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術前検査の評価(1)—一般的事項と低栄養
著者: 林四郎1
所属機関: 1信州大学医学部第1外科学教室
ページ範囲:P.27 - P.33
文献購入ページに移動どの領域の手術であつても適切な適応決定,手術手技の向上,術前から術後にかけての管理技術の進歩などがあいまつて,手術の安全性をたかめ,一般外科,腹部外科の領域ではリンパ節郭清を伴う胃癌に対する胃切除術なども大手術とは言えなくなつた感じさえする現状である。昭和30年代の前半では75歳以上の老人に胃全摘や食道切除などを実施しようとすれば,老人の特質をわきまえない,いささか無謀な振舞と眉をひそめられたといつても過言ではないが,20年以上を経過した今日ではわれわれ自身が驚かされるほど,多数の老人が積極的に必要な手術を受け,80歳代の老人であつても第1表のようにかなり満足できる手術成績が得られるようになつた1)。
このような現象は従前から高齢者層を対象にすることが多かつた泌尿器外科の領域ではさらに顕著に認められることであろう。このように手術の安全性がたかまり,70歳代,80歳代の高齢者層でも胃癌に対する胃切除術の死亡率がほとんど0となつたことも事実であるが,このことは老人に対する手術を気楽な気持で行つてよいと軽率に判断してよいことではない。
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