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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科35巻6号

1981年06月発行

雑誌目次

綜説

細菌の薬剤耐性メカニズム

著者: 横田健

ページ範囲:P.523 - P.533

はじめに
 泌尿器科領域は感染症と縁が深い。他の体液と異なり,尿は適当な塩濃度と有機物を含み細菌の増殖に適している上に,食細胞や補体による感染防御機構がほとんどないためであろう。その上留置カテーテルなど異物を長時間装着する必要がしばしば生ずるので,これが感染症の成立を助長する。
 細菌感染症に対する化学療法はほぼ完成の域に達しているが,サルファ剤が発見され,ペニシリン(PC)が実用化されて以来,約半世紀経過しているので,その間に耐性菌が増加し,難治性尿路感染症として,治療に困難をきたしつつある。その対策として,理論的には遺伝学的に耐性菌の発生を防止する方法と,生化学的に耐性菌のしくみを明らかにし,薬剤を耐性菌にも効くように改良する方法の二つが考えられるが,耐性菌発生の遺伝学的しくみは多様であり,それを防ぎ得る実用策は見出されていない。現在はもつぱら薬剤を耐性菌にも効くように改良する方法が主役となつている。しかし,多くの努力にもかかわらず,すべての耐性菌に効くような万能の薬剤が開発されているわけではないので,起因菌ごとに,耐性菌の現状を考え,適当な薬剤を選択することが現時点では重要である。ここでは尿路感染症における耐性菌増加の遺伝学的しくみと,耐性菌における生化学的変化を明らかにし,薬剤選択の参考としたい。

Urological Letter

Ⅰ.尿性器および骨盤部複雑外傷時の10分間緊急検査項目とその手順,他

ページ範囲:P.533 - P.533

1.腹部単純X線撮影(KUB)
2.点滴静注尿路造影

手術手技 泌尿器科関連領域の手術

骨切除(主に肋骨,恥骨)の手技

著者: 花岡英彌

ページ範囲:P.537 - P.540

はじめに
 かつて結核はなやかなりし頃,胸廓形成術が盛んに行なわれた時代があつた。その際には,肋骨数本の切除が行なわれた。
 また,結核性である肋骨周囲膿瘍や,坐骨・恥骨カリエスに対しても,肋骨切除や,坐骨・恥骨切除が行なわれたが,現在では結核に対する骨切除の機会はほとんどないくらいとなり,骨腫瘍に対して行なうことが多くなつた。

講座

泌尿器科疾患の総合画像診断(6)—腎細胞癌の遠隔転移(肺,骨,肝)

著者: 多田信平 ,   山岸二郎 ,   山梨俊志

ページ範囲:P.541 - P.545

はじめに
 尿路性器腫瘍のうち,腎細胞癌は脳,肺,骨,肝,胃,リンパ節,皮膚など身体のあらゆる器官に転移を来し,臨床的のみならず画像診断的にも著しい多様性を示す。小論は腎細胞癌転移の主要目標器官である肺,骨,肝への病変をX線診断の立場から論じるものである。

座談会

画像診断の評価

著者: 永井純 ,   平敷淳子 ,   石橋晃 ,   町田豊平

ページ範囲:P.547 - P.560

 町田(司会) 今日はお忙しいところをお集まりいただきまして,どうもありがとうございます。最近,人間の身体をみる診断,つまり臨床検査の技術が近代科学の進歩に伴つて,非常に飛躍的な進展を見せております。臨床診断といいましても,生化学的な診断,あるいは形態学的な診断があり,いろいろ話題も多いのですが,とりわけ最近は物理学的手法やMEを利用した「画像診断」が非常に進歩してまいりました。
 そこで今日は,日常の臨床を中心に置いて,画像診断の評価について先生方からお話をうかがいたいというわけです。

文献抄録

女性ホルモン無効前立腺癌に対する除睾術の意義について

ページ範囲:P.560 - P.560

 前立腺癌に対する女性ホルモンの有効期間は症例によつてまちまちであるが,女性ホルモンが無効になつた時点では,一般には抗男性ホルモン治療の効果を期待して,更に大量の女性ホルモン投与あるいは除睾術が施行される。しかし,その効果については不確実で,効果判定のcriteriaもはつきりしていない。そこで著者らは30例の前立腺癌症例について,女性ホルモン無効診断のcriteriaには何がよいか,そして除睾術の効果について検討した。著者らの取り上げた検索項目は,酸アルカリフォスファターゼ値,排尿時尿道撮影,胸部X線所見,RI骨スキャン,TURの生検術所見,双手診所見などである。30症例はすべて女性ホルモン治療をうけた症例であるが,治療中に原発病巣の増大,血清中の酸フォスファターゼの上昇,X線学的に骨に新転移巣の出現,骨スキャンで病巣の増悪など何れかの他覚所見が悪化した時点で女性ホルモン無効と診断した。女性ホルモン無効と診断された時点で,17症例は骨に新病巣の出現と疼痛を訴え,13症例は無症状であつたが,骨スキャン,酸フォスファターゼ値などの増悪を示した。この時点で被膜下除睾術を施行したのは21例であるが,その結果は1例に他覚所見の改善,3例に自覚的疼痛の消失を示し,残り17例は除睾術の効果は見られなかつた。

原著

Myelodysplasiaによる先天性神経因性膀胱の治療経験

著者: 丸彰夫 ,   高松恒夫 ,   小柳知彦

ページ範囲:P.565 - P.570

緒言
 腰仙椎奇形に伴うmyelodysplasiaに基因する先天性神経因性膀胱,具体的には排尿困難,残尿,頻回不随意的尿失禁,更に高率に続発する尿路感染,上部尿路拡張,腎機能障害などの対策は,ある意味では後天性の脊髄損傷よりも難しいといえる。新生児期の整形外科,神経外科的治療の進歩により,脊椎破裂児の早期死亡が著しく減少してきた今日,その尿路管理は極めて重大な問題となつてきている1)。われわれは最近5年間に,脊髄髄膜瘤などの手術後,当科を受診した37例(男13,女24)および以前から通院中の13例(男5,女8)の計50例について,初診時の状態とわれわれの行なつてきた尿路管理法および泌尿器科的合併症とその対策などを検討してみた。

症例

5-fluorouracil持続動注と放射線照射後に腎摘を行ない得た腎細胞癌の1例

著者: 大沢哲雄 ,   坂田安之輔 ,   平岩三雄 ,   関口浩

ページ範囲:P.571 - P.574

緒言
 腎細胞癌は,その解剖学的および生物学的特性から種々の治療法が試みられているが,今のところ手術的摘除にまさる有力な方法がないのが現状である。しかし,いつもただちに摘除が可能であるとは限らない。われわれは5-fluorouracil(5-FU)の腎動脈内持続注入および放射線照射後5年目に腎摘を行ない得た症例を経験したので報告する。

ヌードマウスに移植可能であつたウイルムス腫瘍症例

著者: 秋元成太 ,   坪井成美 ,   川村直樹 ,   戸塚一彦 ,   西村泰司 ,   川井博 ,   矢崎恒忠

ページ範囲:P.575 - P.578

はじめに
 本邦でのウイルムス腫瘍のヌードマウス移植成功例の報告は少ない。われわれは,1980年11月現在,ヌードマウス継代6代に成功したウイルムス腫瘍を経験したので,臨床経過とともに,ヌードマウス移植前後の組織像,腫瘍増殖曲線を中心とした増殖状態などにつき報告する。

腎結石腎摘後12年経過して発生した残存尿管-結腸-皮膚瘻の1例

著者: 根本真一 ,   石川悟 ,   小川由英 ,   高橋茂喜 ,   林正健二 ,   矢崎恒忠 ,   加納勝利 ,   北川龍一

ページ範囲:P.579 - P.581

緒言
 尿管瘻は腎あるいは膀胱瘻に比し比較的まれであり,交通する臓器組織により,尿管腟瘻,尿管皮膚瘻,尿管消化管瘻などがある。今回われわれは腎結石による腎摘除術後12年目に発生した残存尿管内の遺留結石が主因と思われる残存尿管-結腸-皮膚瘻の1例を経験したのでこれを報告する。

