icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科45巻6号

1991年05月発行

雑誌目次

増刊号特集 外来泌尿器科マニュアル—私はこうしている

巻頭言—泌尿器科外来診療の基本姿勢

著者: 町田豊平

ページ範囲:P.4 - P.5

 病院を訪れる泌尿器科患者の殆んどはまず外来診療から医療の世界への扉をたたく.その外来で生れた泌尿器科医と患者とのコミュニケーションは,病気の帰結まで続くことになる.病院に入院して行われる診断や治療は,しばしば先端技術での医療行為が目立つためそれが泌尿器科の桧舞台のようにみえる.しかし実際は外来治療で費される仕事が最も多く,華々しくはないが個々の技量の質が最も問われるのは外来診療である.
 病める患者の最初に医師と出会う場としての外来,巧みな問診からさらに最近の医療技術を駆使して診断してゆく場としての外来,複雑な処置や小手術を最小限の負担で治療する場としての外来,退院後のケアやリハビリによる社会的復帰を援助する場としての外来そして救急患者の適切な判断と治療で命を救う場としての外来,まことに多くの顔をもって振舞っているのが,外来という場である.

外来使用器具の滅菌法,消毒法の実際

著者: 小林寛伊

ページ範囲:P.7 - P.11

 外来で使用される器具の滅菌法,消毒法として言及すべき方法は,次の3つである.
 1)組織内または血管内に侵入する器具,および内腔を血液が流れる器具—滅菌の対象となる.
 2)粘膜とは接触するが,組織内または血管内には侵入しない器具—高水準消毒の対象となる.
 3)使用ずみ再使用器具の汚染除去.

外来麻酔法の実際

著者: 西村泰司 ,   小川龍

ページ範囲:P.13 - P.16

 泌尿器科外来で実際に使用される頻度が高い麻酔法を中心に述べるが,最近我々は経尿道的切除術やスパークギャップ方式による体外衝撃波砕石術を日帰りで行う際,マスクによる全身麻酔及び低濃度の麻酔薬を用いた硬膜外麻酔が極めて有用である知見を得たので,それについても付記する.

主訴からみた診断指針

疼痛

著者: 上田豊史

ページ範囲:P.17 - P.19

 疼痛という症状は,一般臨床における外来診療上,重要な主訴のひとつである.
 泌尿器科においては,他の泌尿器科的随伴症状がなく,疼痛のみを主訴として,外来へ初診する患者は,それほど多くはないが,他科より,多くの疼痛の原因精査を依頼されることは,日常の診療においてしばしば経験する.疼痛を主訴として,受診してきた患者を目の前にして,泌尿器科疾患の存在の可能性を的確に判断することは,外来診療上,非常に重要である.
 泌尿性器由来の疼痛は,一般的に,たとえ原疾患が異なっていても,ある程度臓器に特有で共通した点が存在する(表1).したがって,その疼痛の部位や性状を詳細に問診し,診察することによって,他の内臓疾患との判別だけでなく,泌尿器系臓器の障害部位,疾患をある程度推察することが可能である.そこで,我々泌尿器科医が,日常外来において,患者が訴える疼痛を部位別に分類し,疼痛に対する問診の中から,どのような疾患を鑑別すべきかについて記載する.

腫瘤(腹部,鼠径部,陰嚢)

著者: 坂田安之輔

ページ範囲:P.21 - P.23

側腹部の腫瘤の診かた
 1.触診
 泌尿器科を受診する腹部腫瘤は主として側腹部に触れるものである.まずは触診から始まり,嚢胞(腎嚢胞,嚢胞腎),腫瘍,水腎,炎症(腎孟腎炎,腎膿瘍,膿腎症)などを区別する必要がある.触診上のコツに関しては本特集で後述されるので参照されたい.

