文献詳細
原著
膀胱腫瘍TURにおける閉鎖神経ブロックについて
著者: 岡村清1 金子佳照1 堀井康弘1 守屋昭1 塩見努1 平尾佳彦1 平松侃1 岡島英五郎1 開信郎2
所属機関: 1奈良県立医科大学泌尿器科学教室 2奈良県立医科大学麻酔科学教室
ページ範囲:P.759 - P.764
文献概要
尿管口周囲およびその外側に位置する膀胱腫瘍や,大きな前立腺肥大症に対して局所麻酔下に経尿道的電気切除術(TURと略す)を施行する際,電気メスによる刺激により閉鎖神経の興奮が誘発され,大腿内転筋群の急激な単収縮が生じることは広く知られている。この急激な大腿内転筋群の単収縮は,しばしば手術の妨げになるばかりか,時には膀胱穿孔という不測の事態をも生じせしめるため,電気切除を施行する部位によつては,麻酔の選択が重要な問題となる1)。一般に閉鎖神経を刺激すると考えられる部位にTUR操作を加えねばならない場合には,全身麻酔下で筋弛緩剤を併用することが望ましいとされている2,3)。
しかし,TURの対象症例の多くは高齢者であることや,術中合併症の発見の容易さ,膀胱容量が大きく得られることなど,術中術後の管理上,脊髄麻酔または硬膜外麻酔が望ましく,閉鎖神経刺激による大腿内転筋群の単収縮予防のために閉鎖神経ブロックを併用する方法も行われてきた4,8)。最近,加納ら8)は電子打診器と神経ブロック用絶縁電極注射針を用いて閉鎖神経を探索し,確実でかつ安全な閉鎖神経ブロックが行えることを報告している。今回われわれは,加納ら8)の方法に準じて脊髄麻酔下に安全,かつ容易に閉鎖神経ブロックを行い良い成績を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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