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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科46巻9号

1992年09月発行

雑誌目次

綜説

医療技術としてのインフォームドコンセント

著者: 村上國男

ページ範囲:P.729 - P.735

 インフォームドコンセント(IC)は十分に説明された上での同意のことであるが,元来は医療契約上の説明義務として考えられ,法律的概念であった.やがてICには,患者が自己の治療について自己決定することがQOLを高めることになり,倫理的にも意義のあることだと考えられるようになった.ICは特に癌患者に対する病名告知の面で重視されるようになった.告知を信念・主義のために行う人もいるが,医療従事者は患者のQOL向上のための治療効果をあげるために行う1種の医療技術であると考えるのが妥当である.そのためにはICないし告知が科学的に実施されることが必要であり,またそのことは可能である.

手術手技 新しい手術・3

胃利用膀胱形成術

著者: 小川秋實 ,   村石修

ページ範囲:P.737 - P.742

 下腹部への放射線大量照射後,短腸症候群などで小腸・大腸を用いた尿路形成ができないときは胃壁弁を利用して尿路形成ができる.胃壁弁を用いた尿路形成の利点は,粘液排出が少ないこと,尿吸収が少ないこと,酸性尿のため膀胱感染が少ないこと,酸を排泄するためアシドーシスがあっても実施できることである.一方,強い酸性尿のため排尿痛を訴えることが多く,それに対して胃酸分泌抑制薬(H2遮断薬)の投与が必要になる.術後数年までの成績は満足できるが,長期追跡症例がないので晩期合併症については不明である.

講座 臨床医のための免疫学・3

抗原認識分子群とシグナル伝達

著者: 葉山隆 ,   澤田滋正

ページ範囲:P.743 - P.748

 B細胞とT細胞の抗原レセプターは,B細胞が抗原そのものと結合するのに対し,T細胞は抗原提示細胞上にある主要組織適合遺伝子複合体と抗原が一体となったものと結合する大きな違いがあるが,抗原認識分子群の構成は非常に類似している.両レセプターとも細胞質内部位を欠いているので,それを補うために細胞膜分子と結合し,細胞膜貫通蛋白そして細胞内刺激伝導系を介して刺激が細胞内,核内に伝わる.本小論文はこれらについて解説する.

原著

陰嚢水腫に対するフィブリン接着剤の応用

著者: 宮本浩 ,   森山正敏 ,   福島修司

ページ範囲:P.749 - P.751

 フィブリン接着剤は各科領域で検討がなされており,その適応も広がりつつある.われわれは陰嚢水腫に対し,鞘膜癒着を目的としてフィブリン接着剤を使用した.今回の検討では10例中4例(40%)に有効性が認められたが,外科的根治術に匹敵するような効果は得られなかった.ただ,簡便でしかも侵襲が非常に少ない方法であり,今後さらに検討を進めてゆきたいと考えている.

症例

右精巣静脈を経て下大静脈腫瘍血栓を形成した腎細胞癌

著者: 金丸洋史 ,   白波瀬敏明 ,   諸井誠司

ページ範囲:P.755 - P.757

 73歳,男性.集団検診にて肺転移巣を指摘され受診.CTで右腎腫瘍を認め,血管撮影にて下大静脈腫瘍血栓を認めた.血栓摘除を含めた根治的腎摘除術を施行したところ,腫瘍血栓は右精巣静脈を経て下大静脈におよんでおり,右腎静脈は正常であった.病理組織結果は,右精巣静脈内腫瘍血栓をともなった腎細胞癌であった.腎細胞癌において,右精巣静脈を介した下大静脈血栓の例は,これまで文献上報告がなく,その発生機序について考察を行った.

腎細胞癌に合併したマクロアミラーゼ血症

著者: 井上均 ,   片岡晃 ,   朴勺 ,   友吉唯夫

ページ範囲:P.758 - P.760

 66歳,男性.主訴は尿閉と肉眼的血尿.腹部超音波検査時,右腎中央部に直径4cm大の腫瘤を認め,右腎細胞癌の術前診断にて,根治的右腎摘除術を施行した.術前に高アミラーゼ血症を呈していたが,術後その値は低下した.高アミラーゼ血症は,酵素免疫固定法の結果から,IgG・IgA-κλ型結合マクロアミラーゼが原因と考えられた.腎細胞癌に合併したマクロアミラーゼ症例はめずらしく,欧米の文献でI例報告されているのみである.

