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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科35巻1号

1981年01月発行

雑誌目次

綜説

ヒト陰茎の勃起のメカニズム

著者: 白井將文

ページ範囲:P.7 - P.16

はじめに
 ヒト陰茎の勃起のメカニズムに関する研究は意外と少ない。それは陰茎の構造が動物の種類によつて異なり,したがつて勃起のメカニズムもまつたく異なるので,他の動物の実験成績をそのままヒトにあてはめることはできず,結局ヒトを研究材料にして研究しなければならないという困難さと,ヒトでは勃起現象が情動に強く影響されるためにその研究方法が大変難しいことなどによると思われる。
 そのためヒト陰茎の勃起のメカニズムには不明の点が多く,また数少ない研究も主として解剖学的な観点から勃起のメカニズムを論じたものが多かつた。しかし,ようやく最近になつて陰茎海綿体造影やphalloarteriographyを応用して,陰茎内の血流動態の変化よりそのメカニズムを論じたものがみられるようになつた。

文献抄録

転移性膀胱癌の化学療法

ページ範囲:P.16 - P.16

 著者は過去3年間に膀胱癌に対して種々の抗癌剤が使用され,そのphase Ⅱ,Ⅲの臨床知見について総括的に述べると共に,今後のデータ集計に際しての注意を述べている。
 過去3年間のphase Ⅱ studyで報告された抗癌剤として注目されるのは,Methotrexate(MTX),Adria-mycin(ADM),Cis-diamminech-loride platinum II(CDDP)が主なもので,podophyllotoxin(VM26),Bleomycin (BLM),Cyclophospha-mide(CTX)をあげることができる。

手術手技 泌尿器科関連領域の手術

腸瘻造設術

著者: 松林冨士男 ,   天野純治

ページ範囲:P.21 - P.26

はじめに
 腸瘻には内腸瘻と外腸瘻とがあり,内腸瘻は他臓器と交通するものをいい,外腸瘻は体表外と交通するものをいう。したがつて人工的腸瘻造設術での内瘻造設術とは消化管同志の吻合をいい,外瘻造設術とは腸内容を体表外に導く術式をいつている。この外腸瘻には腸内容の全部を排出するものに結腸を用いたいわゆる人工肛門と全結腸切除後につくられる回腸瘻がある。この回腸瘻は人工肛門のカテゴリに入るべきものであるが,現在のところ人工肛門とはいつていない。他の一つの腸瘻は腸内容の一部が体表外に排出されるもので,空腸,回腸,盲腸,虫垂,結腸にその目的に応じた体表部位にいろいろの形の腸瘻が造設されている。一般に腸瘻といわれる狭義の腸瘻がこれにあたるものと思う。腸瘻を理解しやすくするために分類してみると第1表のごとくなる。この表でもわかるように腸瘻造設全般にわたり申しのべることは膨大な紙面を要することであり,筆者らに与えられた腸瘻造設術は狭義の腸瘻造設術と理解したい。この腸瘻は栄養補給と腸内容排除,減圧の目的で主として造設される。この造設術においても数多くの術式があり,与えられた紙面と図表ではすべてを論ずることは不可能であり,できたにしてもその術式の成書よりの転載羅列にすぎなくなる。そこで筆者らの日常行なつている狭義の腸瘻の造設術について述べる。

講座

泌尿器科疾患の総合画像診断(1)—副腎腫瘍

著者: 平敷淳子 ,   畠山信逸 ,   平野恒夫 ,   高橋美貴子 ,   洞口正之 ,   三橋多佳子

ページ範囲:P.27 - P.33

 副腎腫瘍にはホルモン産生腫瘍が多く(第1表),形態診断のみならず機能に依存する画像診断を含めて,腹部単純写真,排泄性尿路造影,超音波断層法,核医学検査,CTおよび血管造影がそれぞれ重要な役割をはたしている。今回はこれらの画像法の解説,適応と限界につき述べ,適切な画像法の組み合せに言及したい。

座談会

尿路性器腫瘍の放射線治療

著者: 川井博 ,   望月幸夫 ,   松本恵一

ページ範囲:P.37 - P.46

 川井(司会) 本日は「尿路性器腫瘍の放射線治療」ということで,非常に大きなテーマを掲げまして,この道ではたいへん造詣の深い専門家でおられる望月教授と松本博士のお2人にお話をうかがいたいと思います。
 Wilms腫瘍,睾丸腫瘍,陰茎癌,そして前立腺癌の5つの尿路性器の悪性腫瘍を取り上げるわけですが,いずれの癌も放射線治療が,その予後には重要な役割を占める疾患であろうと思います。

Urological Letter

睾丸捻転の3例に思う/恥骨上前立腺摘除時の直腸損傷

ページ範囲:P.46 - P.46

 先月1ヵ月間に3例の睾丸捻転症を経験した。 第1例は,23歳。過去にも右側睾丸部には2同,左側には1回の疼痛発作が起こつたことがある。しかしその都度自然に治つた。今回の発作は18時間つづいた。熱はなかつた。白血球数は12,000に増加したが,百分率は正常だつた。ドプラー法でみたが右側がかすかに陽性であつた。手術をしてみたら右の精管が捻転し,睾丸はうすい青黒色を呈していた。精管の捻転は容易に解除できたし,その後の経過も良かつた。
 第2例は,右側に5時間の睾丸痛がつづいたあとで来院した。百分率は普通だつたが,白血球は18,000に増していた。熱はなかつた。ドプラー法で診断しようとしたが,聞き分けの悪い子で満足な結果が得られなかつた。尿には強拡大で1視野に10〜15個の白血球がみられた。開けてみたら睾丸はすでに黒くなつていた。精管の動脈も静脈も血栓でつまつていた。睾丸を摘出した。術後経過は良好であった。

原著

続発性腎盂尿管腫瘍の臨床的検討

著者: 早川正道 ,   小田島邦男 ,   藤岡俊夫 ,   秦野直 ,   石川博道 ,   村井勝

ページ範囲:P.51 - P.57

緒言
 骨盤臓器の悪性腫瘍の進展に伴い,尿路系への圧迫,浸潤が生じ,尿路変更を余儀なくされる症例にしばしぼ遭遇する。しかし,原疾患と臨床経過を考慮し,姑息的に尿路を確保するにとどめるのが現状である。特に放射線療法が併用されている例では,癒着が高度なために,照射部の後腹膜腔内における尿管狭窄の部位を観察するのが困難な場合が多い。
 われわれは,慶応義塾大学病院において1965年より1978年度までの14年間に63例,さらに防衛医大病院にて過去2年間に3例の腎盂尿管腫瘍を経験した。そのなかで,尿路変更にとどまらず,積極的に病変部の摘出術を施行しえた続発性腎盂尿管腫瘍が7例と多く,臨床面でさらに検討すべき問題であることから,ここに集計し,文献的考察を加え報告する。

選択的静脈血採取法による副甲状腺腫瘍の術前局在診断

著者: 松尾重樹 ,   加藤哲郎 ,   根本良介 ,   森久 ,   鈴木隆志 ,   木津典久 ,   新藤雅章

ページ範囲:P.59 - P.64

緒言
 原発性副甲状腺機能亢進症(以下,原発性HPT)の原因となる副甲状腺腫瘍の多くは,直径2cm以下の小腫瘍であるため腫瘍の局在を正確に診断することは容易でない。従来から副甲状腺腫瘍の局在診断には副甲状腺シンチ,食道造影,甲状腺リンパ造影,サーモグラフィー,あるいは選択的甲状腺動脈造影などの各種診断法が用いられ,最近では超音波断層法(エコーグラム)やCTスキャンによる診断も試みられている1)。しかし,いずれも腫瘍の局在決定にとつて十分な診断法とはいえない。そこで,以上に述べた画像診断法に代わつて超選択的静脈血採取法による副甲状腺ホルモン(以下,PTH)分布から腫瘍の局在を診断する方法が注目されるようになつた2)
 われわれは最近経験した原発性HPT 4例に対して,各種画像診断とともに超選択的静脈血採取による局在診断を行ない,良好な成績を収めたので報告する。

