文献詳細
原著
Toluidine blue染色による尿細胞診—mass screening 16,792名の結果
著者: 根本良介1 西沢理1 三浦邦夫1 加藤哲郎1 柴田香保登2 加納正史2
所属機関: 1秋田大学医学部泌尿器科学教室 2秋田市立病院中央検査科
ページ範囲:P.1165 - P.1169
文献概要
近年,一般大衆を対象とした特定疾患のmassscreeningは,呼吸器や消化器および婦人科系疾患の分野で多大な成果をあげてきている。とくに,悪性腫瘍の早期発見と早期治療には絶対に欠かせないもので,その治療成績の向上に大きく貢献している。それにひきかえ,泌尿器系悪性腫瘍の分野では未だに"患者を待つ"姿勢が大半を占めており,いわゆるfield workとしてのmass screen-ingに関して他領域に一歩遅れをとつていることは否定できない。最近,渡辺らもこの点に注目し,超音波断層撮影装置による前立腺癌のscreeningシステムについて報告しているが1),泌尿器系悪性腫瘍のなかで最も頻度の高いといわれる膀胱癌にもこうした試みの必要性が痛感される。
一般にmass screeningを目的とした検査法には,多人数を同時に処理でき,操作が簡単で,しかも被験者に苦痛を与えないという条件が要求される。泌尿器科の数ある検査の中でこの条件を満足するものに尿細胞診があげられ,尿路悪性腫瘍のscreening法として早くから注目されていた。しかし,尿路悪性腫瘍の発生頻度が胃や子宮のそれに比べてはるかに少ないことや,尿中の細胞が喀痰や女性性器分泌液から得られる細胞に比べて修飾を受けやすく,細胞の鑑別にかなりの熟練を必要とすることから,細胞診をmass screeningに応用するに際しては若干の抵抗があつた。
掲載誌情報