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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科35巻2号

1981年02月発行

雑誌目次

綜説

Cisplatinについて

著者: 川井博

ページ範囲:P.111 - P.120

はじめに
 今日癌の化学療法剤としては極めて多数の薬剤が臨床的に応用されているが,cisplatinのように白金という重金属を含む薬剤は見当らない点で,大変ユニークな癌治療剤といえる。
 この薬がRosenberg(1965)1)によつて大腸菌に対して抗菌力を示すことが発見され,その薬理作用を追究中に,実験動物の移植腫瘍に対して抗腫瘍効果のあることが判明して注目されるようになつた。しかし,何分にもこの薬剤は後述するように腎毒性が強く,聴覚障害なども起こしやすいためになかなか臨床的には利用し難い面があつたが,多くの研究者により本剤の投与方法,投与経路,投与量と投与間隔あるいは十分なhydrationを投与前・中に行なつたり,利尿剤の併用などで最近では副作用の点では心配なく投与し得る薬剤となつた。本剤は比較的広い抗腫瘍スペクトラムを示すので,ここ数年の内に極めて多数のphaseⅠ,Ⅱ,Ⅲの研究報告を見ることができる。本剤に関しては本誌の読者の方々も概略は御承知のことと思うが,ここにcisplatinを紹介する意味で,基礎的研究経緯の一部と本剤の泌尿器科領域悪性腫瘍の治療成績について文献的考察を述べる。

手術手技 泌尿器科関連領域の手術

腸吻合術

著者: 古雄敏文

ページ範囲:P.125 - P.130

はじめに
 消化器外科医にとつて腸吻合術は最も基本的なものであり,古くからの研究や経験から,100%安全で,狭窄などの合併症のない方法が確立されていなければならないと思われるが,現実は必ずしもそうではなく,現在なお1列縫合がよいか,2列縫合がよいかなどの議論のあるところである。しかし,腸吻合を行なう際に当然守られるべき基本的な事項は確立している。これらを中心に記述してみたい。

講座

泌尿器科疾患の総合画像診断(2)—腎の腫瘤性病変

著者: 永井純

ページ範囲:P.131 - P.137

Ⅰ.総合画像診断の進め方
 腎の腫瘤性病変は嚢胞性病変と実質性病変に大別され,実質性病変は,さらに腫瘍,肉芽腫,膿瘍,血腫などに分かれる。
 したがつて,腎の腫瘤性病変をスクリーニング検査により拾い上げる診断法がfirst stepであり,腫瘤性病変を嚢胞性病変と実質性病変に鑑別する診断法がsecond stepとなる。ついで実質性病変と診断された場合には,その質的診断を決定するための診断法がthird stepとなる。

文献抄録

Einhornによる進行性セミノームの治療

ページ範囲:P.137 - P.137

 セミノームは放射線感受性が高いので,stage ⅠとⅡのものでは,除睾術と放射線治療により前者では95〜100%,後者でも85〜95%の治癒率である。stage Ⅰはリンパ管撮影,CT超音波法で転移が認められないものであるが,実際にはfalse nega-tiveの例が10〜20%あると言われるので後腹膜腔の照射をする。
 stage Ⅱは後腹膜リンパ節転移が明らかなもので,この場合は縦隔洞,左鎖骨窩まで照射する。stage Ⅰ,Ⅱの精上皮腫治療については上述の治療方針は諸家の意見は大体一致しているが,stageⅢになるとanaplastic seminomaの組織像を呈するものもあり,またHCG, AFPマーカーの陽性者も見られ,放射線照射か化学療法のいずれを優先させるか,必ずしも統一的見解はないようである。

