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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科35巻11号

1981年11月発行

雑誌目次

講座

臨床に役立つ泌尿器の解剖学(5)—男性生殖器:外陰部

著者: 星野一正

ページ範囲:P.1039 - P.1046

 前編までのシリーズにおいては尿路の局所解剖学的事項について論じたので,本編では男性生殖器について述べる。男性においては特に尿路と生殖器との関係が深いので,男性生殖器について述べる際,前編までに述べた事項との重複は避け難い。

文献抄録

TURBt,TURPを同時施行時の前立腺部への腫瘍発生の影響

ページ範囲:P.1046 - P.1046

 従来より膀胱移行上皮性腫瘍と前立腺部を同時に経尿道的に切除すると,膀胱腫瘍細胞の移植から尿道前立腺部に腫瘍発生頻度が高いと臨床的に言われている。著者らはこの事実の有無を確認するために,膀胱腫瘍と前立腺を同時に経尿道的に切除した137例(A群)と同期間に膀胱腫瘍のみを切除した150例(B群)について比較検討した。A群,B群共に術後1年までは3ヵ月毎に,2年目は6ヵ月毎,3年以降は年に1回の内視鏡検査により腫瘍再発を検索した.A群の膀胱腫瘍と前立腺の切除を同時に施行した症例のうち103例はpoor riskのため2回のTURは無理と考えられ,25例は膀胱壁または頸部に腫瘍が存在して前立腺のTURが必要と思われた症例であつた。A群の平均年齢71歳,B群は60歳で,術後の経過観察期間の平均月数はA群69ヵ月,B群は96ヵ月である。A群,B群の膀胱腫瘍のgradeはPapillom 12.4%,13.3%,Ⅰ 24.8%,25.4%,Ⅱ 25.5%,23.3%,Ⅲ 21.9%,22.0%,Ⅳ 15.4%,16.0%でほぼ類似のgradeである。膀胱腫瘍の再発率はA群56.2%,B群は61.3%で,tumor freeの平均期間はA群28ヵ月,B群は31ヵ月であつた。

原著

腎癌に合併した高カルシウム血症の臨床的検討

著者: 根本良介 ,   森久 ,   阿部良悦 ,   加藤哲郎

ページ範囲:P.1051 - P.1056

緒言
 悪性腫瘍に高Ca血症を伴うことはまれではない。とくに腎癌は肺癌とならんで高Ca血症を起こしやすい悪性腫瘍の一つで,その成因も1)骨転移による骨破壊,2)高Ca血症を来す物質の腫瘍内産生,3)原発性副甲状腺機能亢進症のような良性疾患の合併,4)薬剤の過剰投与などさまざまである。
 今回,われわれは当教室で経験した腎癌に伴つた高Ca血症の8例をもとにして,高Ca血症の成因に関する鑑別診断とその治療法について臨床的検討を加えたので報告する。

Computed tomographyによる腎盂腫瘍の診断

著者: 増田富士男 ,   仲田浄治郎 ,   大西哲郎 ,   鈴木正泰 ,   町田豊平

ページ範囲:P.1057 - P.1060

緒言
 Computed tomography(CT)は腎疾患の診断に広く用いられるようになり,とくに腎細胞癌をはじめとする腎実質腫瘍の診断には,その高い有用性が認められている。一方,腎盂腫瘍のCTによる所見,診断的意義についての評価は少なく,まとまつた報告はみられていない。
 今回われわれは,最近の2年間に経験した腎盂腫瘍7例について,CTによる検討を行なつたので,その所見および診断的価値について報告する。

腎外傷200例の臨床的観察

著者: 大原憲 ,   青木清一

ページ範囲:P.1061 - P.1065

緒言
 腎臓は後面は腸腰筋などの筋肉群に,また前面は腹腔内臓器により保護され,後腹膜腔に存するが,腎外傷は腹部外傷のうちでも比較的多いとされている1)。そして,交通事情が激しく,また複雑化してきている現代社会では,交通事故,労災事故などの不慮の事故が多くなつてきており,泌尿器科領域でも外傷学は重要な一分野である。そこで,われわれは過去の経験に基づき,救急医学の一助とするべく,最近までの200例の腎外傷について臨床的観察を行なつたので,ここに報告する。