排尿障害

著者: 荒木徹

ページ範囲:P.25 - P.31

 下部尿路は尿の貯蔵器たる膀胱と排出路たる尿道で構成され,排尿,つまり蓄尿と排出というふたつの機能を行っている.この機能は脳,脊髄から複雑な神経支配を受ける膀胱と尿道括約筋の協調運動で維持されている.従って排尿障害は膀胱,尿道,これらの周囲組織,支配神経および心因性という5つの要因に分けてその原因を捉えるのが分かり易い.

血尿

著者: 村上信乃

ページ範囲:P.33 - P.36

 血尿とは尿中に赤血球が混入することを言うが,通常,肉眼で識別可能な肉眼的血尿と,鏡検により確認される顕微鏡的血尿に分類されている.後者は無症状なことが多く,人間ドッグなどの健康診断で偶然発見されて受診する例が多い.いずれの血尿にしろその存在は,糸球体から外尿道口までの尿路系へ,血液流入を生ずる何らかの病態があることを意味しており,泌尿器疾患の最も重要な症状のひとつである.

外来検査法の実際

視診・触診・直腸診のポイント

著者: 井坂茂夫

ページ範囲:P.37 - P.39

診療のポイント
診察の手順
 診療機器の発達などにより,今日我々臨床医は数多くの検査手段を用いることができるようになったが,一人一人の患者さんに最も適した検査の手順を計画することは腕の見せ所でもある.例えば老人男性の排尿障害の訴えに対しては,以下の手順で診察することを標準としている.
問診→前立腺癌関係腫瘍マーカー採血→理学的所見(視診,触診,直腸診)→経腹的エコー(腎,膀胱,前立腺)→ウロフロー→残尿測定→尿道造影

尿・分泌物検査のポイント

著者: 今井強一 ,   林雅道

ページ範囲:P.40 - P.42

 尿・分泌物検査は泌尿器科領域の診断にとって欠くことのできない検査であるばかりでなく,患者にとっても負担の少ない検査法であるので臨床医はその重要性を熟知しなければならない.また尿サンプルを使用してホルモン・腫瘍マーカーの測定も行われているが,ここでは一般臨床医自身が行える検査項目を中心に述べることとする.

腎機能検査のポイント

著者: 多胡紀一郎

ページ範囲:P.43 - P.46

 腎臓は,体液量や体液イオンの制御という生体における恒常性維持の中心的役割を担っている(表1).また,腎臓の働きは多岐にわたるためひとつの検査法で全てをカバーするわけにはいかず,いくつかの検査法を組み合わせたり,形態学的検査法を組み合わせて総合的に評価しなければならない(図).

結石に関する代謝系の検査法

著者: 小川由英

ページ範囲:P.47 - P.49

 結石患者の代謝系に関する検査は,緊急を要しない場合,実施すべきであるが,すべてに,詳細な検査を必要とはしない.成人の初回単発は,簡単なスクリーニング程度で十分.スクリーニングで異常が見つかったり,再発あるいは進行性の結石である場合,さらに精査が必要である.

内分泌学的検査のポイント

著者: 福谷恵子

ページ範囲:P.51 - P.54

テストステロンとゴナトロピン
 睾丸から分泌されるテストステロンと下垂体からの性腺刺激ホルモン,LH,FSHはRIAで測定される.採血後,血清に分離して凍結保存する.泌尿器科外来患者で表1に示すような症状が見られる場合にこれらのホルモンを測定する.

内視鏡検査のテクニック

著者: 実川正道

ページ範囲:P.55 - P.58

 外来診療における泌尿器科的内視鏡としては硬性鏡による膀胱鏡そして尿道鏡検査が最も重要であるが,最近は軟性鏡の開発もめざましくその臨床応用も普及しつつある(図1).本稿ではまず泌尿器科的内視鏡検査に必要な下部尿路の解剖について述べ,ついで下部尿路検査のための硬性内視鏡の種類,特徴,手技そして合併症について言及する.

