずれかの上昇が認められた。この17例の組織型は,3例がセミノーマで,その他は非セミノーマ性腫瘍であつた。8例のβ-HCGの上昇の組織型では,3例がセミノーマ,2例が胎性癌,3例が混合型の組織であり,6例のAFP上昇例の組織は,2例が胎生癌で4例が混合型であつた。両者の上昇例は3例で1例は胎生癌,2例は奇形癌との混合例であつた。また非セミノーマ性腫瘍で血清指標の上昇者はすべて転移を認めた。セミノーマで研HCG上昇の3例は,除睾術と放射線治療で正常値にもどつた。

手術手技 外来小手術のコツ

外尿道口切開術

著者: 川畠尚志

ページ範囲:P.21 - P.22

 外尿道口切開術施行の適応としては,1)内視鏡挿入,2)バルーンカテーテル留置,3)金属ブジー挿入に際し外尿道口が狭小のため,あるいはより大きめの器具を挿入したい時のように具体的な目的がある場合は当然として,4)先天的に外尿道口が狭い場合(尿道下裂など),5)感染のため外尿道口が狭くなつている場合などがあげられる。
 外尿道口狭窄の状況として,1)〜3)の場合は別として,よくみられるのは4)の尿道下裂の場合であり,外尿道口は陰茎腹側のいろいろな位置にpin-holeで開口している1)。5)のように小児でオムツかぶれなどから外尿道口炎,亀頭炎をおこし,膜様線維で外尿道口が狭くなつている場合は,尿線が細小で尿は上方へ向つて勢いよく遠くまでとび,尿線の方向が定まらずトイレをよごしたり,また排尿痛,頻尿あるいは排尿後出血をおこすこともある1)

外尿道口切開術

著者: 桑原正明

ページ範囲:P.23 - P.25

 外尿道口切開術の適応となる外尿道口狭窄症は男性では炎症(亀頭炎,亀頭包皮炎や尿道炎)の瘢痕性治癒によつて二次的に生じることが多い。しかし,TURの術後や内視鏡検査,さらに長期間尿道カテーテルを留置した後などに生じることがあり,泌尿器科医が日常遭遇することが多い疾患の一つである。先天的な外尿道口狭窄症は少ないが,このうち高度な狭窄症(いわゆるpinpointmeatus)はほとんどがhypospadiaに合併するものである。極く稀には新生児で外尿道口が亀頭部と連続した皮膚でおおわれるurethral membraneのようなものもある。
 外尿道口狭窄が膀胱尿管逆流症(VUR)や尿路感染症の原因となるような例は比較的稀であるが,婦人や小児,とくに女児においてはくり返す尿路感染症やVURの原因となることが少なくない。こうした例では本症の診断と治療は重要であり,泌尿器科医だけではなく産婦人科や小児科医も正しい知識をもつことが要求される。

Urological Letter・266

睾丸(機能)不全患者と睾上体の脂肪

ページ範囲:P.22 - P.22

 私は少なくとも6例の患者の臨床観察で次のようなことに気づいている。しかも,そのことを報告した文献は,まだ見たことがない。臨床上は,しかし,かなり高度にみられているのではないかと思う。
 術前にすでに睾丸(機能)不全の特徴が目立つているような睾丸(小さくて,軟らかく,血中の下垂体前葉ホルモンは高く,テストステロンは低い)に手術をした場合には,睾上体の周囲は通常,多量の脂肪で取り囲まれていることを認めている。

