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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科39巻2号

1985年02月発行

雑誌目次

綜説

術後感染予防について

著者: 黒川一男 ,   香川征 ,   上間健造

ページ範囲:P.95 - P.104

はじめに
 術後感染予防として化学療法剤が使用されるようになつてからは,明らかに術後感染率は低下している。しかし,いまなお無菌手術の創感染といえども100%防止することは不可能である。第72回日本泌尿器科学会総会において「術後感染予防対策の再検討」のシンポジウムが開かれ,多くの問題点が討議された。そのうちの1つとして欧米では術後抗生剤の予防投与は原則として行わないのに対し,日本でのそれはわずか1%であつたと報告された。これは医療制度の問題も含め多くの問題を提起している。
 この問題とは別に近年術後感染は過去におけるそれとは種々の点で複雑化している。その理由として第1図に示したごとく多くの要因があいまつているためであり,医療技術の進歩とともに外科手術適応の拡大,抗癌剤,ステロイド,放射線療法,免疫抑制剤などによる治療の拡大,各種機器の多用,強力な抗菌剤の投与に対する耐性菌の出現,抗菌剤耐性の弱毒菌による感染,抗菌性物質の過信による術前,術中,術後を通じての清潔観念の欠如などがあげられる。

手術手技

重複腎盂の半腎摘除術

著者: 多嘉良稔

ページ範囲:P.105 - P.109

はじめに
 重複腎盂は尿路奇形では高頻度にみられる疾患で,その合併疾患には尿管瘤,尿管異所閉口や膀胱尿管逆流現象などがあり,尿管拡張や感染を伴つている場合が多い。その半腎にみられる病変の治療は,悪性腫瘍以外のその他の腎疾患と同様,腎保存の立場から決定される。まず,保存療法を行いそれでも軽快しない場合や,非可逆性変化を呈し保存にたえないものは半腎摘除術Hemine-phrectomyを行い,全腎摘除術は最後の手段となる。
 今回の主題である半腎摘除術の手術適応は次のごとくである。すなわち,罹患半腎に,高度水腎,膀胱尿管逆流や慢性腎盂腎炎などの進行性病変が存在するため,保存療法や腎保存術の適応外で,かつmate kidneyの腎機能が良好の場合である。

追加発言 1

著者: 工藤潔

ページ範囲:P.109 - P.110

 重複腎盂尿管は高頻度にみられる尿路奇形ではあるが,合併症がなければ治療の対象にならない。本奇形の合併症は稀ではないとされるが1),半腎摘除術を要する症例は少なく,われわれは杏林大学病院において,9年間に3例を経験したに過ぎない。このように繁用されない手術法は術者によつて大きく変わることはなく,著者らの方法も多嘉良先生のものと大同小異である。手術手技は腎部分切除術に準じて行われるが,上腎と下腎の支配血管が各々独立し,両腎盂が容易に分離されるので,腎部分切除術よりも容易な手術である。以下,上半腎摘除術について述べる。
 術前検査でnon-visualizing kidneyの場合は,一般に水腎症を呈しており,超音波検査,CT,腎血管撮影などで確認後,経皮的腎盂尿管造影を行い,患腎の形態,狭窄部,mate kidneyとの関連を検索している。

追加発言 2

著者: 小川由英

ページ範囲:P.110 - P.112

 重複腎はCampbcllによると150人に1例とされ,さほど珍しい奇型ではない。しかし,重複腎の病巣除去の目的で腎の一区域を切除する手術に遭遇することは稀である。ところで,題名の"半腎摘除術"の意味は"半腎"ではなく,腎の"区域(部分)"の方が適切であるとして1975年BoyceがGlennのUrologic Surgery中で述べている。その後Heminephrectomyの用語はCampbell'sUrology中でも用いられなくなつている。そこでこの論文中で著者は腎部分切除術を同義語として用いていることを了承していただきたい。
 著者自身の経験で重複腎部分切除術に関する報告は2症例のみである。第1例は慶応大学在職中に経験した36歳男性で,血尿と右腹部腫瘤の訴えにて精査された。切除した上腎は形成不全腎で,第1,2図に示したごとき拡張した腎盂を伴つた右尿管精嚢閉口であつた1)。第2例は国立霞ヶ浦病院にて経験した2歳女児で,尿路感染症の精査の結果発見された両側異所性尿管瘤であつた。上腎は形成不全腎で巨大尿管を両側とも伴つていた。腹部正中切開で経腹的に両上腎尿管切除および尿管瘤切除を施行した。そのため膀胱三角部が破壊され,両側尿管新吻合を合わせて行つた2)。約5時間の手術であつた。これらの症例および他の腎部分切除の経験3)より多少の追加意見を述べることをお許し願いたい。