癌胎児性抗原産生副腎癌

著者: 橋本英昭 ,   三枝道尚 ,   荒巻謙二 ,   城仙泰一郎 ,   松浦博夫

ページ範囲:P.761 - P.763

 58歳,男性.主訴は心窩部痛と食欲不振.諸検査の結果,左副腎腫瘍と診断した.ホルモン学的には非活性であったが,癌胎児性抗原の異常高値を認めたため,転移性副腎腫瘍も考え精査するも原発巣は発見できなかった.左副腎摘出術を施行,病理組織学的診断は副腎皮質癌であった.術後,癌胎児性抗原が低下したこと,腫瘍組織が抗癌胎児性抗体で強く染色されたことより癌胎児性抗原産生腫瘍と考えられた.

多発性尿管憩室の2例

著者: 村田一素 ,   森下文夫 ,   森幸夫

ページ範囲:P.764 - P.766

 症例は2女性,共に尿管結石様症状(側腹部痛,腰背部痛)にて発症し,逆行性腎盂造影およびDIPにて多発性尿管憩室を認めた.本症患ではDIPにて診断できるのは27.8%のみであることを念頭に置き,同症状においては逆行性腎盂造影を施行する必要があると考えられた.本症は極めてまれな疾患で本邦第17および18例目と思われ,本邦の報告を集計し,文献的考察を加え報告した.

経皮的尿管閉塞術の1例

著者: 小池博之 ,   金子卓次 ,   萬谷嘉明 ,   藤岡知昭 ,   大堀勉 ,   久保隆

ページ範囲:P.767 - P.769

 38歳,女性.尿失禁を主訴として婦人科より紹介.卵巣腫瘍の手術と子宮頸癌に対する放射線療法の既往歴があり,直腸腟瘻のため人工肛門が造設されていた.右腎の無形成があり,左の単腎に対して閉塞用シリコンを使用した経皮的尿管閉塞術を施行した.この直後より尿失禁は完全に消失し,術後約10ヵ月の現在も経過は良好である.

尿管皮膚瘻に発生した扁平上皮癌

著者: 坂上善成 ,   伊達智徳 ,   山口脩 ,   一條貞敏 ,   白岩康夫

ページ範囲:P.770 - P.772

 72歳,男性.膀胱全摘術後20年目に右尿管皮膚瘻部に腫瘤を生じた.生検にて扁平上皮癌を認めたが摘出不可能であった.ペプロマイシンによる化学療法を行うも死亡.尿管皮膚瘻部の皮膚癌は本邦第1例目と思われる.

全身紅皮症を合併した前立腺癌

著者: 齋藤源顕 ,   瀬島建裕 ,   渡辺健志 ,   中村勇夫 ,   鳴本司 ,   宮川征男

ページ範囲:P.773 - P.775

 78歳,男性.紅皮症の診断を受け,悪性腫瘍の検索をしたところ前立腺癌が見つかった.前立腺癌の治療(内分泌化学療法)とともに前立腺酸性フォスファターゼ,前立腺特異抗原(RIA)の低下が起こり,これと平行して皮膚症状の軽減が認められた.本例は,本邦で2例目の前立腺癌が原因で生じた紅皮症と思われた.

前立腺乳頭状腺癌の1例

著者: 山本真也 ,   伊藤貴章 ,   辻野進 ,   並木一典 ,   松本哲夫 ,   三木誠

ページ範囲:P.776 - P.778

 77歳,男性.肉眼的血尿を主訴に来院.膀胱鏡検査にて,前立腺部尿道に尿道粘膜を貫いて出た乳頭状腫瘤を認めたため,尿道腫瘍と診断し,経尿道的切除術を施行した.病理検査で,乳頭状増殖を認める高分化型腺癌の組織像を示し,前立腺特異抗原の免疫染色にて陽性像を認めたため前立腺乳頭状腺癌と診断した.自験例は本邦15例目と考えられ,Diethylstilbestroi diphosphateの内服にて経過観察中であるが,術後9ヵ月の現在,再発,転移を認めていない.

先天性前部尿道憩室の1例

著者: 吉川裕康 ,   池内隆夫 ,   佐々木春明 ,   井口宏 ,   甲斐祥生

ページ範囲:P.783 - P.784

 4歳,男子.難治性尿路感染症の精査目的で入院した.尿道造影にて前部尿道憩室と診断.観血的な憩室切除術を施行し,良好な結果を得た.組織学的所見と現病歴より先天性の発症と考えられた.なお,自験例は本邦報告例の63例目に相当すると思われる.

精巣上体平滑筋腫の1例

著者: 矢野彰一 ,   和田瑞隆 ,   西田勉 ,   緒方二郎

ページ範囲:P.785 - P.786

 51歳,男性.主訴は左陰嚢内腫瘤.左精巣上体尾部に連続した直径約1.5cmの無痛性で表面平滑弾性硬の腫瘤を触知した.腫瘤は左精巣上体尾部より発生し,組織学的には精巣上体導管の筋層より発生した平滑筋腫であった.

