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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科44巻11号

1990年11月発行

雑誌目次

特集 さんご状結石の治療

手術療法への適応を考える

著者: 田口裕功

ページ範囲:P.941 - P.945

はじめに
 腎結石に対する治療手段としての ESWL とPNL,それらの併用による治療はめざましい進歩をとげている.このため,医療の先進国である日本において手術療法の適応症例は減少し,さらに,巨大なさんご状結石や巨大腎結石に対しても,反復するESWLや多方向からのPNLの併用操作で破砕可能となり,治療不可能なものはないとまでいわれている.しかし,巨大な腎結石が破砕可能であったとしても,最良の適応症例とは別の問題であるとも考えられる.著者がかつて沖縄県において経験した腎結石は重量50〜100gに達する,硬く肉が厚いものであった.これらがESWLやPNLにより短期間に治療できることは治療方法としては理想であるが,現実には治療期間,経費効率などの点で問題を指摘されつつあることも事実である.恐らく,東南アジアを含めた赤道に近い諸国においては生活環境からこのような症例が多く存在するものと推定している.日本人が国際医療人であることを前提として考えるとき,これらの症例を含めて,適応の決定の討論が多くなされることを望むものである.

PNL単独療法の経験

著者: 若月晶

ページ範囲:P.946 - P.952

はじめに
 従来さんご状結石の治療の主体は腎切石術であった.当時著者が在籍した愛媛大学でもさんご状結石に対し積極的に腎切石術がなされていた1).術中レントゲンなどを行い残存結石を極力減らすように努力が払われていたが,1976年から1979年にさんご状結石に対して施行された腎切石術の1981年における経過観察の結果をみると,残存結石は6例(20.7%),再発結石は5例(17.2%),合計11例(37.9%)に調査時点で結石が認められた.これらの残存再発結石はいずれも小さなものではあるが,さんご状結石では感染結石も多く感染再発の原因となり,また再発や増大の要因ともなること,切石術を再度行うのは腎機能や患者の負担と言う点でも困難であるなどの理由でさんご状結石の治療上最も問題となった.
 一方,近年ESWLが尿路結石治療の主役となりさんご状結石に対しても多数の治療が行われている.現在在籍している住友病院でのMPL 9000による腎結石の治療成績2)からみてみると,腎結石では結石の大きさと砕石に必要な衝撃波のエネルギーがよく相関していることが分かった.

ESWLによるさんご状結石の治療

著者: 平野大作 ,   大井知教 ,   清滝修二 ,   佐藤安男 ,   滝本至得 ,   岡田清己

ページ範囲:P.953 - P.959

はじめに
 近年,尿路結石の治療はめざましい進歩を遂げてきた.一つは腎盂鏡や尿管鏡を用いた内視鏡的治療法であり,他は非観血的治療法である体外衝撃波破砕術(ESWL)である.ESWLは1980年Chaussyら1)により最初に臨床応用されて以来,急速な勢いで全世界へ普及されてきた.本邦でも1984年にDornier HM 3 iithotripterが導入され2),今や多種の装置が稼動している.導入当時は自費診療であったが,1988年4月より健康保険の適応を受けたこともあり,上部尿路結石の治療法としてESWLは第1選択として確立されたものと考える.しかし,さんご状結石は尿路感染症と密接な関係があり高度の腎孟腎炎の合併,終局的には腎機能の荒廃をきたすことから,stone can—cerとも呼ばれている3).このさんご状結石に対するESWLによる治療はstone streetをはじめ,いくつかの間題が残されている.
 今回,さんご状結石におけるESWLによる治療について自験例を中心に言及する.

座談会

さんご状結石治療法の選択

著者: 増田富士男 ,   小野佳成 ,   荒川孝 ,   秋元成太

ページ範囲:P.963 - P.977

 秋元(司会) 今日はお忙しい中をご出席いただきありがとうございます.本日の課題である「さんご状結石の治療法」というのは,いろいろな問題を含んでいると思います.まず最初に,手術的な療法についてご経験が深い増田先生からお話しいただきたいと思います.

