文献詳細
綜説
文献概要
1975年から1980年における本邦での膀胱癌による年齢訂正死亡率は,人口10万対男で2.2〜2.5,女で0.8〜0.9であり,膀胱癌の発生率は,男ではその2倍強,女では2倍弱といわれる1)。この数は漸次,欧米の値に近づきつつあり,泌尿器科領域の悪性腫瘍の主体となっている。
膀胱癌においては表在性(Ta,T1)癌と浸潤性癌(T2≦)では,予後を異にすることは周知のことであり2),浸潤度は治療法選択上の重要な指標である。膀胱癌治療における臨床的研究の目指す究極のゴールは,浸潤癌では膀胱機能を温存しつつ癌組織を完全に除去することであり,また表在癌では腫瘍再発の完全抑制である。表在癌では,それに至る当面の目標として,腫瘍再発回数の減少と,浸潤癌への移行や低分化癌への移行の抑制が考えられている。現在,広く行われている膀胱内注入療法の目的もこの目標を目指したものである。本稿では,表在性膀胱癌の治療における膀胱内注入療法の現況と問題点について概説する。
膀胱癌においては表在性(Ta,T1)癌と浸潤性癌(T2≦)では,予後を異にすることは周知のことであり2),浸潤度は治療法選択上の重要な指標である。膀胱癌治療における臨床的研究の目指す究極のゴールは,浸潤癌では膀胱機能を温存しつつ癌組織を完全に除去することであり,また表在癌では腫瘍再発の完全抑制である。表在癌では,それに至る当面の目標として,腫瘍再発回数の減少と,浸潤癌への移行や低分化癌への移行の抑制が考えられている。現在,広く行われている膀胱内注入療法の目的もこの目標を目指したものである。本稿では,表在性膀胱癌の治療における膀胱内注入療法の現況と問題点について概説する。
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