ウロダイナミック検査のポイント

著者: 西沢理

ページ範囲:P.59 - P.61

ウロダイナミック検査の目的
 ウロダイナミック検査法の目的は下部尿路機能の把握である.下部尿路機能はInternational Continence Society(1988)によれば表のように分類されている.蓄尿と排出期とに大別して区分し,それぞれ膀胱と尿道の機能を分類する.蓄尿期には膀胱機能を正常と過活動性とに,尿道機能を正常と不全とに分ける.過活動性膀胱は神経障害が見いだされる過反射性膀胱と神経障害が見いだされない不安定膀胱とに細分される.また,蓄尿期には知覚についても,正常,過敏,減弱および消失の4段階に区分する.排出期には膀胱機能を正常,低活動性および無収縮性とに,尿道機能を正常と閉塞とに分ける.閉塞尿道は過活動性尿道と器質的尿道とに細分される.問題点としては,尿道が解剖機能的に平滑筋を主体とする内尿道括約筋(膀胱頸部側)と横紋筋を主体とする外尿道括約筋(膜様部尿道側)とに区分されているために,両者の総和として現れている尿道機能を必ずしも,単一的に分類できないことである.

腎孟造影,尿道造影のポイント

著者: 野田進士

ページ範囲:P.63 - P.66

腎孟造影のポイント
 本法には造影剤の投与経路によって(1)排泄性,(2)逆行性,(3)経皮的(順行性)の3法がある.

超音波検査による泌尿器疾患のスクリーニング

著者: 澤村良勝

ページ範囲:P.68 - P.72

 泌尿器科外来における超音波検査による腎関連疾患,尿路疾患,前立腺疾患,陰嚢内疾患のスクリーニング検査法として,著者らは表1,2に示す診断手順に従って体表よりの走査を行っている.

外来処置の実際

導尿,ブジー,膀胱洗浄(コアグラタンポナーデ)など

著者: 平尾佳彦

ページ範囲:P.73 - P.76

 尿道カテーテル法(urethral catheterization)は泌尿器科医にとって経尿道的操作(urethral instrumentation)の基本的手技で本法の習熟は必須である.本法の施行における鉄則は,1)無菌的操作の励行と,2)力まかせの粗雑な操作をしないことで,経尿道的操作の習熱には尿道膀胱鏡で外尿道口から膀胱まで全尿道を逆行性に観察する習慣をつけ,下部尿路の解剖や種々の病変のイメージを常に念頭におくことが肝要である.

カテーテル管理(尿道カテーテル留置,膀胱瘻,腎瘻)

著者: 塚本泰司 ,   熊本悦明 ,   広瀬崇興

ページ範囲:P.77 - P.79

 Endourologyの進歩に伴い一時的あるいは永久的に尿路にカテーテルを留置する機会が以前と比べ増加している.カテーテルの留置およびその管理の"こつ"はカテーテルの留置をできる限り避けることであり,また留置したとしても可能であれば早期に抜去することである.安易な留置はその後の管理を困難にする原因のひとつになるばかりでなく,患者のquality of lifeを障害することに繋がりかねない.特に,入院中の尿路カテーテル留置は,これがすべての院内感染の原因の40%を占めること,グラム陰性菌による敗血症の最も多い原因であることなどから,その適応,管理に関しては細心の注意が必要である.
 本項では,外来におけるカテーテル管理に関する一般的事項と各部位でのカテーテル管理の留意点に関して述べる.

前立腺バイオプシー

著者: 坂下茂夫

ページ範囲:P.80 - P.82

 前立腺の硬結を組織学的に調べるための前立腺バイオプシーは,その到達経路から経尿道的,経直腸的,経尿道的に分けられる.また,使用する生検針により組織生検(コアバイオプシー)と吸引細胞診が行われる.また,最近はエコーガイドで針生検を行うこともできる.早期前立腺癌に対して前立腺全摘除術が行われることを考慮して,ここでは組織構築の診断が可能で,外来検査として行っても合併症の少ない経会陰的前立腺組織生検について述べる.

