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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科35巻7号

1981年07月発行

雑誌目次

綜説

最近の院内消毒薬の効果について

著者: 全田浩 ,   太田伸

ページ範囲:P.627 - P.636

はじめに
 化学療法剤の驚異的な開発に伴い細菌感染症は一時は絶滅されたかにみえたが,反面薬剤耐性菌の出現により従来弱毒菌ないしは常在菌と考えられた緑膿菌をはじめとするグラム陰性桿菌が原因となるいわゆるopportunistic infection1〜3)と呼ばれる感染症が近年大きくクローズアップされてきた。泌尿器科領域においても例外ではなく,病院内感染防止対策のほとんどがブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌対策であり,特に緑膿菌に対する対策がすべてであるとまでいわれている。これらの原因菌の中には薬剤に耐性であるばかりでなくある種の消毒薬にも抵抗性を示すことが報告4〜7)されていることより,一般的な感染防止上からも早急な対策が望まれるところである。また,近年B型肝炎ウイルスによる感染が深刻化していることを考え合せると,これらの感染防止は病院における最も重要な対策項目の一つであり,その意味において消毒薬の果たす役割が重要視されてくる。
 しかし,消毒薬の実際の使われ方をみると経験的または習慣的な方法による場合が多く,必ずしも所期の効果を十分に発揮しているとはいい難い現状である。消毒薬の適切な選択は難しい点は多いが,感染症の防止と消毒薬の使用とは密接な関連があることより,その性質を十分把握した上で正しく使われるべきであろう。

Urological Letter

精管切断術に代る腹腔鏡による断種術/尿道断裂の晩期修復の薦め

ページ範囲:P.636 - P.636

 精管切断術の副作用について専門家以外の人が書いた文献が近来にわかに多くなつているので,随分迷惑している。本法を受けた患者からの問合せの電話も多くなつている。再吻合をしようか,と迷つている患者からの質問もある。
 前記の文献の中には精子の生産が続き精管や副睾丸内に溜つて精管痛やうつ積した副睾丸を訴えている例もある。それらの中には副睾丸摘除術の必要な例もあつた。

手術手技 泌尿器科関連領域の手術

皮膚の縫合,移植

著者: 沢田幸正 ,   藤野豊美

ページ範囲:P.637 - P.643

はじめに
 形成外科手術の目標の一つに,めだたない良い瘢痕で治癒させることがあげられ,特殊な器械,材料を用いることが多い。これらは,組織侵襲を少なくし,良い条件下で創傷治癒を行なわせるという目的のためであり,愛護的で正確な手術のための一つの手段にすぎない。めだたない良い瘢痕での治癒には,メスを加える以前から配慮を払わなければならず,ただ創を形成外科的に縫合しただけでは必ずしも良い結果は得られない。以下に,われわれが日常行なつている手術手技の概略を紹介するが多少とも参考になれば幸いである。

文献抄録

白人,黒人における睾丸悪性腫瘍の比較

ページ範囲:P.643 - P.643

 従来白人に比較して黒人の睾丸悪性腫瘍の発生頻度は少ないが,黒人の場合には予後が非常に悪いとの報告がある。著者らは1949年より79年にいたる30年間にWalter Reed Ar-my Medical Centerにて治療された853名の睾丸悪性腫瘍患者について白人,黒人の病歴を比較検討して報告している。
 853例の患者の内訳は,833例が白人,黒人は20例で,精細胞起源性腫瘍は823例と17例であつた。1949年における米陸軍の黒人軍人は全体の9%で,また1979年においては27%となつている。