尿閉をきたした無菌性髄膜炎

著者: 繁田正信 ,   林睦雄 ,   小田佳史 ,   野見山茂人 ,   小武家暁子

ページ範囲:P.787 - P.789

 19歳,男性.尿閉,発熱,両下肢脱力感を主訴に来院した.髄液検査にて無菌性髄膜炎,およびその他の神経,理学的所見より多発根神経炎と診断した.第6病日よりプレドニゾロンの投与を開始し,以後漸減した.膀胱機能は無緊張型を呈しており,バルーンカテーテルを留置していたが第31病日には正常に戻り自尿可能となった.

小さな工夫

尿管スプリントカテーテルの固定法

著者: 藤浪潔 ,   里見佳昭

ページ範囲:P.790 - P.790

 術中に留置された尿管スプリントカテーテルは,何らかの固定がなされないと術中・術後に自然抜去する危険性が高い.膀胱壁や腸管壁への固定は自然抜去しやすく,私どもは何度も苦汁をなめた経験がある.ここ10年は以下に紹介する固定法を行い,目的の期間十分留置が保たれた.
 この方法は,まず尿管にスプリントカテーテルを挿入後4-0プレーン・カットグットを用いて図のように尿管壁の外側より針を刺し,次に尿管スプリントカテーテルを確実に貫き,対側尿管壁より外側に出し,尿管壁から十分ゆとりを持って3重結紮する.この結紮も数日でほどけるくらい弱いことが望ましい.スプリントカテーテルの抜去は1週間くらいから可能になる.稀に抵抗が強く2週間半位要したことがあったが,大部分の例では1週間以上経た目的の期間に少し強く引けば抜去出来た.

陰嚢内容物に対する超音波走査法の一工夫

著者: 頴川晋 ,   石橋晃

ページ範囲:P.791 - P.791

 超音波法により陰嚢内容を描出する場合,被験者を仰臥位とし陰嚢皮膚と探触子間に水嚢や樹脂マットを介在させて走査する方法が一般的に用いられている.この方法では陰嚢内容の概要をとらえることが比較的容易である反面,ごく小さな硬結などの場合超音波ビームを的確にフォーカスしにくく,触知可能な病変であっても描出できず,とまどう症例に時折遭遇する.このため,筆者らは陰嚢内容物の超音波検査時には被験者を立位として陰嚢を下垂させ,健側の皮膚と睾丸を介して対側の病変部を触診しながら描出する方法をルーチンに用いている(図1,2).この方法では超音波画像上での手指の動きにより病変部位を触知しながら同定,確認することができるので病巣の描出が極めて容易である.ことに小さな実質性病変と良性の嚢胞性変化などとの鑑別,また精索静脈瘤の存在や程度の診断などにおいて本法は有用である.
 泌尿器科医として超音波法の習熟は重要であるが,触診法との併用によりなお一層の診断効果が得られるものと思われる.

便利で経済的なダブルJステントカテーテル抜去法

著者: 亀岡浩 ,   山口脩

ページ範囲:P.792 - P.792

 上部尿路の通過障害に対し,ダブルJステントカテーテルの留置術は非常に頻用されている.一般にその留置手技は尿管カテーテルと同様であるが,抜去については定まったものがない.通常は生検鉗子,砕石鉗子で代用することが多いようであるが,鉗子類の磨耗につながり勧められたものではない.また小児の場合,そのサイズにあった鉗子は常備されていないことが多く,さらに細い鉗子を用意する必要がある.そこで我々は,抜去に適した,簡単で安価な器具を工夫して用いているので紹介する.
 不用になった尿管カテーテル用マンドリンの先端約1cmをペンチ等で曲げ縦長のループを作る.そこにループ状に絹糸を通し,投げ縄のような仕掛けを作る.絹糸を通す際注射針をガイドにすると便利である.抜去の時は絹糸の輪にダブルJカテーテル先端をとおし,糸を引いて締めた後,引き出すことができる.この器具は成人用はもちろん,小児用の尿管カテーテル用膀胱鏡にも用いることができ便利である.

体外衝撃波砕石術施行時の真空ギプスによる体位の固定

著者: 西本憲治 ,   安川明廣

ページ範囲:P.793 - P.793

 当院に設置されている体外衝撃波破砕装置の機種では,患者は水平な法療台に横たわり,結石の照準は超音波で行い,衝撃波は治療台の上方から下方へ発射される.したがって,治療体位は腎結石では主として腹臥位,下部尿管結石では仰臥位となるが,上部尿管結石では腹臥位から側臥位にわたる種々の斜位となる.この斜位の体位の維持のために,枕やさまざまに変形したスポンジを患者と治療台の間にはさみ体の固定を行ってきた.しかし,長時間の治療あるいは疼痛が強度の場合は治療中に徐々に体が動き衝撃波の焦点が結石からずれるため,照準を合わすべく超音波による微調節が頻繁に必要となっていた.
 これに対して最近われわれは,主に手術体位の固定に使用されている57×180cm大の全身用真空ギプス(イージートップ®)を治療台に置き,その上に患者を横たえ体位の固定を計っている(図).枕やスポンジを用いる固定と異なり同じ体位の持続が容易となり,長時間の斜位においても患者は疲れを訴えることがほとんどなくなった.また疼痛を強く感じる症例では衝撃波の発射の第1発目において大きく体が動き焦点がずれることがあったが,真空ギプスの使用により体は容易に元の位置に戻るため焦点のずれは少なくなった.腹臥位に近い体位においては軽度の胸部圧迫感があるが,患者の吸気時にギプスを真空状態にすることにより症状は軽減する.

画像診断

超音波監視下に経直腸的穿刺を施行した精嚢嚢状拡張症の1例

著者: 小林峰生 ,   佐井紹徳

ページ範囲:P.795 - P.797

 患者 19歳,男性.
 主訴 血精液.
 既往歴・家族歴 特記事項なし.
 現病歴 1991年6月12日血精液を認めた.射精痛,血尿,排尿異常は認めず.1991年6月27日当科を受診.
 現症 直腸診にて前立腺左葉に表面平滑な無痛性の緊満感のある拇指等大の腫瘤を触知.検査所見および経過 血液一般,血液生化学,尿検査に異常は認めなかった.来院時の精液検査では血精液を認めず.精子数も正常であった.経直腸的超音波検査およびMRIにて前立腺のほぼ中央に球形の嚢胞像を認めた(図1,2).超音波監視下に経直腸的に嚢胞を直接穿刺し,8mlの古い血液を混じた精液が吸引された.嚢胞造影では,拡張した左精嚢と左精嚢遠位端が拡張したと思われる嚢胞が造影された(図3).吸引液の細胞診,細菌培養は陰性であった.吸引後,前立腺部の腫瘤は触知しなくなり,臨床症状も消失した.

腎梗塞の診断後6年目で発見された若年性腎癌

著者: 石塚修 ,   柏原剛 ,   平林直樹

ページ範囲:P.798 - P.800

 患者 30歳.男性(会社員).
 主訴 高血圧の精査中,CTにて腎腫瘤を指摘された.
 初診 1991年5月30日.
 既往歴 24歳の時,急に左側腹部痛が出現した.血液検査でLDH 615IU(正常値200〜500)と高値を示し,CT,血管撮影にて左腎梗塞と診断した.保存療法にて軽快した.25歳より精神分裂病で内服加療中である.
 現病歴 1990年11月頃(29歳)より鼻出血がなかなか止まらないため,受診中の精神科に相談した.血圧が高く,精査を行ったところ,血液検査でレニン活性の高値(4.5ng/ml/時間,正常値0.3〜2.9)を認めたため,内科に紹介となった.CTにて左腎に腫瘤病変を認めたため,1991年5月当科に紹介となった.
 現症 血圧160/100以外は特記事項なし.
 検査所見 レニン活性の高値以外,血液,血液化学検査では異常を認めなかった.

日本泌尿器科臨床史・18

日本における前立腺の認識史—その2

著者: 友吉唯夫

ページ範囲:P.802 - P.803

 前回紹介した宇田川玄真の『医範提綱』(1808)の5年後に三谷笙洲(しょうしゅう)の『解体発蒙』(1813)という解剖書が出た.図版がかなり多く,それがブランガル(武蘭加児)の原図であるとしるされている.当然のことながら男性泌尿生殖器の解剖図が載っているが,その前立腺を含む部分は図1に示すとおりである.あきらかに前立腺が描かれているが,図の中の臓器名記入はない.精室という名で精嚢は記入されているが,前立腺はまだ重要臓器とは認識されていなかったようである.しかも前立腺尖にあたるところを膀胱下口としている.ところが本文には「摂護」という臓器名が出てくるのである.三谷笙洲独特のルビが付してあるのをそのまま紹介しよう.
 「其二個ノ細管(注:射精管)ノ外辺(シタノアタリ),小水管(ショウベンミチ)ノ起処(ハジマリノトコ)ニ,円小内空(マルクチイサナホガラ)ニシテ,形チ心臓(マルギモ)ノ如ク,大サ萬歳子核(オニクルミノタネ)ノ如キ者属リ.此内ニ恒ニ淡精(ウスイセイ)ヲ瀦蓄(タメタクワヘ)シ,時ニ応ジテ注洩(ソソギダシ)シ,以テ小水管ヲ濡潤(ウルオシ)シテ,小水ノ通利(ツウジ)ト真精ノ出飛(トビデル)トヲシテ,能ク快決(スラスラ)ナラシムルナリ.故ニ新訳ニ之ヲ摂護(マモリ)ト云フ.」

