icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科35巻8号

1981年08月発行

雑誌目次

綜説

睾丸腫瘍の組織分類

著者: 藍沢茂雄 ,   古里征国

ページ範囲:P.727 - P.738

はじめに
 腫瘍分類は,たとえどんな腫瘍でも組織発生を基盤としてなされるべきである。その意味で多くの腫瘍分類は標準化され問題は少なくなつてきているが,性腺由来腫瘍については未だ統一された見解がなかつたのは,その発生起源histogenesis,とくに胚細胞腫瘍のそれが不明であつたためである。
 睾丸腫瘍の分類は,わが国でも米国でもFried-man & Moore1)あるいはDixon & Moore2))からMostofi & Price3)あるいはそれを基礎としたWHOの国際分類4)へと移行しつつある過渡期に相当していると思われる。そもそも睾丸胚細胞腫瘍の分類が近代化されたのは豊富な材料を用いたFriedman & Moore1)以来であり,精上皮腫,胎児性癌,奇形腫,絨毛癌の四基本型と奇形癌に分けられた。それまでの胎児性癌には精上皮腫を含む傾向があつたが,彼らは悪性の胎児性上皮細胞からなる腫瘍に限定し,奇形癌は奇形腫と他のいかなる腫瘍成分の組み合わせからなるものをも含めた。Dixon & Moore2)は予後との関係から,これら四基本型の組み合わせによりⅠからⅤまでのグループに分けたが,これが今日まで久しく用いられてきたわけである。

手術手技 泌尿器科関連領域の手術

Microsurgeryの基本手技

著者: 波利井清紀

ページ範囲:P.743 - P.750

 microsurgeryは,この10年間に外科各分野において飛躍的発展をとげた手技である。顕微鏡下に微細な組織を正確に手術できるこの手技を導入することにより,従来から行なわれてきた手術手技をより正確に遂行することはもとより,新しい観点からの手術が可能となつた。
 泌尿器科領域は,著者の専門外であるが,micro-surgeryを通じ幾人かの欧米の泌尿器科医と親しく論じる機会を得た。彼らの行なつている多くの仕事は,精管の再建術であるが,今や臨床上多数行なわれているこの手技以外にも,血管吻合を利用した睾丸の移動,尿道下裂の修復,尿管の再建術などにも応用範囲が拡がりつつある。これら臨床上の応用以外にもmicrosurgical techniqueを用いることにより,多くの実験が小動物を使つて行なえるため,実験外科領域では不可欠な手技となつている。しかし,本邦の泌尿器科領域においてmicrosurgeryを積極的に導入しようとする動きは少なく,著者の知る限りにおいても適当なガイド・ブックもないようである。泌尿器科領域において新しくmicrosurgeryをはじめられる方々のために,そのセット・アップと基本手術法の紹介を行なうようにとの本誌の依頼である。

Urological Letter

珍しい睾丸腫瘤/尖形コンジロームにレーザー光線

ページ範囲:P.750 - P.750

 われわれ泌尿器科医はすべて,睾丸の固い腫瘤は腫瘍にきまつていると教えられてきた。文献からもこのような腫瘤の95%以上は悪性であることがよく知られている。治療の常法は診断が付けられ次第可及的早く,鼠径部から入る根治的睾丸摘出術である。
 最近2例の睾丸のガンと診断された患者を診た。

講座

臨床に役立つ泌尿器の解剖学(2)—尿管と膀胱

著者: 星野一正

ページ範囲:P.753 - P.761

 前章では尿を生成する腎臓(kidney)と,腎臓とともに同一の腎筋膜(renal fascia)に包まれて存在する副腎(腎上体suprarenal gland:adrenal gland)の形状,位置ならびに機能について述べた。
 本編においては,腎臓で生成排泄された尿を体外に輸送する器官のうち,尿道(urethra)を除き尿管(ureter)と膀胱(urinary bladder)とについて述べる。