講座 X線解剖学・8

リンパ

著者: 石井千佳子 ,   多田信平

ページ範囲:P.979 - P.982

 骨盤内および後腹膜のリンパ節はそれぞれ主要血管(腹部大動脈,下大静脈,総腸骨動静脈,外腸骨動静脈,内腸骨動静脈など)に沿って認められる1〜3)

手術手技 難しい手術

尿道下裂形成術後合併症に対する再建術

著者: 野々村克也 ,   浅野嘉文 ,   小柳知彦

ページ範囲:P.983 - P.989

 尿道下裂形成術不成功例の主なものとして1)尿道皮膚瘻,2)索変形の残存,3)外尿道口の狭窄・後退,4)旧尿道口吻合部狭窄(我々の行っている一期的形成術1)では皆無),5)新尿道の憩室様拡張などがある.尿道皮膚瘻の閉鎖に関しては既に報告してあるので2),a)索変形の矯正術,b)後退した尿道を亀頭先端まで延長する尿道形成術extension urethroplasty:3)あるいは4)に対する形成術,c)憩室切関除術について我々の行っている方法を紹介したい.いずれの手術も前回の手術による組織の炎症が治まり,陰茎皮膚の弾性が回復した(最低6ヵ月)後に行うのが原則である.さらに,前回の手術による瘢痕形成・皮膚の不自然な入り組みや癒着は易感染性であり,尿道形成や陰茎を覆うための皮膚は以前に増して制限されている等の悪条件で手術に臨むわけで,創のブラッシングなどの基本的な術前処置はもちろん,どのような皮膚切開でどういう対処をするのか綿密明確な戦略が必要である.

原著

尿細胞診の診断的意義

著者: 辻野進 ,   伊藤貴章 ,   松本哲夫 ,   塩澤寛明 ,   相澤卓 ,   三木誠 ,   海老原善郎

ページ範囲:P.991 - P.994

 最近4年間の膀胱腫瘍患者203例(男153例,女50例),および良性疾患患者358例についての尿細胞診の成績をまとめた.Class Ⅲ以上を陽性とすると敏感度は69.5%,特異度は95.5%であった.また腫瘍の数,異型度,深達度が増すほど陽性率は上がること,初発例の方が再発例より有意に陽性率が高いこと等を確認した.細胞収集等の問題点を解決すれば尿細胞診をマススクリーニングに広く応用できると思われる.

腟粘膜を切開しない膀胱頸部吊り上げ術

著者: 横山英二 ,   真下節夫 ,   相原正弘 ,   朱徳 淳 ,   川上達央 ,   中條弘隆 ,   藤野淡人 ,   小柴健

ページ範囲:P.995 - P.999

 女性真性腹圧性尿失禁患者16例に対して,腟壁を全く切開せずに人工血管も用いない膀胱頸部吊り上げ術を施行した.この新しい手術方法は,内視鏡的針式膀胱頸部吊り上げ術(Gittes法)の変法と言うことができる。手術成功率(尿の完全禁制)は術後2カ月ではI00%であったが,最終観察期間(6〜14ヵ月,平均8.6ヵ月)では88%(16例中14例)であった.術中ナイロン糸の膀胱穿通と尿道穿通を各々1例ずつ認めたほかは術中合併症は全くなかった.術後合併症としては,2例に排尿困難,3例に牽引痛,3例に尿意切迫感を認めたが,いずれも一過性であった.本法は手術時間は31〜60分と短く,出血もほとんどないため,簡便で確実な良い手術法と考えられた.

症例

腎動静脈瘻を伴った腎血管筋脂肪腫

著者: 山形健治 ,   杉澤裕 ,   長谷川潤 ,   川村直樹 ,   吉田和弘 ,   秋元成太

ページ範囲:P.1003 - P.1006

 患者は73歳,女性.主訴は左側腹部痛,CTにて左腎腫瘍を認め,血管造影では動脈の動脈瘤様拡張,および著明な動静脈瘻を認めた.左腎摘出術施行,病理診断は腎血管筋脂肪腫であった.腎動静脈瘻の欠如は血管造影上,腎血管筋脂肪腫の特徴的所見の一つとされているが,本邦では510例余りのうち1%強の7例に腎動静脈瘻の存在することが判明した.

小児尿管ポリープの1例

著者: 児島真一 ,   筧龍二

ページ範囲:P.1007 - P.1009

 9歳,男子.左側腹部痛を主訴に来院.静脈性尿路造影・逆行性腎盂造影などの結果,左腎盂尿管移行部の尿管ポリープによる水腎症と診断し,腎盂形成術を施行した.小児尿管ポリープはこれまでに本邦ではわれわれの症例を含めて31例が報告されているが,明らかに男子の左腎盂尿管移行部に多く,先天性が示唆される.また,悪性例および再発例は1例もない.本症例を小児尿管ポリープの典型例として報告する.

