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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科35巻4号

1981年04月発行

雑誌目次

綜説

副腎腫瘍の局在診断

著者: 福地総逸

ページ範囲:P.315 - P.322

緒言
 副腎は他の臓器に比べてその大きさが小さいのにかかわらず,生命の維持に必須の各種ホルモンを分泌している。したがつて副腎の機能性腫瘍によるホルモン分泌過剰では著明な全身症状を呈し,予後の不良なものも存在する。副腎疾患の診断はステロイドならびにカテコールアミンの測定法の進歩により比較的容易となつたが,その原因が腫瘍によるものか,また腫瘍が左右副腎のいずれに存在するのかの診断は現在でも困難な場合がある。特に原発性アルドステロン症の副腎腺腫は極めて小さく,その局在を明らかにすることは困難である。さらに,腫瘍の存在しない特発性アルドステロン症や糖質コルチコイド反応性アルドステロン症が存在して,その鑑別も容易ではなく,腫瘍が存在するものと考えて手術を行なつても腫瘍を発見できない場合がある。筆者1)はすでに5年前本誌上に副腎腫瘍の局在診断について発表したが,本文ではその後に開発された副腎CTスキャンおよび副腎超音波診断による副腎腫瘍の局在診断を原発性アルドステロン症を中心としてのべることとする。

Urological Letter

病気の診断は総合的でなければならぬ/ショートバウル症候群における蓚酸結石生成の予防に炭酸石灰療法

ページ範囲:P.322 - P.322

 過去10年間における超音波診断,アイソトープスキャンおよびCTスキャンなどによる診断法の進歩はわれわれの診断能力を大いに増進させてくれた。しかし,これらの検査は費用が高いこと,およびこれらの優れた診断能力にも限界があることや偽陽性のあることなどから,いろいろ検討することが必要である。
 われわれの数人の患者で臨床的にはBとCステージの前立腺癌患者をアイソトープスキャンしてもらつたら骨にホットスポットがあるとの返答をもらつた。そこでその後他の多くの検査で追跡したところ,前記のホットスポットは前立腺癌の転移によるものではないことが明らかになつた。したがつて,骨スキャンが陽性であつても,普通のX線所見や外傷あるいは骨ないし関節の疾患についての問診などが大切である。またこのホットスポットが真に転移性疾患によるものか否かのスキャンを繰り返し追跡することが必要である。

手術手技 泌尿器科関連領域の手術

代用血管

著者: 松本博志

ページ範囲:P.325 - P.331

はじめに
 最近の血管外科領域における進歩は著しく,血行再建の適応範囲は拡がりつつある。これは血行再建のための代用血管の開発と,その手術時の補助手段の進歩工夫に負うところが極めて大きいと考えられる。代用血管と称されているものは広義には生体由来の血管を新鮮保存したもの,薬液による固定保存によるもの(Biograft),また,まつたく人工的に作成された合成高分子材料で作製された人工血管(Synthetic graft)とに大別できる。しかし,狭義には代用血管といえば人工血管を指すことが多い。代用血管の作成の試みは血管縫合術の確立の業績によつて1912年にノーベル賞を受賞したCarrel1,2)による。彼は生体由来の血管,とくに異種ないし同種動脈を血管の代用物として利用しようとするとともにパラフィンでコーティングしたガラス管やアルミニューム管をも血管の代用物として利用しようとしたが,この試みは成功しなかつた。代用血管を開発しようとする試みは1940年代に入つてBlakemore3)やHufna-gelら4)によつて受け継がれた。その後同種動脈の臨床応用が1949年にGrossら5)によつて大動脈縮窄症の治療に使用されたこともあつて,こののち約15年間にわたつて臨床的に使用されたが,移植動脈片に退行変性,血栓形成,動脈瘤様の拡張などが起こることが判明してきたために臨床的には使用されなくなつた。