病院めぐり

倉敷成人病センター南くらしき病院泌尿器科

著者: 高本均

ページ範囲:P.804 - P.804

 倉敷市は,南は瀬戸内海に面し,瀬戸大橋で香川県坂出市へ,東西へは新幹線で1時間弱で大阪,広島市へ,北は伯備線で鳥取県米子市へつながり,また山陽,瀬戸中央自動車道のジャンクションがあり,将来中国横断道も接続され文字どおり交通の要所にあります.
 当院は,山陽線倉敷駅から南へタクシーで約10分の距離にあり,また江戸時代そのままの堀割,白壁土蔵の連なる美観地区,エル・グレコの「受胎告知」で有名な大原美術館とも近い位置にあります.当院は須原銀兵衛(現理事長)が1971(昭和46)年8月に財団法人倉敷成人病センターとして開設したことに始まります.現在,病床数230床,診療科7科,医科学研究所,検診センターを有し,常勤医師30名,非常勤医師4名の病院です.サテライト病院として近在に,真備中央病院,また海外にもシンガポールにジャパングリーンホスピタルとロンドンにジャパングリーンメデイカルセンターを有しています.
 当院の泌尿器科は1980(昭和55)年4月に荒木徹部長(1963年卒)が一人医長として着任以来飛躍的に発展を遂げ,現在高本均(73年卒),国富公人(80年卒),藤本博志(87年卒)および古賀実(89年卒)の5人体制となっています.また外来看護婦6名,医療秘書1名,臨床検査技師1名の計13名がスタッフです.

虎の門病院泌尿器科

著者: 金村三樹郎

ページ範囲:P.805 - P.805

 虎の門病院は,1958年,国家公務員等共済組合員の保険福祉施設,ならびに国家公務員等共済組合関係の病院の中央病院として設立されましたが,当初より共済組合員のみでなく,ひろく一般の方方の診療も行っています.霞が関の官庁街からは徒歩圏であり,銀座,六本木も近く交通は至便です.国家公務員の方,近くのオフィスに勤めるサラリーマンの方等の他に,首都圏各地より,更には全国各地より患者さんが紹介されてきます.
 現在病床数は1159床,診療科24科,常勤医は224名となっており,我が泌尿器科ではそのうちの40床を預かって横山正夫部長を始めとする8名体制(泌尿器科医7名と外科研修医1名)で診療を行っています.

交見室

副腎への転移様式,他

著者: 勝岡洋治

ページ範囲:P.806 - P.807

 本誌40巻5号に掲載された大竹らの論文「対側副腎転移を伴った腎細胞癌」を拝読した.筆者も過去に同様の症例を経験し,腎細胞癌の副腎転移(同側および対側)の頻度と転移様式につき,若干の文献的考察を行ったことがあるので,それらの要旨を述べ,本誌報告例の参考に供したいと思う.
 当時,本学に在職されていた斉藤博先生(現埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科教授)は,尿路性器腫瘍の転移様式に関心をもたれ,日本病理剖検輯報に集録されたデータを分析しておられた.先生の部屋にはいくつものダンボール箱が所狭しと山積みされていた.すでに先生はそれらの膨大な資料から腎細胞癌の転移様式について詳細な分析を行い,その結果を欧文雑誌に発表しておられた.これらの論文は今日でも内外で広く引用され,この分野の研究には必須の資料となっている.それらの調査資料によると,剖検所見にて転移が確認された腎細胞癌1293例のうち,単一臓器の転移が120例(8%),2つ以上の複数臓器への転移を各臓器の頻度でみると,副腎については同側17%,対側11%と,意外に多いことが認められている.これらの頻度は諸家の報告と一致する.しかし大半は剖検所見より得た成績であり,生前に副腎への転移が発見される頻度はきわめて少ない.近年,術前に発見される症例が増加しているのは,本誌報告者の指摘するように画像診断学の進歩が大きく寄与していると思われる.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

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