穿刺膀胱瘻,腎瘻

著者: 大石賢二

ページ範囲:P.83 - P.86

穿刺による膀胱瘻造設術
 尿閉で,経尿道的に導尿が困難である場合に経皮的に膀胱を穿刺し,カテーテルを留置して膀胱瘻とする.
 体位は仰臥位とする.麻酔は局所麻酔で充分である.ソセゴン®15mg筋注,アタラックスP®50mg筋注を併用し,全身的に鎮痛,鎮静する方が望ましい.尿排出後低血圧を来すことがあるので静脈ルートを確保する.

外来小手術のテクニックとコツ

精管結紮・包茎・膀胱尿道異物

著者: 藤田公生

ページ範囲:P.87 - P.97

 外来で行う頻度の高い手術として,精管結紮と包茎の手術をとりあげ,なるべく種々な手術法を紹介するとともに,そのピットホールないしポイントと思われる点を図解しながら説明する.また,症例は多くはないが術者の手際のよさが問われる膀胱尿道異物の摘出法の要領を述べる.

診断から治療まで

包茎,亀頭包皮炎,嵌頓包茎

著者: 工藤潔

ページ範囲:P.98 - P.100

包茎診療のポイント
 包茎とは包皮の先端:包皮輪(内外板の移行部)が亀頭に比して小さいため,包皮輪を亀頭上の後方に反転できない状態である.

副睾丸炎,睾丸炎,精巣捻転症

著者: 赤阪雄一郎

ページ範囲:P.101 - P.103

 ここに取り上げる3つの疾患はいすれも陰嚢内の有痛性腫瘤形成性疾患で,症状も比較的よく似ており,非定型的な病状を呈する場合も少なくない.そのうえ救急的処置を必要とする例もあるので,症状の現われ方,発症から受診まての時間,随件症状や既応歴,家族歴を含む問診や検尿を含む注意深い診療か必要である.

陰嚢水瘤,精索水瘤,精液瘤,精索静脈瘤

著者: 石井泰憲

ページ範囲:P.104 - P.106

陰嚢水瘤・精索水瘤
 陰嚢水瘤は睾丸固有鞘膜腔内に漿液が貯留したものである(図1).成人には特発性が多いが,小児では腹膜鞘突起が完全に閉じていないための交通性の水瘤が多い.鞘状突起の腹膜側と睾丸側の両方が閉じて中間部分に貯留液が残されたものを精索水瘤という.

外傷

著者: 大山朝弘

ページ範囲:P.107 - P.109

外傷患者をまえに,まず
 ・全身状態の把握が最も大切
 ・受傷機転,病歴をこまかくきく
 ・診察に際しては全身をチェックする
 ・合併外傷を見落とさないこと
 ・時間の経過とともに変化する
 ・診察の順番をくりあげ,はやめに診察
 ・経過観察する
 ・患者及び付き添いに時間の経過とともに変化(増悪)するときもあることを説明

女性の尿道カルンクラ,尿道脱

著者: 宮川美栄子

ページ範囲:P.110 - P.114

どんな症状で泌尿器科を受診するか?
 1.尿道出血,紙に血がつく,下着に点状の出血あとがついている(子供は親が気づく),
 2.頻尿,尿意切迫,排尿時痛,
 3.排尿障害,尿線の変化
 4.尿道部に何かできている,外陰部腫瘤,
 5.性交時の疼痛,出血,
 6.性器出血,
 7.無症状(内診,内視鏡検査等に際して見つかるもの)

急性・慢性前立腺炎,前立腺症

著者: 坂義人

ページ範囲:P.115 - P.117

 前立腺炎の多くは細菌性の前立腺炎であるため抗菌薬による治療で比較的良い効果が得られる.しかし非細菌性の前立腺炎や多彩で不定の愁訴を訴える疾患もみられ,このような疾患に対しては抗菌薬のみでは十分な効果が得られず,治療に難渋する場合も少なくない.

尿路感染症

著者: 荒川創一

ページ範囲:P.118 - P.122

 尿路感染症を的確に診断し,その背景にある状況(基礎疾患その他)を把握し,感染病態に応じた処置を速やかに講ずるための基本的事項について述べる.特に,化学療法剤の正しい使用という点に関し具体的指針について触れてみたい.