講座

腫瘍と免疫(1)—実験動物の腫瘍抗原

著者: 漆崎一朗

ページ範囲:P.27 - P.32

はじめに
 ある物質の抗原性とは,動物にそれを投与して,その動物がnot selfと認識することによつて生ずる免疫応答からその存在を確認できるものであるから,腫瘍細胞の抗原を検出する場合にも,腫瘍細胞あるいはその細胞成分と免疫に用いる動物との組み合せによつてその抗原性を検討することができる。現在,腫瘍細胞はその特異性,細胞内の局在性および生物学的機能から異なつたいくつかの抗原をもつことがわかつてきている。さて実験腫瘍を正常組織の移植と同一視することはできないが,抗原と宿主との関係については移植免疫の知見から示唆されることが少なくない。同体または自家(autochthonous),同系(syngeneic),同種(allogeneic)および異種(xenogeneic)の関係で腫瘍免疫を考察するということである。真に腫瘍に特異的な抗原の存在を実証しようとするならば,種属特異抗原,臓器特異抗原,同種間に認められる組織適合抗原,同系または自家系の正常組織抗原などを完全に除去できる実験系によらなければならないこと,すなわち遺伝的に均一な系,同系または自家系を用いて実証されねばならない。腫瘍特異抗原についてはin vivoに近交系マウスを用いて腫瘍特異移植抗原(tumor specifictransplantation antigen TSTA)の存在が明確にされている1)

座談会

神経因性膀胱の治療

著者: 宮崎一興 ,   中新井邦夫 ,   小川秋実

ページ範囲:P.35 - P.45

 小川(司会)学会でお疲れのところ,お集まりいただきまして恐縮です。
 今日は「神経因性膀胱の治療」というテーマですが,この雑誌の性格上,臨床的な立場から,その方面のご専門のお二人の先生に,いろいろお教えいただきたいと思います。

原著

膀胱癌に対するTUR (TUC),部分切除術後の膀胱全摘除術の治療成績

著者: 村瀬達良 ,   垣添忠生 ,   藤田潤 ,   松本恵一

ページ範囲:P.51 - P.53

緒言
 膀胱癌は他の固型癌に比べて比較的良性で,腫瘍の性状によつては経尿道的手術,膀胱部分切除術などによつても腫瘍の管理が可能であるという報告が多い。当院においては他の医療施設でTURや膀胱部分切除術を受け,その後に再発し来院するsecondary caseが多い。今回,当院において根治的膀胱全摘除術を施行した症例についてpri-mary cascとsecondary caseにわけ,予後などについて検討したので報告する。

膀胱内圧,腹腔内圧測定用カテーテル

著者: 近藤厚生

ページ範囲:P.55 - P.58

 尿流動態検査(urodynamic study)の発達した現在,膀胱内圧測定(cystometry)は最も重要かつ必須の検査法となつている。膀胱内圧測定は1882年Mosso&Pellacani1)により報告されたが,最初に臨床的応用を企だてたのはRose(1927)2)である。われわれはこの検査により1)膀胱容量,2)膀胱の知覚の有無3),排尿筋(detrusormuscle)の異常収縮の有無,4)排尿筋反射(det-rusor reflex)の有無と,5)これを抑制することが可能か否かを知ることができる。すなわち仙骨排尿中枢より末稍側および中枢側の膀胱支配神経の状態,および排尿筋の器質的変化(線維化)についての情報が得られるわけである。
 しかし,極めて初歩的な問題ではあるが,膀胱内圧測定用のカテーテルは製品化され市場に出ていない。このため誰もが不都合を感じつつ検査をつづけていたのが現状である。そこでわれわれはこの目的にかなう2-channel(double lumen)cathe-terを開発することにした。このカテーテルの優位点と共に,われわれの用いている腹腔内圧測定用カテーテルについて報告する。

前立腺性酸性フォスファターゼの従来法と免疫電気向流法—counter immunoelectrophoresis (CIEP)との比較

著者: 丸岡正幸 ,   内藤仁 ,   野積邦義 ,   真田寿彦 ,   伊藤晴夫 ,   島崎淳 ,   五十嵐辰男 ,   村上信乃

ページ範囲:P.59 - P.62

緒言
 前立腺癌の血清学的検査として,酸性フォスファターゼ(total acid phosphatase以下TACPと略す),前立腺性酸性フォスファターゼ(Prostaticacid Phosphatase以下PAPと略す)の定量を行ない,stage分類と治療方針の決定とに役立つている。今回,われわれはPAPの免疫電気向流法(counter immunoelectrophoresis以下CIEP法と略す)による測定値を従来の測定方法と比較検討した。

症例

外傷性尿管断裂の1例

著者: 青木光 ,   鈴木安 ,   佐々木秀平 ,   吉田郁彦 ,   大内忠雄

ページ範囲:P.65 - P.68

緒言
 近年の交通災害,産業労働災害の増加とともに,泌尿生殖器の外傷も増加している。しかし,それによる尿管外傷はまれとされているが,われわれは,最近,労働災害による尿管断裂の1例を経験したので,若干の考察を加え報告する。

結腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻の1例

著者: 五十嵐辰男 ,   村上信乃 ,   藤田道夫

ページ範囲:P.69 - P.72

緒言
 S状結腸膀胱瘻は稀ではないが,結腸憩室炎に続発するものの本邦報告例は極めて少ない。今回,われわれはS状結腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

尿膜管腫瘍の2例

著者: 鈴木博雄 ,   町田豊平 ,   増田富士男 ,   三木誠 ,   陳瑞昌 ,   島田作

ページ範囲:P.73 - P.76

緒言
 尿膜管腫瘍は,比較的稀な悪性新生物であり,その予後は不良である。われわれは,最近本症の2例を経験したので,その臨床経過に若干の考察を加えて報告する。

Case Study

突然,無尿を来した単腎症例

著者: 内山俊介

ページ範囲:P.81 - P.84

 19歳,男,店員。
 既往歴として,6ヵ月前,右腎結石にて右腎摘除が行なわれている。術後は特に愁訴なく,普通の日常生活を送つていたが,受診3日前,突然,肉眼的血尿と左側腹部疝痛が出現し,翌日には無尿の状態となつた。近医を訪れたところ,当科を紹介され,その翌日,緊急入院した。家族歴には特記することはない。

提案

尿路感染症における薬効評価基準

著者: 大越正秋 ,   河村信夫

ページ範囲:P.85 - P.91

概説
 尿路感染症を抗菌剤で治療する際に得られた効果の判定は,従来各施設毎に定められた独自の基準により行なわれていたが,これを全般的に通用するように,公平に,客観的に評価することができるような一定の基準をつくることは,非常に重要なことであることはいうまでもない。
 そこでわたくしたちはUTI(Urinary Tract Infection)研究会を組織し,過去6年間何回も討議を重ねた結果,患者の条件を一定にし,同じ方法と条件で検査し,同じ規格で判定するための基準を作製した。

交見室

尿道脱の手術について,他

著者: 豊田泰

ページ範囲:P.92 - P.93

 本誌33巻12号に掲載された外来小手術のコツ「尿道脱の手術」について私見を少しくつけ加えたい。私の経験はわずかに6例にすぎないが,最後の方の2症例に行なつたFritschの結紮法が非常に簡単で好結果を得た。そこで尿道脱に対してはこの方法をすすめたいのである。執筆者の中に,瘢痕狭窄を生ずるおそれがあるのであまり用いられないという見解と最も一般的であるという考えとがあり,始めて試みようとする人は気になるであろう。
 Fritsch法と称せられるものは非常に古くからある方法で,Owensら(1968)の42例では失敗例は結紮不完全であつた3例のみで,わが国でも井出ら(1962)4例,堀米ら(1969)8例,新井ら(1976)7例などの報告があり,いずれもこの方法を推奨している。一般に尿道狭窄を来すのは激しい炎症が尿道の筋層に及んだ場合であろう。しかし,結紮法にともなう炎症は切除によるそれよりもはるかに軽いと思う。尿道脱といつても脱出してくるのは粘膜のみなのであるから,もし狭窄が起こつても簡単にブジー法で治癒し得るのではないか。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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