小さな工夫

自分で行う尿失禁定量テスト

著者: 北田真一郎 ,   山口孝則

ページ範囲:P.1010 - P.1010

 尿失禁定量テストは,腹圧性尿失禁の重症度の判定や治療法の選択する上での評価基準として広く用いられている.一般にこの方法は,病院の外来または入院中に行われている.私どもの病院では,患者さんに図のような説明書を渡し自分自身でも行うように指導している.
 メリットとしては次のようなものがあげられる.1)自分でいろいろな環境下で行える.テストの結果,午前と午後では午後の方が多かったという人もいるし,心配事が多いと尿失禁量が増えたと言う人もいる.

画像診断

腫瘍内大量出血を伴った腎血管筋脂肪腫

著者: 岡野達弥 ,   井坂茂夫 ,   安田耕作 ,   島崎淳

ページ範囲:P.1011 - P.1013

 患者 46歳,女性.
 主訴 左側腹部痛.
 家族歴 特記すべきことなし.
 既往歴 高血圧,糖尿病.
 現病歴 1989年8月27日午前3時頃,左側腹部の疝痛発作出現.尿管結石を疑われ近医内科へ入院.超音波,CT等で左腎に大きな腫瘤を認め,貧血も強度のため,翌日当科へ紹介され緊急入院となった.
 入院時現症 肥満著明.血圧150/80mmHg.体温38.8℃.左季肋部に超手拳大の可動性のない硬い腫瘤を触知.
 検査所見 Hb 6.2g/dlと貧血著明.LDH3051lU/lと異常高値.尿沈渣:赤血球5〜10/ F,血沈20mm/時,CRP 3+.

教室だより

東京女子医科大学泌尿器科学教室

著者: 中沢速和

ページ範囲:P.1014 - P.1014

 東京女子医科大学の歴史は旧く,吉岡弥生が女子の医学教育をめざし1900年(明治33年)に開設した東京女医学校を前身とし,現在もその建学の精神がうけつがれ,世界でも稀な女子のみの医科大学としてよく知られております.また,われわれの勤務する女子医大病院は外来患者数が日に4000人を数え,年間手術件数(外来手術を除く)は8000件を超える巨大な臨床病院であり,忙しさにおいては全国で1,2を争うのではないかと思われます.
 女子医大の特徴の一つは臓器別センター方式により運営されていることであり,泌尿器科は現在,腎臓外科(第3外科),腎臓内科(第4内科),腎臓小児科とともに腎臓病総合医療センターを形成し活動しております.

和歌山県立医科大学泌尿器科学教室

著者: 上門康成

ページ範囲:P.1015 - P.1015

 和歌山県立医科大学は,空青し,山青し,海青し…と詠まれた南国和歌山県北部の和歌山市の中心部にある.病院の周囲には和歌山城をはじめとする多くの名所があり,豊かな自然に恵まれている.
 当教室の歴史は1964年皮膚泌尿器科学教室から独立した講座として,金沢稔教授が主宰されたことに始まり,その後1975年第二代教授として大川順正教授が就任され,現在に至っている.現在の医局の構成は教授を含め8名の医療スタッフ(助教授,講師1名,助手5名)と臨床研究医3名,研修医3名の計14人よりなる.この少人数で教育,診療,研究に忙しい毎日を送っている.

交見室

経尿道的膀胱腫瘍切除のポイントは?,他

著者: 中野博

ページ範囲:P.1018 - P.1020

 今日,経尿道的手術は本邦においても諸先輩の御努力のおかげで広く普及し,泌尿器科医の重要な手技の一つとなりました.その指導や解説の中心は前立腺切除であり,前立腺肥大症であればopen sur-geryを行うことがなくなるほど進歩しました.他方,一般に膀胱腫瘍の経尿道的手術の手技については手術書は位置や浸潤のかたちによるポイントが通り一辺に説明されているだけで,学会でも余り論じられることはないようにおもいます.
 先頃重量にして52gの大きな有茎性の膀胱腫瘍を経尿道的手術で切除しました.この場合,大きさと出血のために視野が得られにくく,ついopen sur-geryかほかの方法で縮小させてからと思わせる状況でしたが,幸い優れた持続灌流と大きな視野をもつ切除鏡のおかげで無事に切除を終了しました.この切除で感じた膀胱腫瘍での経尿道的手術のポイントの一つを述べて諸先生の御意見を伺いたくおもいます.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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