原著

膀胱腫瘍における組織像の解析

著者: 沼沢和夫 ,   菅野理 ,   久保田洋子 ,   斉藤雅昭 ,   安達国昭 ,   川村俊三 ,   鈴木騏一

ページ範囲:P.765 - P.769

緒言
 膀胱癌において,腫瘍の病理組織学的所見すなわち腫瘍の組織型,浸潤度(stage)そして悪性度(grade)と予後との間には密接な関係のあることが指摘されており,これらの所見にもとづいて治療法の選択や予後の推測がなされている。腫瘍の病理組織学的所見の一つである悪性度は,1922年Brodersが膀胱癌の悪性度は腫瘍細胞の正常膀胱上皮細胞からの違いの程度に関係することを指摘し,腫瘍細胞の分化度により4群に分類して以来腫瘍細胞の分化度による分類法として臨床的に用いられてきている。しかし,悪性度の判定には主観,部位,時期により違いがあり,必ずしも正確な判定を下すことはできないとされており,また判定方法もBrodersの原法以外に種々の分類法が発表されており統一されていない。したがつて悪性度が予後判定の因子としては不十分な点があり,その信頼性にも限度があるかと思われる。今回著者らは膀胱腫瘍の悪性度判定について再検討し,若干の知見を得たのでその信頼性について論じてみたい。

Chlamydia trachomatisの培養方法について

著者: 西村泰司 ,   阿部裕行 ,   吉田和弘 ,   秋元成太 ,   近喰利光 ,   川井博

ページ範囲:P.771 - P.774

緒言
 Chlamydia trachomatisについては,Holmesら1)の報告によると非淋菌性尿道炎(NGU)の患者尿道から42%,また淋菌性尿道炎(GU)の患者からは19%に培養されたといわれており,Chla-mydiaはNGUあるいはPostgonococcal urethritisの原因としても重視されていることは衆知の通りである。
 一方,Chlamydiaについては,国内の泌尿器科系を含む各雑誌などに数多く紹介されているが,著者らの調べえた範囲では,泌尿器科領域では培養結果についての報告は今までになく,また培養方法も確立されていないのが現状と思われる。

症例

慢性血液透析患者に発生した後腹膜腫瘍の1例

著者: 佐藤貞幹 ,   三浦邦夫 ,   西沢理 ,   原田忠

ページ範囲:P.775 - P.778

緒言
 後腹膜腫瘍の報告は多数されているが1〜4),血液透析患者に合併し腫瘍が下大静脈を圧迫しこれがシャントの閉塞をひきおこした症例はきわめて稀と思われる。最近われわれはその1例を経験したので若干の考察を加えて報告する。

膀胱エンドメトリオーシスによる水腎症症例

著者: 橘政昭 ,   佐々木光信 ,   丸茂健 ,   萩原正通 ,   村井勝 ,   畠亮 ,   田崎寛

ページ範囲:P.779 - P.783

緒言
 子宮内膜症は婦人科疾患のなかでも,高頻度に認められる疾患であるが,尿路系への浸潤は比較的稀である。著者らは,膀胱および尿管に浸潤したエンドメトリオーシスにより,水腎症をきたした症例を経験したので報告し,主にその治療学的検討を行なつた。

尿膜管疾患の2例—特に尿膜管臍瘻について

著者: 梛野正人 ,   七野滋彦 ,   佐藤太一郎 ,   河野弘 ,   秋田幸彦 ,   金井道夫 ,   加藤岳人

ページ範囲:P.789 - P.793

緒言
 尿膜管疾患は比較的稀な疾患であるため,われわれ一般外科臨床医が取り扱う機会は極めて少ないと思われる。われわれは最近2例の尿膜管疾患を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

新生児副腎出血と思われた1症例

著者: 波治武美 ,   高村孝夫 ,   岡敏明

ページ範囲:P.795 - P.798

緒言
 新生児副腎出血は軽症のものを含めるとまれなものではないと考えられる。しかし,意外にその報告例は少ない。
 泌尿器科領域の中では本症は腹部腫瘤を来す疾患のひとつであり,鑑別診断上その臨床像,病態像を念頭に入れておく必要がある。われわれは最近本症と思われる1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