インターセックス(性分化異常)

著者: 岩動孝一郎

ページ範囲:P.124 - P.125

主な訴えはなにか
 1.出生時の性器の形態異常が主である.また思春期の異常が診断の契機となることがある.また,近年では染色体のスクリーニンク検査で異常が発見されることがある.
 2.性器異常は男児では尿道下裂,矮小陰茎(micropenis)あるいは停留精巣など,女児では陰核肥大,陰唇癒合などが主たる所見である.

不妊症

著者: 並木幹夫 ,   奥山明彦

ページ範囲:P.126 - P.128

 不妊夫婦において男性側因子が関与している割合が40〜70%であることが明らかになるに連れて,男性不妊に対する認識が高まりつつある.特に近年の体外受精の臨床応用を機会に,高度の乏精子症例や再建困難の精子輸送路通過障害の症例なども妊娠が不可能ではなくなり,男性不妊の病態解明,診断および治療の進歩が期待されている.

インポテンス

著者: 滝本至得

ページ範囲:P.129 - P.131

 われわれ一般泌尿器科医にとって,インポテンス患者の取り扱いは非常に厄介である.機能性,器質性の分類が大切であるが,両者のいずれであっても精神的要素がかなり強く,慎重な対処が求められる病態である.そして,ここに取り上げるインポテンスとは,勃起障害であり,他の要因は含めないことを先に述べておく.

急性腎不全—鑑別診断と治療法

著者: 田辺一成 ,   高橋公太

ページ範囲:P.133 - P.136

 本稿では泌尿器科医の遭遇することの多い急性腎不全について述べることとする.

腎不全—透析療法の実際

著者: 田島惇 ,   石川晃 ,   水上勝義 ,   丸山行孝

ページ範囲:P.137 - P.140

 血液浄化法の種類を表1に示す.この内,現在最も普及している血液透析(hemodialysis,HD)について概説する.

下部尿路通過障害—診断から治療まで

著者: 上田公介

ページ範囲:P.141 - P.144

下部尿路通過障害の診断
 1.Uroflowmeter
 排尿障害があると訴えて外来を患者が受診する場合患者の表現方法はさまざまであり,また程度も軽いhesitancyのようなものから尿閉に近いような重いものまで実に千差万別である.そこでまずuroflowmeterを行い,その排尿障害の程度と種類を知ることが重要である.すなわちこの排尿パターンから排尿障害の原因が器質的なものであるのか機能的なものであるかがおおよそ知ることができる(図1).
 なおここでは下部尿路通過障害が主題であるので,前者のみについて述べる.

尿路結石—治療法の選択

著者: 真下節夫

ページ範囲:P.145 - P.148

 尿路結石の治療法の選択にはまず大きく分けて,緊急に治療の必要な疝痛発作と急性腎孟腎炎,敗血症をはじめとする重篤な感染症に対するものと,尿路結石自体に対して,内科的治療を行うか,Endourologyを主体とする外科的治療を行うかの選択とがある.
 最近のESWLをはじめとするPNL,TULなどのEndourologyの進歩により,尿路結石の外科的治療法は大きく変化し,開腹手術が適応となる症例は非常に少なくなって来ている.またその治療法の選択にあたっては,その施設にどんな装置があるかが大きな問題になり,その技術の熟達度によっても治療可能な範囲が違ってくるなど,現実的にどの治療法が一番良いかを論ずるのは非常に難しい.

最近のSTD

著者: 斉藤功

ページ範囲:P.149 - P.152

 泌尿器科領域の性感染症(STD)には,淋菌,クラミジア,ウイルス,各感染があり,最も頻度の高い疾患は,淋菌,クラミジアを原因とする尿道炎である.近年,40歳以下の急性精巣上体炎はそのほとんどがSTD性であり,クラミジアを原因とするものが50%以上を占めている.また,男女性器を中心に生じるウイルス感染症の性器ヘルペス,尖圭コンジローマはここ数年増加の傾向があり,淋菌感染症に対しそれぞれ,およそ16%,22%となっている.非淋菌性尿道炎(NGU)は淋菌性尿道炎(GU)のおよそ2〜3倍となっている.

