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文献概要
原著
血管造影による腎動脈塞栓術の評価—特にマイクロカプセル化マイトマイシンの化学塞栓効果について—
著者: 根本良介1 森久1 加藤哲郎1
所属機関: 1秋田大学医学部泌尿器科学教室
ページ範囲:P.237 - P.243
文献購入ページに移動癌病巣への血行遮断を目的として腫瘍支配動脈に患者自己組織や異物を注入する腫瘍動脈塞栓術は,各種悪性腫瘍に対する保存的療法として広く用いられている1,2)。腎癌においても手術中の出血量減少などを目的とした術前処置として,あるいは手術不能例に対する対症療法としての有効性が認められている3)。しかし,腫瘍動脈塞栓術を積極的な癌の局所治療法として確立したものにするためには,癌組織に対する抗腫瘍性をさらに強化する必要がある。その具体的な方法として腫瘍動脈塞栓に適した新しい塞栓物質の開発,あるいは他の局所癌治療法との併用の2点が考えられる。前者の新しい塞栓物質に要求される条件は,塞栓術後の腫瘍血管の再疎通を抑えることのできる永続的な塞栓効果である。また後者の目的には,塞栓状態に陥つた腫瘍組織内の緩慢な血流状態を考慮すれば,抗癌剤の同時注入による化学療法の併用が最も効果的と考えられる。しかし,単に従来からある剤形の抗癌剤を塞栓物質とともに注入するだけでは必ずしも満足な抗腫瘍効果を得ることはできない4)。そこで著者らは以上の2つの条件を同時に満足させることのできるマイクロカプセル化マイトマイシンC(以下,MMC-m.c.と略す)による動脈内注入法を開発した5)。
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