原著

ヨード過敏症症例に対する核医学的腎検査法について

著者: 柳沢宗利 ,   町田豊平 ,   三木誠 ,   大石幸彦 ,   上田正山 ,   木戸晃 ,   島田作

ページ範囲:P.143 - P.147

緒言
 核医学的腎検査法の適応の1つに,ヨード造影剤過敏症症例に対する腎検索があげられている。尿路造影法による各種X線検査法は,われわれ泌尿器科医にとつて欠くことのできない検査法であるが,ヨード剤による重篤な副作用が起きると,その他の尿路検索法としては,核医学的腎検査法,すなわちrenography, renal scanningなどが利用されることになる。そこでわれわれは,ヨード剤が使用できず,主に核医学的検索を行ない,治療や経過観察を行なつている泌尿器科疾患8症例をまとめてその有用性について検討した。

経尿道的膀胱腫瘍切除術施行時のmultiple random mucosal biopsyの意義—特に上皮内癌の診断に関して

著者: 藤岡知昭 ,   岡本重禮 ,   永田幹男 ,   李漢栄 ,   斉木茂樹

ページ範囲:P.149 - P.154

緒言
 膀胱上皮内癌(carcinoma in situ)は表在癌でありながら早期に浸潤癌に移行する危険性があり,かつ広範で不規則な広がりを示すことが多く近年その存在が注目されている1)。しかもその膀胱鏡所見は特異像を認めず多くの症例において潜在した癌として発見されている。
 著者らは今回22例にmultiple random mucosal biopsyを施行し,うち7例に上皮内癌を確認し,これら7例全例に膀胱全摘除を行なつた。これら症例において内視鏡所見を初めとする術前検査,生検および膀胱摘除標本の病理診断とを比較することにより若干の知見を得たので報告する。

症例

腎外傷を契機に発見された腎腫瘍の1例

著者: 近藤直弥 ,   大石幸彦 ,   木戸晃 ,   柳沢宗利 ,   高坂哲 ,   徳川博彦 ,   島田作 ,   町田豊平

ページ範囲:P.157 - P.160

緒言
 病的腎は軽微な外力により損傷を受けやすく,血尿を生ずることが多いが,その発症契機より原疾患が時として見のがされることがある。最近われわれは腎外傷を契機に発見された腎細胞癌の1例を経験したので報告する。

盲管重複尿管の1例

著者: 高橋俊博 ,   福岡洋 ,   福島修司

ページ範囲:P.161 - P.164

緒言
 盲管重複尿管(Blind-ending bifid ureter)の本邦例は1929年高橋ら1)の尿管憩室としての報告に始まるが,1947年Culpら2)の定義が提唱されてからは盲管重複尿管(Blind-ending bifid ureter)という診断名が一般に使用されるようになつた。最近われわれも同側に尿管結石を合併した盲管重複尿管の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

尿管自然破裂の2例

著者: 小山右人 ,   河野道弘 ,   当真嗣裕 ,   東四雄 ,   和久井守 ,   大島博幸 ,   横川正之

ページ範囲:P.165 - P.168

緒言
 尿管自然破裂はきわめてまれな疾患で,わが国でも報告例は少なく,現在までにその報告例は7例1〜7)を数えるにすぎない。最近われわれはその2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

後腹膜線維化症の1例

著者: 家田和夫 ,   石川博通 ,   早川正道 ,   木下英親 ,   田崎寛

ページ範囲:P.169 - P.173

緒言
 特発性後腹膜線維化症は,1905年Albarranにより初めて報告されたが,その後Ormord1)が,後腹膜の非特異性炎症による両側尿管の閉塞例の詳細な記載を行なつて以来,注目を集めるようになつた。以来欧米での報告は数多く見られているが,本邦ではなお比較的まれな疾患とされている。最近われわれは,無尿を来して緊急入院した特発性後腹膜線維化症の1例を経験したので報告する。

副睾丸フィラリア症の1例

著者: 秋谷徹 ,   柳重行 ,   服部義博 ,   中田瑛浩 ,   片山喬 ,   北川正信 ,   吉村裕之 ,   赤尾信明 ,   近藤力王至 ,   大西義博

ページ範囲:P.179 - P.182

緒言
 フィラリア症は乳糜尿症,象皮病,睾丸水瘤などの多彩な症状を示し,泌尿器科領域においても多々報告がなされてきた。しかし,副睾丸のフィラリア症はその報告例が少なく,今回われわれはこれを経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

