文献詳細
講座 泌尿器手術に必要な局所解剖・15
文献概要
骨盤内臓の主要動脈である内腸骨動脈については,このシリーズの第10回で総論的にとり扱った(臨泌43(4):301)1)。内腸骨動脈は種々の分枝を含み,解析の複雑な動脈である。いま,その中で比較的太い臍動脈(生後は近位部を除いて閉塞し臍動脈索となる),上殿動脈,下殿動脈,内陰部動脈の4本の枝を選び,その枝分かれ順を見ると,変異の幅は大きいが,図1-Aが最も標準的なタイプである1)。この模型図では,腰動脈(索)を内腸骨動脈の主幹に見たて,他の3枝を分枝として扱っているように見える。しかし比較的解剖学的に考ると,内腸骨動脈は本来,坐骨神経に沿って骨盤の尾側を通る(帯後性,立位のヒトでは帯下性)下肢の動脈(坐骨動脈)を本幹とし,これに骨盤内臓や会陰部の動脈が併合されて形成された経緯が認められる1)。ヒトでは坐骨動脈は退化し下殿動脈として残存するので,内腸骨動脈の主軸を下殿動脈と考えることも可能である。その見方に立って図1-Aを描き直したのが図1-Bである。この図では,内腸骨動脈から,まず上殿動脈が分かれる。それ以下の下殿動脈と内陰部動脈の共通幹を殿陰部動脈幹(glutcopudendal trunk)と呼べば,臍動脈(索)はこの殿陰部動脈幹から起こるのが標準となるのである。
掲載誌情報