尿失禁の治療とケア—薬物療法,手術の適応

著者: 福井準之助

ページ範囲:P.153 - P.156

尿失禁は診断名ではなく症状であり,尿失禁を生じる原疾患は多数ある(表).したがって,尿失禁の治療は原疾患に応じて選択されるべきである.本章では臨床上よく遭遇する腹圧性尿失禁,切迫性尿失禁,それに高齢者の尿失禁の治療について述べる

尿失禁の治療とケア—セルフカテ・介護の指導

著者: 後藤百万 ,   古川羊子 ,   近藤厚生

ページ範囲:P.157 - P.159

 尿失禁の治療は,失禁の原因により薬物治療,手術治療,神経ブロック,理学的治療,行動訓練など多岐にわたり,症例によって各々単独,あるいは併用して行われる.清潔間欠導尿(CIC)は,特殊な原因による尿失禁には極めて有効な治療法となるので,適応例にはセルフカテを含め積極的に導入すべきである.他方,尿失禁患者で,ADLの低い症例や高齢者では,医学的治療のみならず,家族など介護者の指導が治療面でも重要な要因となる.以下,尿失禁治療における,セルフカテ(自己導尿)および介護の指導について述べる.

尿路ストーマケア

著者: 大村裕子

ページ範囲:P.160 - P.162

尿路ストーマ造設に伴う問題
 尿路ストーマとは尿の排泄口が従来とは異なった位置,主に腹部において開口された場合にその排泄口を指す言葉である.これは一般に手術的に腹壁に造設されるものである.尿路の2大ストーマは回腸導管と尿管皮膚瘻であるが,これらのストーマには尿排泄をコントロールする機能;コンティネンス(禁制)がない.最近はストーマにコンティネンスの機能を持たせる手術(コックパウチ)も行われるようにもなったが,これらは手技が煩雑で手術適応に制約があるため,実際にはストーマのほとんどが括約筋機能のないインコンティネンス(失禁)ストーマとして造設される.従って,いかにこのインコンティネンスをコントロールするか,あるいはこれによって生じてくるハンディキャップをカバーするかがストーマケアのもっとも重要な課題となる.
 また,ストーマ造設患者はインコンティネンスに加えて排尿口が腹部におかれることによるボデイイメージの変化がもたらされ,そのための精神的な援助もケアの要といえる.これらの点からストーマ患者には,排泄管理はいうにおよばず身体的・心理的・社会的観点からのトータルな社会復帰援助(ストーマリハビリテーション)が要求される.

泌尿器科的主訴をもった心身症の診かた・とらえかた

著者: 吉松和哉

ページ範囲:P.163 - P.165

 泌尿器科的主訴をもった心身症について考える場合,まずすぐ思い浮ぶのは,インポテンツである.ここでは勃起不全,早漏を含めた,いわゆる広義のそれについて考えたい.また,排尿困難も時折みられる症状なので,これも取り上げたい.ところで,ここでは心身症という表題ではあるが,もう少し広く精神科的な立場を加味しながら,以上について考察を進めたいと思う.

膀胱尿道鏡所見

著者: 三木誠

ページ範囲:P.166 - P.168

 膀胱鏡を盲目的に膀胱まで挿入し,膀胱内だけを観察する方法は,女性では許されても男性では許されない.男性では尿道と膀胱の内視鏡検査は,一連の検査として行うべきである.特に前立腺疾患などが疑われる場合は,17〜22Fのシースに0〜30度の視野方向(使用するレゼクトスコープと同じものがよい)のスコープをいれて,尿道内腔を充分観察しつつ挿入すべきである.そして膀胱に入ったらスコープを側視鏡に換えて膀胱内をゆっくり観察する.
 まず頂部,ついで前壁,左側壁,右側壁をそれぞれ奥から手前膀胱頸部まで見て,さらに後壁を見て,最後に尿管口周辺を含め三角部を丁寧に観察する.

