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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科39巻11号

1985年11月発行

雑誌目次

綜説

院内感染対策について

著者: 熊澤淨一

ページ範囲:P.893 - P.900

はじめに
 泌尿器科では当然のことながら,尿路系の特殊な検査や処置を行うことが多い。
 現在は胃カメラ,腹腔鏡など身体内部のいろんな個所を観察して診断することが可能になつているが,一般臨床的な検査法となつてからはまだ日が浅い。それに反し膀胱鏡の歴史は古く,以前は身体内部を直視下に観察できるのは膀胱のみであつたといつても過言ではない。膀胱鏡より発展した泌尿器科的内視鏡的検査や処置は数多く,泌尿器科学はそれらの開発に伴つて進歩してきている。

手術手技

全除精術

著者: 長山忠雄

ページ範囲:P.905 - P.908

はじめに
 全除精術の対象となる主な疾患は陰茎癌であるが,その発生率は年々減少しており,また,全除精術が必要となるような進行癌は更に少ない。更にブレオマイシンの発見と放射線療法の発達により,手術療法の適応となる陰茎癌は著しく減少しているのが現状である。
 陰茎癌以外では皮膚癌および尿道癌などであるが,何れも稀なものである。ここに著者の経験に基づき,全除精術の手術手技について記す。

追加発言

著者: 田崎寛

ページ範囲:P.909 - P.909

 全除精術はそれを受ける側はもとより,それを行う側にとつても決して好ましい手術ではない。著者も冒頭に述べているごとく,この手術の適応症例が急速に減少していることは単に化学療法や放射線療法など集学的治療の発達のためばかりではなく,本来進んで行うというには総合的に犠牲が大きすぎる手術であることに原因を求めるべきであろう。
 癌の手術には2つのまつたく異なつた方向への目的が要求される。一つは癌の根治性に向うものであり,他の一つは手術後の機能維持を目的とする方向である。この2つの方向は相殺して結果は中途半端になるケースも少なくないが,多くの場合はどちらかを優先させる結果,他は顧みられないか放置される。しかし,両者を十分に生かすことも考えられることであつて,全除精術に関しても術前に手術の目的を十分に討論し結果を予測することが肝要である。

講座 尿路性器の断層画像の読み方

V.前立腺

著者: 作山攜子

ページ範囲:P.911 - P.918

はじめに
 前立腺の診断に用いられる画像にはCT,超音波,RIシンチグラフィ,MRIなどがある。これらのmodalityはそれぞれ有用な点とともに限界もあるため,それぞれの特徴をよく理解して適切なものを選ばねばならない1)。今回は各modalityの画像を理解する上で必要と思われる基礎的事項を中心に述べることとする。

原著

腹部CTで偶然発見された腎細胞癌に関する検討

著者: 小松洋輔 ,   畑山忠 ,   田中陽一 ,   伊藤坦 ,   上山秀麿

ページ範囲:P.923 - P.925

緒言
 腹部CTあるいは超音波断層法で偶然発見された無症状の腎細胞癌が最近,しばしば報告されるようになつた1〜3)。当院では最近2年未満の期間に腹部CTで偶然発見された腎細胞癌を12例も経験した。異常な現象に驚いて,これらの症例からえた資料を検討してみた。その結果,二,三の興味ある点に気づいたので報告したい。

尿管腫瘍の画像診断

著者: 頴川晋 ,   門脇和臣 ,   石橋晃

ページ範囲:P.927 - P.930

緒言
 尿管腫瘍は上部尿路腫瘍の約1%と稀な疾患であり1),また,種々の泌尿器科学的診断技法を用いても術前に正確な診断をつけることが難しく,泌尿器科疾患の中で最も診断困難な疾患の一つとされている2〜4)。今回,われわれは原発性尿管腫瘍と診断された者24名を対象として各種画像診断を中心に臨床的検討を加えたので,これを報告する。