尿路感染症分離菌とその薬剤感受性について

著者: 金子裕憲 ,   阿部定則 ,   国沢義隆 ,   西村洋司 ,   森伴雄 ,   上原良子 ,   多田信子

ページ範囲:P.65 - P.70

緒言
 尿路感染症は泌尿器科領域における重要な疾患の1つであり,その治療の中心となるものは化学療法である。近年化学療法剤の進歩は著しいが,その反面起炎菌も従来のグラム陽性球菌に代つてグラム陰性桿菌が大半を占め,そのうち以前は非病原菌と考えられたPseudomonas,Proteus,Serratiaなどによる難治性感染症の増加や,多剤耐性株の出現といつた新たな問題が生じている。
 尿路感染症の治療にあたつては,まずその起炎菌を決定し,それに適合する化学療法を行なうことが原則となる。薬剤の選択にあたつては起炎菌側の菌種と薬剤感受性の分布について最近の傾向を知ることであり,次に宿主側の有する因子についても考慮に入れておく必要がある。

症例

膀胱憩室腫瘍の1例

著者: 森下直由 ,   居原健

ページ範囲:P.75 - P.77

緒言
 膀胱憩室腫瘍は比較的まれなものであるが,最近,結石を伴つた本症の1例を経験したので報告する。

電撃型陰茎癌の1例

著者: 矢崎恒忠 ,   石川悟 ,   高橋茂喜 ,   小川由英 ,   加納勝利 ,   北川龍一

ページ範囲:P.79 - P.82

緒言
 陰茎癌は比較的稀な泌尿器科疾患である。転移経路は主に浸潤性およびリンパ行性であり,血行性転移は稀であると言われている。最近われわれはこの血行性転移により全身諸臓器に転移巣をきたし短期間のうちに死亡した,いわゆる電撃型陰茎癌(fulminating cancer of the penis:Ormond,1940)の1例を経験し,更に死後剖検を行ない得たので報告するとともに若干の文献的考察を加えたい。

Cavernoglandular Shunt法による持続陰茎勃起症の治療

著者: 山本雅憲 ,   三宅弘治 ,   三矢英輔

ページ範囲:P.83 - P.86

緒言
 持続陰茎勃起症に対するいくつかの外科的治療法のうち,陰茎海綿体・尿道海綿体吻合術と,陰茎海綿体・伏在静脈吻合術の2つが,最も普通に行なわれてきた。近年,Winterらによつて,Cavernoglandular Shunt法が紹介され,その有用性が検討されているが,今回われわれは,痛みを伴う持続勃起を繰り返す患者に対し,この方法を試み,良好な結果を得たので報告する。

傍睾丸横紋筋肉腫の1例

著者: 芝伸彦 ,   福地弘貞 ,   平林直樹 ,   柳沢温 ,   小川秋実

ページ範囲:P.87 - P.89

緒言
 傍睾丸横紋筋肉腫は比較的稀な疾患とされている。今回われわれは,傍睾丸横紋筋肉腫の1例を経験したので報告する。

Case Study

尿路症状を呈した虫垂炎

著者: 田中一成

ページ範囲:P.91 - P.94

 〔症例1〕56歳,女性。
 1980年2月20日初診。「12,3年前,左腎結石の手術を受け,その際,右腎に数個の小結石を指摘された。1月27日,右側腹部に疝痛ならびに血尿があつた。某医から腎結石の疑いで紹介された。腹部所見は右下腹部全体に圧痛ならびに筋性防御あり。尿検で蛋白(+),赤血球3/F,白血球3/F,グラム陽性桿菌(+),末梢血で赤血球377×104,白血球12,700,Hb12.5,BUN15,クレアチニン0.96,腹部単純写真著変なし。IVPは2月8日,2月15日とも右腎盂尿管が造影されない。以上より右尿路結石を疑つているのでよろしく。」という紹介状とともに即日入院した。

交見室

「血尿についての検討」について,他

著者: 酒井紀 ,   河村信夫

ページ範囲:P.95 - P.97

 ●本誌34巻11号に掲載された小川氏らの「血尿についての検討」と題する論文を拝読させていただきました。
 血尿は泌尿器科的疾患の主要徴候ですが,内科的にも腎疾患の重要な臨床徴候の一つであり,とくに急性糸球体腎炎ではtriasとして肉眼的血尿を重視していることは周知のところです。しかし,小川氏らも指摘しているように,血尿の程度を色調,検鏡所見,潜血反応などから詳細に報告した論文は案外少ないようです。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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