新生児睾丸回転症の1例

著者: 五島明彦 ,   公平昭男 ,   高井修道

ページ範囲:P.183 - P.186

緒言
 睾丸回転症は思春期および1歳以下にピークのあることが知られているが,最近,欧米では1歳以下,なかでも新生児期の報告例が多くみられる。しかしながら,本邦においては新生児期の報告例は非常に少ない。最近,われわれは生後2日目にて発見された,新生児睾丸回転症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

心因性尿閉の2例

著者: 宮川征男 ,   平川真治 ,   山口隆正 ,   後藤甫

ページ範囲:P.187 - P.190

緒言
 欧米では心因性尿閉の症例が比較的多く報告されているが,本邦での報告は少ない。われわれは最近,心因性尿閉と診断した2例を経験したので報告する。

小さな工夫

開脚不能症例に対する尿管カテーテル法

著者: 伊東健治 ,   百瀬俊郎

ページ範囲:P.191 - P.191

 膀胱鏡険査が施行できうる最低条件として,以下の項目が従来より至極く当然のこととしてあげられてきた。
 1)検者の頭部が患者の股間に入れる程十分に,患者が開脚できること。

Case Study

血尿および尿閉を示し膀胱腫瘍を疑わしめた慢性膀胱炎

著者: 東海林文夫 ,   横山正夫

ページ範囲:P.193 - P.197

 70歳,女。
 1980年1月に肉眼的血尿,頻尿および排尿痛があり某医を受診し,急性膀胱炎の診断をうけ抗生物質投与4日後に症状の軽快をみた。同年7月8日,同様の症状があり再び治療を受けたが軽快せず7月12日に当科を紹介された。発熱,腰痛はなかつた。

Urological Letter

中国におけるurology/忘れられた疾患

ページ範囲:P.197 - P.197

 筆者は中国への旅行から帰つたばかりである。この旅行はアメリカ泌尿器科学会西部部会の後援のもとにDr.H.Bodner(このUrol.letterの編集者)を団長とするものであつた。この旅行のプランはよく組まれており,興味ぶかいものであつた。泌尿器科医である読者のみなさんにとつても恐らく興味があると思われることがらがあるので御紹介しよう。
 中国における泌尿器科学は変なものではなくて,まともである。泌尿器科医の中国医学界におけるランクは非常に高い所にある。筆者らが会つた限りでは,泌尿器科のレジデント達は極めて良いトレーニングを受けている。彼らは知能は高いし,学ぶことに殊のほか熱心であつた。彼らが近代的であることは驚くべきほどであつた。診断装置や治療機器のあるものは最新式のものだつた。しかし,すぐ気がついたことは,それらのうち米国製のものは極めて少なく,主として日本および西独製品であつた。台湾製のものさえも,少しだが使われていた。

交見室

リニア電子スキャンによる経直腸前立腺縦断層法について

著者: 大内達男

ページ範囲:P.198 - P.198

 臨泌34巻11号掲載の「リニア電子スキャンによる経直腸前立腺縦断層法」と題する関根.岡先生らの論文を,超音波診断法を実施している泌尿器科医として,更に同じモデルの探触子を同時期に試用した経験者として興味深く拝読した。このreal time imaging methodでsagitalのtamogramを描出し得るまでには過去に長い歴史があつたことを考えねばならない。本邦においては1963年前立腺に対するA mode法を応用した報告をわれわれが最初に行なつたが,これより以前J.J. Wild,Schlegelらの報告もあり,泌尿器科領域への超音波の進出は試みられていた。Wildのradial scanningの試みは学会報告のものが参考にされ,われわれもほとんど同年代の1964年には試作に成功し,実地に患者に応用して1964年第4回日超医研究発表会以来PPI方式による診断法として報告して来た。而後順天堂大学,東北大学を主体とする検討が続けられ,今日では経直腸式のradial scanningとしてほとんど完成の域に達していることは周知の通りである。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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