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講座
泌尿器科系疾患の微細構造の見方(4)—腎芽腫
著者: 佐々木佳郎1 三杉和章12
所属機関: 1神奈川県立こども医療センター病理科 2横浜市立大学医学部病理学第2講座
ページ範囲:P.329 - P.337
文献概要
1975年,日本病理学会・小児腫瘍組織分類委員会は,腎芽腫を組織型により第1表のごとくに分類した1)。組織分類の診断基準は,腫瘍を構成するいろいろな組織型のうち,最も優勢な組織型で,あるいは単純な優勢度だけでは判定が不可能な場合には,より未分化な組織型によるとされている。腎芽腫は,形態学的に上皮性および非上皮性の性格を示す二種の腫瘍細胞を組織の基本型とし,これらが種々な分化度や混合の割合を呈する腫瘍であるといえる。上皮性性格を示す細胞は,特定な配列様式をとらず,単に円形ないし卵円形細胞の集団を形成する未分化細胞巣から,ロゼット様配列や,明瞭な管腔を持つ管状構造を示したり,不完全ながら糸球体の形成を示唆するなど種々な分化の段階を表現している。一方,非上皮性性格を示す細胞は,線維性結合織の形態を示す場合が大部分であるが,横紋筋や平滑筋への分化,脂肪織や軟骨の形成など,さまざまな間葉性組織の像を呈する。
さて,腎芽腫の超微形態に関する研究は意外に少ない2〜9)。本論文ではまず本来の腎芽腫の超微形態像を,二種の基本的腫瘍組織型(上皮性および非上皮性)に分けて述べ,次に近年米国National Wilms' Tumor Study Groupに腎芽腫として登録された多数例を,臨床病理学的に検討した結果,予後が極めて不良であることが判明した腎腫瘍,いわゆるSarcomatous Wilms腫瘍の電顕像に言及する。
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