膀胱後腔肉腫の1例

著者: 守屋至 ,   西沢理 ,   原田忠

ページ範囲:P.587 - P.590

はじめに
 膀胱後腔に発生する肉腫は稀であり,Young1)が1926年に特定の臓器に関係なく,膀胱後腔に発生する肉腫をRetrovesical sarcomaと命名している。われわれは最近膀胱後腔に原発した平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する。

新生児睾丸捻転症の1例

著者: 木下英親 ,   村上泰秀 ,   岡田敬司 ,   河村信夫

ページ範囲:P.591 - P.594

緒言
 睾丸捻転症は,思春期に好発することはよく知られているが,一方新生児に発生する例の報告も多くされるようになつてきた。われわれは,生下時に存在したと考えられる新生児睾丸捻転症を経験したので報告するとともに若干の文献的考察を行なう。

精管開口異常の1例

著者: 三橋公美 ,   佐々木絹子 ,   小柳知彦 ,   秦温信 ,   内野純一

ページ範囲:P.595 - P.598

はじめに
 精管が本来の開口部より外れて,膀胱,尿管などの尿路に開口する状態を精管開口異常(ectopic vas deferens)と言い,極めて稀な疾患である。最近われわれは鎖肛の男児で,多くの臓器にわたる合併奇形の一つとして本症を経験したので症例報告すると同時に若干の文献的考察を加えた。

Case Study

病的骨折を伴う前立腺癌

著者: 吉田和弘

ページ範囲:P.601 - P.604

 67歳,男性,農業。
 入院の約1ヵ月前より腰痛,両肩部痛を覚えたため某国立病院整形外科を訪れた。X線検査にて特別の異常なしと診断され湿布療法,鎮痛剤投与をうけた。しかし,疼痛は改善せず,次第に大腿部しびれ感,両上下肢脱力感,歩行困難と症状が急激に増悪した。突然に右視力低下,複視に伴い眼球運動不能となり某市立病院内科に緊急入院した。頭部CT検査では出血巣を認めず,神経学的検査より脳硬塞の疑いでウロキナーゼ60,000単位/日,点滴静注による抗凝固療法を行なつていた。全身しびれ感,脱力感ならびに右眼球運動障害は徐々に改善傾向を示していたが,入院第12病日に家人が患者の上腕をマッサージしていたとき,突然に"ボキッ"という音とともに左上腕骨骨折をした。骨折部X線像(第1図)は病的骨折であり,転移性腫瘍の疑いにてGISが施行された。結果は異常所見を認めなかつた。
 入院時検査所見にて顕微鏡的血尿,血清アルカリフォスファターゼおよびLDH値の上昇を認めたため泌尿器科領城の検索のため紹介された。家族歴に特記することはない。約10年前より降圧剤の投与をうけていた。

見聞記

腎移植の術式—アメリカでの経験(2)

著者: 藤田公生

ページ範囲:P.606 - P.607

はじめに
 今回1年間にわたつてアメリカ各地で腎移植の手術をみる機会を得た。コロラド大学のStarzl,ミネソタ大学のNajarianなど,泌尿器科よりも外科畑が多く,いろいろな人の手術をみたし,同じ人の手術でも何回かみているうちに思いがけない発見をすることがあつた。ここにその経験を報告する。

交見室

膀胱憩室口拡張術について/垣添忠生先生へ

著者: 井上武夫

ページ範囲:P.608 - P.608

 「膀胱憩室に対する憩室口拡張術の1例」(臨泌,35巻3号)の論文について意見を求められましたのでお答えします。簡単な手技でしかも成績のよい手術を行なわれて敬服しております。
 私の憩室摘除術の経験は数例でしかも小さい憩室ですから,ごく普通の摘除術でした。この例のような膀胱の半分を占める大きな憩室の手術経験はありません。したがつて,「こんな手術はできないかなあ」という想像の手術をしてみました。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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