文献抄録

精索麻酔による睾丸回転症の徒手整復

ページ範囲:P.112 - P.112

 著者らは発症後20時間以内に診断した,16例の睾丸回転症を,精索麻酔を行つて非観血的徒手整復を試みて15例(93%)に成功した経験について報告している。
 睾丸回転症の徒手整復に関する報告は少なく,最近ではNorris (1980)らが超音波コントロール下に整復した報告がある。睾丸回転症は罹患側睾丸の疼痛不快感が強いので,精索の局所麻酔を行わないと整復は困難である。精索の麻酔は罹患側の精索を左手示指と拇指で挙上し,著者らは0.5%Bipivacain塩酸溶液15mlで皮膚と精索の浸潤麻酔を行つた。これにより整復時の疼痛はほとんどなく操作は容易に行えるとしている。著者らの取扱つた症例は発症後20時間以内に睾丸回転症と診断された16例で,発症後の経過時間は平均6.5時間(3〜20時間)で,患者の平均年齢は24歳(17〜41歳)であつた。睾丸の回転は各症例によりそれぞれ回転の方向と角度に程度差があるが,右回転することが多く,更に尾部から頭部方向への回転が加わつて挙睾筋の攣縮が加わり,多くは180度以上の回転で固定されている。

講座 性行為感染症(STD)の診断と治療

II.ペニシリン耐性淋菌

著者: 小野寺昭一

ページ範囲:P.113 - P.119

はじめに
 淋菌は化学療法が導入された初期の時代には多くの薬剤に高度感受性を呈していたが,penicillin(PC)が淋疾の治療に使用され初めてから10年後の1950年代の中頃より徐々に感受性が低下する傾向がみられ,PCに耐性を示す株も出現するようになつた1,2)。しかし,これらの淋菌のPC耐性の多くは染色体性の変異によるものであつたため,PCの投与量の増加を計ることにより治療上の対応を行つてきた3,4)。このことは,PCが淋疾の治療に導入された初期には15〜20万単位の投与量で十分な治療効果が得られたものが5),近年は480万単位という大量のPCGにプロベネシッドを併用するように治療方針が修正されていることからも理解できる6)。しかし,1976年,Phillips7), Ashfordら8)により,イギリスとアメリカでほぼ同時期にpenicillinase producing Neisseria gonorrhoeae (ペニシリン耐性淋菌;PPNG)が報告され,急速な世界的拡がりがみられたことより,penicillinを中心とした淋疾治療の危機を迎え,疫学的な面からも性病対策の原点に立ち返させる程の重要な問題を提起することとなつた。
 わが国においては,1979年にPPNGの最初の報告がみられ9),その後,年々分離頻度の上昇傾向が続いているが,これは最近のわが国における淋疾の再増加の傾向と一致している10,11)

原著

膀胱腫瘍に対するBCG膀注療法の経験

著者: 澤村正之 ,   李漢栄 ,   門脇和臣 ,   石橋晃 ,   小柴健

ページ範囲:P.125 - P.129

緒言
 表在性膀胱腫瘍に対して1976年Moralesら1)がBacillus Calmette-Guérin (BCG)の膀胱内注入療法を報告して以来,欧米を中心にその評価が高まつている2〜9)。特に最近では上皮内癌(CIS)の治癒例や5〜8),局所浸潤癌の治癒例5,6)も報告されている。われわれも膀胱腫瘍に対して,Moralesらのレジメンに準じてBCG膀注および皮内接種(以下皮内接種も含めてBCG膀注と略す)を施行したので若干の知見とあわせて報告する。

表在性膀胱癌に対する半骨盤照射の効果

著者: 田代和也 ,   町田豊平 ,   大石幸彦 ,   上田正山 ,   木戸晃 ,   和田鉄郎 ,   吉越富久夫 ,   山下孝 ,   望月幸夫

ページ範囲:P.131 - P.134

 われわれは,膀胱癌の治療に放射線治療が一つの積極的治療法であると考え,その有用性を指摘してきた1〜4)。とくに表在性膀胱癌に対しては,その根治的治療と再発予防の目的で,経尿道的膀胱腫瘍切除術(以下,TUR-Bt)後に根治的放射線治療を行つてきた。その結果,再発の予防効果は十分に認められたが3),放射線治療に伴う副作用,とりわけ晩期障害は,それを無視できるほど少なくないことも判明した。このため,根治的な治療と同時に,副作用を軽減する目的で,病巣が左右いずれかの膀胱壁に偏在するhigh grade膀胱癌に対して患側のみの半骨盤照射を1978年より試みている。現在までにこの治療法の対象となつた症例が15例に達したので,これまでの治療成績と経過をここに検討した。

小さな工夫

膀胱二重造影に気管支造影剤を使用した画像診断の改良

著者: 蝦名謙一 ,   平野繁 ,   染野敬

ページ範囲:P.130 - P.130

 膀胱二重造影は膀胱腫瘍に広く行われているが,画像診断的にはやや説得力が乏しいと言われている。水溶性の造影剤,たとえば血管造影剤や排泄性腎盂造影剤を用いるとコントラストに不十分な点がみられる.われわれは水性懸濁剤を試みてきたが,気管支造影剤であるハイトラストを用いると膀胱粘膜に薄くコーティングできることが可能であり,膀胱刺激症状もなく,水性のため尿中に溶解排泄することがわかつた.したがつて直径1mmの膀胱腫瘍も判別可能であり,膀胱粘膜の乱れも判別できるため,膀胱二重造影の画像診断的有用性が向上したので報告したい。

経尿道的膀胱内留置による排尿時下部尿路機能検査用2腔カテーテル

著者: 西沢理 ,   守屋至

ページ範囲:P.144 - P.144

 最近,排尿時の下部尿路機能が利尿筋圧と尿流量との持続的同時記録により詳細に評価されている。これまで,私たちは排尿時のウロダイナミック検査を行う場合には膀胱内注入と内圧測定を別々の経路で行う2腔カテーテルを恥骨上から経皮的に膀胱内に留置していた1)。しかし,この方法は恥骨上穿刺の操作が被検者にかなりの負担を与えていた。今回,私たちは経尿道的に留置しても,排尿時に尿流と一緒に抜去されず,さらに,膀胱内注入および排尿終了後の残尿測定も容易に行えることから,ウロダイナミック検査に最適な2腔カテーテルを試作したので紹介する。
 付図に2腔カテーテルを示す。ポリ塩化ビニルの材質で,全長が60cm,太さは7.5Fr.である。先端部には数個の側孔をあけ,約10cm程度の部分を110℃で約5分間の熱処理後にループ状に固定した。圧測定路の他端は圧トランスデューサーと直接に連結できるようにし,注入路にはイルリガートルと浣腸器とが連結できるようにした。滅菌蒸留水の膀胱内注入は約1mの高さに固定したイルリガートルを介して最大約20〜30ml/minで行える。また,残尿も浣腸器で容易に吸引し測定できる。

症例

16歳男子にみられたMesoblastic Nephromaの1例

著者: 高橋伸也 ,   森田秀 ,   古島浩 ,   成瀬克邦 ,   室博之

ページ範囲:P.137 - P.140

緒言
 Mesoblastic nephromaは,新生児腎実質腫瘍中最多といわれ,Wilms腫瘍との鑑別が重要であるが,今回,われわれは16歳男子のMesoblasticnephromaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

シンチスキャンで局在診断が可能であつた上皮小体腺腫の1例

著者: 武井孝 ,   白須宣彦 ,   小林克己 ,   小松秀樹 ,   上野精 ,   内山暁

ページ範囲:P.141 - P.143

緒言
 上皮小体機能亢進症の術前局在診断は容易ではない。しかし,近年の診断法の進歩により,かなり小さな腫瘤まで局在診断ができるようになつてきた。われわれは201Tlシンチグラフィーと99mTcO4—シンチグラフィーを用いたサブトラクション法によつて,術前局在診断が可能であつた症例を経験した。今回この症例を検討し,上皮小体機能亢進症の局在診断法について若干の文献的考察を加えて報告する。

好酸球性膀胱炎の1例

著者: 藤本博 ,   田中正敏 ,   新津将 ,   石井善一郎

ページ範囲:P.145 - P.147

緒言
 好酸球性膀胱炎はアレルギー性膀胱炎の一種で稀な疾患であるが,最近喘息治療剤の副作用による本症が報告され注目されている1,2)。われわれも薬剤との関連が疑われる本症の1例を経験したので報告する。

Tranilastが原因と思われた薬剤性膀胱炎の2例

著者: 黒沢功 ,   神保進

ページ範囲:P.149 - P.151

緒言
 薬物を服用することが原因で,高度の血尿および膀胱刺激症状を惹起する薬剤性膀胱炎の中で広く一般的に知られているものには,Cyclophospha—mideによるものがあるが,このような薬物による膀胱障害は,一般的に原因薬物を中止しない限り治療は困難なことが多く,また難治性であるがゆえに,膀胱腫瘍と誤診されたり,長期にわたり対症療法のみで加療されることも少なくはないと思われる。今回われわれは,気管支喘息の代表的な治療薬であるTranilast (Rizaben®)が原因と思われる薬剤性膀胱炎を2例経験したので,その臨床経過を中心に報告する。

前立腺結石摘除後尿失禁が改善した神経因性膀胱の1例

著者: 山下俊郎 ,   保坂恭子 ,   中本富夫 ,   富田康敬 ,   米山威久 ,   小川秋実

ページ範囲:P.153 - P.155

緒言
 前立腺結石が原因と考えられる尿失禁は稀であるが,最近われわれは前立腺結石摘除後,尿失禁が改善した神経因性膀胱の1例を経験したので報告する。

ミューラー管遺残症候群の1例

著者: 川田望 ,   新村武明 ,   川添和久 ,   岡田清己 ,   岸本孝

ページ範囲:P.157 - P.159

緒言
 ミューラー管遺残症候群とは外性器は男性型を示すが胎生期におけるミューラー管の発育が抑制されないため,ミューラー管由来臓器が消退しないことをいう。われわれは両側停留睾丸の既往をもつミューラー管遺残症候群の1例を経験したので文献的考察を加えてここに報告する。

睾丸類表皮嚢胞の2例

著者: 山本正 ,   仲山實 ,   早川正道 ,   青輝昭 ,   長倉和彦

ページ範囲:P.161 - P.163

緒言
 睾丸類表皮嚢胞は稀な疾患であり,発生頻度は全睾丸腫瘍の1%程度とされている1)。また,その治療法は,除睾術にすべきか,あるいは嚢胞摘出のみとするか議論が分かれている。今回われわれは,嚢胞摘出を行つた2例を報告し,睾丸類表皮嚢胞の治療法について若干の文献的考察を行つた。

特発性陰嚢石灰沈着症の2例

著者: 後藤健太郎 ,   姉崎衛 ,   大沢哲雄 ,   中村章

ページ範囲:P.165 - P.167

緒言
 特発性陰嚢石灰沈着症とは,1970年にShapiroら1)がIdiopathic Calcinosis of the Scrotumの名称のもと提唱した疾患である。今回われわれは,本症の典型と思われる2例を経験したので,当疾患と考えられ集計し得た本邦報告16例に自験例を加え,若干の統計的考察を試みた。

