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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科34巻8号

1980年08月発行

雑誌目次

綜説

長期透析例の知能の障害

著者: 詫摩武英

ページ範囲:P.715 - P.721

緒言
 慢性腎不全例においては,腎不全に陥つた早期から,思考力,集中力の低下がみられると一般成書には記されており1,2),実際の臨床で,若い腎不全患者と面談中にも,それが痛感され,食餌指導上の難点となつている7)
 これら知能の鈍化傾向を具体的に把握する目的で,筆者は内田クレペリン精神検査9)を試みに採用し,透析療法導入前,透析療法中,生体腎移植後の患者に施行した。そして透析導入および腎移植の成功が,患者の知能にどのような影響を与えるかを研究し,若干の知見を得たので報告する。

文献抄録

半身照射による転移前立腺癌の治療

ページ範囲:P.721 - P.721

 前立腺癌に対する抗男性ホルモン療法の有効期間は平均3年で,その後はしばしば病勢の進行で全身的転移が出現して,患者に激しい疼痛苦悩を与える。著者らは1971年以降,このような患者に半身照射法を試みてその有効性を強調している。
 X線照射方法は,臍部を目安として全身を上半部,下半部に分け,各部を腹面,背面として半身照射する。体表面の凹凸をさけ,均等照射できるように表面にBalusを用いる。下半身腹背面照射は800〜1,000rads,上半身腹背面照射は600radsとする。上半身の照射線量が少ないのは放射線性肺炎防止のためである。また頭蓋骨,脳に転移があれば頭部も含めて照射し,この際はcataracta防止のために水晶体をshieldする。上下部の照射順位は疼痛の激しい部を優先する。上下部の照射間隔は,造血機能回復のため6週とする。照射のための入院は48時間(2日)で終わる。

手術手技

勃起不全によるインポテンツ(erectile impotence)の手術

著者: 岡本重禮 ,   藤岡知昭

ページ範囲:P.725 - P.730

はじめに
 勃起不全によるインポテンツの手術には大別して陰茎海綿体に対する血管再生手術と補綴(pro-sthesis)***挿入手術がある。前者は1977年に創始され,多くは動脈を陰茎海綿体に吻合し,陰茎海綿体の血流を増加させることを目的としているが,欧米においても未だ治療成績について結論を出すまでには至つていない段階にあるので,これを省略し,ここでは後者のprosthesis挿入手術についてだけ記述したい。
 prosthesis挿入によるインポテンツの治療は1960年Loeflerらのsingle rod prosthesis1),およびBerhriのdouble rod prosthesis2)に始まり,その後幾多の追試や改良が加えられ今日に至つている。当初prosthesisの材質はアクリル樹脂やポリエチレンであつたものに代つて1967年Peaman3)によつてシリコーン樹脂が使用されて以来不動のものとなつている。さらにSmallらによりsemi-rigid double rods(いわゆる Small Carrion pro-sthesis)が考案されたことにより4)prosthesisによるインポテンツの手術療法が世界中に広まつてきている。

Urological Letter

男子不妊症および排尿障害時にはCimetidineの副作用に注意を/尿管S状腸吻合術と照射線療法後の予後

ページ範囲:P.730 - P.730

 Cimetidineは消化性潰瘍の治療薬として数年前から使われだした。本剤は基本的にはヒスタミンに対する潜在的拮抗剤であり,すべての消化性疾患に特に優れていることが知られている。
 1979年2月,ニューイングランドジャーナルに,本剤で治療されていた数人の男子が,インポテンスおよび妊孕力低下(subfertility)になつたことが報告された。

講座

腫瘍と免疫(8)—細胞性の免疫抑制

著者: 漆崎一朗

ページ範囲:P.731 - P.737

はじめに
 免疫応答はT細胞,B細胞およびmacrophageなどの細胞の相互作用によつて調節されていると考えられてきている。しかし,その主役はT細胞であり,正の方向に作用するT細胞群すなわちhelper T細胞,amplifier T細胞と負の作用,免疫抑制に働くT細胞すなわちsuppressor T細胞とに分類することができる。とくにsuppressor T細胞の存在は免疫応答系のnetwork説の出現とともに最近注目を集め,体液性免疫応答,細胞性免疫応答を問わず,広範囲の免疫系で証明されてきている1,2)。さらに免疫応答に占める macro-phageの位置,その機能の複雑さが追求されsupp-ressor macrophageの存在も報ぜられてきている3,4)。これらsuppressor cellによる免疫抑制機構の研究分野は多岐にわたり,その進歩は日進月歩の感があり,かつ総説も発表されているところである5)。本稿では腫瘍免疫を中心に動物実験の所見と人癌のそれを分けて記載するが,その方法論の困難性から人癌に関する研究業績は必ずしも多くないことをおことわりしなければならない。

原著

セラチアによる尿路感染症の臨床的検討

著者: 三方律治 ,   本間之夫 ,   小松秀樹 ,   木下健二 ,   佐久一枝 ,   加場忠

ページ範囲:P.743 - P.747

 本来病原性が低いといわれていたセラチアが,尿路感染症の起炎菌として注目されるようになり,臨床上軽視できない問題となつている。新設病院に近い状態で再開院した当科でも,セラチアによる感染に悩まされている。そこで,セラチアによる尿路感染の当科での現状を把握する目的で,主として臨床的検討を試みたので報告する。

膀胱腫瘍再発防止を目的としたMitomycin Cの膀胱内注入療法の臨床的観察

著者: 新村研二 ,   早川正道 ,   藤岡俊夫 ,   置塩則彦 ,   山越剛 ,   名出頼男

ページ範囲:P.749 - P.753

緒言
 膀胱腫瘍に対する治療は膀胱を保存する方法と膀胱を摘出する方法に二分される。膀胱を保存した場合,術後も生理的な状態で排尿できるという長所は残るが,膀胱腫瘍の特徴である多中心性再発が問題となり,これにいかに対処するかにより予後,治療成績は著しく変わつて来る。
 近年膀胱保存術後に再発防止の目的で制癌剤の膀胱内注入療法が行なわれ,見るべき成果が得られている1〜9)。われわれも膀胱保存手術を行なつた膀胱腫瘍症例に再発防止の目的で制癌剤マイトマイシンC (以下mmc)の膀胱内注入療法を行なつて来たのでその成績を報告する。

尿道狭窄に対する尿流量測定の意義

著者: 水尾敏之 ,   牛山武久 ,   武田裕寿 ,   平賀聖悟

ページ範囲:P.755 - P.759

緒言
 尿道狭窄の外科的療法が成功したかどうかの判定,あるいは不幸にして狭窄が再発した場合にどの時期に苦痛の多い尿道拡張術を行なうかについては判断に迷うことが多い。
 われわれは14例の尿道狭窄患者に尿流量測定(Uroflowmetry以下UFMと略す)を行ない,予後判定や尿道拡張術を行なう時期の決定にUFMが非常に有効な方法であるという結論を得たので報告する。

CT装置によるsagittal(矢状)およびcoronal(冠状)断面像の描出の試み

著者: 加藤哲郎 ,   根本良介 ,   鈴木隆志 ,   森久 ,   岩田克夫 ,   清水世紀 ,   進藤健三郎

ページ範囲:P.761 - P.764

緒言
 近年,Computed Tomography(以下,CTと略す)と超音波断層法(以下,ECHOと略す)の技術的進歩と普及は目ざましく,泌尿器科領域においても各種疾患に対するこれら検査法の有用性が報告されている1〜3)。この両者の形態診断法はそれぞれに長所短所を有し,常に臨床的価値についてその優劣が問われてきた。そのなかでもCTがECHOに劣る点として,ECHOが断層面の選択が自由であるのに比べ,CTではtransverse面しか描出できない点が挙げられていた。
 しかし,最近CT装置に新たなプログラムを導入することにより,従来のtransverse面だけでなく,coronalあるいはsagittal方向の断面像を再構成(reconstruction)できるようになつた4)。本法の泌尿器科領域における応用はまだ報告されてないが,今回,著者らは泌尿器系疾患に本法を適用して興味ある所見を得たので,代表的な症例を供覧するとともに本法について若干の私見を述べてみたい。

症例

LeVeen—腹腔静脈シャント植え込み手術を施行したstage IV腎癌の1例

著者: 藤岡知昭 ,   岡本重禮 ,   永田幹男 ,   星合治 ,   木村光博

ページ範囲:P.769 - P.772

緒言
 癌性腹膜炎において,抗癌療法が無効である場合,一般に腹水による腹部膨満の改善は水,Naの摂取制限,利尿剤投与,プラズマネートなどの輸液などの保存的治療では難しく,もつばら腹腔穿刺によらなければならない。
 今回,著者らは聖路加国際病院泌尿器科において肝肺転移および癌性腹膜炎を伴つた左側腎癌症例に腹部膨満による食欲不振の改善と腹腔穿刺よりの解放を目的にLeVeen—腹腔静脈シャント植え込み手術を施行し1),満足すべき結果を得たので報告する。

