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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科40巻12号

1986年12月発行

特集 術後合併症の診断と対策

急性腎不全

著者: 東間紘1

所属機関: 1東京女子医科大学腎臓病総合医療センター泌尿器科

ページ範囲:P.971 - P.977

文献概要

 急性腎不全(acute renal failure: ARF)とは,ショックや腎毒性物質などなんらかの原因によつて腎臓が急激にその機能を失なつた結果,体液の恒常性を維持できなくなり,高窒素血症を主な徴候とする臨床症状を呈する状態と定義される。慢性腎不全と異なり,この腎機能障害は一般に可逆的であり,早期に適切な治療を行うならばその大部分は治癒するはずである。急性腎不全の病態を一口でいうならば,急激な体液電解質の異常,酸塩基平衡のアンバランスによる組織崩壊=異化の異常な亢進状態であるということができるだろう。したがつて,原理的には十分な透析療法により異化の異常な亢進に対処しつつ,腎機能の回復を待つことで治癒が可能であり,事実,腎不全そのものによつて死亡することは極めて少なくなつている。
 急性腎不全が初めて文献上に記載された1917年以来,近代戦争はそのたびに多数の急性腎不全患者を発生させ,その病態の解明と治療法開発への努力にもかかわらず,透析療法の導入まではまさに致死の病であつた。透析療法の導入によつてそれまで10%以下だつた救命率は40〜50%台まで向上することができた。とはいえ,現在でもなおそれ以上に上げることができないでいる。ARFの予後を左右するものは,その基礎疾患の重症度と,合併症の有無である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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