女性にした男性半陰陽患者の1例

著者: 柳沢温 ,   平林直樹 ,   内山俊介 ,   小川秋実 ,   八木芳雄

ページ範囲:P.799 - P.802

はじめに
 男性半陰陽患者の治療方針は,その患者の年齢,養育された性,外陰部の異常の程度などを考慮して決定されるが,種々困難なことも多い。われわれは今回,女性として養育され,すでに14歳に達し思春期に入つた男性半陰陽患者を経験した。今後とも女性として生きるよう治療したので報告する。

46XX/48XXYYモザイクの真性半陰陽の1例

著者: 出村孝義 ,   岡村廉晴 ,   藤沢真 ,   有馬滋 ,   坂下茂夫 ,   高村孝夫 ,   藤本征一郎

ページ範囲:P.803 - P.806

緒言
 真性半陰陽は睾丸と卵巣が同一個体に共存している稀な奇形であり,竹崎1)により本邦100例が集計され報告されている。真性半陰陽における性染色体構成は他の半陰陽に比べはるかに多彩であるが,本邦では未報告の極めて稀な染色体構成,すなわち46XX/48XXYYのモザイクを呈した真性半陰陽症例を経験したので報告し,真性半陰陽の二,三の問題点につき考察を行なう。

文献抄録

広範性腎盂切石術:腎動脈clampとregional hypothermiaの応用について

ページ範囲:P.778 - P.778

 1965年,Gil-Vernetにより紹介された広範性腎盂切石術は腎鋳型結石摘出術として広く普及している。しかし,腎内腎盂が狭かつたり,以前に腎盂の手術をうけている症例,あるいは腎杯の小結石などがあると腎切石術を併用することが多い。著者はこのような症例でも広範性腎盂切開のみで結石の摘出が容易に施行できる手技として,腎動脈をclampし,結石介在部を中心に局所的hy-pothermiaを応用する方法を推奨している。
 手技は腰部斜切開で後腹膜腔に入り,患側腎を術野に十分脱転し,ただちにX線撮影を行なつて結石の介在部を確認する。腎門部では腎動静脈を分離して腎動脈にテープをかけておく。次に腎背面にて腎盂を広範性に露出するが,もし出血が多ければ腎動脈にブルドック鉗子をかけ,氷塊加生食水嚢を用いて腎を15〜20℃に冷却する。腎動脈をclampすることにより腎全体が縮小しかつ軟かくなるので腎盞の剥離も容易になると同時に,腎杯内結石の触診も可能になつてくる。腎盞が狭く腎杯結石が大きくて摘出困難と思われる時は,結石鉗子にて腎盞を拡張すれば摘出は容易となる。この方法で腎盂,腎杯の大小結石は完全に摘出できるが,なお摘出後に再度X線により残存結石の有無を確認しておく必要がある。著者はこの方法で5例の腎鋳型結石例を手術して全例に完全に結石摘出の好成績を得たと述べている。

見聞記

腎移植の免疫(1)—アメリカでの経験(3)

著者: 藤田公生

ページ範囲:P.807 - P.809

はじめに
 UCLA外科のTerasakiの研究室に始まる1年間のアメリカ滞在におけるひとつの大きな課題は,当然のことながら腎移植とからみ合う免疫の問題であつた。編集部の御好意で私の報告を続けることになつたので,以下いくつかの点をとりあげて述べてみる。

交見室

前立腺癌患者における病相の数量表示について/尿路悪性腫瘍と尿中ポリアミソについて

著者: 竹内弘幸

ページ範囲:P.812 - P.813

 本誌35巻5号に掲載した拙著「前立腺癌患者における病相の数量表示に関する試み」に対し,前立腺癌研究の先駆者であられる千葉大教授島崎淳氏から早々に論評をいただき大変光栄に存じます(7号交見室)。 氏がその論評の中で御指摘になつているように,癌患者を診療するに当つては次の二つのことを把握しておかなければなりません。一つはその癌のもつ生物学的性状で,進行の速さや治療に対する反応性も含めた癌と宿主の動的関係で,ここでは仮に「病態」と呼んでおきます。もう一つは宿主が現時点でその癌にどの程度侵害されているかという静的な関係で,これは拙著にいう「病相」であります。この二つが大凡患者のたどる運命を定めているといつてよいでしよう。この関係を非常に単純化して数式化すると指数関数y=aebtと表わすのが適当かと思います。yは生命力,tは時間,a,bは定数です。aは初診時(t=0)の「病相」を,bは「病態」を意味し,それぞれ病相係数,病態係数と命名します。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻13号(2022年12月発行)

特集 これだけは知っておきたい! 泌尿器科診療でも活きる腎臓内科の必須知識

76巻12号(2022年11月発行)

特集 ブレずに安心! 尿もれのミカタ

76巻11号(2022年10月発行)

特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう!

76巻10号(2022年9月発行)

特集 男性不妊診療のニューフロンティア―保険適用で変わる近未来像

76巻9号(2022年8月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心

76巻8号(2022年7月発行)

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド

76巻7号(2022年6月発行)

特集 トラブルゼロを目指した泌尿器縫合術―今さら聞けない! 開放手術のテクニック

76巻6号(2022年5月発行)

特集 ここまで来た! 腎盂・尿管癌診療―エキスパートが語る臨床の最前線

76巻5号(2022年4月発行)

特集 実践! エビデンスに基づいた「神経因性膀胱」の治療法

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号特集 専門性と多様性を両立させる! 泌尿器科外来ベストNAVI

76巻3号(2022年3月発行)

特集 Female Urologyの蘊奥―積み重ねられた知恵と技術の活かし方

76巻2号(2022年2月発行)

特集 尿路性器感染症の治療薬はこう使う!―避けては通れないAMRアクションプラン

76巻1号(2022年1月発行)

特集 尿道狭窄に対する尿道形成術の極意―〈特別付録Web動画〉

75巻13号(2021年12月発行)

特集 困った時に使える! 泌尿器科診療に寄り添う漢方

75巻12号(2021年11月発行)

特集 THEロボット支援手術―ロボット支援腎部分切除術(RAPN)/ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)/新たな術式の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻11号(2021年10月発行)

特集 THEロボット支援手術―現状と展望/ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻10号(2021年9月発行)

特集 今こそ知りたい! ロボット時代の腹腔鏡手術トレーニング―腹腔鏡技術認定を目指す泌尿器科医のために〈特別付録Web動画〉

75巻9号(2021年8月発行)

特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!

75巻8号(2021年7月発行)

特集 油断大敵! 透析医療―泌尿器科医が知っておくべき危機管理からトラブル対処法まで

75巻7号(2021年6月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)薬物治療のニューノーマル―“とりあえず”ではなくベストな処方を目指して

75巻6号(2021年5月発行)

特集 躍動するオフィスウロロジー―その多様性に迫る!

75巻5号(2021年4月発行)

特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

75巻3号(2021年3月発行)

特集 斜に構えて尿路結石を切る!―必ず遭遇するイレギュラーケースにどう対処するか?

75巻2号(2021年2月発行)

特集 複合免疫療法とは何か? 腎細胞癌の最新治療から学ぶ

75巻1号(2021年1月発行)

特集 朝まで待てない! 夜間頻尿完全マスター

74巻13号(2020年12月発行)

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

74巻12号(2020年11月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈下部尿路機能障害/小児・女性・アンドロロジー/結石・感染症/腎不全編〉

74巻11号(2020年10月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉

74巻10号(2020年9月発行)

特集 令和最新版! 泌尿器がん薬物療法―手元に置きたい心強い一冊

74巻9号(2020年8月発行)

特集 泌尿器腫瘍の機能温存手術―知っておくべき適応と限界

74巻8号(2020年7月発行)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

74巻7号(2020年6月発行)

特集 小児泌尿器科オープンサージャリー―見て学ぶプロフェッショナルの技〈特別付録Web動画〉

74巻6号(2020年5月発行)

特集 高齢患者の泌尿器疾患を診る―転ばぬ先の薬と手術

74巻5号(2020年4月発行)

特集 ここが変わった! 膀胱癌診療―新ガイドラインを読み解く

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識

74巻3号(2020年3月発行)

特集 泌尿器科手術に潜むトラブル―エキスパートはこう切り抜ける!

74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら