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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科43巻12号

1989年12月発行

雑誌目次

綜説

成分輸血

著者: 小松文夫

ページ範囲:P.1023 - P.1032

 1975(昭和50)年を境として,わが国にも成分輸血の概念が広まった。そしてその後の輸血は一般に成分輸血が行われるべきとされるようになり,現在は成分輸血の時代である。成分輸血とは,全血を赤血球,白血球,血小板あるいは血漿に分け,そのうち患者が必要とする成分のみを輸注する輸血療法である。成分輸血は患者の治療にあたって輸血の効果を高め,また,有限である血液製剤を有効に利用するために非常に重要である。
 ここでは成分輸血の現状と問題点を明らかにしながら,成分輸血の実際について述べることにする。

手術手技 外来小手術

精嚢造影

著者: 長田尚夫

ページ範囲:P.1035 - P.1038

 精嚢造影は,精嚢に造影剤を注入して,精嚢および精管や精管膨大部の形態を描出させるものである。同時に隣接臓器との関係を明らかにすることができる。精嚢に造影剤を注入するルートとして3種類の方法がある。①経精管法:陰嚢皮膚を小切開して精管を露出して造影剤を注入する。②経射精管法:尿道鏡を用いて内視鏡的に射精管口から細いカテーテルを挿入して造影剤を注入する。③精嚢穿刺法:会陰部あるいは経直腸的に超音波またはCTガイド下で精嚢を直接穿刺して造影剤を注入する。精嚢造影の適応としては,男性不妊の原因としての精路通過障害(閉塞性無精子症)の検索が多いが,血精液症や精子無力症,結石・腫瘍・炎症による精嚢疾患,精嚢や精路の先天異常,隣接臓器,とくに前立腺疾患の補助的診断,睾丸機能不全症での男性ホルモン活性度を知る,など広範囲にわたっている。ここでは,日常臨床で行われている経精管法による精嚢造影について述べる。 本法は外来通院で可能,局所麻酔で行われる。そして左右両側に施行されることが多い。

講座 泌尿器手術に必要な局所解剖・18

膀胱と前立腺(5)—リンパ管系と筋膜

著者: 佐藤達夫

ページ範囲:P.1039 - P.1048

 現代の癌手術で最も重視される構造物はリンパ管系であり,次第に重要性を増してきているものが内臓筋膜であると思われる。膀胱と前立腺も例外ではあるまい。骨盤内のリンパ管系と筋膜の概要については,本シリーズ(臨泌43(6):4771)および43(7):5762))で扱ったところである。今回はなるべく各論的に取りあげるように心掛けたいが,多少の重複は避けがたいと思われる。むしろ,これら旧稿の挿図と所見を参照しながらお読みいただきたい。

座談会 よりよい手術をするために・2

尿路変更術

著者: 田崎寛 ,   垣添忠生 ,   岡田裕作 ,   秋元成太

ページ範囲:P.1051 - P.1061

Ⅳ.コックパウチの手術方法
 秋元 それでは,岡田先生にコックパウチについてお聞きしたいと思います。
 岡田 スキナー先生が最初にコメントされていますが,腸重積法による逆流防止弁というのは,オリジナルは和辻先生という日本人で,胃痩の時に作られたといいます。コックパウチを作る上で,いいニップルを作ることが中心になります。

原著

前立腺癌における前立腺酸性ホスファターゼの臨床的評価

著者: 山崎春城 ,   町田豊平 ,   東陽一郎 ,   近藤直弥 ,   黒田淳 ,   今中啓一郎

ページ範囲:P.1063 - P.1067

 前立腺癌の診療における前立腺酸性ホスファターゼの有用性を検討した。1)前立腺酸性ホスファターゼのラジオイムノアッセイ法は,前立腺癌での陽性率と診断効率が高く,モニタリングに好都合であった。2)前立腺酸性ホスファターゼは,前立腺結節を有する症例で,癌の推定に有用であった。3)前立腺酸性ホスファターゼによる偶発癌の診断は困難であった。4)前立腺癌で,前立腺酸性ホスファターゼの陽性の有無により,予後の推定がある程度可能であった。5)前立腺酸性ホスファターゼが,治療開始後2カ月以内に正常化した場合,その治療が有効と判定可能であった。6)再燃癌の予知に関しての前立腺酸性ホスファターゼの有用性は,必ずしも高くないと思われた。

膀胱腫瘍の高速核磁気共鳴画像

著者: 廣瀬欽次郎 ,   浜走倫人 ,   岩崎尚彌

ページ範囲:P.1068 - P.1072

 膀胱腫瘍の核磁気共鳴画像(MRI)診断にあたり,従来のRFスピンエコー法(SE法)と今般新たに開発した高速MRI撮像法の一法であるフィールドエコー法(FE法)の対比より興味ある知見を得たので報告する。我々の検討した高速スキャン法はFE法の一つである定常状態才差運動法(SSFP法)であるが,本法により膀胱腫瘍の組織構築,浸潤深達度の判定に極めて有用な画像を得た。

文献抄録

上部尿路の粘膜癌に対するBCG注入療法

ページ範囲:P.1072 - P.1072

 BCG注入による膀胱粘膜癌(ca.in situ)の治療の有効性は,既に多数の報告から明らかである。その作用機序についてはなお不明な点はあるが,BCGが粘膜癌表面に接することが最も重要であることも明らかとなっている。そこで著者らは上部尿路の粘膜癌に対して本法を行って,その結果を報告している。
 患者は8名で66歳から86歳に至る高齢者で,長期にわたる膀胱癌の治療の既往があるが,現在は軽快している。患者の既往歴については,8名中4名は膀胱癌の内視鏡的切除とBCGの注入療法をうけており,3名は浸潤癌にて膀胱摘出と回腸導管手術をうけている。1名は単腎にみられた腎盂癌にて開腹切除術を行っている。尿細胞診のために全例に尿管内に7Fカテーテルを留置して採尿し,腎孟の洗浄による尿のサンプルも採取した。6例は1側尿管の細胞診陽性で,2例は両側尿管の細胞診が陽性であった。膀胱摘出をうけていない5名の膀胱生検ではca.insituの所見は認められない。

症例

核出術を行った腎血管筋脂肪腫

著者: 矢野真治郎 ,   森久清志 ,   畑中義美 ,   上野助義

ページ範囲:P.1075 - P.1078

 患者は42歳,女性,左腎腫瘤の精査のため入院となった。腎エコーおよびCTにて腎血管筋脂肪腫が強く疑われたが,腎細胞癌も完全には否定できなかった。術中迅速漂本検査では腎血管筋脂肪腫であったので,腫瘍核出術を施行した。腎血管筋脂肪腫に対する腎保存療法の必要性について文献的考察を加えた。

右腎に発生した神経鞘腫の1例

著者: 加瀬隆久 ,   岩澤俊久 ,   田島政晴 ,   松島正浩 ,   白井将文 ,   辻本志朗

ページ範囲:P.1079 - P.1081

 69歳,女性。右背部重圧感を主訴に受診。血液,血清,生化学,胸部X線検査に異常所見はなく,血尿も認めなかった。腎超音波検査,CTにて右腎腫瘤を認め,右腎細胞癌の疑いにて経腹的右腎摘出術を施行した。病理組織検査は,右腎盂より発生した神経鞘腫であった。

睾丸固定術後の索状物による精索絞扼

著者: 中川龍男 ,   竹崎徹 ,   市川碩夫

ページ範囲:P.1082 - P.1084

 19歳,男性。左睾丸部痛を主訴に来院,4年前に右睾丸捻転症にて右睾丸固定術を施行。このとき,同時に左睾直丸固定も実施した。左睾丸捻転症の疑いにて,緊急手術を施行。手術の結果,鞘膜内で睾丸白膜から鞘膜に延びている線維性索状物が,精索を絞扼していることが判明した。原因として4年前の左睾丸固定のさいに使用した絹糸が刺激となって,線維性索状物が形成された可能性が考えられた。

Urological Letter・563

第6回臨床調査問題の解答

ページ範囲:P.1078 - P.1078

 今回の問題(本誌10月号に掲載)は,特発性勃起症でウィンターのcavernosum-spongiosum penile shunt手術を受けたが失敗した場合についてであり,何か良い助言か特別な手段はないかとおたずねしたのである。
 多くの医師は最近勃起症患者を診ていないので,これに答える資格はない,と言ってきた。しかし,フロリダ州Orlandoのある医師はその患者を大学病院ASAPに転送するようにと言ってきた。

教室だより

新潟大学泌尿器科学教室

著者: 武田正之

ページ範囲:P.1088 - P.1088

 新潟大学泌尿器科学教室は,日本海を背にした新潟大学旭町キャンパス医学部研究棟の5階に位置する。その歴史は,1949年12月に初代故楠隆光教授が着任されて皮膚泌尿器科学教室から実質的に独立した時に始まる。1957年2月より第2代高安久雄教授(現山梨医科大学学長)を東京大学よりお迎えした後,1959年4月には講座の新設が公認されて皮膚科とは完全に分離した。高安教授が1963年6月に東京大学へ赴任された後,第3代佐藤昭太郎教授が引き継がれて現在に至っており,現在教室の同窓会員は106名に達する。佐藤教授は昨年開講25周年を迎えられたが,1972年には第37回日本泌尿器科学会東部連合総会,1987年には第75回日本泌尿器科学会総会を新潟市で開催され,現在も多忙な毎日を過ごされている。
 現在の医局員数は31名で,大学在籍者は教授以下,助教授1,講師2,助手6,医員7,大学院生3の合計20名であり,他は関連病院へ出張中である。

大阪医科大学泌尿器科学教室

著者: 浜田勝生

ページ範囲:P.1089 - P.1089

 大阪医科大学は,大阪府高槻市に位置し,大阪市内,京都市内のいずれにも電車で30分以内で行き来できる場所にある。
 当教室は石神襄次前教授(現神戸大学医学部名誉教授)の後を1966年4月より宮崎重教授が引き継がれ現在に至っている.宮崎教授就任後より除々に教室員の増加がみられ,現在教室は教授1名,助教授1名,講師3名,助手6名,専攻医6名,大学院生8名,研修医2名,非常勤講師9名,出張者7名で構成されている。大学には現在19名が常在しており,診療,教育,研究に多忙な毎日を送っている。

画像診断

腎嚢胞に合併した腎細胞癌の1例

著者: 飯田如 ,   江藤耕作

ページ範囲:P.1090 - P.1094

 患者 63歳,女性。
 主訴 右側腹部鈍痛。
 初診 1988年9月17日。
 既往歴 60歳より高血圧のため内服治療中。
 家族歴 父:肺結核、母:胃癌、弟:食道癌。
 現病歴 1988年8月に右側腹部から背部にかけての鈍痛を自覚し某医を受診,エコーにて右腎上極にSOLを指摘され来院。右単純性腎嚢胞の診断で経過観察していたが,1989年2月のエコー,CT検査の結果,嚢胞内容の異常を疑われ1989年3月14日当科入院となった。
 検査所見 血沈亢進(40mm/1hr, 77mm/2hr)以外に血液一般,血液生化学検査に異常なし。尿細胞診は陰性。KUBにて異常を認めず。

交見室

テキサス大学MDACCでの第1回尿路腫瘍のBRM治療に関するセミナーに参加して,他

著者: 鈴木徹

ページ範囲:P.1096 - P.1097

 癌の免疫療法を包括するBRM (生物学的反応修飾物)という概念が1970年代に湧き起こり,各種の生物学的活性物質がサイトカインとして整理され,遺伝子工学の進歩と相まって,これらが大量純粋に生産されて,癌の治療に用いられ始めてまだ日は浅い。 テキサス大学M.D.Anderson Cancer Center(MDACC, Dept.of immunoL)の Dr.Guttermanが主催するセミナーに参加すべく,1989年6月4日後記の12人を主としたパーティで一路Houstonに向かった。30時間余りを経て,同日午後8時頃まだ明るい広大な,テキサス大学医学センター内のホテルにようやく着いた。セミナーは翌5日8時からBRMによる癌の治療を進めているDept.of Immunol.(最近米国でBRM療法はoncologistではなく主にimmunologistが中心に行っている)の朝のカンファレンス出席から始まった。
 3日間のセミナーはimmunologist, oncologist,ra-diologist, urologistからのレクチャアーがあり,それに対して日本の参加者の質問,コメント等の応答という形式で進められていった。最初はBRMに関する総説,その臨床応用の理念,各種IFN, IL, TNF, CSFについて説明があった。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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