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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科42巻2号

1988年02月発行

綜説

特発性不妊精巣の病態生理

著者: 三宅弘治1

所属機関: 1名古屋大学医学部泌尿器科学教室

ページ範囲:P.105 - P.114

文献概要

はじめに
 特発性男子不妊症は原因のはっきりしない精子減少症(乏精子症,無精子症)と理解されている。精子運動率の減少する精子無力症も,これに含められることが多い。しかし現在,精子の運動に関しては精漿の役割も含めて不明な因子が多すぎて問題が複雑になる恐れがある。それで私は,精子無力症を,精子の絶対数が減少する,すなわち精細管の精子形成能が低下する精子減少症と区別して考えており,もっぱら,精巣での精子形成能低下を原因とする精子減少症を基礎的研究の対象としている。
 一般に本症は結婚後妊娠がなく,精液検査により精子数が正常以下と指摘されて,発見されることが多い。ところで,私は十数年来,特発性男子不妊症を治療して来たが,不思議なことにかなり多くの無精子症,高度乏精子症の患者が結婚前か,結婚直後に妊娠させたという経験を述べる。私は現在まで1,500例以上の症例を診て来ているが,少なくとも50例近くの症例で,このような訴えを聴取している1)。妊娠させた年齢は推定で平均23歳以前であり,このことから,私は本症は精巣が思春期を経て成熟し妊娠させるに足る精子を産生するようになった後,何らかの原因により,23歳頃より突然,精子形成能の低下(精巣も縮小してくる)を来し,急速に精巣病変が進行していくものと考えている。すなわち,本症は先天性の一次性精巣障害ではないと考えている。しかし,この仮定を証明することはかなり難しい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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