前立腺癌患者の99mTc燐酸化合物による骨シンチグラフィーの臨床的検討

著者: 木下正之 ,   五十嵐丈太朗 ,   野垣譲二 ,   岡田清己 ,   岸本孝

ページ範囲:P.1067 - P.1072

緒言
 1971年,Subramanian1)により99mTC燐酸化合物を用いる骨シンチグラフィー(以下骨シンチと略す)が開発されて以来,従来の骨親和性核種を用いる方法に比し,画像,検査時間など種々の点ですぐれていることから,本法は各種骨病変のルーチン検査法として急速に普及した。当然,これはまた前立腺癌骨転移の早期発見,治療効果の判定などにも広く用いられるようになつたが,骨X線所見との対比において画像の判定上問題があることも少なくない。これらの点に鑑み,今回著者らは過去6年間に経験した前立腺癌症例に対する骨シンチ像を臨床的に検討した。

Urological Letter

モーターサイクル愛好家の前立腺硬結,他

ページ範囲:P.1056 - P.1056

 精力的にモーターサイクルを乗り回している患者が最近カリフォルニア州のBajaまで数百マイルをその車で旅行してきた。彼が帰つてきて訪ねてきたので,肛門指診をしてみると,一つの石のような硬結が前立腺と精嚢に触れた。ある期間が過ぎた後にはこの硬結がすつかり軟化していた。
 ところが再び長距離のモーターバイク旅行をした後に調べたら,また前立腺が石様硬になつていた。一度生検をしたが駄目だつた。筆者は局所麻酔のもとに生検をしたのだが,会陰部の組織が硬くかつ強靱なために生検ができなかつた。こんなことは初めての経験である。病院で針生検をしたが特別の所見はなかつた。

症例

自家腎移植を行なつた腹膜後腔線維症の1例

著者: 玉井秀亀 ,   小川忠 ,   三井久男 ,   長久保一朗 ,   森口隆一郎 ,   名出頼男 ,   長谷川昭

ページ範囲:P.1077 - P.1081

緒言
 原因不明の非特異性炎症による後腹膜腔の線維化といわれている腹膜後腔線維症は,比較的稀な疾患とされている。またその診断も困難なことが多く,症状が進んだ時期に見出されることが多い疾患のひとつである。われわれは,本症の無尿を主訴として来院した1例を経験し,手術的に腹腔内に右腎を自家移植し,良好な経過を経た症例を経験したのでここに報告するとともに若干の考察を加える。

腎平滑筋腫の1例

著者: 守屋至 ,   原田忠 ,   西沢理 ,   佐藤貞幹 ,   染野敬

ページ範囲:P.1083 - P.1086

はじめに
 腎の良性腫瘍は臨床症状を示すことが少なく,病理解剖などで発見されることが多い。
 われわれは疝痛発作を主訴として来院し,同時に肉眼的血尿,発熱を伴い,尿路結石症の疑いで緊急入院した腎平滑筋腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

対側尿管に転移した腎癌の1例

著者: 米澤正隆 ,   今川章夫 ,   竹林治朗

ページ範囲:P.1087 - P.1090

緒言
 転移性尿管癌は稀とされている。腎癌術後3年目に対側尿管に転移し腎不全を来した症例について報告する。

嚢胞性腎盂尿管炎の1例

著者: 高橋茂喜 ,   北川龍一 ,   加納勝利 ,   小川由英 ,   矢崎恒忠 ,   石川悟

ページ範囲:P.1091 - P.1095

緒言
 嚢胞性腎盂尿管炎は腎盂・尿管の粘膜,あるいは粘膜上皮下に多数の小嚢胞を形成する稀な疾患である。本邦では1968年桐山・多嘉良1)が嚢胞性尿管炎の第1例報告を行つて以来,嚢胞性尿管炎14例,嚢胞性腎盂尿管炎5例,嚢胞性腎盂炎1例の報告がある。今回われわれは膀胱腫瘍を伴う嚢胞性腎盂尿管炎を開放性腎盂生検により確認した1例を経験したので,若干の文献的考察とともにこれを報告する。

膀胱扁平上皮癌の放射線治療—膀胱二重造影により効果判定した1例

著者: 三方律治 ,   木下健二

ページ範囲:P.1101 - P.1103

 膀胱癌,特に扁平上皮癌患者については,放射線治療が有効であるため,放射線照射を行なう頻度が増している。膀胱癌のレントゲン診断法としてuniversal gyroscopic X-ray TV apparatus使用double contrast cystography(以下gyro-d.c.c.と略す)が有用であるといわれている1〜3)。今回われわれは膀胱扁平上皮癌患者に放射線治療を行ない,その効果判定にgyro-d.c.c.が有用であつた症例を経験したので,症例経過とレントゲン写真を供覧する。

旁中腎管由来と思われた陰嚢内嚢腫

著者: 国沢義隆 ,   星野嘉伸

ページ範囲:P.1105 - P.1107

緒言
 われわれは左陰嚢内に旁中腎管由来と思われた孤立性の嚢腫を1例経験したので報告する。

小児にみられた陰嚢内血管腫の1例

著者: 仲田浄治郎 ,   大石幸彦 ,   小野寺昭一 ,   池本庸 ,   朝山功 ,   清田浩 ,   町田豊平

ページ範囲:P.1109 - P.1112

緒言
 陰嚢内血管腫は稀な疾患で,本邦では,これまでにリンパ管腫を伴つた血管腫を含め15例がみられるにすぎない。今回,われわれは小児にみられた陰嚢内血管腫を経験したので若干の考察を加えて報告する。

小さな工夫

尿管S状結腸吻合術におけるステントカテーテルの肛門外への誘導法

著者: 高崎登 ,   秋田康年

ページ範囲:P.1113 - P.1113

 尿路変更として尿管S状結腸吻合術を行なうにあたつて,ステントカテーテルを留置する場合とそうでない場合とがある。われわれはステントカテーテルを留置するCoffey II法を行なつているが,ステントカテーテルを肛門外へ誘導する場合に,ロマノスコープを使用することなく,ネラトンカテーテルを使つて容易に誘導しているので,その手技を紹介する。

Case Study

高カルシウム血症および頸部腫瘤を伴つた尿路結石例

著者: 日台英雄

ページ範囲:P.1117 - P.1121

 45歳,家婦。
 腰痛および下肢痛のため某整形外科医を受診,椎間板ヘルニアとして診断治療されるも症状が悪化し他病院を訪れた。尿中赤血球あり,単純X線撮影にて左腎部の結石陰影と高カルシウム血症を見出された。原発性副甲状腺機能亢進症を疑われ検査中に疝痛発作と結石の自排を生じた。既往歴に十二指腸潰瘍がある。

見聞記

腎移植の実際—アメリカでの経験(5)

著者: 藤田公生

ページ範囲:P.1123 - P.1125

移植腎の摘出
 死体腎移植システム運用の実際をカリフォルニア大学のIwakiが雑誌「腎と透析」5月号に書いてくれた。Starzlのところでは肝移植もするので,ネットワークにのらないで自分で摘出にでかけることが多い。肝と腎を摘出するために飛行機を利用してアメリカの各地に飛ぶこともある。
 アメリカでは死の判定は脳死であり,心は動いているいわゆるheart-beatingの状態である。したがつてあまりわれわれの参考にはならない。死を宣告され,家族の同意を得た死体は手術室へ運ばれる。心は動いており,気管には送管されてあり,麻酔医もついている。まつたく生体手術と同じである。

交見室

「エホバの証人」と輸血拒否

著者: 矢崎恒忠

ページ範囲:P.1126 - P.1126

 「エホバの証人」と輸血拒否の問題は本邦では稀である。最近われわれはこのような症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告し読者諸兄の参考としたい。患者は76歳男性で肉眼的血尿を繰返すために入院し諸検査の結果,右腎盂腫瘍と診断された。貧血以外特に異常所見はなく,外科療法が最善と考えられた。しかし患者は,自分は「エホバの証人」の信者であり宗教上の理由でいかなる事態が生じても輸血は拒否すると主張した。一方,家族は信者ではなく,必要があればぜひ輸血をしてほしいと強く希望した。故にでき得る限り出血量を減らし万一輸血を必要とする場合でも一切輸血はしないと約束し,患者および家族の承諾を得た。更に手術承諾証に患者の意志を記載してもらつた。以上の事情を担当麻酔医にも説明し了承を得て手術を行なつた。型のごとく摘除術を終了し創部を閉じるために患者の体位を変更したところ突然出血し始めた。至急止血したがかなりの出血のため輸血が必要な状態になつた。しかし,約束通り血液製剤は一切使用しなかつたため高度の貧血と低タンパク血症になつたが術後特に問題なく創の治癒も予想外に良好であった。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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