文献詳細
文献概要
講座 泌尿器手術に必要な局所解剖・30
睾丸(精巣)(2)
著者: 佐藤達夫1
所属機関: 1東京医科歯科大学解剖学第2講座
ページ範囲:P.929 - P.936
文献購入ページに移動睾丸(精巣)は妙な臓器である.陰嚢に収まっているのに陰嚢の血管や神経の支配を受けていない.その意味で横隔膜に似ていると言えよう.横隔神経は第4頸神経から起こり縦隔内部の長い道程を下がってくる.もともと頸部の筋の一部が,鰓弓(さいきゅう)付近に生じた心臓と肺が下降するときに道連れにされて,胸と腹の境に移往したのが横隔膜だからである.睾丸もほぼ第2腰椎の高さの腹膜後隙に造られ,のちに下降し鼠径管をくぐり,外陰部の皮下に移往した器官である.支配動脈が長い道程を下行してくる走路(図1)に,睾丸下降という現象が刻み込まれている.
睾丸の主要動脈はこのように,腹大動脈から下がってきた睾丸動脈(精巣動脈)であるが,排出管の精管を通じて骨盤内臓器と連絡しているため,骨盤内部で精管に分布する動脈(精管動脈)がそのまま精管に乗って遡行してくれば睾丸に到達できる(図1).
掲載誌情報