経尿道的前立腺切除後の膀胱頸部硬化症

著者: 山口秋人 ,   原三信

ページ範囲:P.931 - P.934

緒言
 膀胱頸部硬化症(BNC)は,経尿道的前立腺切除術(TUR-P)の術後晩期合併症の一つであるが,その発生に関する臨床的背景については必ずしも明確にされていない。
 われわれは,過去10年間にTUR-Pを施行した1,630例を対象として,BNC発生例を抽出し,若干の臨床的検討を加えたのでここに報告する。

器質的インポテンスに対するsilicone-silver penile prosthesis挿入手術の経験

著者: 丸茂健 ,   馬場志郎 ,   篠田正幸 ,   田崎寛

ページ範囲:P.935 - P.938

緒言
 インポテンス(以下IMP)の治療として両側の陰茎海綿体白膜下に一対のpenile prosthesisを挿入し勃起状態を維持させる方法は1966年にBeheri1)によつて初めて報告され,prosthesis挿入手術として現在最も広く行われている手術法の原型とされている。その後,材質と手術法について研究が積み重ねられた結果,Scott型2)のinfla-table penile prosthesisとSmall Carrion型3),Finney型4),Jonas型5)のnoninflatable penileprosthesisが実用化され,その安全性と有用性が評価されている。本邦においても岡本ら6),藤岡ら7),石井ら8)による報告があるが未だ普及した治療法とは言い難い。著者らは1984年8月から1985年7月までの1年間に8例の患者にPenileprosthesis挿入手術を施行し,その安全性と治療成績を検討したので報告する。

小さな工夫

女性尿失禁術(Stamey-Pereyra法)用の金属針

著者: 水尾敏之 ,   大島博幸

ページ範囲:P.926 - P.926

 1959年,Pereyraにより恥骨上小切開創から腟前壁に金属針を非直視下操作で穿刺し,傍尿道組織を吊り上げる女性尿失禁の新しい術式が発表された。1973年,Stameyにより内視鏡検査を併用することにより適切な位置の吊り上げが可能となつた。その後の多数の追試成績で高い治癒率が報告され,有効性が確認されており,現在では女性腹圧性尿失禁の手術法としては第一に選択されるべき方法となつている。ところが,この術式に用いる金属針が本邦ではいまだ入手が困難といえる。
 そこでPereyra針の原型を改良した金属針を作成した。刺入に際してあらかじめ超音波あるいはカテラン針などで恥骨上小切開創から腟前壁までの距離を測定しておき,針先からその長さに当る所に可動性を持つストッパーを移動し固定させる。この操作により過剰の穿刺を防止することが容易となる。また針の支持部を太く長くすることにより穿刺操作が楽に行える。

文献抄録

経直腸式走査による限局性前立腺癌の診断

ページ範囲:P.930 - P.930

 前立腺癌の根治手術に際して癌が限局性であるか,周囲組織へ浸潤如何の判定は極めて重要である。直腸診やCT検査では,癌の前立腺被膜や精嚢への浸潤を早期に診断することは困難である。著者らはこの点を検討する目的で,前立腺癌患者31症例に術前に経直腸式超音波(T.U.Sonog.)診断を行い,術後の摘出組織所見との比較を行つて,T.U.Sonog.の診断的評価を報告している。
 T.U.Sonog.のエコー像で特に注目したのは癌の被膜への浸潤,被膜穿孔の有無,精嚢への浸潤の如何であつた。これらについては超音波診断の専門のグループによる検査が行われた。31例の臨床的に限局性前立腺癌と診断された患者は,すべて後恥骨式前立腺全摘出と骨盤腔内のリンパ節清掃を施行した。

Urological Letter・401

コンジロームへのSymmetrelの使用経験ほか診療余話

ページ範囲:P.938 - P.938

 55歳の男性で尖形コンジロームがグランスに何回もできていた患者があつた。今までは生じた度にful-gurationをくり返していたが,また新しいのが生じていたので,Symmetrel 100mgを7週間用いてみた。ところが,こんどはその後2年間再発をみていない。なお,彼のsexual partnerは変わつてはいないようである。

