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はじめに
癌細胞が正常細胞に認められない腫瘍特異抗原を有することは実験腫瘍のみならず人癌においてもすべての腫瘍とはいい難いが証明されてきている。それにもかかわらず癌細胞が異物として認識され排除されないのは何故であろうか。Tumorescape from immune surveillanceの問題は腫瘍免疫をめぐる中心研究課題となつている。Currie1)は第1表に示すように,実験腫瘍の成績からその要因を分類し,腫瘍細胞側からは抗原性の差異による免疫学的選択immunoselection,少数個の腫瘍細胞が生体の免疫応答をくぐり抜けるsneakingthrough,腫瘍抗原のmodulationやsheddingをあげ,宿主の免疫応答性から,免疫学的寛容im-munological tolerance,免疫学的不応答immunolo-gical unresponsivenessをあげている。人癌について抗原の分析は必ずしも明らかではないが,癌患者の細胞性免疫能が特異的にも非特異的にも低下していることは明らかであり,さらに癌の進行増殖に伴い著しく障害されてくることも知られている2)。したがつて宿主の免疫応答性の障害機序が重要視されるのである。このような状態において必ずしも癌細胞に対し宿主は免疫学的に無防備の状態にあるかどうかは疑わしい。
癌細胞が正常細胞に認められない腫瘍特異抗原を有することは実験腫瘍のみならず人癌においてもすべての腫瘍とはいい難いが証明されてきている。それにもかかわらず癌細胞が異物として認識され排除されないのは何故であろうか。Tumorescape from immune surveillanceの問題は腫瘍免疫をめぐる中心研究課題となつている。Currie1)は第1表に示すように,実験腫瘍の成績からその要因を分類し,腫瘍細胞側からは抗原性の差異による免疫学的選択immunoselection,少数個の腫瘍細胞が生体の免疫応答をくぐり抜けるsneakingthrough,腫瘍抗原のmodulationやsheddingをあげ,宿主の免疫応答性から,免疫学的寛容im-munological tolerance,免疫学的不応答immunolo-gical unresponsivenessをあげている。人癌について抗原の分析は必ずしも明らかではないが,癌患者の細胞性免疫能が特異的にも非特異的にも低下していることは明らかであり,さらに癌の進行増殖に伴い著しく障害されてくることも知られている2)。したがつて宿主の免疫応答性の障害機序が重要視されるのである。このような状態において必ずしも癌細胞に対し宿主は免疫学的に無防備の状態にあるかどうかは疑わしい。
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