腎脂肪肉腫の1例

著者: 臼田和正 ,   田口裕功 ,   山田哲夫 ,   福岡洋

ページ範囲:P.773 - P.777

緒言
 腎脂肪肉腫は稀な疾患であり本邦報告例はわずか14例である(第1表)。また本症は悪性腫瘍のなかでは比較的予後が良好とされているが,長期の術後経過を観察したものはみられない。著者らは術後約5年間経過観察して再発転移なく予後良好な腎脂肪肉腫の1例を経験した。自験例を報告するとともに本邦報告例を集計し若干の文献的考察を加えた。

腎脂肪肉腫の1例

著者: 福士実 ,   下山茂 ,   高橋信好 ,   冨樫繁也 ,   北村康男 ,   成瀬克邦 ,   鈴木唯司 ,   楠美康夫

ページ範囲:P.779 - P.783

緒言
 腎腫瘍の中で,肉腫は比較的稀なものであり,その中でも多くは線維肉腫,平滑筋肉腫で,腎脂肪肉腫は珍しい疾患である。最近著者らは,腎脂肪肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

結石を合併した尿管瘤の2例

著者: 中嶋和喜 ,   宮崎公臣 ,   藤田幸雄

ページ範囲:P.785 - P.788

緒言
 泌尿器科学の進歩により尿管瘤の報告例は増加しているが,最近われわれは尿管瘤内に瘤とほぼ同じ大きさの結石を合併した2症例を経験したので報告する。

精索結核の1例

著者: 柳重行 ,   秋谷徹 ,   服部義博 ,   中田瑛浩 ,   片山喬

ページ範囲:P.789 - P.792

緒言
 精索の結核性変化は,原発性結核と続発性結核とに区分することができ,このうち,睾丸,副睾丸,精管とは関係なく,精索に原発する結核は比較的まれである。われわれは,最近本症の1例を経験したので報告する。

一側停留睾丸,反対側睾丸無形成であつたPrader-Willi症候群の1例

著者: 高橋俊博 ,   福岡洋 ,   福島修司 ,   岡島昌子

ページ範囲:P.793 - P.796

緒言
 1956年Prader,Labhart,Willi1)は精神発達遅延,低身長,停留睾丸および新生児期の筋緊張低下を主症状とする9例を新しい症候群として報告した。その後,本症候群はPrader-(Labhart)-Willi症候群またはその主症状である筋緊張低下(Hypo-tonia),精神発達遅延(Hypomentia),停留睾丸をはじめとする外陰部発育不全(Hypogonadism),肥満(Obesity)の頭文字をとつたHHHO症候群とも呼ばれている。われわれは両側陰嚢内容の欠如を主訴とした本症候群に一側は睾丸固定術を施行したが,反対側は睾丸無形成であつた1例を経験したので報告する。

Case Stady

下部尿路通過障害に膀胱尿管逆流現象,高度水腎水尿管を呈した症例

著者: 安田耕作 ,   島崎淳

ページ範囲:P.797 - P.800

 17歳,男,学生。
 1977年2月16日,友人に左側腹部を打撲され,血尿,嘔気,嘔吐および排尿障害あり,腎外傷の疑いで緊急入院した。入院時検査では,貧血なく,総腎機能正常だが,DIPで右側高度水腎水尿管を認め,左側は無機能腎である。既往歴,家族歴には特記することはない。

交見室

誰のための英語か,他

著者: 寺島和光

ページ範囲:P.802 - P.804

 学会で発表される時に使用される英語について以前から感じていることを述べたい。
 演題発表(口演)はほとんどの場合スライドを映写しながら演者がしやべる,という形式である、しやべるのはもちろん日本語であるが,スライドの文字は日本語とは限らず,英語(稀にはドイツ語)も使われる。両者が混つていることも多い。たとえば第68回日本泌尿器科学会総会(神戸市)では英語ばかりで書かれたスライドの方がそれ以外のものよりも多いという印象をうけた,スライドに英語を使う習慣は以前からあつたが,最近はその傾向が強いように思える。日本の学会なのになぜ英語を使うのだろうか。それには次のような理由が考えられる。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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