症例

遺残尿管に転移した腎細胞癌の1例

著者: 鈴木康之 ,   三木誠 ,   吉田正林 ,   近藤直弥 ,   清田浩 ,   白井尚

ページ範囲:P.943 - P.945

緒言
 腎細胞癌の尿路転移は比較的少ないが,最近,左腎細胞癌の腎摘後3年して遺残尿管に転移した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

Thorotrast腎に発生したと考えられる腎盂扁平上皮癌の1例

著者: 高金弘 ,   佐久間芳文 ,   菊田裕 ,   久保隆 ,   大堀勉 ,   笹生俊一

ページ範囲:P.947 - P.950

緒言
 腎盂扁平上皮癌は腎盂腫瘍のうち15.2%(Wagleら1))と比較的稀で予後不良な疾患である。われわれはThorotrast腎に発生したと考えられる腎盂扁平上皮癌の稀有なる1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

副腎神経節神経腫の1例

著者: 宮城徹三郎 ,   島村正喜 ,   松田博人 ,   林守源

ページ範囲:P.951 - P.953

緒言
 神経節神経腫は,交感神経系の神経細胞由来の腫瘍の中で最も良く分化した良性腫瘍であり,その60%が20歳以下にみられ,特に10歳未満の小児の後縦隔に好発するといわれる1)。われわれは最近成人男性の副腎髄質に発生した木症の1例を経験したので報告する。

シメチジン投与中にみられた出血性膀胱炎の1例

著者: 岡根谷利一 ,   村石修 ,   米山威久

ページ範囲:P.954 - P.955

緒言
 シメチジンは消化管潰瘍に対する制酸剤として広く使われているが尿路系の副作用は稀である。最近われわれはシメチジンとの関連が疑われる出血性膀胱炎の1例を経験したので報告する。

膀胱腟腸瘻に合併した腟結石の1例

著者: 近藤直弥 ,   三木誠 ,   赤阪雄一郎 ,   高橋知宏 ,   町田豊平

ページ範囲:P.957 - P.959

緒言
 子宮頸癌に対する子宮全摘術,放射線治療後,膀胱腟腸瘻が発症し,約10年の経過中に,腟尿石の発生をみた症例を経験した。

心不全に基づく陰嚢象皮症の1例

著者: 平林直樹 ,   米山威久 ,   小川秋実

ページ範囲:P.961 - P.963

 陰嚢象皮症は,フィラリア症の減少した現在,稀な疾患である。今回われわれは,心不全に基づくと思われる陰嚢象皮症を経験したので報告する。

陰嚢内神経線維腫の1例

著者: 尾立源昭 ,   上間健造 ,   横関秀明 ,   香川征 ,   四宮禎雄 ,   広瀬隆則

ページ範囲:P.965 - P.967

はじめに
 陰嚢内に発生する腫瘍の中で,睾丸,睾丸被膜,副睾丸,および精索にまつたく関係のない,いわゆる陰嚢内腫瘍は稀である。今回われわれは陰嚢内に発生した単発性の神経線維腫の1例を経験したので報告する。

交見室

膀胱癌の浸潤度判定法について/嚢腫性二分脊椎症の排尿障害に対する神経温存的修復術について

著者: 古武敏彦 ,   土田正

ページ範囲:P.968 - P.969

 「膀胱癌の浸潤度判定──CTとエコーの比較を中心に」(本誌39巻8号,北村康男氏)を興味深く拝読いたしました。浸潤度判定に対する考え方を含め賛同する点の多いものでありましたが,思いつくまま二,三の問題点について意見を述べさせていただきます。
 ここに挙げられた膀胱癌の診断におけるCTと経尿道的エコーは近年著しく発達したもので,著者の成績と同様にそれぞれ優れた正診率を示す報告が多く見られ,膀胱癌のstage判定における永年の問題が徐々に解決されつつあるように思われ,現在では多くの検査法の中でも欠かすことのできないものです。しかし,報告の多くは個々の診断法の特徴と利点を強調するあまり,臨床的総合判定への応用という視点に欠ける傾向があります。この点に関し著者は両者の成績をそれぞれの特徴から捉え,比較検討し総合的に応用しようという考えであり,私もまつたく同感であります。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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