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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科38巻3号

1984年03月発行

綜説

ターミナルケア(末期医療)とその問題点

著者: 村上國男1

所属機関: 1国立療養所東京病院外科

ページ範囲:P.191 - P.200

文献概要

I.ターミナルケアの概念
1.用語と定義
 わが国においては10年ぐらい前から,欧米では約20年前から,「死」を学問的に考えようとする機運が高まつた。これと相前後して一般市民の間にも死に対する関心が高まり,あらゆる角度から死が話題になりつつある。アメリカでは,素人の書いた癌闘病記から,専門家の書いた,たとえばキュブラー・ロスの著書1)までが,年間100冊ぐらいずつ出版され,何れもが高い売れ行きを示しているとのことである。この傾向はわが国でも同じである。話題の対象は,極めて個人的な体験記や,宗教的色彩の強いものがあるかと思えば,ホスピス・病名告知あるいは心理学の分野のものがあり,更には鎮痛療法に関する純粋に医学的なものまである。このような幅広い死に関する研究・学問を総称してサナトロジーThanatologyという。邦訳はまだ定着したものがないので,仮に「死学」としておくが,一般的には片仮名でサナトロジーと書かれている。
 サナトロジーには,宗教的なもの,法律に関するもの,自殺に関するものなど実に多種類のものが含まれるが,この中でいろいろな意味で臨床と結びついた死のうち,予め予測された死に対する医療をターミナルケアTerminal Careとしてまとめて考えると便利である。ターミナルケアは,一般には末期医療と訳されているが,同じ意味で死の臨床,死の医学,臨死医療,晩期医療等々の訳語を用いる人もいる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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