講座

臨床に役立つ泌尿器の解剖学(1)—腎臓と副腎

著者: 星野一正

ページ範囲:P.645 - P.652

はしがき
 泌尿器科学(urology)に直接関係のある器官は,男性においては尿生殖器(urogenital organ)であり,女性においては泌尿器(urinary organ)である。それゆえ,本稿においては性差の少ない上部尿路(upper urinary tract)である腎臓(kidney),および尿管(ureter)については男女の両性の器官について論じ,生殖器と関連の深い下部尿路(lower urinary tract)に関してはまず膀胱(urinary bladder)と尿道(urethra)について述べた上で,主に男性生殖器についてその隣接器官との関連において記述することにする。また本稿においては器官個々についての系統的記述解剖学は解剖学成書に譲り,機能解剖学を中心として隣接の器官,組織との関連を主として論じて行くことをあらかじめお断りしておく。

原著

尿路悪性腫瘍と尿中ポリアミン

著者: 赤阪雄一郎 ,   町田豊平 ,   田中彰

ページ範囲:P.657 - P.663

緒言
 増殖の盛んな組織においては,polyamineの合成や蓄積が亢進していることが以前より知られている1〜3)。癌組織は旺盛な蛋白合成,核酸合成を行ない,増殖の盛んな組織であるので,組織内のpolyamine含量は上昇していると考えられ,諸家により悪性腫瘍とpolyamine値の変動についての関心が持たれており4〜8),癌の補助診断の一つとして尿中polyamine測定の有用性が示唆されている。今回われわれは薄層クロマトグラフ法を用いて,尿路悪性腫瘍患者の尿中polyamine分画測定(putrescine, spermidine, spermine)を行ない,その臨床的意義を検討した。

症例

下大静脈切除術を要した右腎細胞癌の1例

著者: 辻本幸夫 ,   藤岡秀樹 ,   北村憲也 ,   桜井勗 ,   柏井浩三 ,   吉田静雄

ページ範囲:P.665 - P.668

緒言
 腎細胞癌による下大静脈栓塞は諸家により3〜10%1〜4)の頻度で発生すると報告されているが,現在のところそれに対する唯一の根治的療法は腎摘除ならびに完全な血栓除去である。わが国ではそういう症例に対して下大静脈切除術を行なつた報告は極めて少ない。最近われわれは下大静脈切除術を要した右腎細胞癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

腎動静脈瘻を伴つた腎細胞癌—CTによる診断の評価

著者: 増田富士男 ,   陳瑞昌 ,   吉田正林 ,   池本庸 ,   町田豊平

ページ範囲:P.669 - P.672

緒言
 Computed tomography(CT)は腎細胞癌の静脈内浸潤の診断に有用であることが認められている。われわれは最近CTで腎静脈および下大静脈の拡張がみられたため,静脈内の腫瘍血栓を疑つたが,手術的に腫瘍血栓を認めず,CTでみられた腎静脈と下大静脈の拡張は,腫瘍に合併した動静脈瘻によるものと診断された腎細胞癌の1例を経験したので報告する。

腎紡錘型細胞癌の1例—電顕的検討

著者: 岡田清己 ,   権秉震 ,   山本忠男 ,   岸本孝

ページ範囲:P.673 - P.676

 紡錘型細胞癌とは形態的な特徴から名付けられた診断名であり,多数の膠原線維を有し,その中に紡錘型の腫瘍細胞が存在するような腫瘍を指している1)。この腫瘍は肉腫様増殖を示すため癌肉腫carcinosarcomaとして報告されてきた2,3)。しかし,電顕的観察により,本腫瘍のなかには癌肉腫ではなく扁平上皮癌が存在することが明らかとなつた1,4)。すなわち,それらの紡錘型細胞癌は扁平上皮癌のvariantと考えられてきている。今回,最近経験した腎紡錘型細胞癌の臨床所見,光顕像,電顕所見を記載し,本腫瘍の組織発生histo-genesisに関して考察を試みたい。