高齢婦人にみられた陰唇癒着症の1例

著者: 眞田寿彦 ,   瀬川襄 ,   清水昭

ページ範囲:P.168 - P.169

はじめに
 陰唇癒着症の多くは,乳幼児期に発見されており,成人女性の報告は少ない。しかし,高齢化社会をむかえた今日,老年婦人に本症をみる機会も増えると推測される。

Urological Letter

前立腺根治手術後の勃起力/新生児環状切除術の合併症

ページ範囲:P.140 - P.140

 根治的前立腺摘出術に際して陰茎海綿体神経を傷つけないで行うジョーンスホプキンス大学のPatrickWalshの最近の方法は非常に有利なものであることがわかつた。過去1年半の間,筆者らはバンクーバー中央病院で,まだ勃起能力のある患者に前立腺根治手術を行う際には本法に従つて当該神経を傷つけないようにして努力してきた。
 今や,筆者らは22例を経験したが,そのうち17例はうまくいつている。なお,そのうち12例は事実上正常であると言つているが,残りの5例は勃起はするが,以前よりは弱いと言つている。この成績は以前の成績すなわち勃起能力のあるものが10%だつた頃よりもよい。

印象記

国際尿禁制学会(ICS)に参加して

著者: 近藤厚生

ページ範囲:P.170 - P.171

 第14回国際尿禁制学会(International ContinenceSociety,ICS)に出席する機会を得たので,学会の内容,印象を報告する。1984年はMadersbacher (インスブルック大学,泌尿器科教授)が会長となり,9月13日〜15日まで,オーストリアのインスブルック市において開催された。26カ国より約450名が出席した。応募演題は年年増加し,250題のうち50題が口演,53題がポスター形式による討論であつた。
 今年のメインテーマはneurogenic urinary tract dys-functionとurinary incontinenceであつた。幻の論文ともいえるIntravesical electrotherapy(Katona : Urol.int.,30:192,1975)の著者が今学会に再登場したのが注目を集めた。Katonaら(Budapest)は二分脊椎症児40名で髄膜瘤閉鎖術前,すなわち生後2〜10時間以内に第1回目のelectrotherapyを行つた。膀胱機能の回復程度はコントロール群に比して有意に有効であり,新生児期から治療を開始することの重要性を主張した。この治療法を追試した論文はきわめて少ない。排尿反射弓の機能回復機序については不明の点が多いが,今後の治療成績に注目したい。

交見室

難治性前立腺炎の経穴刺激療法について/精索静脈瘤の血管塞栓術について

著者: 原川一哉 ,   勝岡洋治

ページ範囲:P.172 - P.173

 本誌38巻11号に掲載された拙稿「難治性前立腺炎に対する経穴刺激療法の経験」に対して会田靖夫先生よりコメントと御質問(38巻12号交見室)をいただき有難うございました。針灸に関してはまだまだ浅学な小生には深遠な針灸理論や名人芸的なテクニックは使うべくもありませんが,経穴や経絡を刺激する各種の東洋医学的治療法は前立腺炎も含めて泌尿器疾患に有効な場合が多く,漢方と同様に日常診療にもつと取り入れられてもよいのではないかと日頃感じております。
 慢性前立腺炎は東洋医学的に虚証に入る疾患なので「実はこれを潟し,虚はこれを補う」という針灸の治療原則から補的治療が主となります。灸は補的効果が大きい治療法ですが,灸痕が残る欠点や外来で施行するには手間と臭いの問題があります。現在,小山市民病院泌尿器科外来にて行つている治療手技は東北大に在局した当時と異なり,刺針をせずに皮膚面電極をもちいた低周波パルス刺激と磁気プラスター(1500ガウス)の貼付を週1回の割で4ヵ所(2〜3穴)の経穴に対して行うだけに簡略化し,しかもより補的効果をあげられるようにしております。東洋医学的な私見ですが,慢性前立腺炎は単に前立腺のみの疾患と考えず,慢性的な骨盤内異常の一部であると理解したほうがよいと考えます。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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