講座

泌尿器科疾患の総合画像診断(4)—前立腺癌の浸潤度

著者: 作山攜子

ページ範囲:P.333 - P.343

 前立腺癌の診断は経直腸的な触診が現在でも最も重要な検査法であることに変わりがない。しかし,触診上腫瘤が認められたときはその80%はstage Cかstage Dであるといわれ1),早期診断には症状の有無にかかわらず定期的な検査が強調されるところである2)。前立腺癌は診断とともにstagingの決定が重要であり,それによつておのずと治療方針が決定される。診断やstagingの決定に用いられる検査手段は第1表に示すごとく生化学的検査と画像によるものに分けられるが,今回はこれらのうち,画像による前立腺癌の診断とそのstagingについて各々のmodalityの特徴,正診率,限界および関わり合いなどについて検討する。

座談会

尿路結石の治療

著者: 高崎悦司 ,   田口裕功 ,   園田孝夫 ,   小川秋実

ページ範囲:P.347 - P.354

 小川(司会) ご多忙のところお集まりいただきまして有り難うございます。
 今日は,尿路の結石の治療上で判断に困るような問題について卒直なご意見を承りたいと思います。

原著

尿管縫縮の適応と方法

著者: 稲葉善雄 ,   三木誠 ,   斉藤賢一

ページ範囲:P.357 - P.361

緒言
 尿管の形成は,腎盂の形成ほど一般的ではなく,特にその適応については確立された理論はない。過度に拡張した尿管でも原因を除くことによつて回復する場合もあり,尿管自体に対してはあまり積極的な治療法がとられていない。しかし,原因の除去だけでは回復が見込まれない拡張尿管や,拡張した尿管の膀胱への再吻合に際し,積極的に尿管を縫縮することによつて好結果が得られることも報告されている1,2)。そこで,われわれも最近経験した尿管拡張症例を中心に,その縫縮術の適応と手術法について検討した。

泌尿器科領域における菌血症について

著者: 村上信乃 ,   藤田道夫 ,   川村健二

ページ範囲:P.363 - P.367

緒言
 菌血症は適切な診断,治療で予後が大きく左右されるため,各科の臨床家にとつて,無視できない疾患である。その臨床経過は大体において各科共通なところが多いと考えられるが,基礎疾患,起因菌などで各科独特の特徴を有するところもあろう。われわれ泌尿器科医にとつても,本症は日常その対策に苦慮させられる疾患の一つである。よつて泌尿器科領域における本症の特徴を調べ,その対策の一助とするため,今回,過去5年間に当科で発生した菌血症症例の検討を行なつたので報告する。なお,菌血症の定義として今回は,悪感,発熱あるいは著明な白血球増多などの症状とともに,血液培養が陽性であつた症例はすべて本症として取り扱つた。

症例

Bourneville Pringle病に合併した血管筋脂肪腫の1例

著者: 青柳直大 ,   松山恭輔 ,   渡辺康久 ,   宍戸悟 ,   千野武裕 ,   工藤潔 ,   千野一郎

ページ範囲:P.371 - P.374

緒言
 腎の良性腫瘍は稀なものであるが,そのうちangiomyolipomaは比較的多くみられ,臨床的にrenal cell carcinomaとの鑑別が困難なため重視されている。
 われわれはBourneville-Pringle病(以下B-P病と略す)に合併したangiomyolipomaを経験したので報告し,あわせて若干の文献的考察を加える。

盲管不完全重複尿管の1例

著者: 平山和由 ,   福田和男

ページ範囲:P.375 - P.378

緒言
 重複尿管の1枝が盲端に終わる盲管重複尿管(blind ending bifid ureter)は極めて稀な尿管奇形である。最近,われわれは不完全重複尿管の1枝が盲端に終わる盲管不完全重複尿管の1例を経験したので報告する。

膀胱平滑筋腫の1例

著者: 賀屋仁 ,   北島清彰 ,   岡田清己 ,   岸本孝

ページ範囲:P.379 - P.382

緒言
 膀胱平滑筋腫の報告は比較的少なく,本邦では大野ら(1916)1)の報告が最初とされ,その後現在までに43例の報告がみられる。最近われわれは本症の1例を経験したので,ここに追加報告するとともに,本邦報告例44例について若干の統計的考察を加えた。

先天性第X因子欠乏症に合併した脊髄膀胱の1例

著者: 木津典久 ,   西沢理 ,   松尾重樹 ,   守屋至 ,   西本正 ,   能登宏光 ,   原田忠 ,   遠藤安行

ページ範囲:P.387 - P.390

はじめに
 血液疾患の患者が種々の排尿異常を呈することは稀ではなく,多くの報告がある1〜8)。しかし,その中で凝固因子欠乏症患者に排尿異常を合併したという報告は,われわれの調べ得た限りではなく,きわめて稀なものと思われる。今回われわれは,第X因子欠乏症に合併した脊髄膀胱の1例を経験したので報告する。

精索腫瘍(malignant fibrous histiocytoma)の1例

著者: 佐々木絹子 ,   平野哲夫 ,   井上和秋

ページ範囲:P.391 - P.394

緒言
 軟部組織より発生する肉腫の一つである1)malignant fibrous histiocytoma (略してMFH),あるいはmalignant giant cell tumor of soft partは比較的稀な疾患であり,特に精索のそれはこれまでの文献上,極めて稀と思われる2〜5)。よつて以下われわれの1例を報告したい。

文献抄録

前立腺癌の根治的放射線治療

ページ範囲:P.378 - P.378

 著者らはMayo clinicにおいて1964年から1973年の間に147例の前立腺癌症例に体外放射線治療を行なって,144症例について5年の経過を観察して報告している。
 前立腺癌症例としては,双手触診にて癌が前立腺内あるいはその周囲に浸潤していると診断され,生検にて組織学的に悪性度を確認し得たもの。そして理学的検査にて骨その他に転移がなく,かつ体外照射療法にたえうる症例を選んでいる。144例中血清中のacid phosphatase値の上昇者は8例(5.5%)に認められた。

Case Study

著明な血尿を主訴とした興味ある症例—右サンゴ状結石と左腎盂腫瘍の合併症例に対する治療方法の検討と反省について

著者: 村山鉄郎 ,   田口裕功 ,   山田哲夫

ページ範囲:P.395 - P.398

 58歳,女性。
 家族歴,既往歴に特記すべきことはない。1980年6月初旬,無症候性の肉限的血尿が出現し,以後,時々血塊の混じる血尿が続いていたが,多忙のため放置していたという。
 1980年9月,肉眼的血尿が消失しないため当科を受診した。初診時に触診で右腎の下垂と,腹部単純X線写真にて著しく下垂した右腎にサンゴ状結石を発見され,1980年10月当科に入院した(第1図)。

交見室

尿路感染分離菌と抗菌剤感受性/リニア電子スキャンによる経直腸前立腺縦断層法について

著者: 熊澤浄一

ページ範囲:P.400 - P.401

 本誌35巻1号に掲載された金子氏らの「尿路感染分離菌とその薬剤感受性について」を拝読させて頂いた。
 尿路感染症は金子氏らも言われるごとく,泌尿器科領域における重要な疾患であるにもかかわらず,すぐれた抗菌剤の開発市販化が続いていることも関与してか,あまり関心を示さない方も見受けられる.
 化学療法の進歩はたしかに目覚ましいものがあるが,細菌側もこの攻撃になすすべもなく,ただたちすくんでいるわけではない。耐性化,菌交代などの手段でしたたかな反撃を行なつている。非病原性といわれていた,変形菌属,セラチア,緑膿菌を含むブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌などのいわゆる薬剤耐性グラム陰性桿菌群が,交代菌,院内感染菌として登場してきている。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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