後腹膜黄色肉芽腫および子宮内膜症性卵巣嚢腫に合併した水腎症の1例

著者: 後藤百萬 ,   鈴木靖夫 ,   三宅弘治

ページ範囲:P.681 - P.684

緒言
 黄色肉芽腫の概念は,1935年Oberlingにより最初に提唱され,黄色腫と肉芽腫の組織学的特徴をもつた後腹膜病変として6例が報告された。黄色肉芽腫性反応は,黄色肉芽腫性腎盂腎炎の報告が最多であるが,その他,身体のいずれの部位にも発生し,後復膜には約30例の報告がみられる。われわれは,後腹膜黄色肉芽腫,子宮内膜症性卵巣嚢腫および尿管周囲炎によると思われる右水腎症が合併した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

Vesico-psoas hitch procedureを行なつた5症例

著者: 国沢義隆 ,   友石純三 ,   星野嘉伸

ページ範囲:P.685 - P.688

緒言
 Vesico psoas hitch procedureは尿管下端が種種な原因により尿管膀胱新吻合術をするには短すぎる時に,従来行なわれていたBoari flap,空置回腸による尿管形成術にかわつて最近利用されてきた術式である。われわれは過去尿管腟瘻3例,尿管下端狭窄1例,尿管腫瘍1例に適用したので報告する。

陰茎に発生した悪性黒色腫の1例

著者: 高木隆治 ,   小川力 ,   田中正明

ページ範囲:P.689 - P.693

緒言
 悪性黒色腫は最近増加しつつある疾患であるが1),泌尿性器系に発生することは比較的稀である。われわれは最近陰茎亀頭部に原発した悪性黒色腫の1例を経験したので報告する。

睾丸固有鞘膜に発生した悪性中皮腫(malignant mesothelioma)の1例

著者: 水尾敏之 ,   牛山武久 ,   武田裕寿 ,   松原修

ページ範囲:P.695 - P.698

緒 言
 鞘膜に発生する中皮腫は部位により発生頻度が異なり,胸腹膜では割合高頻度で発生するが睾丸固有鞘膜での発生は非常に稀である。一方,陰嚢内に発生する腫瘍,腫瘤形成性疾患の中でも中皮腫は極めて頻度が少ない。
 われわれは最近,睾丸固有鞘膜より発生した悪性中皮腫の1例を経験したので報告する。

Case Study

尿細胞診上,尿管悪性腫瘍の合併を疑わしめた腎結石の症例

著者: 上田公介 ,   渡辺秀輝 ,   大田黒和生 ,   柴田偉雄

ページ範囲:P.701 - P.704

 58歳,女性。特記すべき家族歴,既往歴はない。1977年9月左側腹部鈍痛のため近医を受診した。検尿で尿潜血陽性となることが何度かあり,当院内科を1979年1月に紹介された。IVPにて左腎結石と診断され,内服薬投与を受けていたが,1980年10月になり,尿中に凝血塊を混じるようになり当科を受診した。

交見室

前立腺癌患者における病相の数量表示,他

著者: 島崎淳

ページ範囲:P.706 - P.708

 上記についての本誌35巻第5号掲載竹内弘幸氏の論文を興味深く拝見しました。病状や検査所見を数量的に表示し,ある時点における症例間の比較をおこなつたり,同一患者の経過や治療による反応をみることができれば報告者間の客観的な評価が可能になるわけで,多くの泌尿器科医が望んでいたことと思います。このようなことは述べやすくして,実際に作るとなるときわめて難しい問題が多いため,尻ごみをすることになるわけですが,竹内弘幸氏が提案を出されたことに敬意を表する次第です。
 癌の経過の多様性ということをみても,前立腺癌はもつともいろいろな経過をとり得ると考えられます。予後とよく相関するものとして,stageやgradeがいわれており,さらには転移形式や癌による他臓器への被影響性,たとえば水腎などが合意されていたといえましよう。ところが本論文では原発部位にあつては量的の大きさを指標とし,転移巣についてはその存在と活動性を含めた障害度をみて生命の余力を算出するようにされています。したがつて同一患者の経過を考えるとき,この価の変動から疾患の増悪をよくみることができましよう。しかし,同一の生命の余力の価を示しているものが,同一の経過をとるかどうかということは別の問題となるわけで,おそらく異なるということが十分予想されます。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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