(巻末付録)

泌尿器科医に必要な正常値(付)略語一覧

ページ範囲:P.169 - P.173

Ⅰ.尿検査
血球数および細菌数の記載方法

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻13号(2022年12月発行)

特集 これだけは知っておきたい! 泌尿器科診療でも活きる腎臓内科の必須知識

76巻12号(2022年11月発行)

特集 ブレずに安心! 尿もれのミカタ

76巻11号(2022年10月発行)

特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう!

76巻10号(2022年9月発行)

特集 男性不妊診療のニューフロンティア―保険適用で変わる近未来像

76巻9号(2022年8月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心

76巻8号(2022年7月発行)

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド

76巻7号(2022年6月発行)

特集 トラブルゼロを目指した泌尿器縫合術―今さら聞けない! 開放手術のテクニック

76巻6号(2022年5月発行)

特集 ここまで来た! 腎盂・尿管癌診療―エキスパートが語る臨床の最前線

76巻5号(2022年4月発行)

特集 実践! エビデンスに基づいた「神経因性膀胱」の治療法

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号特集 専門性と多様性を両立させる! 泌尿器科外来ベストNAVI

76巻3号(2022年3月発行)

特集 Female Urologyの蘊奥―積み重ねられた知恵と技術の活かし方

76巻2号(2022年2月発行)

特集 尿路性器感染症の治療薬はこう使う!―避けては通れないAMRアクションプラン

76巻1号(2022年1月発行)

特集 尿道狭窄に対する尿道形成術の極意―〈特別付録Web動画〉

75巻13号(2021年12月発行)

特集 困った時に使える! 泌尿器科診療に寄り添う漢方

75巻12号(2021年11月発行)

特集 THEロボット支援手術―ロボット支援腎部分切除術(RAPN)/ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)/新たな術式の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻11号(2021年10月発行)

特集 THEロボット支援手術―現状と展望/ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻10号(2021年9月発行)

特集 今こそ知りたい! ロボット時代の腹腔鏡手術トレーニング―腹腔鏡技術認定を目指す泌尿器科医のために〈特別付録Web動画〉

75巻9号(2021年8月発行)

特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!

75巻8号(2021年7月発行)

特集 油断大敵! 透析医療―泌尿器科医が知っておくべき危機管理からトラブル対処法まで

75巻7号(2021年6月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)薬物治療のニューノーマル―“とりあえず”ではなくベストな処方を目指して

75巻6号(2021年5月発行)

特集 躍動するオフィスウロロジー―その多様性に迫る!

75巻5号(2021年4月発行)

特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

75巻3号(2021年3月発行)

特集 斜に構えて尿路結石を切る!―必ず遭遇するイレギュラーケースにどう対処するか?

75巻2号(2021年2月発行)

特集 複合免疫療法とは何か? 腎細胞癌の最新治療から学ぶ

75巻1号(2021年1月発行)

特集 朝まで待てない! 夜間頻尿完全マスター

74巻13号(2020年12月発行)

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

74巻12号(2020年11月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈下部尿路機能障害/小児・女性・アンドロロジー/結石・感染症/腎不全編〉

74巻11号(2020年10月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉

74巻10号(2020年9月発行)

特集 令和最新版! 泌尿器がん薬物療法―手元に置きたい心強い一冊

74巻9号(2020年8月発行)

特集 泌尿器腫瘍の機能温存手術―知っておくべき適応と限界

74巻8号(2020年7月発行)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

74巻7号(2020年6月発行)

特集 小児泌尿器科オープンサージャリー―見て学ぶプロフェッショナルの技〈特別付録Web動画〉

74巻6号(2020年5月発行)

特集 高齢患者の泌尿器疾患を診る―転ばぬ先の薬と手術

74巻5号(2020年4月発行)

特集 ここが変わった! 膀胱癌診療―新ガイドラインを読み解く

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識

74巻3号(2020年3月発行)

特集 泌尿器科手術に潜むトラブル―エキスパートはこう切り抜ける!

74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら